女の顔にコーヒー「復讐は俺に任せろ」

フィルムノワール

コーヒーは美味しくいただくもので
投げるものではありません。

[原題]The Big Heat
[製作年]1953[製作国]アメリカ
[日本公開]1953
[監督]フリッツ・ラング
[脚本]シドニー・ボーム
[原作]ウィリアム・P・マッギヴァーン
[撮影]チャールズ・ラング
[上映時間]90

主な登場人物

デイヴ・バニオン刑事(グレン・フォード):
殺人課の刑事。ラブラブの若妻と幼い娘がいる。ダンカン刑事が死に調査していく中、ギャングの大物ラガーナに行き着く。

デビー・マーシュ(グロリア・グレアム):
ヴィンスの愛人。かわいいのが取り柄だったがヴィンスに熱々のコーヒーを顔にかけられてしまう。

その他の登場人物

ヴィンス・ストーン(リー・マーヴィン):ラガーナの用心棒
ケイティ・バニオン(ジョスリン・ブランド):バニオンの妻
ルーシー・チャップマン(キャロリン・ジョーンズ):殺されるバーの女
バーサ・ダンカン(ジャネット・ノーラン):ダンカン夫人
マイク・ラガーナ(アレクサンダー・スコーピー):ギャングのボス

あらすじ

ダンカン巡査が頭を撃ち抜かれて死んでいるのを妻のダンカン夫人が見つける。ダンカンの手には検事宛にギャングのラガーナを告発する遺書があった。すかさず夫人はラガーナに連絡を取った。夫人はラガーナに自分はダンカン未亡人だと話し、ラガーナは夫人に警察を呼ぶこととその後に会うことを約束して電話を切った。すぐにラガーナは用心棒のヴィンスを呼び出した。ダンカンの捜査を担当する殺人課の刑事バニオンは、ダンカンの死に不振な点は見つけられなかった為自殺だと判断した。ダンカン夫人に話を聞くとやはりダンカンは病気を苦にしていたと涙ながらに自殺と思われる理由を語った。結局自殺だと片付けようとしたバニオンが、妻と楽しそうに食事をしているとカーン巡査からダンカンは、自殺ではないと電話が入る。バニオンは教えられた酒場の女ルーシーに会いに行った。ダンカンの死は自殺じゃないとバニオンに主張する。ルーシーはダンカンの愛人で、ダンカンは健康不安もなく夫人との離婚も決まり大喜びしていたという。再びダンカン夫人に会い事情を聞くと、夫人はダンカンが4人の女性と浮気をしていた。健康ぶっていただけだと。続けてバニオンは別荘の件を聞こうとするが夫人は固辞する。しかしルーシーが激しく暴行された上、車外に投げ出されて死亡したと知らせが入った。彼女は湖畔の店で売られた靴を着用していたという。その後バニオンは、夫人に2回会ったこと、死んだダンカン刑事の浮気に首を突っ込むなと上層部から釘を刺されてしまう。それでもバニオンはルーシーが働いていたバーのバーテン、ティアニーにルーシーのことを聞き出そうとするがはぐらかされ、すぐに電話で報告されていた。バニオンは誰と電話していたのか、ティアニーに詰め寄るが上層部から止められているのだろうと全て知っているようだった。家に帰ったバニオンは家族にも苛立ちを隠せなかった。そこに脅迫電話がかかりバニオンは心配する妻を置いて、ラガーナの屋敷に向かった。屋敷の中ではラガーナの娘のパーティが開かれ、豪華な装飾に広大な邸宅だった。バニオンはラガーナにルーシーの殺人事件について話すが、ラガーナは自宅で殺人の話などするなと怒るが、バニオンは汚いことで私服を肥やしたくせにとさらにラガーナを激昂させ、用心棒を叩きのめした。

どんな映画?

この映画は、ウィリアム・P・マッギヴァーンが雑誌「サタデー・イブニング・ポスト」で連載していた小説を元に、元犯罪記者のシドニー・ボームが脚本を担当し、フリッツ・ラングが監督したフィルム・ノワール作品となります。

刑事のダンカン夫人が銃声を聞いて
夫の部屋に行くとダンカン刑事が
死亡しています。
ダンカンの手元にはギャングの大物
ラガーナ宛の手紙が
すぐにダンカン夫人は電話をかけます。
警察ではなくラガーナ宛にです。

ダンカンの捜査を担当したのは
殺人課の刑事バニオン
遺体には特に不審な点はなく
バニオンは自殺と断定
ダンカン夫人からの供述も
一致しているし捜査は終了ー
家で妻とイチャイチャ
ところがダンカンは自殺じゃないと
電話があります。

バニオンはバーの女ルーシーに
会いに行きます。

ダンカンは殺されたの!

ルーシーはダンカンの愛人でした。
半ば半信半疑でしたが再び捜査を始めたバニオン。
その後ルーシーの悲惨な遺体が上がりー

ヴィンスに熱いコーヒーを顔にかけられて自慢の顔が爛れてしまったデビー。復讐の為ヴィンスにもコーヒーをかける。

マフィアの影響力と、警察の腐敗に真っ向から立ち向かう刑事。主人公の妻が死ぬシーンなど「ゴッド・ファーザー」(1972年)を思わせます。女性への暴力など、この年代にしては激しい暴力描写があることでも特徴的です。
また、悪役のリー・マーヴィンの演技も印象的です。
リー・マーヴィン演じるヴィンスの愛人デビー役は、当初マリリン・モンローを想定していたそうですが結局はグロリア・グレアムが演じました。劇中、壮絶な復讐劇を演じたのは、主人公ではなくデビーだったのですが、デビーがダンカン夫人に対して「私たちはミンク姉妹ね」 のセリフは名言として知られています。

グレン・フォードとグロリア・グレアムは、翌年にも再びフリッツ・ラング監督の「仕組まれた罠」(1954年)で共演されています。

スタッフ・キャスト

監督はオーストリア出身の巨匠フリッツ・ラング。ドイツで「ドクトル・マブゼ」(1922年)、「メトロポリス」(1927年)、「M」(1931年)などの名作を監督しますが、その後亡命。ハリウッドでは主にB級もののフィルム・ノワールを主流に監督されました。スペンサー・トレイシー、シルヴィア・シドニー主演の「激怒」(1936年)、ヘンリー・フォンダ、シルヴィア・シドニー主演の「暗黒街の弾痕」(1937年)、シルヴィア・シドニー主演の「真人間」(1938年)、ウォルター・ピジョン、ジョーン・ベネット主演の「マン・ハント」(1941年)、ブライアン・ドンレヴィ主演の「死刑執行人もまた死す」(1943年)、レイ・ミランド主演の「恐怖省」(1944年)、エドワード・G・ロビンソン、ジョーン・ベネット主演の「飾窓の女」(1944年)、翌年に同じキャストで「スカーレット・ストリート」(1945年)、ゲーリー・クーパー主演のスパイ映画「外套と短剣」(1946年)、ジョーン・ベネット主演の「扉の陰の秘密」(1948年)、ルイス・ヘイワード主演のサスペンス映画「ハウス・バイ・ザ・リバー」(1950年)、バーバラ・スタンウィック主演の「熱い夜の疼き」(1952年)、アン・バクスター主演のサスペンス映画「青いガーディニア」(1953年)、グレン・フォード、グロリア・グレアム主演の「仕組まれた罠」(1954年)などアメリカ時代ではかなりの映画を量産されています。

ギャングの手下ヴィンスを演じたのは強面アクション俳優のリー・マーヴィン。この「復讐は俺に任せろ」(1953年)の女にも容赦しない冷酷無比な役がハマり、キャリア初期は悪役や西部劇、戦争映画の脇を固めていました。1964年に主演したドン・シーゲル監督の「殺人者たち」では冷酷で寡黙な殺し屋を演じています。一方で翌年出演したコメディ西部劇「キャット・バルー」(1965年)では、そのキャラクターが高く評価されアカデミー賞主演男優賞を獲得しました。また、大戦中の軍隊経験を活かせたようなロバート・アルドリッチ監督のライトな戦争映画「特攻大作戦」で、ならず者部隊を率いる少佐を演じ、この映画は大ヒットしました。同年にはジョン・ブアマン監督の「殺しの分け前/ポイント・ブランク」(1967年)にも主演しています。

殺害されるバーの女ルーシーを演じたキャロリン・ジョーンズはアダムス・ファミリーの母親役で最も知られています。1953年に出演した「肉の蝋人形」ではジャンヌ・ダルクにされちゃっています。また、ドン・シーゲル監督の「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(1956年)や、アルフレッド・ヒッチコック監督の「知りすぎていた男」(1956年)などにも出演しています。

バニオンの愛妻を演じたのはジョスリン・ブランド。マーロン・ブランドのお姉さんとして知られています。

まとめ

復讐は私に任せてで地獄行き

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