パパは心配症「アーカディン/秘密調査報告書」

フィルムノワール

親の過去って本人から聞くと かなり脚色されてたりするので 信用できないもんです。

[原題]Confidential report
Mr.Arkadin
[製作年]1955[製作国]フランス・スペイン・スイス
[日本公開]劇場未公開・ビデオ発売
[監督・製作・脚本・衣装]オーソン・ウェルズ
[製作]ルイ・ドリヴェ
[撮影]ジャン・プールゴワン
[音楽]ポール・ミスラキ
[上映時間]99

主な登場人物

グレゴリー・アーカディン(オーソン・ウェルズ ):
巨万の富を築いた大富豪。しかしアーカディンの正体を知るものは誰もいない。

ガイ・ヴァン・ストラットン(ロバート・アーデン):
偶然殺人事件に出くわし、アーカディンの過去を調査することになったアメリカ人の若者。

その他の登場人物

プルゴミル・トレビッチ(マイケル・レッドグレイヴ):古物商
ソフィー(カティーナ・パクシヌー): 元踊り子、現在はマルチネス大将夫人
ヤコブ・ズーク(エイキム・タミロフ): 最後の老人
教授(ミシャ・オウア):ノミのサーカスの団長
ナゲル男爵夫人(シュザンヌ・フロン):ソフィーの昔の知人
ライナ・アーカディン(パオラ・モリ):アーカディンの愛娘
ミリー(パトリシア・メディナ):ストラットンの恋人
ブラッコ(グレゴワール・アスラン): ナポリ港で殺された男
サディウス(ペーター・ヴァン・アイク):密輸組織の大物

あらすじ

12月25日に無人の飛行機がバルセロナ海岸上空で目撃された。調査は上流社会にまで及び大変なスキャンダルとなった。
ヨーロッパでタバコの密輸業をしていたアメリカ人の若者ストラットンは、刑務所を出所したばかりの老人ズークを尋ねた。ストラットンは老人にすぐにここから逃げろと話す。真面目に取り合わない老人に、ストラットンは事の経緯を話し始める。今年の春ナポリ港で、ストラットンは義足の男が町を急ぎ足で歩いているのを見る。数分後、さらに酔っ払っているのかフラフラ歩いている男も目撃する。その後、その男が背中をナイフで刺されストラットンの前に倒れ込んだ。犯人らしき男は警察に発砲し逃げていった。ストラットンの恋人のミリーが助けを呼ぶと言うが、ブラッコと名乗った男は自分を看取ってくれたお礼に、渡したい物が2つある。金ではないが100万ドルの価値があるというのだ。しかし、警察が取り囲みストラットンは、密輸タバコの罪で連れて行かれてしまう。そこでブラッコはミリーに彼に伝えて欲しいと、二人の名前を耳打ちしてことキレた。警察に詰め寄られたミリーは、一人はグレゴリー・アーカディンと答えるがもう一人の名前は聞き逃していた。刑務所から出たストラットンはアーカディンのことを調べ始めた。そのうちアーカディンはスペインに城を持つ大変な資産家だということがわかった。しかしその正体は誰にもわからず、ミリーを尋ねるとアーカディンのパーティーに行っていると知らされる。ミリーがすでにアーカディンの懐に入っていることを知ったストラットンは、何とかしてアーカディンに面会し、彼をゆすろうと考える。しかしアーカディンの正体もわからず、死んだブラッコとの関係もよくわからない為何をネタにゆするのか考えあぐねていた。そこでストラットンは、アーカディンがこよなく愛する一人娘ライナに近づこうとするのだが。

どんな映画?

1955年にオーソン・ウェルズ が監督、主演、製作、脚本を務めたスペイン・フランス・スイス合作のミステリー映画となります。日本では劇場未公開となっておりますが、タイトルを「秘められた過去」にしてVHSビデオが発売されました。

クリスマスの日、
ある男が老人ズークを訪ねてきます。
男は老人に

早くここから逃げないと殺される!

と告げに来たのです。
刑務所から出たばかりの老いぼれに
誰が殺しに来るねん?
とまともに取り合わない老人に
男が今までの経緯を語り始めるのです。

タバコの密輸業に手を出している
アメリカ人青年のストラットン
ある日ナポリ湾である男がナイフで
背中を刺されているところに 出くわします。

ストラットンは男を励ましますが
死を悟った男は金になる情報を
教えてやるとストラットンに囁きます。
男はストラットンの彼女ミリーに
二人の人物の名前を教えてコト切れます。
一人目の名前は

グレゴリー・アーカディン

アーカディンとは一体何者なのか?
ストラットンはアーカディンのことを
調べ始めるのですが
大富豪であること娘ライナがいること以外
経歴は全く謎の人物でした。

アーカディンの秘密を探り彼を
ゆすろうと考えたストラットンは
まずライナに近づくことにします。
しかし予想外な事に、ストラットンは
彼女を本気で愛し始めてしまい…

愛しそうにアルバムを抱きしめるソフィー。全ての過去が暴かれた時…

「アーカディン/秘密調査報告書」は、オーソン・ウェルズ がかつて出演した映画「第三の男」(1949年)の中で演じた悪役ハリー・ライムを主人公にしたスピンオフもののラジオドラマシリーズ「The Lives of Harry Lime」の中のエピソード「謎の男」を元に、オーソン・ウェルズ が脚本を書き上げたと言われています。また、死の商人として知られる謎多き人物であった、実在の武器商人バジル・ザハロフをモデルにしていると言われています。

劇中アーカディンが語る「カエルとサソリ」の話はイソップ物語の「カエルとネズミ」を変形形と言われていますが、カエルの罠にかかったネズミが死に、罠にかけたカエルもまた死ぬという因果応報ものです。 ここで語られる「カエルとサソリ」の寓話は、己が破滅するとわかっていても相手を殺さずにおれない性を語っています。サソリはまさに、この物語の主人公であるアーカディンそのものでした。

アーカディンの娘ライナを演じたパオラ・モリはイタリア出身だった為、イタリア訛りがひどく代わりに、「オーメン」(1976年)でベイロック夫人を演じたことで有名なイギリス人女優ビリー・ホワイトローが吹き替えをしています。

毎度の若く、製作サイドと折り合いがつかず、オーソン・ウェルズ が編集権を失ったこの映画は7種類のバージョンが存在することになってしまいました。ヨーロッパで最も知られているのは、1955年にロンドンで公開されたバージョンは98分のものだとされています。アメリカではピーター・ボグダノヴィッチ監督によって1962年に99分版が公開された「コリンス・バージョン」とのことです。このバージョンはストラットンの回想シーンから始まり、オーソン・ウェルズ が想定していたものに近いと言われ、おそらく日本で観られるビデオバージョンはこの99分ものだと思われます。

地位も名声も、巨万の富を手に入れた男が、愛する娘に自分の過去を知られることのみを懸念する様は、滑稽であり物悲しくもあります。
個人的には大変面白く、好きな映画の一本であります。
2022年現在、日本でのDVD化はされていないようで、VHSビデオでの鑑賞は画質が非常に悪いためDVD化が非常に待たれます。

スタッフ・キャスト

アーカディンの過去を探る男ストラットンを演じたのはイギリス人俳優のロバート・アーデン。主にイギリスで活躍した俳優さんの為、この「アーカディン/秘められた過去」での出演が一番知られている映画となっています。日本で公開された映画では1981年のサム・ニールが主演した大コケ映画「オーメン/最後の闘争」に出演されています。

ストラットンが辿り着いた最後の老人ズークを演じたのはグルジア出身の性格俳優エイキム・タミロフ。多くの映画で脇に登場し、1943年に出演した、サム・ウッド監督、ヘミングウェイの小説を映画化した「誰が為に鐘は鳴る」では、ゴールデングローブ賞助演男優賞を獲得しています。アカデミー賞にもnp見ねーとされています。オーソン・ウェルズ 監督作品には、1958年に「黒い罠」では、メキシコ人ギャングの一味を演じ、1962年の「審判」にも登場しています。また、1964年のジュールス・ダッシン監督の「トプカピ」にも登場しています。

ミリーが情報を聞くため会いに行く密輸組織の男はドイツ出身の俳優ペーター・ファン・アイク。戦中はドイツを離れ、ハリウッドでは1943年にビリー・ワイルダー監督の「熱砂の秘密」でドイツ軍の中尉を演じています。また、戦後はドイツに戻り、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の「恐怖の報酬」(1953年)で主役の一人を演じています。また、フリッツ・ラング監督の「怪人マブゼ博士」シリーズに登場していることでも知られています。

ストラットンの彼女ミリーを演じたのはイギリス出身の美人女優パトリシア・メディナ。1968年にロバート・アルドリッチ監督の「甘い抱擁」に出演しています。また、私生活ではジョゼフ・コットンと結婚していたことでも知られています。その為ジョゼフ・コットンと一緒に日本の特撮映画「緯度0大作戦」(1969年)にも出演しています。

アーカディンの娘ライナを演じたのはイタリアの女優で貴族のパオラ・モリ。この映画ではオーソン・ウェルズ の娘役で出演されていますが、この映画での出演をきっかけにオーソン・ウェルズ の3番目の妻になるます。その後は監督の作品に協力し、1968年の「不滅の物語」では、夫妻の邸宅が撮影に使われています。

まとめ

過去を暴いて地獄行き

コメント

タイトルとURLをコピーしました