地獄の一夜「バージニア・ウルフなんかこわくない」

ドラマ

一方的にガナるオバはんほど
怖いものはありません。

[原題]Who’s Afraid of Virginia Woolf?
[製作年]1966[製作国]アメリカ
[日本公開]1967
[監督]マイク・ニコルズ
[脚本・製作]アーネスト・レーマン
[原作]エドワード・オールビー
[撮影]ハスケル・ウェクスラー
[編集]サム・オスティーン
[音楽]アレックス・ノース
[上映時間]131

主な登場人物

マーサ(エリザベス・テイラー):
ジョージの妻、大学学長の娘。学長の娘を妻にしているにもかかわらず出世していないジョージに強い不満を持つ。

ジョージ(リチャード・バートン):
歴史学の助教授。マーサの夫。教授にもなれず妻に責められている。

その他の登場人物

ニック(ジョージ・シーガル):新任の生物学の教授、28歳
ハニー(サンディ・デニス):ニックの新妻、26歳

あらすじ

マーサは学長である父親の誕生日パーティーの帰りの道すがら夫のジョージに絶えず話続け、その度にジョージは生返事をする。大学校内にある自宅に着くやいなや、ベティ・デイヴィスとジョセフ・コットンが出ていた映画なんだっけ?とさらにジョージに捲し立てるが、ジョージは「知らんね」と一蹴。そんなジョージにマーサは突然、今日の夜これから新任の数学教授夫婦を呼んだと伝える。散らかったベッド周りを適当に片付けるマーサを尻目に、乗り気でないジョージはベッドに寝転がった。マーサはジョージに跨り狼なんか怖くないの節で「バージニア・ウルフなんかこわくない~」と歌いながらジョージの背中をバンバン叩いた。うんざりするジョージをさらに煽るマーサ。適当に部屋を片付けるマーサは、ベルが鳴りジョージに出るように言う。ジョージは、マーサに子供のことは話すなと口止めするが、黙ってと大きな声を上げた途端扉が開き、ニックとハニーの新婚夫婦が面食らっていた。酒が入りすっかり出来上がっていたマーサに、ニックの妻ハニーがさっきの誕生日パーティーは楽しく、学長も素晴らしい人だと、マーサの父親を持ち上げた。するとジョージは、学長の娘と結婚するほど最悪な事はないと述べる。マーサは学長の娘と結婚する最大のチャンスを活かし切れないジョージの不甲斐なさを責めた。マーサとジョージ夫婦の言い争いになろうとした瞬間、ハニーがお手洗いにと言うのでマーサが案内する為二人は部屋を出て行った。ニックはジョージと二人きりになり、ニックが数学ではなく生物学の専攻だと聞き、マーサが間違えることなどないのにと嘯く。自分は、歴史学の教授だが、マーサは学部長になれない自分に不満を持っていると話す。子供は?とジョージが尋ねるとまだいないと言い、鸚鵡返しにニックがジョージにお子さんは?と尋ねるとジョージは「さあね」と答えた。ジョージは大声でマーサを呼ぶと、ハニーが2階で変な服に着替えていると話す。するとハニーは息子さんがいるのねとジョージに言う。驚いた顔をしたジョージに、ハニーは続けて今年16歳になる息子さんがいるとマーサから聞いたと話す。戻ってきたマーサは胸元が大きくあいた服を着てニックの隣に掛けて、二人で下品な話で盛り上がった。

どんな映画?

エドワード・オールビー原作のブロードウェイの戯曲「バージニア・ウルフなんかこわくない」を、舞台演出も手がけていたマイク・ニコルズが初映画化。当時実際に夫婦であったリチャード・バートンとエリザベス・テイラーが主演しており、エリザベス・テイラーは二度目のオスカーを獲得しています。

大学の構内で暮らす マーサとジョージ夫妻
その夜はマーサの父親である
大学学長の誕生日パーティーの
帰り道 すっかり出来上がったマーサは
ジョージにベラベラ一方的に
話します。

マーサの話に生返事で応対するジョージ
家に戻ったマーサは
パーティーにいた若い教授夫婦を
家に招待したと
ジョージに伝えます。

こんな時間に?
てゆーかもう深夜だし
と半ば呆れるジョージをよそに
汚い部屋を適当に片付けるマーサ
ジョージはマーサに
子供のことは話すなよと
口止めをするのですが、
ピンポーン
とニックとハニー夫妻が
訪れるて…

最後のゲームを始めようと言うジョージ。
項垂れるニック。

この映画のタイトルのバージニア・ウルフって誰やねん?
なんですが、バージニア・ウルフはイギリスの女流作家で、代表作には「ダロウェイ夫人」や「オーランドー」があり、「ダロウェイ夫人」は1998年にヴァネッサ・レッドグレイヴ主演で映画化されており、「オーランドー」は1992年に「オルランド」としてティルダ・スウィントンが主演で映画化されております。
また、2002年のスティーブン・ダルドリー監督の「めぐりあう時間たち」で、ニコール・キッドマンが鼻に特殊メイクを施して「ダロウェイ夫人」を執筆中のバージニア・ウルフを演じております。
んで、特にバージニア・ウルフ自体には意味はなく、1933年のディズニーのアニメ映画「3匹の子ぶた」の中の挿入歌「狼なんかこわくない」の節を「バージニア・ウルフなんかこわくない」で歌うダジャレですが、権利の問題があってそのまんまでは使用できなくなってます。
この映画の冒頭にエリザベス・テイラー演じるマーサが夫のリチャード・バートン演じるジョージに、ベディ・デイヴィスとジョセフ・コットンが夫婦役で出ていた映画なんだっけ?と話すシーンがあるのですが、これはキング・ヴィダー監督の「森の彼方に」(1949年)になります。 この為映画化が決まった当初のキャスティングは、マーサをベティ・デイヴィスが演じ、セルフパロディを期待されていましたが、今まで男にチヤホヤされる美人ばかりを演じてきたエリザベス・テイラーが、体重を増やしこの役を獲得しています。
この映画でのエリザベス・テイラーは、これでもかと醜態を晒すオバはんを演じ切り、アッパレ!としか言いようのない程女優魂を見せつけました。 エリザベス・テイラーは「バターフィールド8」(1960年)以来二度目のアカデミー賞主演女優賞を獲得しています。また、ハニー役を演じたサンディ・デニスが助演女優賞を獲得しています。

罵声を浴びせ合う夫婦喧嘩を延々と見せられる精神的にキツく、何の救いもない映画なのですが、この映画の中で使われた罵詈雑言は、映画の中で初めて使用された者があり、長らく規制されていたヘイズ・コードを廃止に導くきっかけになった映画となっております。

激しい夫婦喧嘩をしているカップルほど、側から見ていて、別れちゃえばいいのにと思うことはないのですが、経済的な理由だったり、子供のことだったり、他の親族のことだったり、仕事のことだったりと夫婦の数だけそれぞれ事情があって別れられない事情がある。 一番厄介なのが、夫婦の間に愛があることが最大の矛盾になってしまうんですネ。

ぜひ新婚さんに観せたい地獄映画ですね♪

スタッフ・キャスト

監督はドイツ出身、アメリカに移住しブロードウェイやハリウッドで活躍した映画監督マイク・ニコルズ。ブロードウェイで舞台演出も手がけた「バージニア・ウルフなんかこわくない」(1966年)で映画監督デビュー。翌年には伝説のラストでアメリカン・ニューシネマを牽引し、ダスティン・ホフマンを一躍スターにした名作「卒業」(1967年)を監督。続いてジョセフ・ヘラーのベストセラー小説を映画化した「キャッチ22」(1970年)、ジャック・ニコルソンが主演し、「卒業」で使用された「サウンド・オブ・サイレンス」や「ミセス・ロビンソン」などの楽曲で知られるサイモン&ガーファンクルのアート・ガーファンクルも出演した「愛の狩人」(1971年)、ジョージ・C・スコット主演のイルカサスペンス(?)、とゆーかイルカを爆弾を運ばせる兵器として利用しようという軍事サスペンスものの「イルカの日」(1973年)、ウォーレン・ベイティ、ジャック・ニコルソンが出演した「おかしなレディ・キラー」(1975年)、メリル・ストリープが核燃料工場と戦う社会派映画「シルクウッド」(1983年)、再びメリル・ストリープを主演に起用したロマンティック・コメディ「心みだれて」(1986年)、メラニー・グリフィスとハリソン・フォードが出演し大ヒットしたバブリーお仕事系ラブコメディ「ワーキング・ガール」(1988年)、メリル・ストリープとシャーリー・マクレーンが、それぞれキャリー・フィッシャーと母親のデビー・レイノルズ役に扮し、その他豪華出演陣で知られる「ハリウッドにくちづけ」(1990年)、ハリソン・フォードとアネット・べニングが共演したヒューマンドラマ「心の旅」(1991年)、ジャック・ニコルソンの狼変身特撮が当時話題になった「ウルフ」(1994年)、フランスの「Mr.レディ Mr.マダム」(1978年)のハリウッド版を、ロビン・ウィリアムズとネイサン・レインがゲイカップルを演じた「バードゲージ」(1997)、ジョン・トラボルタとエマ・トンプソンが共演したシニカル政治映画「パーフェクト・カップル」、ナタリー・。ポートマンがストリッパー役を演じて話題になった「クローサー」(2004年)、トム・ハンクスが製作、主演したノンフィクションを原作とした「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(2007年)などを監督されています。個人的には2000年の「2999年異性へ旅」を抜かしてハズレが少ない名監督さんだと思います。

マーサの夫を演じたのは往年のイギリスを代表する俳優の一人リチャード・バートン。1949年に映画デビューし、1952年にハリウッドで「謎の佳人レイチェル」に出演し、オリヴィア・デ・ハヴィランドと共演し注目されるようになります。この映画でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。その後もハリウッドで、歴史映画「聖衣」(1953年)、「アレキサンダー大王」(1956年)などに出演。1963年に完成されたアメリカ合衆国の歴史大作「クレオパトラ」で、アントニーを演じ、クレオパトラを演じたエリザベス・テイラーと共演。恋愛に発展しお互いのパートナーと別れて結婚。ちなみにエリザベス・テイラーは、キャリー・フィッシャーのお父さんエディ・フィッシャーと結婚していました。二人は「予期せぬ出来事」(1963年)、「いそしぎ」(1965年)、「バージニア・ウルフなんかこわくない」(1966年)、「じゃじゃ馬ならし」(1967年)、「危険な航路」(1967年)、「夕なぎ」(1968年)などで共演しましたが、離婚。ですがまた再婚しますが、翌年にはまた離婚してしまいます。ジョン・ヒューストン監督の「イグアナの夜」(1964年)、イギリスでマーティン・リット監督のスパイ映画「寒い国から帰ったスパイ」(1965年)、ブライアン・G・ハットン監督の戦争映画「荒鷲の要塞」(1968年)、クリスチャン・マルカン監督のカルトH映画「キャンディ」(1968年)、ヘンリー8世を演じたチャールズ・ジャロット監督の「1000日のアン」(1969年)、ジョセフ・ロージー監督の「暗殺者のメロディ」(1972年)、エドワード・ドミトリク監督の「青ひげ」(1972年)、イギリス・フランスの合作スリラー映画「恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチ」(1978年)、マイケル・らどフォード監督のSF映画「1984」(1984年)など多くの名作に出演し、優れた演技で評価されていますが、ジェームズ・メイソンと並ぶ無冠の帝王として有名です。

まとめ

犬も喰わない夫婦喧嘩で地獄行き

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