王者色を好む「チャンピオン」(1949年)

ドラマ

属性が女なら手当たり次第に 声をかける男性は ある意味尊敬に値します。

[原題]Champion
[製作年]1949[製作国]アメリカ
[日本公開]1951
[監督]マーク・ロブソン
[製作]スタンリー・クレイマー
[原作]リング・ラードナー
[脚本]カール・フォアマン
[編集]ハリー・W・ガースタッド
[撮影]フランツ・プラナー
[音楽]ディミトリ・ティオムキン
[上映時間]98

主な登場人物

ミッジ・ケリー(カーク・ダグラス):
貧しい生活から拳一つで成り上がったボクサー。女癖が悪く野心家。

エマ(ルース・ローマン):
レストラン所有者ルーの娘。ミッジと結婚するがすぐに捨てられる。

その他の登場人物

コニー(アーサー・ケネディ):ミッジの兄。足が不自由。
ジョニー・ダン(ジョン・デイ):プロボクサー
グレイス・ダイアモンド(マリリン・マクスウェル):ジョニーの情婦
トミー・ヘイリー(ポール・スチュワート):ミッジのコーチ
パーマー(ローラ・オルブライト):ハリスの妻。ミッジと関係を持つ。
ハリス(ルイス・ヴァン・ルーテン):プロモーター
ルー(ハリー・シャノン):レストランの所有者

あらすじ

プロボクサーのミッジは、ミドル級史上最も人気の高いチャンピオンとなっていた。しかしそんなミッジは、数年前まで貧しい生活を送っていた。足の悪い兄と一緒にヒッチハイクをしていると、高級車が止まった。同乗していた愛人のグレイスは嫌がったが、ボクサーのダンは面白がって二人を乗せた。二人はレストランの経営権を買取ったため店まで向かっていると言う。カンザスシティーに到着し、ジョニーに試合の幸運を祈ると言って二人は降りた。試合会場で仕事にありつこうとするが、軽くあしらわれた上に兄を馬鹿にされ、怒ったミッジはその場で暴れてしまう。その日の試合の選手が出場出来なくなり困っていたプロモーターは、ミッジを試合に出場させる。金が欲しかったミッジは素人ながら試合に出場し、ボコボコにされながらも健闘する。ジョニーの情婦グレイスはその試合を笑いながら見ていた。試合後コーチのトミーがミッジの才能を見込んで本当のプロにならないかとスカウトするが、ミッジは相手にしない。トミーは、気が向いたらロサンゼルスのブレイディ・ジムへ来いと伝えた。ヒッチハイクを続けレストランに着いた二人だが、そこには店のオーナーのルーと娘のエマがおり、二人は騙されたことに気づいた。そのままミッジとコニーは店で住み込みで働くことになった。女ぐせの悪いミッジは、すぐエマにいいより彼女もまんざらではない様子で二人は交際するようになっていた。その様子を兄のコニーは黙って見ているだけだった。結婚を望んだエマだったが、野心家のミッジはまだ結婚する気はないと拒んだ。しかし、父親のルーに交際がバレてしまい、無理に結婚することになってしまう。幸せにするというエマを尻目に、ミッジはコニーと一緒に立ち去ってしまう。悲しむエマに父親のルーは、こうなると思ったと冷たく言い放つ。その後、二人は職業安定所に貼ってあったブレイディ・ジムのチラシを見てジムに向かった。ジムでトミーと再会するが、トミーはもうこの業界から足を洗ったという。ミッジは自分プロボクサーになて、大金を儲けさせてやるとコーチを依頼する。その日から、トミーと二人三脚での厳しい特訓が始まった。

どんな映画?

この映画は、アメリカ合衆国の作家兼ジャーナリストであるリング・ラードナー原作の小説を、スタンリー・クレイマーが製作、マーク・ロブソン監督が映画化。 2020年に主演のカーク・ダグラスが103歳でお亡くなりになるまで、カーク・ダグラスがこの映画の最後の生き残りでした。

子供の頃父親が出て行き
貧しい生活を送っていた
ミッジとその兄コリー
二人はレストランの権利を買い取った
と言ってヒッチハイクで向かっている
途中 ボクサーのダンと愛人である
グレイスの車に乗せてもらいます。

ついでにその試合会場で
小銭を稼ごうと仕事を頼みますが
相手にされず大暴れ
ちょうど試合に出れなくなった
選手を必要としていた
プロモーターから試合に出れば
金をやると言われ出場。

善戦したミッジを見て
トミーがスカウトして来ますが
その時は相手にしません。
意気揚々とレストランに到着すると
騙されたことに気づきます。

結局ミッジとコニー兄弟は
その店で働かせてもらうことに。
真面目に働くコニーに対して
女好きのミッジは早速店主の娘エマに
手を出します。
結婚する気なんかサラサラない
ミッジでしがたエマの父親にバレ
無理矢理結婚。

すぐにミッジはエマを捨て
コニーと一緒にトミーのジムに
向かいます。

トミーと個人契約でプロボクサーになると
決めたミッジ。
次々と勝利し富と名声を得ていくのですが…

ダンとの因縁の試合でダウンを奪われるミッジ

「チャンピオン」(1949年)は実在のボクサーであったスタンリー・ケッチェルがモデルとされています。ケッチェルは元世界ミドル級のチャンピオンでしたが、24歳の若さで滞在先の牧場の女性に襲い掛かり、内縁の夫に射殺されてしまったそうです。
この映画の主人公ミッジも、美人と見れば人の彼女だろうが、人妻だろうが見境なく口説くと言う女癖の悪さを発揮。この強欲さが、自身の破滅に結びつくのですが、カーク・ダグラスの確立した「地獄の英雄」(1951年)や「探偵物語」(1951年)、「悪人と美女」(1952年)などで演じたような、善人とは言い切れないアンチヒーロー像がピタリとハマり、ラストに向かう強烈な演技に圧倒され、感動すら覚えます。

また、足の悪いミッジの兄コニーを演じたアーサー・ケネディ。1947年の「影なき殺人」では、容疑者にされる青年を演じており、ちょっと人相の悪い風貌がハマっていたのですが、この映画でのコニーは、ミッジが忘れている良心そのものでした。弟を気遣いながらも一歩引いた難しい役回りを演じ、大変好感が持てました。

カーク・ダグラスはこの演技でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされていますが、受賞は逃しました。 アカデミー賞はハリー・W・ガースタッドが編集賞を受賞しています。

スタッフ・キャスト

監督はカナダ出身アメリカハリウッドで活躍した映画監督兼映画プロデューサーであるマーク・ロブソン。1942年にジャック・ターナー監督の「キャット・ピープル」で編集を担当。続いてオーソン・ウェルズも出演していた映画「恐怖への旅」でも編集を担当。1945年にはホラー映画でボリス・カーロフ主演の「吸血鬼ボボラカ」を監督。翌年には同じく主演でボリス・カーロフを起用した「恐怖の精神病院」を監督されています。「チャンピオン」(1949年)を監督後一変してスーザン・ヘイワードを主演にしたメロドラマ「愚かなり我が心」(1949年)を監督。翌年にファーリー・グレンジャー主演の「恐怖の一夜」(1950年)、1955年に朝鮮戦争を題材にした「トコリの橋」、1956年にグレン・フォード主演の人種差別と反共をテーマにした「アメリカの戦慄」を監督。また、1956年には再びボクシング界の裏幕を描き、ハンフリー・ボガートが主演した「殴られる男」を監督をしています。

ミッジのマネージャートミーを演じたポール・スチュワートは、アメリカ合衆国の俳優。舞台、ラジオ、映画で活躍し、巨匠で巨体のオーソン・ウェルズと関係の深い俳優さんです。1941年にオーソン・ウェルズ監督の「市民ケーン」で映画デビュー。この映画ではケーンのシニカルで冷静な執事レイモンドを演じていました。また、1949年のフィルム・ノワール「窓」で、目撃者の子供を殺害使用とする夫妻の夫を演じています。また、ジョセフ・コットン主演のノワール映画「追いつめられた男」(1950年)、同年マーク・ロブソン監督の「恐怖の一夜」(1950年)、リチャード・ブルックス監督、ハンフリー・ボガート主演の「デッドラインU.S.A」(1952年)、ロバート・アルドリッチ監督のカルト映画「キッスで殺せ」(1955年)、リチャード・ブルックス監督の「冷血」(1968年)、オーソン・ウェルズ監督の「オーソン・ウェルズのフェイク」(1975年)などの、多くのフィルム・ノワール作品で脇役ながらも存在感のある人物を演じていました。

エマ役を演じた女優さんはルース・ローマン。1949年にやはりフィルム・ノワールの「窓」でこの時は、ポール・スチュワートの妻役で初めて重要な役を演じ、「チャンピオン」出演後ロバート・ワイズ監督のミステリー仕立てのドラマ映画「三人の秘密」(1950年)に主要人物を演じています。また1951年にアルフレッド・ヒッチコック監督の「見知らぬ乗客」でファーリー・グレンジャー演じる主人公の愛人役で出演しております。その後はテレビで活躍し、初老に突入した1970年代に突如B級ホラー映画に出演!?1972年にカルトホラー映画「ザ・ベイビ/呪われた密室の恐怖」にイカれた赤ちゃんプレイの夫人を演じています。

まとめ

女癖の悪さで地獄行き

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