恐怖の三白眼「見知らぬ乗客」

サスペンス

初対面でやけに馴れ馴れしい人って
ちょっと警戒した方がいい時があります。

[原題]Strangers on a Train
[製作年]1951[製作国]アメリカ
[日本公開]1953
[監督]アルフレッド・ヒッチコック
[脚本]ウィットフィールド・クック
[脚色]レイモンド・チャンドラー/ツェンツィ・オルモンド
[撮影]ロバート・バークス
[音楽]ディミトリ・ティオムキン
[上映時間]101

主な登場人物

ガイ・ヘインズ(ファーリー・グレンジャー):
アマチュア・テニスプレイヤー。妻と不仲だが離婚の同意が得られず、既婚のまま上院議員の娘であるアンと交際している。

ブルーノ・アントニー(ロバート・ウォーカー):
ガイがたまたま列車で乗り合わせた男。ガイの不倫を知っており、自分にとって邪魔な父親とガイの妻との交換殺人を持ちかける。

アン・モートン(ルース・ローマン):
不本意ながらガイの愛人。

その他の登場人物

モートン上院議員(レオ・G・キャロル): アンの父親
ミリアム(ケイシー・ロジャーズ): 浮気性のガイの妻。
バーバラ(パトリシア・ヒッチコック): アンの妹。ブルーノに狙われる。

あらすじ

アマチュアで有名なテニスプレイヤーであるガイは、ニューヨークまで向かう列車の中でブルーノと名乗るちょっと不気味な男に声をかけられる。ブルーノはガイが差し出したライターのAからGへという文字を見て、雑誌などの情報でガイに妻がいながらアンという彼女がいることまで話してくる。個室で食事をしながらブルーノは父親のことを話し始め、金持ちのくせにケチだとか逆恨みしているようだった。ガイを侮辱するような言い方をし一方的に話しを続け、完全犯罪の殺人に興味はないかと言い出す。動機の無い二人が殺し屋を雇って、互いの殺したい相手を殺しあう交換殺人を提案し、ガイは妻をブルーノは父親をと言う。あきれ気味のガイは次の駅で降りると彼に伝え軽く彼の案は名案だねと受け流して部屋を出た。この時、ガイはライターを忘れていってしまう。故郷であるメトカフで降りたガイはレコード店で働いている妻の元を訪れ、妻からの申し出による離婚の話し合いに来た。しかし、メガネをかけ神経質そうな妻は、浮気の末身ごもってしまい離婚しないと言い始める。妻ミリアムの勝手な言い草に言葉を荒げたガイは店主に止められる。アンに電話をし離婚できなくなった、殺してやりたいと言ってしまう。その夜ガイの元にブルーノから離婚できたかと奇妙な電話がかかってくる。夜、メトカフの駅に降りたブルーノは二人の男と遊園地で遊び回るミリアムに近づく。ボート遊びをし、人気の無い島まで行ったミリアムはブルーノに首を絞めら殺害されてしまったのだ。

どんな映画?

今年の流行語対象にも選ばれたテレビドラマ「あなたの番です」でも取り上げられていた交換殺人がテーマの映画です。

列車に乗り込んだガイは
前に座っていた男と足がぶつかり
失礼 と一言。
フツーだったらそれでおしまいですが
前に座っていた男ブルーノはフツーじゃありませんでした。

テニスプレイヤーのガイは雑誌や新聞に
取り上げられる有名人
ブルーノはガイに馴れ馴れしく声を
掛けてきます。

ガイには弱味がありました。
浮気性の妻とうまくいっておらず
離婚できないままモートン上院議員の娘で美人のアンと付き合っていたのです。

それを察知していたブルーノは
ガイにとって邪魔な妻を殺してやる代わりに何かと口うるさい父親を殺して欲しいと交換殺人の話を持ちかけます。

何言ってんだこいつ
バカバカしいので適当にあしらって
と取り合わなかったガイでしたが
実際にガイの妻ミリアムが殺されてしまいます。

原作は「太陽がいっぱい」の原作者としても有名なパトリシア・ハイスミス。
「見知らぬ乗客」は彼女の長編デビュー作とされていますが、この作品と前後して別名義で書いた小説「キャロル」があります。デパートの店員と客の上流階級夫人との恋を描いた作品で、こちらは2015年にトッド・ヘインズ監督により映画化されています。
「見知らぬ乗客」や「太陽がいっぱい」に漂う同性愛感は作者の経験から来ているんでしょうね〜

個人的に最も印象的なシーンは
テニス選手であるガイが試合中
ふと観客席を見るとボールを右左と
追いかける他の観客をよそに
じっとガイを見つめるブルーノの姿。

げげっ

原作ではガイの職業はテニスプレイヤーではなく建築家。わざわざテニス選手にしたのはこのシーンを撮りたかったのではと思ってしまうくらい地味にゾッとする場面です。

スタッフ・キャスト

イギリスからアメリカに渡ったサスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック。「パラダイン夫人の恋」を最後に晴れてセルズニックから独立を果たしたヒッチ先生でしたが、1948年の作品の「山羊座のもとに」でバーグマンを怒らせたロングショット。映画自体もイマイチ。
次にワンカット、無編集で撮られた「ロープ」は今でこそ名作とされていますがこの実験的映画製作は全く当時の観客に受けず撃沈。
ヒット作がどーしても欲しいヒッチ先生が手掛けたのが、パトリシア・ハイスミス原作のこの作品でした。脚本にフィリップ・マーロウの探偵シリーズで有名なレイモンド・チャンドラーが名前を連ねていますが、チャンドラーはヒッチコックと衝突したそうで途中退場。クレジットには名前を連ねています。チャンドラーのくだらない映画とのこき下ろしをよそに「見知らぬ乗客」は大ヒットを遂げるのでした♪

何と言っても不気味な演技で異彩を放っていたのがブルーノ役のロバート・ウォーカー。1947年クララ・シューマンをキャサリン・ヘップバーンが演じた「愛の調べ」では彼女を愛する若きブラームスを演じていました。
評価が上がっていく中、この映画の公開直後32歳の若さで亡くなってしまいました。ロバート・ウォーカーの短い人生とキャリアの中で必ず語られるのが、往年の大女優ジェニファー・ジョーンズの元夫だったいうこと。若くまだ駆け出しの頃に結婚した2人の間には子供もいましたが、やがてジェニファー・ジョーンズがこれまたハリウッドの大プロドューサー、デヴィッド・O・セルズニックの目に留まり彼の映画に出演スター女優の地位を確立し、私生活でもロバート・ウォーカーと離婚しセルズニックと再婚してしまいました。

テニス選手ガイを演じたのファーリー・グレンジャー。1948年に同じくヒッチコック監督の「ロープ」に主演の一人である殺人を犯す気弱な青年を演じ、同年にニコラス・レイ監督の「夜の人々」では無軌道に殺人を続ける青年を演じていました。主体性の無い色男がお得意で、1954年のルキノ・ヴィスコンティ監督「夏の嵐」で女たらしのオーストリア将校を演じていました。バイセクシャルであるとこも公表されていて濃い顔立ちの端正な男前で男も女も魅了したようです。晩年は異色スラッシャー映画「ローズマリー」に出演。長く活躍されました。

パトリシア・ヒッチコックはヒッチコック監督とその妻アルマ・レヴィルの一人娘。しばしば登場するのですが、印象的なのは「サイコ」でのジャネット・リーのちょっとむかつく同僚役でお目にかかれます。

ヒッチ先生登場シーン

駅に着いたファーリー・グレンジャーが列車から降りるのとすれ違いにコントラバスを持ったヒッチ先生が乗り込む。

まとめ

勝手に交換殺人で地獄行き

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