二重生活の果て「ミスター・グッドバーを探して」

犯罪

チョコバーはカロリーが高いので
あんまり食べないようにしています。

[原題]Looking for Mr. Goodbar
[製作年]1977 [製作国]アメリカ
[日本公開]1978
[監督・脚本]リチャード・ブルックス
[原作]ジュディス・ロスナー
[撮影]ウィリアム・A・フレイカー
[音楽]アーティ・ケイン
[上映時間]135

主な登場人物

テレサ・ダン(ダイアン・キートン):
若いろう学校の教師。昼間はまじめな教師だが夜はバーで男を物色し、お持ち帰りする生活を送っている。

その他の登場人物

テレサの父(リチャード・カイリー):厳格で固い父親
キャサリン(チューズデイ・ウェルド):テレサの姉
カリー(トム・べレンジャー):テレサがバーで引っ掛けた男
ジェームズ(ウィリアム・アザートン):神父を目指す純朴な青年。テレサを一途に愛してくれるが。
トニー(リチャード・ギア):テレサがバーで引っ掛けたいい加減な男。

あらすじ

もうじき大学を卒業というテレサはメガネのいかにも真面目そうな学生だったが、担当教授のエングル教授に抑えきれない欲望を抱いていた。テレサは幼少の頃ポリオにかかり11歳まで歩くことができなかった。ポリオが原因の脊柱側弯症になり、手術で脊椎を伸ばし1年以上寝たきりの過酷な闘病生活を耐え、歩けるようにはなった。しかし、背中に手術痕が残り慢性的な痛みに悩まされていた。一方美しく健全な姉のキャサリンへの嫉妬心を隠せないでいた。教授に体当たりで迫った処女のテレサはとうとう既婚の教授と関係を持った。家に戻るとCAの姉キャサリンが慌ただしくクリスマスシーズンにもかかわらずプエルトリコのフライトに出るという。キャサリンはテレサに困ったことになった、誰かわからない男の子供を妊娠してしまったという。その処置のため父には黙ってプエルトリコに行くというのだ。1975年の大晦日キャサリンから電話があり中絶に行ったはずなのに結婚したと言う。電話を切った後興奮が冷めないテレサは勢いで教授の家に電話をかけてしまう。怒り狂う教授に目の前でスカートをたくし上げるテレサ。キャサリンが夫を連れてきた日でも教授から電話で呼び出しがあるとホイホイでかけてしまう。車の中でことが終わると教授は冷たくなることを言及すると、終わったあとは煩わしくなるとはっきり言われてしまう。傷ついたテレサは車から降り地下鉄に乗り込もうとするが、空いた扉からシスターが現れ、立すくみその電車に乗ることができなかった。テレサは卒業し、ろう学校の教師になることに。それと同時に教授からあっさり別れを切り出されてしまう。教授の車に飛び込もうかと妄想するテレサ。バーに行ったが結局食料を買い込んでキャサリンのアパートに向かう。そこではキャサリン夫妻と一組のカップルが快く迎えてくれた。しかし、何だが様子が変だなと思っているとポルノ鑑賞会が始まり、キャサリンは夫たちとともにドラッグ、乱交にどっぷり溺れていた。ショックを受けながら帰宅すると、厳格な父親が一晩帰らなかったテレサを怒鳴りつけた。テレサはそのまま家を出て一人暮らしをすることにした。

どんな映画?

1973年に起こったローズアン・クインの事件を元に、ジュディス・ロスナーが発表した小説をリチャード・ブルックスが映画化しました。
主演のダイアン・キートンが、ウッディ・アレン監督の「アニー・ホール」(1977年)でアカデミー賞主演女優賞を獲得した次に出演を決めた作品であり、リチャード・ギアのデビュー作としても知られています。

敬虔なカトリック家庭に育ったテレサ
いかにも真面目そうな大学生でしたが
教授と不倫関係に。

そんなテレサは子供の頃ポリオを患い
過酷な闘病生活を乗り越えていましたが
背中に残る手術痕や再発への恐怖心を抱えていました。

不倫に溺れるテレサを冷たくあしらう教授。
一方 順風満帆で健康な体や美貌と
何でも持っていると思っていた姉が次第に
乱交やドラッグ、中絶で身を持ち崩していくのを
目の当たりします。

実家から独立し
ろう学校の教師として真摯に取り組むテレサでしたが
夜はバーに繰り出し男を物色し部屋に連れ込む日々で…

一人バーで飲んでるナンパ待ちのテレサ
持っているのはダイアン・キートンも出演している「ゴッド・ファーザー」

この映画は1973年に実際に起った殺人事件を元に描かれています。ニューヨークで若い聾唖学校の教師がバーで知り合った男に殺害されるという事件が起こりますが、事件そのものより被害者が教師という真面目な職業とは裏腹に私生活では行きずりの男と逢瀬を重ねる二重生活が注目されてしまいました。
映画でも表現されていますが、ちょうど70年代のウーマン・リブ活動と重なりフリーセックス、ドラッグ、中絶の自由、自由を謳歌する弊害だと皮肉られてもいます。

この映画を観て、ただ自業自得だと思うでしょうか?
こんなふうになっちゃいかんという反面教師でしょうか?

この映画の前半は主人公のテレサがどういう人間なのかが描かれています。その中でポリオという病気と

なかったことになっている叔母の存在。

テレサと同じ病気で亡くなった叔母は健康でなければ家族じゃないと一族の中で始めからなかったような存在になっています。

現代ではポリオは感染症なので遺伝的要素がないと知られていますし、ワクチンでほぼ感染せず、再発もありません。この当時まだ本人も遺伝があるかもと誤解しており、それが子供を持ちたくないという意識に繋がっています。脊柱側弯症に関しては遺伝研究が進められていますがポリオに起因する側弯症なら遺伝性はないと思われます。
ただ、この映画の主人公の中で、再発への恐怖や遺伝の懸念は彼女の人生に暗い影を落としています。

幸せを求めていたわけでも、愛を求めていたわけでも、優しさを求めているわけでも、安定を求めているわけでもない。ただ生きてる実感が欲しいだけ。 「欲望という名の電車」(1951年)の主人公ブランチにも言えることですが、飽くなき承認欲求は自分自身を追い詰めていきます。

問題なのは一見真面目でうまくいっているような人間の中に内包している病理があること。
それに周りも、ましてや自分自身が気がついていないこと。事件が起こってからあんな真面目な娘がどうして?となります。

自分を救ってくれるのは自分自身だけ!
他の誰かじゃないです。探しても見つかりません。
それに気づいて自分を大切にできたなら悲劇は起こらないのかも。

「ミスター・グッドバー」はハーシーチョコが出している黄色のパッケージで有名なチョコバーです。バー(酒場)とバー(イ◯モ◯)をかけているようですが、「アメリカン・ジゴロ」(1980年)のリチャード・ギアが出演しているのもおつなもんです。

スタッフ・キャスト

アメリカ合衆国の映画監督リチャード・ブルックス。1947年にエドワード・ドミトリクが監督した「十字砲火」の原作を担当、「真昼の暴動」(1947年)、「キー・ラーゴ」(1948年)などのフィルム・ノワールの脚本を手掛けています。その後監督として、1955年に発表した「暴力教室」がヒット。この映画は、グレン・フォードが不良ばかりのスラム街の教師を演じ、シドニー・ポワチエが生徒という暴力を暴力で制すという問題作となりましたが、主題歌の「ロック・アラウンド・ザ・クロック」とともに当時の若者たちに大変な話題になりました。ポール・ニューマン、エリザベス・テイラー主演の「熱いトタン屋根の猫」(1958年)や、バート・ランカスターにアカデミー賞主演男優賞をもたらした「エルマー・ガントリー/魅せられた男」(1960年)などの文芸映画を監督。「エルマー・ガントリー」ではヒロインを演じたジーン・シモンズと結婚しています。また、1967年にトルーマン・カポーティの小説「冷血」を映画化しています。

主人公テレサを演じたダイアン・キートン。1972年にフランシス・フォード・コッポラー監督の「ゴッド・ファーザー」にアル・パチーノ演じる主人公マイケルの彼女、その後妻というケイ・アダムスとしてシリーズ3作に登場しています。その後公私共にその頃のパートナーだったウッディ・アレンの映画に出演。1977年に出演したアレン監督のコメディ映画「アニー・ホール」でアカデミー賞主演女優賞を獲得しました。現在75歳まだまだご活躍中です。

才色兼備の姉キャサリンを演じたチューズデイ・ウェルド。彼女こそ子役モデル出身のロリアイドル。50年代に登場した炭酸飲料セブンアップの広告ポスターは非常に有名です。映画では1956年に13歳でヒッチコック監督の「間違えられた男」でデビュー。1959年に子役で出演した「5つの銅貨」ではポリオを患った娘役でした。金髪に可愛らしい顔に健康的なスタイルは人気を得たのですが、毒親もちの子役の性でハイティーンの頃には酒やドラッグに溺れていたと言われています。ですので女優として大作の出演依頼があっても断っていたそう。「かわいい毒草」(1968年)などの主演がありますが、その後は「ドッグ・ソルジャー」(1979年)や「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」(1981年)など主人公のパートナー役が多くなっています。

脇では、狂ったようにパンツ一枚で暴れまくるリチャード・ギアや、1986年の「プラトーン」の鬼軍曹役が大当たりしたトム・ベレンジャー、ジョン・シュレシンジャー監督の「イナゴの日」(1975年)に出演していたウィリアム・アザートンなど今や超ベテラン俳優陣の若い頃は必見です。

まとめ

悲しいけれど地獄行き

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