ファントム・レディ「幻の女」(1944年)

フィルムノワール

格好が奇抜だとそっちに目がいってしまって
顔は覚えられにくくなるそうです。

[原題]Phantom Lady
[製作年]1944 [製作国]アメリカ
[日本公開]1951
[監督]ロバート・シオドマク
[共同製作]ジョーン・ハリソン
[原作]ウィリアム・アイリッシュ
[音楽]ハンス・J・サルター
[上映時間]87

主な登場人物

キャロル・リッチマン(エラ・レインズ):
愛称カンザス、スコットの秘書。スコットが逮捕され女性ながら単独で彼の無実の証明の為帽子の女を探す。

ジャック・マーロウ(フランチャット・トーン):
スコットの友人。スコットの事件のあと南米に行っていたが戻ってきた。

その他の登場人物

スコット・ヘンダーソン(アラン・カーティス):32歳の設計会社社長。妻と喧嘩したあとバーで出会った女とショーを見に行く。帰ってくると妻が何者かに殺されていた。
バージェス警部(トーマス・ゴメス):スコットが犯人でないと感じキャロルに協力する。
クリフ・ミルバーン(エリシャ・クック・Jr):ドラマー、スコットと謎の女の目撃者。
チューインガムの刑事(レジス・トゥーミイ)
アン・テリー(フェイ・ヘルム):帽子の女

あらすじ

妻と喧嘩し当てが外れたスコットはバーで出会った羽帽子の女に声をかけ、妻と行くはずだったショーに二人で出かける。この場限りと自己紹介は無しでショーを見ていると、出演者の帽子が女の帽子と同じことから出演者が女を睨みつけていた。ショーが終わり女とそのまま別れ部屋に戻ったスコットを待っていたのはバージェス警部たちだった。寝室に行くと変わり果てた妻の遺体があった。ちょうどその日は二人の結婚記念日だったが、夫婦仲は冷めきっており南米に旅立つジャックのお別れ会のあとスコットはやり直そうと妻をショーに誘ったが拒否。離婚を迫るスコットに妻は嘲笑し離婚も妻でいる気もないと言う。悲しむスコットだったが、妻の殺害に彼のネクタイが使われたため逮捕されてしまう。スコットの会社に出社した秘書のキャロルは新聞で初めてスコットが逮捕されたことを知りショックを受ける。スコットは夜の8時からのアリバイを証明するため刑事と共に女と会ったバーや、タクシー会社、劇場に向かうが皆自分の顔は覚えているが女とは一緒ではなかったと証言する。スコットの裁判が始まりキャロルが傍聴する中、スコットの有罪が決定する。面会したキャロルはスコットを剥げますがスコットは半ばあきらめ気味だった。キャロルは単独でバーに通い、バーテンを尾行するのだが。

どんな映画?

ウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)原作のおそらく日本で一番よく知られていた小説「幻の女」をノワールの巨匠ロバート・シオドマク映画化。

バーを訪れたスコット。
そこには一人 羽根がついた変わった帽子を
被った女が一人で座っていました。
ちょうど妻とケンカしショーのチケットを
持て余していたスコットは彼女を誘います。

元気のなさそうな彼女はその誘いにのり
二人でタクシーに乗り劇場へ。
お互いその日限りと自己紹介もせず観覧。
バンドのドラマーはちらちらこちらを見ています。
そこに登場したダンサーが女と全く同じ
帽子を被っていました。
同じ帽子に怒ったダンサーは女を睨みつけます。

ショーが終わったあとそのまま帰宅した
スコットを待ち受けていたのは刑事でした。
妻が殺されたというのです。
しかもスコットのネクタイで絞殺されたというのです。

アリバイの証明のため、謎の女と一緒にいた
証言がほしかったスコットですが、
行く場所行く場所でことごとく

あなたは一人でした。

と言われてしまうのです。
結局陪審員によって有罪が確定したスコット。

彼を助けるべく立ち上がったのがスコットの
秘書キャロルでした。

こんな帽子被っていたら覚えていそうなものですが。

”夜は若く 彼も若かったが”で始まるウィリアム・アイリッシュ原作の「幻の女」は、江戸川乱歩先生も絶賛のミステリー小説です。
犯人は中盤で明かされるので、謎解きミステリーではなく異常犯罪者との心理戦となります。
映画の中でスコットの犯行を疑問に思ったバージェス警部が異常犯罪者の例として、妻を殺害し遺体を切断通称クリッペン医師、青ひげ、切り裂きジャック
ネルソン、デリンジャーの名前を列挙してみんな異常者と述べています。
現在クリッペン医師は妻殺しに関しては冤罪の可能性があるとされていますが、異常犯罪は必ず正体を顕にすると。
一緒にいたはずの人間をみな見ていないと証言するのは「バルカン超特急」(1938年)や「バニー・レークは行方不明」(1965年)に見られますが、その後証言者が殺されるサスペンスはこの映画の特徴です。

原作とは多少異なるものの、女性が活躍するフィルム・ノワールファン必見の映画です。

スタッフ・キャスト

監督はドイツ出身、ハリウッドで活躍したロバート・シオドマク。1936年にガストン・ルルー原作をフランスで映画化した「フロウ氏の犯罪」、モーリス・シュヴァリエ主演のサスペンス「罠」(1939年)を監督。その後ハリウッドで「幻の女」でも大活躍したエラ・レインズとチャールズ・ロートンが共演した「容疑者」(1944年)、ディアナ・タービンを主演のサスペンス「クリスマスの休暇」(1944年)、エラ・レインズが悪女を演じた「ハリーおじさんの悪夢」(1945年)、傑作スリラー「らせん階段」(1945年)、ハンフリー・ボガートが主演の「追求」(1945年)、オリヴィア・デ・ハヴィランドが双子を演じたサイコ・サスペンス「暗い鏡」(1946年)、バート・ランカスター主演の「殺人者」(1946年)、リチャード・コンテ主演の「都会の叫び」(1948年)、再びバート・ランカスターが出演した「裏切りの街角」(1949年)、バーバラ・スタンウィック主演の「情事の代償」(1950年)など40年代から50年代にかけてサスペンスやフィルム・ノワールの傑作を量産しました。

製作はアルフレッド・ヒッチコック監督の秘書兼脚本家だったジョーン・ハリソン。アカデミー賞で女性脚本家として初めてオスカーにノミネートされたお方としても知られています。イギリス出身でアルフレッド・ヒッチコック監督の「岩窟の野獣」(1939年)、「レベッカ」(1940年)、「海外特派員」(1940年)、「断崖」(1941年)、「逃走迷路」(1942年)の脚本を担当。 マール・オベロンが主演したフィルム・ノワール「黒い河」(1944年)の脚本、「ハリーおじさんの悪夢」(1945年)、「殺人夜想曲」(1946年)や、スーザン・ヘイワード主演のフィルム・ノワール「私は殺さない」(1947年)などやはりミステリー、サスペンスを多く製作されています。

実質的な主役のエラ・レインズは、この映画に出演後、1944年に西部劇「拳銃の町」でジョン・ウェインと共演。ロバート・シオドマク監督作品では「容疑者」(1944年)、「ハリーおじさんの悪夢」(1945年)に出演。また、ジュールス・ダッシン監督の「真昼の暴動」(1947年)に出演。日本では劇場未公開ですが「狂った殺人計画」(1949年)では、殺されかけた主人公を助ける未亡人を好演していました。すこしきつめの美人さんでしたが、1950年代半ばには引退してしまいました。

スコットの友人役で怪しい男ジャックを演じたフランチャット・トーンはアメリカ合衆国の俳優。1930年代から1940年代にかけて主演男優として活躍。ジョーン・クロフォードの2番目の夫としても知られています。クロフォードとは7本の映画で共演しています。離婚していますが。1943年にビリー・ワイルダー監督の戦争サスペンス「熱砂の秘密」で主人公を演じています。また、「幻の女」(1944年)の同年にマール・オベロン主演のフィルム・ノワール「黒い河」に出演。オットー・プレミンジャー監督の社会派ドラマ「野望の系列」(1960年)では大統領を演じています。

性格派俳優のエリシャ・クック・Jrがドラマー役で登場。晩年まで多くの映画に登場。フィルム・ノワールなどのチンピラ、悪役が多く、「3階の見知らぬ男」(1940年)、「マルタの鷹」(1941年)、「黒い河」(1944年)、「三つ数えろ」(1946年)、「生まれながらの殺し屋」(1947年)、「ノックは無用」(1952年)ではモンローのおじさん役をやっていましたが、他にポランスキー監督の「ローズマリーの赤ちゃん」(1968年)にも登場しております。

まとめ

女を探して地獄行き

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