日本の法廷でも女性の下着を
「パンティ」と呼ぶそうです。
[原題]Anatomy of a Murder
[製作年]1959[製作国]アメリカ
[日本公開]1959
[監督・製作]オットー・プレミンジャー
[脚本]ウェンデル・メイズ
[原作]ロバート・トレイヴァー
[撮影]サム・リーヴィット
[音楽]デューク・エリントン(クラブで連弾シーン有り)
[タイトルデザイン]ソウル・バス
[上映時間]160
主な登場人物
ポール・ビーグラー(ジェームズ・スチュワート):
愛称ポリー、元エリート検事だったが検事局を追われ弁護士を開業したが、大した依頼もなく趣味三昧の日々を送っている。
ローラ・マニオン(リー・レミック):
マニオン夫人。美人だがやや軽薄そうな女性。クウィルにレイプされたと主張している。
その他の登場人物
フレデリック・マニオン(ベン・ギャザラ): 陸軍中尉。ローラの夫。クウィルを殺害する。
クロード・ダンサー検察官(ジョージ・C・スコット):切れ者と評判の検察官
パーネル・マッカーシー(アーサー・オコンネル): アル中弁護士。ポールの友人。
メアリー・ピラント(キャスリン・グラント):クウィルの店の支配人。実は…
マイダ・ラトリッジ(イヴ・アーデン):ポールの秘書
マシュー・スミス(オーソン・ビーン):マニオンを精神鑑定する医師
アルフォンス・パケット(マーレイ・ハミルトン):クウィルのバーのバーテン
裁判官(ジョセフ・N・ウェルチ):実際の弁護士
あらすじ
検事局を追われ弁護士をしているが依頼も少ないポールは、釣りやジャズ三昧の生活を送っていた。釣りから戻ったポールは部屋のメモを見てマニオン夫人に電話をかけるが不在だと告げられてしまう。友人の飲んだくれ弁護士パーネルが訪れ、酒を飲みながら自分のようになるなと叱咤激励する。依頼人のマニオン夫人から折り返しの電話がかかり、パーネルがその依頼は受けろと電話口で捲し立てた。3日前に陸軍中尉であるマニオン夫人の夫は、妻がクバーニー・ウィルと言う男にレイプされたと知り、クウィルの家に乗り込み銃弾を5発発砲し殺害したという。翌日秘書のマイダが訪れポールの世話をしながら給料が払われていないと小言を言う。マニオン夫人のローラに会いに出向くとサングラスに犬を連れてやや軽薄そうな美人が立っていた。ポールは夫人と共に拘置所までマニオンの面会に訪れた。ポールがローラにサングラスを取るように話すと目にアザついていた。ローラに後で事務所に来るよう伝え先に帰らせ、マニオンと面会したポール。マニオンは検事から最近弁護士になったポールを心配したが、ポールは殺人を犯した君を無罪にできる人間はいないだろうとはっきり伝え何か役に立つことがあるかも知れないと述べた。マニオンは朝鮮戦争で活躍した軍人で28歳。離婚歴があり前の妻とは暴力で一方的に離婚を言い渡されたが、実は妻の浮気だったという。4年前に同じ部隊だった男の妻ローラと知り合い彼女の離婚後に再婚したという。事件当日トレーラーに戻ってきたローラにクウィルにレイプされたと言われ、その1時間後にクウィルを殺害したと話す。昼休みにパーネルと食事をした後戻り、簡潔に次のことをマニオンに告げる。殺人の弁護には4通りの方法がある。第一に殺人ではなく自殺や事故 第二に真犯人は別にいる 第三に正当防衛である 第四に殺人は免責である と伝える。ポールは警察に通報もせず被害から1時間も経ってから殺害した為正当防衛は通用しないだろうと述べるが、レイプされたことに対する陪審員への同情を買うべきだと戦略を伝える。マニオンは怒りで自分を見失ったと正直に伝えるがポールはそれではダメだと一旦戻っていった。事務所に戻り秘書に夫人の印象を聞いてみると、ふしだらで男にとって扱いやすい女と一刀両断。部屋に入るとソファに横たわってレコードを聴いているローラがいた。馴れ馴れしい感じのローラはタバコとビールを要求し、事件当日のあらましを話し始める。
どんな映画?
この映画は実在のミシガン州最高裁判所の判事だったロバート・トレイヴァー(ペンネーム)の小説に基づいて、オットー・プレミンジャーが監督・製作し映画化した法廷映画です。
検事局を追われシガナイ弁護士になったポール
趣味に没頭する中、ある殺人事件の依頼を受けます。
絶対受けろと言うのはポールの友人で
すっかり飲んだくれ弁護士で仕事のないパーネル
事件は、妻がクウィルという男にレイプされ 逆上した陸軍中尉のマニオンが男を
撃ち殺したと言うもの
マニオンの妻ローラは中々魅力的ですがちょっとユルそう。
パンツスタイルで体のラインがよく出る格好
この格好嫌い?というローラに
思わず好きと言ってしまうポール
当日はどんな格好だったかと聞かれセーターにスカート、
スリップとパンティとブラだったと答えます。
ガードルを履いていたのか?と ポールが尋ねると
「あんなもの私が履くと思う?」
知るかっちゅーねん!!
しかも事件当日クウィルに破かれたというパンティは
なぜか行方不明に!?
パンティは一体何処へ??!!
ん?
こんな映画だったっけ??
下着を何て言う?という相談をする裁判長
検事「妻はパンティと言っています」
ポール「自分は独身なんで」
ダンサー検察官「フランス語だともっと際どいですよ」
裁判長「じゃあパンティで!」
原作の「Anatomy of a Murder」は原作者のロバート・ロレイヴァーが弁護士時代に実際に弁護を担当した事件を元に書かれたもので、その中で弁護に使用されたのが1886年の判例でした。
「抑え難い衝動により犯行を自覚しつつもそれを犯した場合その反抗者は刑罰を免れるものとする」
妻がレイプされたと知った1時間後に相手を殺害していることから、正当防衛は適用されず、故殺を証明するためマニオンの精神鑑定が行われます。
故殺とは一時の激情によって殺意を生じ人を殺すことで誅殺(計画的に殺人を犯すこと)と区別されています。
また、ローラの診断をした医師によってレイプの事実が確認できないとされていましたが、レイプがあったという実証をする中で、物的証拠である 「パンティ」がポイントになってきます。 公判中、裁判長が弁護人と検察官を呼び下着を何と呼ぶかという相談して結局「パンティ」と決めるシーンがあります。
この映画には、実在の著名な弁護士ジョセフ・N・ウェルチが裁判官として登場しています。ウェルチ弁護士は1954年にテレビ放映されたマッカーシー公聴会で、陸軍の弁護士としてマッカーシズムを終焉に導いた人物として知られています。この映画が公開された15ヶ月後、70歳になる直前にお亡くなりになっています。
70年以上も前の判例を調べ上げ弁護を進めていき、陪審員への心理作戦、印象操作、物的証拠の発見と、被害者が浮かばれないという懸念はありますが、法廷ドラマとしての重厚感も残しつつも、エンターテイメント性も兼ねている見応えのある映画です。
スタッフ・キャスト
ちょっとユルそうなマニオン夫人を演じたのは女優のリー・レミック。大きな垂れ目に可愛らしい顔が印象的な女優さんですが、1957年にエリア・カザン監督の「群衆の中の一つの顔」でバンドトワリング・ガールで映画デビュー。1959年に出演した「或る殺人」ではゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされ、1961年にはトニー・リチャードソン監督、ウィリアム・フォークナー原作の問題作「サンクチュアリ」で主要人物である軽薄令嬢を演じています。1962年にブレイク・エドワード監督、ジャック・レモンと共演した「酒とバラの日々」に出演し、アルコールにトコトンまでハマっていく主婦を熱演しその演技を高く評価されました。同年にブレイク・エドワーズ監督、グレン・フォード出演のサスペンス映画「追跡」で妹を誘拐される銀行員を演じてます。何となく軽そうな女性というイメージがあるのか1968年に出演したフランク・シナトラ主演の刑事シリーズ「刑事」では、主演のシナトラの色情狂(?)の妻を演じ、1970年にロッド・スタイガーの異色殺人映画「殺しの接吻」でも軽そうな女性を演じています。また、1976年に出演したリチャード・ドナー監督のオカルト映画の金字塔「オーメン」では、ダミアンの養母を演じ、大きな瞳のどアップが印象的でした。1978年にはイギリス・フランス合作のスリラー映画「恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチ」で女医さんの役で出演されていました。
被告人の陸軍中尉を演じたベン・ギャザラはアメリカ合衆国の俳優。すでにブロードウェイで成功を収めていましたが、映画出演二本目の「或る殺人」(1959年)で注目される存在となりました。友人関係であったというジョン・カサヴェテス監督作品は常連で「ハズバンズ」(1970年)、「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」(1976年)、「オープニング・ナイト」(1978年)などに出演されています。また晩年からは老齢の脇役として多くの作品に登場していました。
主人公ポールの友人弁護士を演じたのはアーサー・オコンネル。1941年にオーソン・ウェルズ監督の「市民ケーン」にラストにちょこっと出演。1955年の「ピクニック」ではブロードウェイで演じた同じ役で出演。この役でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされています。また、「或る殺人」での酔っ払い弁護士でもアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。その他「ミクロの決死圏」(1966年)や「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年)などにも出演されています。
検察官として出演したのが鬼才の名優ジョージ・C・スコット。1959年に出演したこの映画「或る殺人」で押しの強い検察官を演じアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。1961年にはロバート・ロッセン監督の「ハスラー」で主演のポール・ニューマンとビリヤード対決でその演技を高く評価されました。またこちらでもアカデミー賞助演男優賞にノミネートされています。1964年に出演した映画で、代表作の一つがスタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情 ホニャララー」でタージドソン将軍を演じ一度見ると忘れ難いインパクトを残されています。1970年の「パットン大戦車軍団」でアカデミー賞主演男優賞を受賞していますが受賞を拒否したことでも有名です。後年にはホラー映画やサスペンス映画の出演も多く、「イルカの日」(1973年)、「ヒンデンブルグ」(1975年)、「ハードコアの夜」(1979年)、「チェンジリング」(1980年)、「炎の少女チャーリー」(1984年)などに出演されています。
事件の鍵を握るクウィルの関係者メアリーを演じたキャスリン・グラントは1957年にビング・クロスビーと結婚。翌年には特撮をレイ・リー・ハウゼンが担当した「シンドバッド七回目の航海」(1958年)でお姫様役を演じています。
まとめ
大真面目に「パンティ」で地獄行き
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