復讐相手をリストアップして
一人一人消していくという
あまり経験したくない人生イペント。
[原題] The Bride Wore Black
仏:La mariée était en noir
[製作年]1968[製作国]フランス・イタリア
[日本公開]1968
[監督・脚本]フランソワ・トリュフォー
[脚本]ジャン=ルイ・リシャール
[原作]コーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)
[撮影]ラウル・クタール
[音楽]バーナード・ハーマン
[上映時間]107
主な登場人物
ジュリー・コレール(ジャンヌ・モロー):
結婚式で幼馴染の夫を銃殺されてしまった花嫁。復讐を誓い、5年かけて関わった五人を探し当てる。
その他の登場人物
ブリス(クロード・リーシュ):一人目
コラル(ミシェル・ブーケ):二人目
クレモン・モラール(ミシェル・ロンスダール):三人目、子持ち
フェルギュス(シャルル・デネル):四人目、画家
デルヴォー(ダニエル・ブーランジェ): 五人目実際に銃を撃った男、刑務所の中
ダヴィッド(セルジュ・ルソー):ジュリーの夫
コリー(ジャン=クロード・ブリアリ):ブリス、フェルギュスと共通の友人
ベッケル先生(アレクサンドラ・スチュワルト):モラールの息子クッキーの先生
あらすじ
喪服を着て悲しみに暮れるジュリーは、思わず窓から飛び降りそうになる。自殺を止められたジュリーは、荷物をまとめて家を出る。どこに行くのか家族に告げることはなかった。その後、真っ白なドレスに身を包んだジュリーは、ブリスと言う男の高層マンションの前に立っていた。管理人が応対するが、ブリスは不在だった。独身貴族で複数の女性と遊んでいたブリスは、全ての女性を精算して婚約者と結婚することを決めていたが、管理人から聞いた自分を訪ねてきた美人に興味があると友人のコレーに話す。ブリスの部屋で盛大に婚約パーティーが行われていたが、そこにイブニングドレスを身に纏ったジュリーが立っていた。ブリスはジュリーをバルコニーに誘い名前を教えてほしいと尋ねるが、彼女は答えない。ジュリーの白いチーフが風に飛ばされ引っかかってしまい、彼女はブリスに取って欲しいと頼む。ブリスがバルコニーの柵を跨いだ瞬間、ジュリーは「ジュリー・コレールよ」と言ってブリスを突き飛ばした。高層階から突き飛ばされたブリスは地面に叩きつけられ、ジュリーは足早にその場を立ち去った。次にジュリーが飛行機に乗って向かったのは、独身のコラルのアパートだった。コラルが帰宅すると郵便受にコンサートのチケットが入っており、出かけて行った。桟敷席に案内されたコラルが席に座ると、白いマントに黒いドレスのジュリーが入ってきた。その後二人で歩きながら、名前を尋ねるコラルに明日の夜会った時に話すと伝えて別れたジュリー。翌日コラルの部屋で会う約束をし、コラルはウキウキと部屋を整えていた。一方のジュリーは酒瓶の中に注射器で薬物を仕込んでいた。酒をコラルに渡し乾杯の後、コラルは酒を飲みジュリーは飲まなかった。ジュリーがレコードをかけ踊る姿を見つめるコラルは、次第に薬が効いて朦朧としていった。ジュリーはコラルに、自分と会ったことがあるはずだと。あの日ジュリーの結婚式で新郎が凶弾に倒れたのだ。
どんな映画?
1940年に発表されたコーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)の小説を、フランソワ・リュフォー監督が映画化。ジャンヌ・モローをヒロインにした復讐劇となります。
結婚式の真っ最中に
最愛の新郎を銃殺されたジュリー
自殺を止められた彼女は
固く心の誓うのでした。
全員ぶっ殺す!
数年後突如現れたジュリー
白いイブニングドレスに巻き毛を束ね
人目につく出立ち。
彼女はブリスの婚約パーティーに。
女好きのブリスはすぐさま
ジュリーに声をかけます。
名前は?と尋ねるブリスに
何も答えないジュリー。
ベランダで二人っきりになり
「ジュリー・コレールよ!」
と言ってブリスを高層マンションの
ベランダからドーンと突き飛ばします。
一人目の殺害に成功したジュリー
続いて二人目の元に向かうのですが…
シーッ
黒い服と白い服しか身につけず、終始への字口のジャンヌ・モロー。これでもかと言うくらいクローズアップされるジャンヌ・モローの脚。さすが脚フェチのトリュフォー監督の面目躍如といったところでしょうか。惜しむらくはモロー様のお姿。当時40歳のジャンヌ・モロー、脚はまだまだ綺麗でしたが、二の腕の太さや上半身の中年感、お顔の皺が出てしまっているお年頃。せめて「突然炎のごとく」(1968年)の頃くらいの若さだったらなーと思わずにはおれません。さらに残念なところを述べるならカラーではなく、モノクロ映画だったらもう少し黒と白のコントラストが出て良かったかも。モロー様ももっと美しく撮れていたかも。 トリュフォー監督自身も失敗と語っていたように公開当時の評価は芳しくなかったそうです。ただ作品自体のファンは多く、現在では人気のある作品です。
この映画は、アルフレッド・ヒッチコック監督の「裏窓」(1954年)や、ロバート・シオドマク監督の「幻の女」(1944年)などの原作者として知られるコーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)の小説を原作としていますが、原作にある皮肉なオチなどは採用されておりません。
また、この原作小説に影響を受けて「五瓣の椿」を書いたのは、日本の山本周五郎。
同様の題材で美人の復讐劇と言えば、小池一夫原作、上村一夫作画の劇画「修羅雪姫」。
「修羅雪姫」にインスパイアされたのがクエンティン・タランティーノの「キル・ビル」(2003年)とされていて、タランティーノ自身はこのトリュフォーの「黒衣の花嫁」は見ていないとおっしゃっているそうですが、国籍時代を問わず、美人の殺人者って、飯ウマな題材ですね♪
ちなみに、ジャンヌ・モローの衣装は、ピエール・カルダンで一時期同棲されていたそうです。
スタッフ・キャスト
事件解決の鍵を握るコリーを演じたのはフランスの俳優ジャン=クロード・ブリアリ。ノンクレジットですが、1958年にルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」に出演。同年にクロード・シャブロル監督の「美しきセルジュ」で、肺病を患った青年を演じています。翌年の1959年に同じくクロード・シャブロルの「いとこ同士」で、パリに住む遊び人の従兄を演じています。また同年にはトリュフォー監督の「大人は判ってくれない」にも通りの男として出演。1961年にはジャン=リュック・ゴダール監督の「女は女である」に主演。その後も多くの作品に出演。「黒衣の花嫁」に出演した後1970年にエリック・ロメール監督の脚フェチ映画「クレールの膝」にも出演しています。また、1974年にルイス・ブニュエル監督の「自由の幻想」や、1981年にクロード・ルルーシュ監督の「愛と哀しみのボレロ」など巨匠、名匠、鬼才に愛された俳優さんでした。
二人目の犠牲者、独身中年男コラルを演じたのはミシェル・ブーケ。フランス映画界で長く活躍。1948年にアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の「情婦マノン」にちょこっと出演。1968年にクロード・シャブロル監督の「不貞の女」で、サレ夫役で出演。フランソワ・トリュフォー監督の「暗くなるまでこの恋を」(1969年)、ジャック・ドレー監督の「ボルサリーノ」(1970年)、ジョゼ・ジョヴァンニ監督の「暗黒街のふたり」(1973年)などに出演。1991年には初老に突入してから大役を演じたジャコ・ヴァン・ドルマル監督の「トト・ザ・ヒーロー」ではその存在感を知らしめました。
五人目の犠牲者のハゲを演じたのは、フランスの作家・脚本家のダニエル・ブーランジェ。脚本家としては1964年のジャン=ポール・ベルモンドの主演作「リオの男」で、アカデミー賞脚本賞にノミネート。その後も「カトマンズの男」(1965年)や、フィリップ・ド・ブロカ監督の「まぼろしの市街戦」(1966年)、オムニパスホラー映画「世にも怪奇な物語」(1967年)のルイ・マル監督のパートを担当されています。また、その強面な風貌を活かし、俳優としてジャン=リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」(1960年)で刑事役、クロード・ルルーシュ監督の「マイ・ラブ」(1974年)などに出演しています。
四人目の犠牲者、人気画家を演じたシャルル・デネルはフランス人俳優。アクの強い風貌で多くの映画に出演。1963年のクロード・シャブロル監督の「青ひげ」で殺人鬼のアンリ・デジレを演じています。また、フランソワ・トリュフォー監督作では「私のように美しい娘」(1972年)や、「恋愛日記」(1977年)などに出演しています。
まとめ
花嫁は殺人者で地獄行き
コメント