オリエント急行で乾杯!「オリエント急行殺人事件」(1974年)

ミステリー

寝台特急は好きですが殺人事件は困ります。

[原題]Murder on the Orient Express
[製作年]1974 [製作国]イギリス・アメリカ
[日本公開]1975
[監督]シドニー・ルメット
[原作]アガサ・クリスティ
[脚本]ポール・デーン
[製作]ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン
[撮影]ジェフリー・アンスワース
[編集]アン・V・コーツ
[音楽]リチャード・ロドニー・ベネット
[上映時間]128

主な登場人物

エルキュール・ポワロ(アルバート・フィニー):
灰色の脳細胞を持つ著名な探偵。ベルギー人。たまたま乗り合わせたオリエント急行で殺人事件に出くわす。

ラチェット・ロバーツ(リチャード・ウィドマーク):
アメリカの実業家だという被害者。寝台車の部屋のベッドで12箇所刺され殺害されていた。

ハリエット・ベリンダ・ハッバード夫人(ローレン・バコール):
口うるさいアメリカ人中年女性。

その他の登場人物

グレタ・オルソン(イングリッド・バーグマン):スウェーデン人宣教師の中年女性
ヘクター・マックイーン(アンソニー・パーキンス):ラチェットの通訳兼秘書
ベドウズ(ジョン・ギールグッド):被害者ラチェットの執事
アーバスノット大佐(ショーン・コネリー):40代のイギリス人軍人
メアリー・デベンハム(ヴァネッサ・レッドグレイヴ):若いイギリス人女性、家庭教師
ナタリア・ドラゴミノフ侯爵夫人(ウェンディ・ヒラー):フランスに帰化したロシア人
ヒルデガルド・シュミット(レイチェル・ロバーツ):侯爵夫人の女中
ピエール・ミッシェル車掌(ジャン=ピエール・カッセル):フランス人、ベテラン車掌
サイラス・ハードマン(コリン・ブレイクリー):アメリカ人。ピンカートン社の私立探偵
ビアンキ(マーティン・バルサム):国際寝台車会社の重役
コンスタンティン医師(ジョージ・クールリス):ギリシャ人医師
エレナ・アンドレニイ・グルワルド伯爵夫人(ジャクリーン・ビセット):若く美しい夫人
ルドルフ・アンドレニイ伯爵(マイケル・ヨーク):ハンガリーの外交官

あらすじ

1930年ニューヨーク州ロングアイランドでアームストロング大佐の愛娘デイジーが誘拐された。若いメイドのポーレットが犯人と内通しているのではないかと疑われた。大捜査網にも関わらず犯人の主犯格は特定されず身代金は奪われデイジーの遺体が発見されるという痛ましい事件だった。その5年後、探偵のエルキュール・ポワレはトルコのイスタンブールからオリエント急行接続のフェリーに乗り込んでいた。そのフェリーの中でミス・デベンハムとアーバスノット大佐が落ち合っていた。ポワロは船の中で鉄道会社の重役で友人であるビアンキと再会し同じくオリエント急行でロンドンに戻ると喜びあった。オリエント急行に貴族や金持ちなど次々に乗り込み、この日は特に混んでおりポワロはビアンキの口利きで無理に部屋を用意してもらった。ポワロはアメリカ人実業家ラチェットの秘書でアメリカ人青年ヘクターと同室になり、列車は出発した。ポワロが食堂車で食事をしているとラチェットに声をかけられ、自分は何者かに脅迫されている調べてほしいとポワロに依頼してくるが、金に興味がないポワロは面白くない依頼だと断る。その夜すっかり寝支度をして休んでいたポワロはラチェットの悲鳴を聞き起きて扉の外を出ると、ラチェットがドア越しに悪夢を見たと答えるのを聞き、不吉な予感を隠せなかった。再び寝入ったポワロだったが、今度はおしゃべりのアメリカ人ハッバード夫人の怒鳴り声で起こされる。翌朝ラチェットの執事ベドウズが彼の部屋に薬を届けノックするが返答がない。ポワロも異変に気づきドアをこじ開けると、ラチェットが口から血を流しベッドの中で死亡していた。ちょうど列車は雪の中立ち往生してしまっていた。コンスタンティン医師を呼び死因を調べるが、まず毒殺を疑い毛布をめくると12箇所の刺し傷があった。パジャマの胸ポケットに懐中時計があり、恐らく死亡時刻を指していた。ビアンキはポワロに犯人はこの列車の中にいると事件解決の依頼をするのだった。

どんな映画?

1934年に発表されたアガサ・クリスティ原作の「オリエント急行の殺人」を豪華オールキャストで初映画化。監督はアメリカの社会派映画監督シドニー・ルメット。公開当時豪華オールキャストの出演陣が話題になり映画はヒットしました。

イスタンブールで事件を解決した
探偵エルキュール・ポワロ
ピタピタにセットした髪によく整えた髭
潔癖症のベルギー人です。

イギリスに帰るため寝台列車オリエント急行に
乗り込みます。
この日は何故か満室でしたが
旧知の仲の寝台車会社の重役ビアンキと
乗り合わせ口を聞いてもらえました。

食堂車で食事をしていると声をかけてきたのは
何かいかにも悪人顔のアメリカ人ラチェット
彼は何者かに脅迫されているらしく
ポワロに捜査依頼をしますが本人にいけ好かない
何かを感じたポワロは興味を示しません。

そして事件が起こるのですが…

出発するオリエント急行
トルコ、イスタンブールからパリまでのヨーロッパを走行する長距離寝台列車です。

ラチェットが殺され、列車は雪の為立ち往生。

アガサ・クリスティ原作のエルキュール・ポワロものの中でも特に人気のある「オリエント急行の殺人」は日本でも発表された翌年の1935年に「十二の刺傷」として翻訳されています。
この小説は、1932年に起こったチャールズ・リンドバーグの愛児誘拐事件を参考にしていると言われています。リンドバーグと言えば、ジェームズ・スチュワートが「翼よ、あれが巴里の灯だ!」(1957年)でリンドバーグを演じ、題材となった大西洋単独無着陸飛行を達成した人物として広く知られています。その英雄の幼い長男が誘拐され身代金を奪われた挙げ句殺害されるという事件が発生しました。犯人は捕まり刑が執行されましたが現在でも諸説あり謎の多い事件とされています。この事件とオリエント急行が雪のために立ち往生した経験を生かして生まれたと言われています。
犯人は必ずこの中にいる!
という所謂クローズドサークルものなのですが、事件そのものというよりも人間ドラマに焦点が当てられております。また、ポワロの寝る時には髭マスクに手袋や、グルワルド伯爵夫人役のジャクリーン・ビセットの衣装や、ドラゴミノフ侯爵夫人役のウェンディ・ヒラーの白塗り化粧などファッションも見どころの一つです。

2017年にケネス・ブラナーが監督兼主演のエルキュール・ポワロ役で再映画化しています。また、2022年には再び「ナイル殺人事件」でポワロ映画を公開予定です。

スタッフ・キャスト

今は無きイギリスの映画スタジオ・配給会社EMIフィルムズが破格の制作費をかけて着手。イギリスのプロデューサーで、男爵であるジョン・ブラボーン卿が映画化に乗り気で無かった原作者のアガサ・クリスティを説得し映画化権を獲得、この映画の成功を受けて同じくプロデューサーのリチャード・グッドウィンと共にアガサ・クリスティ原作の「ナイル殺人事件」(1978年)、「クリスタル殺人事件」(1980年)、「地中海殺人事件」(1982年)と次々に製作しました。また、ブラボーン卿とグッドウィンは1985年にデヴィッド・リーン監督で「インドへの道」も手掛けています。

脚本のポール・デーンはイギリスの脚本家。1950年にロイ・ポールティング監督の爆弾サスペンス「戦慄の七日間」の原案をジェームズ・バーナードと共に担当。この映画でアカデミー賞原案賞を獲得しています。1965年にジョン・ル・カレ原作のスパイ映画「寒い国から帰ったスパイ」の脚本を担当。1967年のアナトール・リトヴァク監督で映画化された「将軍たちの夜」ではフランスの小説家ジョゼフ・ケッセルと共に脚本を担当しております。また、「猿の惑星」シリーズ映画の脚本家としても知られています。

豪華出演陣

アルバート・フィニー

主演の名探偵エルキュール・ポワロを演じたイギリス人俳優。1963年にトニー・リチャードソン監督の「トム・ジョーンズの華麗な冒険」でトム・ジョーンズを演じ、1967年にはスタンリー・ドーネン監督の「いつも2人で」でオードリー・ヘップバーンと共演しています。舞台出身の俳優さんだけあって1983年にピーター・イェーツ監督の舞台劇「ドレッサー」で、年老いたかつての名優を演じアカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。シドニー・ルメット監督とは2007年の「その土曜日。7時58分」でフィリップ・シーモア・ホフマンとイーサン・ホークが演じる兄弟の父親役を演じていました。「オリエント急行殺人事件」ではまだ38歳だったにも関わらずポワロを演じ高評価を得ましたが、残念ながらエルキュール・ポワロを演じたのはこの映画一回きりでした。

リチャード・ウィドマーク

アメリカ合衆国の俳優。フィルム・ノワールから西部劇、悪役からいい人役などなんでもこなす名優。70年代では刑事マディガン役を代表するような強面の刑事役や、大統領役、会社役員などが多かったです。

ローレン・バコール

押しも押されもせぬアメリカの名優ハンフリー・ボガート夫人。往年のハリウッド黄金期を代表する女優。この映画のハッバード夫人役は大変ハマっていました。

イングリッド・バーグマン

スウェーデンが生んだ大女優。この映画の地味な役が評価され(?)アカデミー賞助演女優賞を獲得しています。

アンソニー・パーキンス

サイコ」(1960年)で一躍有名になったアメリカ人俳優。かなりい年齢まで青年役を演じていました。この映画では「マザコンだから結婚出来ないと言うのか」というセリフが、ご本人の私生活の噂も相俟った自虐ネタのようで苦笑です。

ジョン・ギールグッド

イギリスの名優。シェイクスピア俳優と知られ、1936年ににはアルフレッド・ヒッチコック監督の「間諜最後の日」に主演しています。この映画ではかなり地味な役でしたが、重厚な存在感を発揮しています。

ショーン・コネリー

初代ジェームズ・ボンドと言えばこのお方。イギリス、スコットランド出身。昨年残念ながらお亡くなりになられてしまいました。

ヴァネッサ・レッドグレイヴ

イギリスの名優マイケル・レッドグレイヴの長女。役通りかなりの長身美人。

ウェンディ・ヒラー

イギリスのベテラン女優。1938年に「マイ・フェア・レディ」の原作となったジョージj・バーナード・ショーの戯曲の映画化「ピグマリオン」のイライザ役を演じたことで有名です。また、1958年に出演したデルバート・マン監督の群集劇「旅路」において、アカデミー賞助演女優賞を獲得しています。

レイチェル・ロバーツ

イギリス出身の女優。1963年にリンゼイ・アンダーソン監督の「孤独の報酬」や、1975年のピーター・ウィアー監督のオーストラリア映画「ピクニックatハンギング・ロック」などの出演で知られています。

ジャン=ピエール・カッセル

フランスを代表する俳優のお一人。俳優のヴァンサン・カッセルは息子さんです。

ジャクリーン・ビセット

イギリスの美人女優。1970年に「大空港」に出演、翌年にはヌードも披露した「シークレット」に出演。この映画の頃は本当にきれいでした!

マイケル・ヨーク

イギリス人俳優。1972年にボブ・フォッシー監督の「キャバレー」にライザ・ミネリと出演。「三銃士」シリーズではダルタニアンを演じています。またビリー・ワイルダー監督の「悲愁」(1978年)では本人役で出演しています。

まとめ

殺していい人間はいないが 死んだほうがいい人間はいるかもで地獄行き

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