双子のパラドックス「暗い鏡」

フィルムノワール

同じように生まれても
同じ風には育たない姉妹の不思議。

[原題]The dark mirror
[製作年]1946[製作国]アメリカ
[日本公開]1948
[監督]ロバート・シオドマク
[脚本・製作]ナナリー・ジョンソン
[原案]ウラジミール・ポズナー
[編集]アーネスト・ニムス
[撮影]ミルトン・クラスナー
[音楽]ディミトリ・ティオムキン
[上映時間]85

主な登場人物

ルース・コリンズ/テリー・コリンズ(オリヴィア・デ・ハヴィランド):
美人双子。右からルース、テリー。ほとんど同じ外見をしているが性格は正反対。

スティーヴンソン警部補(トーマス・ミッチェル):
ペラルタ医師殺害の担当警部補。双子のどちらかが犯人だと確信する。

スコット・エリオット博士(リュー・エアーズ):
殺された医師と同じ医療ビルの精神科医。双子研究の専門家。

その他の登場人物

ラスティ(リチャード・ロング):医療ビルのベルボーイ。

あらすじ

ある晩ペラルタ医師が自宅で殺害されていた。部屋は荒れ、鏡にヒビが入り医師は背中をナイフで刺され倒れていた。捜査に当たったスティーヴンソン警部補は医師の周囲の人物たちに事情聴取することに。彼らは皆、医院に出入りするかなりきれいな若い女を目撃していた。医師の秘書によると、その女はテリー・コリンズと言い、その日医師は彼女とディナーの約束をしプロポーズする予定だったという。彼女は医院と同じビルにある売店で働いているということで、2人の証人を連れて向かうことに。証人たちはそれぞれ売店で客のフリをしてテリーを確認、間違いなく彼女だと言う。確信したスティーヴンソン警部補はテリーに近づき昨晩の行動を聞き取る。テリーは訝しながらも昨晩はコンサートが行われていた公園を一人で散歩し、11時半頃帰宅したという。その際精肉屋の旦那や、警察官と言葉を交わし、スーパーで働くナットに家まで送ってもらったと話す。スティーヴンソン警部補は彼女にペラルタ医師が殺されたと告げるとショックのあまり失神してしまう。それをエリオット博士が抱きかかえ自分の診療室に連れて行った。スティーヴンソン警部補が3人の証人に確認したところ皆確かに昨晩9時から11時半頃一緒にいたと証言し、彼女が7キロ離れた現場で犯行に及ぶことは不可能だった。結局逮捕には至らなかったが、釈然としないスティーヴンソン警部補はテリーの自宅を訪れる。出迎えたテリーはガウン姿で顔色はいいようだった。アリバイについてのらりくらりとかわすテリーに、スティーヴンソン警部補は彼女が左利きだと気づく。売店では右利きだったはずだと言う警部補に、テリーはなるべく右を使うようにしていると答える。続けてスティーヴンソン警部補は、犯人は左利きで医師の心臓を一突きで殺害したと述べた。警部補はテリーに何としてもアリバイを崩すと宣言。その瞬間奥の部屋からテリーを呼ぶ声がする。警部補が扉を開けるとそこにいたのは彼女と同じ姿形をし、同じガウンを着た双子の姉ルースだった。

どんな映画?

7月25日に往年の大女優オリヴィア・デ・ハヴィランドが104歳でお亡くなりになられました。
妹のジョーン・フォンテインは2013年に96歳で先に亡くなられていますが長寿姉妹には変わりないですね。

年子の二人姉妹は共に東京で生まれ、姉妹揃ってアカデミー賞主演女優賞受賞者、
そして仲があまり良くなかったことが知られています。

んでこの映画はオリヴィア・デ・ハヴィランドが一人二役で双子の美人姉妹を演じており、
一人は異常犯罪者というサイコスリラーです。

ある医師が背中をナイフで刺され
殺害されていました。
彼には交際相手がおり、かなりの美人だったと!

医師の秘書はその女はテリー・コリンズと言い
彼女のコロコロ変わる態度に振り回されていたと
言うのです。

しかしそこは美人は美人!

医師は殺害された晩テリーにプロポーズする予定だったと言います。

担当の刑事スティーヴンソン警部補はテリーが務めているという医療ビルの売店に向かいます。

テリーは愛想が良く物腰の柔らかい美人。非常にモテる模様。
昨晩のアリバイを尋ねると散歩をしていたと言い複数人の証人もいました。

彼女には犯行は不可能。
しかし、スティーブンソン警部補は
彼女が事件に関わっていると確信。

彼女の部屋の部屋に行くともう一人同じガウンを着た彼女が
何と彼女は

双子でした❤️

都合の良い時に休むため入れ替わっていると言うのです。
経済的なことを考えると非効率な気もしますが、一卵性双生児の彼女らは素人目には全く区別がつかない模様。

ですが、顔はそっくりでも中身は全く対照的で
姉のルースは内気で精神的に不安定
妹のテリーは気が強く頭の回転が早い。

スティーブンソン警部補は二人の逮捕状を取るのですが…

サイコスリラーのジャンルに属するこの映画は双子を題材にした当時かなり衝撃的なものだったと思われます。
美人双子の一人が異常犯罪者だからです。こう言った映画好きにはたまらない題材です。
そして、この映画の中では、紙にインクを垂らし折り込んだ画が何に見えるかのロールシャッハ・テストが行われています。
これにより双子研究の精神科医エリオット博士により、双子がの性質が明らかになります。
そして、博士は映画の中で姉妹の確執についてこう言及しています。

女の敵は女であって、周囲の態度に差が生じることにより嫉妬心ができる。ただ普通の人間は負けたことに対しても、
環境が違うからと自分の嫉妬心に折り合いをつけることができる、しかしながら姉妹の場合環境が同じなのに
対応の差が出てしまうことに対して、諦めがつかない。
だから姉妹には激しい憎悪が生まれてしまうのだと。

同じ親から生まれて、同じ家に育ちながら、どちらかが愛されてどちらかが愛されないと確執が生まれてしまうのかもしれません。
まして同性の姉妹なら尚更かも。

製作、脚本のナナリー・ジョンソンはその後「イヴの三つの顔」(1957年)で多重人格を扱った映画を監督しています。
また双子ネタはスリラー映画で良く題材にされており、ロバート・マリガン監督の「悪を呼ぶ少年」(1972年)、ブライアン・デ・パルマ監督の「悪魔のシスター」(1974年)、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「戦慄の絆」(1988年)などがあります。

スタッフ・キャスト

監督はや幻の女」(1944年) や「らせん階段」(1945年)などのフィルムノワールやサイコスリラーを得意とするロバート・シオドマク

主演の美人双子を演じたオリヴィア・デ・ハヴィランドは、「風と共に去りぬ」(1939年)のメラニー役で有名です。優しそうで可愛らしい雰囲気を持つ彼女にはぴったりの役どころでした。傲慢で強烈な性格のスカーレット・オハラと対照的に優しく良妻賢母と言った感じのメラニーはアシュレーと結婚し、スカーレットから反感を買いますが、メラニーの優しさに触れ友情を感じ始め、スカーレットに本当に愛しているのはレッド・バトラーだということを気付かせるのもメラニーでした。やっぱりメラニーの方が好感が持てます。
キャリアの初期は人気剣戟俳優のエロール・フリンの相手役としてお姫様や娘役が多かったのですが、「風と共に去りぬ」出演以後シリアスな役や難しい役にも挑戦。「暗い鏡」(1946年)では一人二役で性格の違う人物を使い分ける難しい役を演じきり高く評価されました。1948年には「蛇の穴」という精神病院を扱った初期の映画の一つでトラウマに悩まされる主婦を熱演しました。また、キャリア後半の1964年には「不意打ち」やロバート・アルドリッチ監督の「ふるえて眠れ」などに出演しています。
姉の華やかな容姿に比べて、やや地味目の整った美貌の妹ジョーン・フォンテインヒッチコック監督の「レベッカ」(1940年)に主演、翌年「断崖」(1941年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞。どちらも自分に自信がなくおどおどしているヒロイン像でしたが、ジョーン・フォンテインの何となく神経質そうな美貌とマッチしていました。姉妹と言えども対照的な二人は相容れないものがあったのかもしれません。

双子の捜査をするスティーブンソン警部補には名脇役のトーマス・ミッチェル。彼もまた「風と共に去りぬ」(1939年)でスカーレット・オハラの父親ジェラルド・オハラを演じた人物としても良く知られています。その強面の顔から悪役も多かったですが、アカデミー賞助演男優賞を獲得した「駅馬車」(1939年)での飲んだくれ医師など好感の持てる人物を演じるなど幅広い活躍をされています。

その他、「西部戦線異常なし」(1930年)に主演し注目されたリュー・エアーズがスコット・エリオット医師を、オーソン・ウェルズ監督の「ストレンジャー」(1946年)でロレッタ・ヤングの弟役で出演していたリチャード・ロングが脇で出演しております。

まとめ

美人双子で地獄行き

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