コロンボスタイル「罪と罰」(1935年)

犯罪

ドフトエフスキーは「カラマーゾフの兄弟」で
日本人のほとんどが挫折するはず。

[原題]Crime and Punishment
[製作年]1935[製作国]アメリカ
[日本公開]1936
[監督]ジョセフ・フォン・スタンバーグ
[原作]フョードル・ドフトエフスキー
[脚本]S・K・ローレン/ジョセフ・アンソニー
[撮影]ルシアン・バラード
[音楽]ルイス・シルヴァース/ルイス・シルヴァース
[上映時間]88

主な登場人物

ロデリック・ラスコーリニコフ(ピーター・ローレ):
大学を優秀な成績で卒業した若者。貧しさから質屋の老婆を手に掛ける。

ソーニャ(マリアン・マーシュ):
貧しい家族に尽くす若い娘。信仰心が強く清らかな心の持ち主。ラスコーリニコフに好意を抱く。

その他の登場人物

ポルフィーリー(警部):エドワード・アーノルド
アントニア・ラスコーリニコフ(ロデリックの妹):タラ・ビレル
ラスコーリニコフ夫人(ロデリックの母):エリザベス・リスドン
ドミトリー(ラスコーリニコフの友人):ロバート・アレン

あらすじ

優秀な成績で大学を卒業したラスコーリニコフは、母や妹アントニアにとって誇りだった。しかしその後のラスコーリニコフは犯罪研究を行い新聞に寄稿するが金にはならず貧しく、家賃にも困る有様だった。大家には家賃を払えないならすぐに出て行けと告げられてしまう。金に困ったラスコーリニコフは質屋に出向くと、先に若い女がおり、強欲な女店主にねぎられていた。ラスコーリニコフは卒業式に母から譲り受けた父の形見の時計を差し出すが、希望した金額は提示されなかったが仕方なく質に入れた。部屋から出ると先ほど金を受け取っていた女が、金を落としたと言って探していた。ラスコーリニコフは、マッチを擦って足元を照らしてやった。彼女にあんな強欲な質屋の婆さんは殺されて当然だと話すが、彼女はそんな話に同意しない。ラスコーリニコフはポケットから金を出しここにあったと彼女に示した。喜んだ女は礼を言い、自分にはまだ幼い弟や妹がおり、飲んだくれの父親に金を取られ困窮していると自分の身の上を話した。部屋に戻ったラスコーリニコフを母と妹が尋ねてきたが、一緒に連れてきた役人を紹介する。母親は、だいぶ年上のその役人と妹アントニアが婚約したと伝えた。ラスコーリニコフは、金の為に無礼な男と結婚するという妹も、それに媚びる母親にも納得がいかなかった。金さえあればと思い至ったラスコーリニコフは、火かき棒を隠し持ち質屋の婆さんの元に向かった。自分なら完全犯罪を成し遂げられる。と質屋に入り、質種だと渡した包みの紐を解くのに手こずっている間に老婆の頭目掛けて火かき棒を振り下ろした。店を物色しながら金目の物をポケットに入れていると、外で扉を叩く音が聞こえた。店にやって来た男たちが、部屋の様子がおかしいとすぐに管理人を呼びに行ってしまった。慌てたラスコーリニコフは裏口から出て行くが、その時盗品のイヤリングを落としてしまう。翌朝手袋をはめたままベッドで眠っていたラスコーリニコフの部屋に突然警察が訪れ署まで来るように言われてしまう。警察に行くと単に家賃滞納で訴えられていただけだった。そこに質屋の下にいたペンキ職人がが警察に連行され、必死で無実を訴えていた。それを見たラスコーリニコフは倒れ込んでしまった。

どんな映画?

ロシアの文豪フョードル・ドフトエフスキー原作の「罪と罰」をジョセフ・フォン・スタンバーグ 監督が、個性派俳優ピーター・ローレを主演に映画化。

大学を優秀な成績で卒業したラスコーリニコフ
母親も妹も誇りに思うほど。
ですが、元々貧しいラスコーリニコフは
就職先もなく論文もわずかなお金で
搾取されてしまいます。

お金がなく家賃も滞納してしまい
大家から督促の嵐
仕方なく父親の懐中時計を質に
入れることに。
強欲婆さんの質屋にはすでに
若い娘が来ており
大事な聖書を質種にしています。
ですが、足元を見られわずかな
お金を渡されただけでした。

それはラスコーリニコフも同様で
明らかに不当な金額で質に入れます。
質屋を出ると金を探しているさっきの
娘さんがいました。
ラスコーリニコフは
「あんな婆さんは殺されて当然」
と発言しますが娘は殺されていい
人間などいないと否定。
娘はソーニャといい家族のために
身を挺して働いていました。

部屋に戻ると妹がだいぶ年が
離れたおっさんを婚約者だと連れてきます。
無礼なおっさんの態度にキレた
ラスコーリニコフ

金がありゃーいいんだろ!
ってな訳で火かき棒を持って
質屋に向かうのですが…

ポルフィーリー警部に追い詰められるラスコーリニコフ

この映画は、ジョセフ・フォン・スタンバーグ が監督したものの作品の評価は悪く、主演のピーター・ローレの演技は賞賛されましたが、内容は最悪だと批判されました。 原作にある、選ばれた人間なら何をしても良い、殺されてもいい人間は存在するという当初にある確固たる信念の希薄さが殺人を衝動的なものにしてしまった上、現場に入って来たために、殺してしまった質屋の義妹の件が省かれており、罪のない人物を殺してしまった良心の呵責部分が弱くなってしまっています。 これらを差し引いた上で、いい雰囲気を醸し出していたのがポルフィーリー警部役のエドワード・アーノルド。大柄な体型を活かして悪役や権力者を多く演じています。また盲目の刑事ダンカン・マクレーンを演じたことでも知られています。 このエドワード・アーノルドが演じる警部が執拗にラスコーリニコフを追い詰める様はミステリー性が高く、刑事コロンボのモデルになったと言われています。

普通の感情を持った人間にとって
「殺人は肉体的にも精神的にも割に合わない」
につきますネ

ドフトエフスキーの「罪と罰」は、現在までに様々な国で映画化されており、同時期にフランスでピエール・シュナール監督で製作されています。

スタッフ・キャスト

主演のラスコーリニコフを演じたのはハンガリー出身の怪優ピーター・ローレ。1931年に主演した、フリッツ・ラング監督のドイツ時代の映画「M」で、殺人犯を演じ世界的に知られるようになり、その後イギリスでアルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画「暗殺者の家」(1934年)で不気味な悪役を演じています。翌年、アメリカのホラー映画「狂恋」(1935年)に出演し、ハリウッドに進出。1937年から1939年の間に謎の日本人諜報員Mr.MOTOを主人公にしたシリーズ映画に8本で、主演のMr.MOTOを演じています。1936年には再びアルフレッド・ヒッチコック監督の「間諜最後の日」に出演しています。また、1941年の「マルタの鷹」や、1942年の「カサブランカ」ではアクの強い脇役を演じています。1940年に出演した「3階の見知らぬ男」は、初期ノワール の隠れた作品として知られています。「カサブランカ」の同年に出演した「透明スパイ」(1942年)では、再び日本人のイキト男爵を演じています。1944年にはエリック・アンブラーの小説「ディミトリオスの棺」の映画化「仮面の男」で、探偵作家のディミトリオスを演じ、同年にはフランク・キャプラ監督のブラック・コメディ「毒薬と老嬢」に出演。その他、ホラー映画「五本指の野獣」(1946年)などに出演。その後、リチャード・フライシャー監督のディズニー映画「海底二万哩」(1954年)で、主人公の助手を演じ、マイケル・アンダーソン監督の「八十日間世界一周」(1956年)では日本人の船の客室係を演じています。1960年にテレビシリーズのヒッチコック劇場でスティーブ・マックイーン主演の伝説のエピソード「南から来た男」では、賭け好きの変態男を演じています。また、晩年近くにはロジャー・コーマン監督の「黒猫の怨霊」(1962年)や「忍者と悪女」(1963年)などにも出演されていました。

ヒロインのソーニャにトリニダード・トバコ出身でアメリカ国籍の女優マリアン・マーシュ。1930年の17歳の時にハワード・ヒューズ監督の「地獄の天使」に脇役で出演。1931年に公開されてた「悪魔スヴェンガリ」では、ヒロインの美少女トリルビーを演じ注目されます。また、1935年にボリス・カーロフ主演のゴシックホラー映画「古城の扉」にも出演。ゴシック・ホラーでのコスチュームプレイにぴったりな美しい女優さんでしたが、結婚後はほぼ引退し、その後は環境保護活動家として活躍されていたそうです。

まとめ

犯罪に手を染めて地獄行き

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