ナルシストの肖像「ドリアン・グレイの肖像」(1945年)

怪奇

ナルシストの男性ってある意味
尊敬します。

[原題]The Picture of Dorian Gray
[製作年]1945[製作国]アメリカ
[日本公開]1949
[監督・脚本]アルバート・リューイン
[原作]オスカー・ワイルド(1890年)
[製作]パンドロ・S・バーマン
[撮影]ハリー・ストランドリング
[音楽]ハーバート・ストサート
[上映時間]110

主な登場人物

ドリアン・グレイ(ハード・ハットフィールド):
貴族の美青年。自分の自画像に代わりに歳を取らせるという願いをかけてしまう。ヘンリー卿の扇状的な言葉を真に受けて、若さを謳歌し享楽的な生活を送る。

シビル・ヴェイン(アンジェラ・ランズベリー):
場末の歌手。ドリアンと婚約する。

その他の登場人物

ヘンリー・ウォットン(ジョージ・サンダース):貴族、バジルの友人
グラディス・ホールウォード(ドナ・リード):バジルの姪
デイヴィッド・ストーン(ピーター・ローフォード):グラディスの求婚相手
バジル・ホールウォード(ローウェル・ギルモア):ドリアンの肖像画を描く画家
ジェームズ・ヴェイン(リチャード・フレイザー):ジム、シビルの弟、ドリアンに復讐しようとする
アレン・キャンベル(ダグラス・ウォルトン):ドリアンの知人の科学者

あらすじ

1886年のロンドン。日々を無為に過ごすことが信条のヘンリー・ウォットン卿だったが、彼の趣味は自分の発言が相手にどのように影響を与えるのかを観察することだった。ヘンリー卿は友人である画家バジルが、最近秘密裏に作品を描いていることを聞き、探りに来た。無理矢理バジルのアトリエに入り込むと、バジルが美青年の肖像画を描いていた。ヘンリー卿はその肖像画を称賛したが、バジルは発表を躊躇していると答えた。モデルの青年はドリアン・グレイと言い、この絵はまるで生きているようで彼自身に悪い影響を与えるのではないかと懸念していた。バジルは特にヘンリー卿とドリアンを会わせたくなかったが、すでにドリアンが訪れピアノを弾いていた。絵を仕上げたいる間、ヘンリー卿はドリアンにいかに自身の若さを美しさが素晴らしく全てだ、人生を楽しみ欲望のままに、今を生きるべきという言葉に感銘を受けた。そこにバジルの妹の子供グラディスが入ってきた。グラディスは幼いながらもドリアンに夢中だった。絵は仕上がりその素晴らしさにドリアンは、自分が老いても絵は若いままかと述べ、絵が老いて自分が若いままだといいのにと続けた。ヘンリー卿は、猫の置物を指してその像はエジプトの神で、人の願いを叶える、安易に発言してはいけないと制すると、ドリアンがその通りになるのなら自分の魂も捧げると述べた。その後、ドリアンはロンドンの歓楽街に足を運ぶようになった。そこでドリアンは、場末の酒場で歌うシビルに目を奪われた。お互い惹かれ合った若い二人だったが、もうすぐオーストラリアに発つシビルの弟ジムは、姉の事を心配した。ドリアンはシビルと婚約したと伝え、ヘンリー卿とバジルはシビルの酒場に訪れた。ヘンリー卿はドリアンに、シビルが本当に純潔な女性かどうか試せと話す。彼女に肖像画を見せると言って家に呼び、帰ろうとしたら引き止め無理強いせず、別れが辛いと言う。彼女がそのまま帰れば貞淑な女性だと言うことになるのだと。バジルは話に乗るなと言うが、ドリアンは言われた通りシビルを家に呼び帰らないでくれと伝える。シビルは涙を流し帰ろうとする。しかし、思いとどまり再びドリアンの元に戻ってくる。すぐにドリアンはシビルに失望したと手紙を送り、婚約破棄と金を贈った。シビルを傷つけたことに少なからず良心の呵責を感じたドリアンは、自分の肖像画が何か卑しい笑みを浮かべたような表情に変わったように感じた。気のせいではないと考えたドリアンは、すぐさまシビルによりを戻そうと手紙を書いた。手紙を出す前にヘンリー卿が訪れ、シビルが死んだ事を伝えた。淡々と恐らく自死であろうと言うヘンリー卿。ショックを受けるドリアンに大したことではないし一緒にオペラに行こうと誘う。ドリアンを案じたバジルが彼の元を訪れると、ドリアンは人が変わったように冷徹な人間になっていた。ドリアンは、自分の絵を見せてほしいと頼むバジルを拒み、醜悪に変わった自分の肖像画を子供の頃に使っていた、最上階の部屋に移動させ幕で覆い隠した。

どんな映画?

この映画は、アイルランド出身の作家・詩人・劇作家として知られるオスカー・ワイルドが1890年に発表した小説「ドリアン・グレイの肖像」を、アメリカ合衆国の映画監督アルバート・リューインが1945年に映画化したものです。

画家のバジルは秘密裏に
ある 青年の肖像画を製作していました。
その肖像画を見ようと乗り込んできたのが
ヘンリー・ウォットン卿
ヘンリー卿は悪趣味暇人貴族で
自分の発言が相手の人生にどのような
影響を与えるのかを趣味としています。

バジルは 
ある青年の肖像画を描いていました
その名はドリアン・グレイ
男もうっとりするような美青年
その絵を描いたバジル自身
この肖像画はドリアン・グレイに
悪影響を与えるのではないかと
また、彼をヘンリー卿に会わせる
ことも懸念していました。

ヘンリー卿と会ったドリアン・グレイ
ヘンリー卿の自分への若さと美貌への賞賛
美を持った人間にだけ許される特権性を説かれ
大いに感銘したドリアン・グレイ
彼は自分の美しく描かれた肖像画に
自分の代わりにこの絵が歳を取れば
いいのに…と
猫の姿をしたバステト神の像の前で
願い事を呟いてしまいます。

その後ドリアン・グレイは
若さと美貌に任せ享楽的な生活を
送るのですがー

20年経っても若いままの姿でいるドリアン。 バジルは自分が描いたドリアン・グレイの肖像を見て驚愕します。

童話「幸福な王子」や、「サロメ」の原作者として知られる作家・詩人オスカー・ワイルドの長編小説「ドリアン・グレイの肖像」は、美しい文体と美青年の悲劇的結末のホラー・ファンタジーとして当時の文壇でも賞賛され、その後も多く映画化や演劇化がされています。 映画監督のアルバート・リューインは、合計で6本の映画作品を残されています。その中でも1951年に公開された「パンドラ」は、ジェームズ・メイソンとエヴァ・ガードナーが主演し、こちらも美しいメロドラマ・ファンタジー作品として知られています。

この映画は、モノクロ作品として公開されていますが、ドリアン・グレイの肖像画が映し出されるシーンに、4色のテクニカルカラーを加え、鮮烈な効果を与えています。 映画自体はあまりヒットしたとは言えませんが、シビルを演じたがアンジェラ・ランズベリーはアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、受賞は叶いませんでしたが、ゴールデングローブ賞を受賞しています。 個人的にこの映画の失敗は、主人公のドリアン・グレイを演じたハード・ハットフィールドが、加藤剛系の男前で、原作にある金髪碧眼の中性的な美青年とは程遠い感じだったことでは思われます。ただ、脇に多くの映画に出演している俳優ジョージ・サンダースや、「素晴らしき哉、人生!」(1946年)の出演で知られるドナ・リードを配し、アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞したハリー・ストランドリングの映像は観るに値します。

1970年にイギリスでマッシモ・ダラマーノ監督が「ドリアン・グレイ/美しき肖像」で映画化しています。こちらはドリアン・グレイをヘルムート・バーガーが演じており、金髪の部分はヘルムート・バーガーの方が合っていたかもしれません。 また、2009年にオリヴァー・バーカー監督が「ドリアン・グレイ」では、ベン・バーンズがドリアン・グレイを演じています。

スタッフ・キャスト

主演のドリアン・グレイを演じたのは、アメリカ合衆国出身の俳優ハード・ハットフィールド。アメリカ出身ですが、演劇の勉強のためイギリスに渡ったロンドン帰り。1944年にアメリカに戻りキャサリン・ヘプバーン主演の映画「Dragon Seed」で主人公の弟の中国人青年で映画デビュー。その後出演した「ドリアン・グレイの肖像」(1945年)で、ミステリアスな美青年を演じスターとなりました。その後、1946年のジャン・ルノワールのアメリカ映画「小間使いの日記」では、雇い主の息子役を演じています。1948年に出演したヴィクター・フレミング監督、イングリッド・バーグマン主演の「ジャンヌ・ダーク」に牧師役で出演しますが、ヴィクター・フレミング監督の最後の作品でありかなりの大作であったにも関わらず、大コケ。ハットフィールド自身も、中途半端(?)な美形青年で、役がつきにくくその後は脇役に徹する形となりました。私生活では共演したアンジェラ・ランズベリーとその後も交流が続き、アイルランドに移住され晩年を過ごされたようです。

酒場の歌手シビルを演じたのは、イギリスロンドン出身、アメリカ合衆国で活躍した女優アンジェラ・ランズベリー。昨年2022年10月に96歳でお亡くなりになっています。1944年にジョージ・キューカー監督イングリッド・バーグマン主演のサスペンス映画「ガス燈」で、ツンツンメイドさん役で映画デビュー。その後もセシル・B・デビル監督の「サムソンとデリラ」(1949年)などに出演していますが、キュートな美人女優であったにも関わらず、回ってくる役は実年齢よりも上のおばさん系。それを逆手にとって1962年のジョン・フランケンハイマー監督のサイコスリラー映画「影なき狙撃者」で、ローレンス・ハーヴェイのエキセントリック・ママを演じています。この時アンジェラ・ランズベリーとローレンス・ハーヴェイの実年齢は3歳しか離れていませんでした。また、アガサ・クリスティ原作の映画化では、1978年の「ナイル殺人事件」に出演、1980年の「クリスタル殺人事件」ではミス・マープルを演じています。1984年に出演したテレビドラマ「ジェシカおばさんの事件簿」では、主人公のおばさん小説家ジェシカ・フレッチャーを演じ人気を博しました。2022年のライアン・ジョンソン監督、ダニエル・クレイグ主演の探偵映画「ナイブズ・アウト:グラスオニオン」が、最後の出演作となりました。

まとめ

絵に欲望を込めて地獄行き

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