金髪どころか
茶髪にもしたことがありません。
[原題]Double Indemnity
[製作年]1944[製作国]アメリカ
[日本公開]1953
[監督・脚本]ビリー・ワイルダー
[脚本]レイモンド・チャンドラー
[原作]ジェームズ・M・ケイン
[音楽]ミクロス・ローザ
[上映時間]106
主な登場人物
フィリス・ディートリクソン(バーバラ・スタンウィック):
実業家ディートリクスン氏の妻。若くて美人。
氏の前妻の看護師だったが、前妻が死亡した後
後妻として彼の家に入った。ローラは娘で彼女はフィリスが前妻を殺したのではと疑っている。
ウォルター・ネフ(フレッド・マクマレイ):
35歳独身、保険外交員。同僚のバートンに一目置いている。
保険契約の更新の為訪れた、ディートリクスン氏の邸宅で氏の妻フィリスと出会ったことにより、運命が急転する。
バートン・キーズ(エドワード・G・ロビンソン):
ウォルターの同僚で敏腕保険調査員。
鋭い洞察力と長年の勘で犯罪性を嗅ぎつける。
その他の登場人物
ジャクソン(ポーター・ホール):事件の証人
ローラ(ジーン・へザー):先妻の娘
あらすじ
35歳の独身保険外交員のウォルターは、負傷しながらも深夜の会社の録音機に向かってある告白を始めた。それは殺人の自供だった。
そのほんの数か月前ウォルターは、自動車保険の更新を思い出し実業家のディートリクスン氏の邸宅を訪れる。しかし氏はおらず応対したのは彼の後妻である美しい妻フィリスだった。ウォルターにフィリスは夫には内緒で死亡特約をつけた傷害保険を掛けたい話す。
すぐにウォルターは彼女が夫殺しの相棒に自分を選んだと察知したが、彼女の魅力にはまってしまうのだった。
どんな映画?
美女が愛人をそそのかして夫を殺させる。
フィルム・ノワールの古典中の古典と
言われるのが、この「深夜の告白」です。
んで、フィルム・ノワールってのは
くらーい犯罪映画を指すかんじなのですが
その中に欠かせないのが、
「ファム・ファタール」(運命の女)の存在です。
男を破滅に追いやる”運命の女”との出会いです。
この映画でも、”運命の女”はいきなり裸に
バスタオルを巻いただけで登場です。
これでつかみはオッケーです。
女は殺人をほのめかしても、直接殺してと
は決して言いません。
男が勝手に犯行のシナリオを作り始めるの
です。
殺人の打ち合わせ場所はかえって人目につく
スーパーです。買い物カートをお互い引いて商品を選びながら話すシーンは印象的です。
よく映画史なので取り上げられるのが
コント見たいなこのシーン。
ウォルターの部屋で犯人の予測を熱弁するバートン。そこにフィリスが訪ねて来るが、ドアの影に隠れて難を逃れています。
そもそも男には慢心がありました。
自分なら完全犯罪を実行できるという考えです。
そして男は女に提案します。
確率の少ない列車での死亡事故の場合、保険金を倍額支払いという特約があると。
この映画の原題は「倍額保険」と言います。
原作者のジェームズ・M・ケインは
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」などの作品が有名ですが、「倍額保険」の小説は 1927年にアメリカで実際に起こった保険金殺人事件、ルース・スナイダーとジャド・グレイの事件を題材にしていると言われています。
一見フツーの主婦が不倫相手と結託して、
夫に保険金をかけて強盗に見せかけて殺害するというこの事件の影響は大きく、様々な物語の題材にされています。
当時ルース・スナイダーの死刑執行の隠し撮り写真が新聞の一面を飾るという大変なスキャンダルでした。女性が電気椅子でで執行されているシーンは今見ても大変衝撃的です。
スタッフ・キャスト
この映画は、アメリカ映画界の巨匠中の巨匠のビリー・ワイルダーにとって初のヒット作でアカデミー賞監督賞、作品賞にノミネートされました。
脚本にハードボイルド小説の巨匠レイモンド・チャンドラーが名前を連ねていますが、ケインの原作を馬鹿にして、監督ともソリが合わなかったとか。
探偵フィリップ・マーロウ生み出したチャンドラーはお金の為に映画脚本に参画していたため、ヒッチコック監督の「見知らぬ乗客」(1955年)の時にもパトリシア・ハイスミスの原作を酷評していたとのこと…
そうは言っても、この映画が後世に与えた影響は大きく、その悪女の系図は1981年のローレンス・カスダン監督の映画「白いドレスの女」などに踏襲されています。
フィリスを演じたバーバラ・スタンウィックは、この役の為に金髪のカツラを用意したそうです(元はブルネット)。でも弱冠似合ってない気も…ダンサー出身だけあって脚がキレイです。この映画でも足首にアンクレットつけて見せつけています。ブロードウェイで活躍した後、1930年代頃から映画界で活躍。1937年に母親役を演じた「ステラ・ダラス」でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。コメディからシリアス、西部劇など多くの映画に出演しますが、この「深夜の告白」(1944年)に出演後、フィルム・ノワールのファム・ファタールとしての出演も多くなりました。1946年にはルイス・マイルストン監督の「呪いの血」、エロール・フリンと共演した「恐怖の叫び」(1947年)、アナトール・リトヴァク監督の「私は殺される」(1948年)、ロバート・シオドマク監督の「血ぬられた情事」(1950年)、フリッツ・ラング監督の「熱い夜の疼き」(1952年)、ジョン・スタージェス監督の「人妻の危機」(1953年)←どんな映画か気になりません?など多くのフィルム・ノワールに出演されています。
人妻にハマる保険屋を演じたフレッド・マクマレイはこの映画の後に同じくビリー・ワイルダー監督の傑作コメディ映画「アパートの鍵貸します」でジャック・レモン演じる主人公バドの会社の上役を演じています。
この映画でシリアスな役を見事演じきり、新境地を開きました。
ウォルターの同僚で敏腕保険調査員演じるエドワード・G・ロビンソンは一度見たら忘れられないパンチのきいたお顔でフィルム・ノワールには欠かせない性格俳優の一人です。
2002年のブライアン ・デ ・パルマ監督の映画「ファム・ファタール」で、主人公の女宝石泥棒がテレビで観ていたのがこの「深夜の告白」でした。
やはり悪女のバイブルなんでしょうね~
まとめ
金髪の人妻に出会って地獄行き。
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