人はみな誰かの道化「上海から来た女」

フィルムノワール

今の時代「火星人が来たぞ~」と言って
信じる人はどのくらいいますかねえ?

[原題]The Lady from Shanghai
[製作年]1947[製作国]アメリカ
[日本公開]1977
[監督・製作・脚本]オーソン・ウェルズ
[製作総指揮]ハリー・コーン(ノンクレジット)
[上映時間]87

主な出演

エルザ・バニスター(リタ・ヘイワース):
足の悪い弁護士バニスターの夫人。
暴漢たちに襲われている所をマイケルに助けられたことにより縁ができる。

マイケル・オハラ(オーソン・ウェルズ):
若い船員。美しいエルザと出会い惹かれるが、人妻だとわかりやや引き気味にバニスターの話に乗る。

その他の登場人物

アーサー・バニスター(エヴェレット・スローン):エルザの夫、弁護士。 足が不自由で杖をついている。
シドニー・ブルーム(テッド・デ・コルシア):バニスターの執事
ジョージ・グリズビー(グレン・アンダース):アーサーの共同経営者、弁護士

あらすじ

夜のNY、若い船乗りのマイケルは馬車に乗っていた夫人に走り寄り思わずタバコをと声をかける。女はたばこを一本もらいバックにしまった。そのまま別れるかと思われたが彼女がチンピラに襲われているのを体よく助け、馬車で彼女を送っていく。マイケルは彼女にどこからきたのか尋ねた。どうせ知らないからと言うが、賭けをし彼女はチーフーと答える。しかしマイケルはマカオにいたことがあり知っていた。彼女は上海で働いていたと付け加えた。彼は彼女に殺人で刑務所にいたことがあることを話してしまう。船員だと言うマイケルにパナマ運河から西海岸に向かうから自分の船で働かないかと名刺を渡すが、彼女が既婚者だと知った為名刺を破り捨てる。その後、車がアーサー・バニスターのもので彼女がその夫人だとわかる。翌日マイケルが船員の就労斡旋所にいると、両手で杖をついた男が訪れ仕事の話をしたいと言う。男はアーサー・バニスターで一緒に飲んで彼は酔いつぶれてしまった。彼を送る目的で彼の妻エルザの豪華ヨットを訪れるが請われてそのまま船員としてカリブ海を目指した。インド諸島で過ごした後、エルザをいやらしい目で見るジョージ・グリズビーという年くった男が現れる。いつもバニスターに寄り添う執事のブルームはバニスターの命を狙うものがいるとバニスターに告げるが相手にしない。ブルームはエルザの見張り役も兼ねていた。アカプルコに着くとジョージはマイケルを呼び出し、5000ドルで自分を殺してほしいと依頼する。

どんな映画?

夜のニューヨーク。
馬車に乗った金髪の美人に一目惚れしたマイケル。
声を掛けたのですが、そのまま軽くあしらわれさようなら。

にはなりません。

その後
彼女のバッグを拾ったと思ったら、彼女が数人のチンピラにからまれています。
そこは身長190㎝のマイケル扮するオーソン・ウェルズ。
簡単に彼女を助けます。
そして馬車に乗って彼女を送りがてら色々話をします。
彼女がかつて上海にいたことも…

でも何かできすぎてない?

彼女はエルザ・バニスター。
足が不自由な大物弁護士アーサー・バニスターの夫人でした。
既婚者だと知りさようなら。

にはなりません。

船員のマイケルが斡旋所に行くとバニスターが現れます。
彼を送って行き成り行きでバニスター夫妻の豪華ヨットの旅に付き添うハメに。

途中バニスターの共同経営者グリズビーが現れる。

エルザ役のリタ・ヘイワースは、片ヒモで背中が大きく空いた水着や船長の帽子をななめにかぶり単パンとスタイルの良さを引き立てた衣装です。

バニスター夫妻とグリズビー。
気だるく退屈していたバニスターはマイケルに絡んできます。
金持ちのお遊びにマイケルはある寓話を話します。
マイケルが港で釣りをしているとサメを釣った。次もさサメ、また次もサメで海岸はサメだらけになってしまった。そのうちサメから出た血のにおいにサメたちは共食いを始めとうとう生き残ったサメは一匹もいなかった。

アカプルコに到着するとグリズビーはマイケルを呼び出し、ある話を持ち掛けます。
マイケルにグリズビーを殺したと念書にサインをして欲しいと言うのです。
グリズビーはバニスターと事務所を共同経営しており、どちらかが死ぬと多額の保険金が下りると言うのです。グリズビーは妻から逃げたいために偽装したい、5000ドルでどうかと話します。

果たしてマイケルはこの話を受けるのか?
グリズビーの目的は一体??
エルザはどう関ってくるのか?

この映画の難点は一回観ただけでは、プロットが複雑で話がよくわからんのです!
それもそのはずで現在観ることができるバージョンは60分以上カットされたもので話のつながりが悪いのです。興行的にも大失敗したそう。

ですが、主人公であるマイケル扮するオーソン・ウェルズの独白がいちいちキマっていてかっこ良く(悪人顔ですが)フィルム・ノワールの雰囲気は充分出ていると思います。
そして何といっても、シーンの奇抜さです。
水族館でのラブシーンや、マイケルが逃げ込むチャイナタウン、遊園地のクレージー・ハウス。
このクレージー・ハウスの鏡張りのシーンは、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」でも使われていますね~
異様で大変印象に残るシーンです。

スタッフ・キャスト

ヒロインの悪女を演じたリタ・ヘイワース。1994年に公開された映画「ショーシャンクの空に」の原作「刑務所のリタ・ヘイワース」のリタ・ヘイワースとはこのお方。この映画の前年に出演し、フィルムノワールの定番映画「ギルダ」では赤毛でしたが、当時監督で夫でもあったオーソン・ウェルズが金髪に染めさせました。やはりファムファタールは金髪が定番なんでしょうか?オーソン・ウェルズリタ・ヘイワースはこの頃、結婚はしていましたが別居中、程なく離婚してしまいました。

早熟の天才監督オーソン・ウェルズ。この映画でも自ら監督、脚本、主演をこなしています。オーソン・ウェルズは25歳で今だにアメリカ映画ベスト100に1位を取る名作「市民ケーン」を監督。ですが、公開当時圧力がかかり興行的に失敗。映画の製作費を稼ぐためにも強面の顔を生かし「第三の男」など俳優としても特異の存在感がありました。オーソン・ウェルズの名前が初めてアメリカで知られるようになったのは、ラジオ番組の「宇宙戦争」で舞台をアメリカに変え、彼の迫真の演技の為に、多くの聴衆者が火星人が本当に襲来したと思われパニックを起こしてしまったとのこと。

ノンクレジットですが脚色にウィリアム・キャッスルが参加しています。ウィリアム・キャッスルは1959年の「地獄へつづく部屋」、1960年「13ゴースト」などB級ホラーの巨匠(?)です

自分が操っていると思っていても、その実誰かに操られているのかも!

まとめ

遊園地で地獄行き。

コメント

タイトルとURLをコピーしました