若い頃から、イタイおばさんにはなりたくないと思っていましたが、
ある意味イタイおばさんになり、これはこれでいいかもと思っています♪
[原題]A Streetcar Named Desire
[製作年]1951[製作国]アメリカ
[日本公開]1952
[監督]エリア・カザン
[原作・脚本]テネシー・ウィリアムズ
[脚本]オスカー・ソウル
[音楽]アレックス・ノース
[上映時間]122
主な登場人物
ブランチ・デュボア(ヴィヴィアン・リー):
元教師。田舎から妹をあてにやって来た元美人のお嬢様。
スタンリー・コワルスキー(マーロン・ブランド):
ステラの夫。ポーランド系のアメリカ人。男臭く粗野な感じ。
ステラ・コワルスキー(キム・ハンター):
ブランチの妹。妊娠中。夫のスタンリーに惚れ込んでいる。
その他の登場人物
ハロルド・ミッチェル(カール・マルデン): 愛称ミッチ、スタンリーの友人。
あらすじ
未亡人ブランチはニューオリンズの下町に、妹ステラに会うため、欲望行きの路面電車に乗り、墓地行きに乗り換え、極楽通りを目指していた。ステラとその夫スタンリーが住むアパートはひどくすさんでいるようにブランチには見えた。上の階の住人に二人がボーリング場にいると聞かされ、そこでステラと再会する。再会をとても喜ぶステラ、ブランチは照明や身なりをしきりに気にした。ブランチは南部の町オリオール、ベルリーブで国語の教師をしており休暇できているという。家に戻り、ブランチは本当は両親が死に葬儀費用などで財産をなくしてしまったとステラに告げる。ブランチは不安定さを隠せなかったがステラは気位の高い姉をひどく気遣った。スタンリーが戻り、ブランチと会う。スタンリーは軍隊上がりの職工で腕は良かったが粗野で貧しかった。だが若くたくましい肉体に男らしい魅力があった。スタンリーの家で男たちが集まりポーカーに興じた。その間出かけていたブランチとステラが帰ってきてもやめなかった。その中でブランチは独身のミッチに興味を持つ。二間しかない部屋の奥でわざとラジオをつけミッチの気を引こうとするのだが。
どんな映画?
美人も生きている限り歳をとります。
当然なるんですよ!おばさんに!
過酷なアラフォー映画です。
ニューオリンズのゴチャついた下町にやって来たのは
ふりふりぴらぴらな服を着てクネクネ動く未亡人のブランチ。
昔モテた女性(と自分では思っていた)が一番イタイのは、顔と服装が合わなくなっているのに
自分だけが気づいていないこと。
そして自分はいつまでも若く見えると自惚れていること。
ブランチは妹のステラとその夫がいるというボーリング場に向かいます。
すぐにステラはブランチを見つけ再会を喜びますが、ブランチはしきりに
明るいところで見ないで~(歳がバレる)
と、身なりを気にしすぎるほど気にしていること。
そしてステラは田舎を捨てたことに少し負い目を感じ
若く見える!相変わらずきれい!
とブランチを気遣います。
そこにステラの夫スタンリーが登場。
スタンリー役のマーロン・ブランドが若く男らしいけど、乱暴な上に口が立つムカつく男。
この映画でマーロン・ブランドが当時は下着として着ていた肌着のままで過ごすことが流行り、現在のTシャツになりました。
南部の田舎にいられなくなったブランチはスタンリーの友人ミッチとの結婚に活路を見出そうとするのですが…
錯乱したブランチが
「罠にかかった 助けを求む」
一体誰に電話をかけているのか?
舞台の初演ではブランチをジェシカ・タンディが演じていましたが、他のキャストは変わらず映画化。
主演がヴィヴィアン・リーとなりました。ヴィヴィアン・リーと言えば「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラ。美人で傲慢、お嬢様と典型的なサザン・ベルのスカーレットも、どんなわがままや非人道的な行為でも許してくれたレッド・バトラーに去られ、タラの土地も無くしてしまったらこうなるんでしょうかね。
アラフォーになるのが地獄じゃないです、アラフォーになって何も持っていないことが地獄なんです!
美しい初恋を実らせ結婚した(と本人は思っている)主人公のブランチ。しかし夫が自ら死を選んだことによりすっかりぶっ壊れてしまいます。元美人の哀愁をこれまでかと見せつける過酷なストーリー展開。
いいきみと思うのか、愛を求めて裏切られたかわいそうな人だと思うのか、こんなふうにはなりたくないと思うのか感じ方は人それぞれかもしれませんが、美人の悲惨な末路は人間が見たいと思う普遍性の一つなのかもしれません。
スタッフ・キャスト
主演のブランチを演技とは思えぬ迫真に演技で応えた当時38歳のヴィヴィアン・リー。ヴィヴィアン・リーと言えばその名前を不動の物にした名作映画の決定版「風と共に去りぬ」(1939年)のスカーレット・オハラ役で有名ですが、このブランチ役でもアカデミー賞主演女優賞を獲得しています。イギリスの名優ローレンス・オリヴィエの2番目の妻としても知られており、オリヴィエ出演のヒットコック作品「レベッカ」(1940年)でもスクリーンテストを受けたそうですが、ヴィヴィアンには純真さが欠けているとしてジョーン・フォンテインが選ばれました。そんな中マーヴィン・ルロイ監督がかつてジェイムズ・ホエールが監督した「ウォルタール橋」をリメイクした「哀愁」では可憐な姿を見せ悲劇的な結末を一層引き立て、ヴィヴィアン・リーの代表作の一本になりました。ですが華々しい女優業の中で持病の悪化や精神疾患により不安定な時期が続き、女優業としても低迷していた頃に「欲望という名の電車」のブランチを演じました。
まさに自己を投影したようなブランチは演技自体にも鬼気迫るものがあり内容も当時とては、同性愛、ショタコン、強姦を扱った衝撃的なものでありご本人の精神的なダメージも大きかったようです。精神的に不安定な状況が続く中、自身の不倫や、ローレンス・オリヴィエとの離婚、病気の悪化など困難が訪れる中、最後の映画出演がスタンリー・クレイマー監督の「愚か者の船」(1965年)でした。ここでも「欲望という名の電車」を彷彿とさせる、年取った元美人がじひどい扱いを受けるという役でした。1967年にまだ53歳という年齢で亡くなられました。その美しさばかりが際立ちすぎて、女優として正当な評価を受けられなかったのかもしれませんが唯一無二の存在であることは変わらないですね。
監督のエリア・カザンは1940年代から1950年代にかけて現在でも名作と言われる映画を次々発表しました。1947年にグレゴリー・ペックがユダヤ人のフリをし差別を実感する「紳士協定」によりアカデミー賞作品賞と監督賞を受賞。神父殺しの法廷劇「影なき殺人」(1947年)、白人に見える黒人女性を描いた「ピンキー」(1949年)、伝染病の恐怖と犯罪を題材にした「暗黒の恐怖」(1950年)、1954年にはマーロン・ブランドが主演した「波止場」で、再びアカデミー賞監督賞を受賞しております。50年代にアメリカで吹き荒れた赤狩り中で自身の保身により、安定した活動を続けられたと言われています。
一方この映画でアカデミー賞助演女優賞を獲得したキム・ハンターは赤狩りのブラック・リストに載ってしまい活動がかなりの間制限されるという憂き目に遭いました。1964年に「リリス」で復活、それ以後「猿の惑星」シリーズでお猿として大活躍されました。
まとめ
アラフォー地獄で地獄行き
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