渦巻き髪「めまい」

サスペンス

高層マンションで育った子供は高所恐怖症の逆になる
高所平気症という言葉があるそうですね。

[原題]Vertigo
[製作年]1958[製作国]アメリカ
[日本公開]1958
[監督・製作]アルフレッド・ヒッチコック
[原作]ボワロー=ナルスジャック
   「死者の中から」
[脚本]サミュエル・A・テイラー
[音楽]バーナード・ハーマン
[タイトルデザイン]ソウル・バス
[上映時間]128

主な登場人物

ジョン・ファーガソン(ジェームズ・ステュアート):
愛称スコッティ、元刑事。事件追跡中に高所恐怖症になる。

マデリン・エルスター/ジュディ・バートン(キム・ノヴァク):
エルスターの妻/エスターの妻にそっくりな女。

その他の登場人物

ミッジ(バーバラ・ベル・ゲデス):スコッティの女友達。
ガビン・エルスター(トム・ヘルモア):スコッティの大学の同窓生。
検死官(ヘンリー・ジョーンズ)

あらすじ

刑事のスコッティは犯人を追跡中、高い建物から落ちそうになり、それを助けようとした同僚が逆に転落し、死亡してしまう。ショックを受けたスコッティは極度の高所恐怖症によるめまいをおこすようになり、警察も辞めてしまう。ある日、昔婚約をしていたこともある下着デザイナーのガールフレンド、ミッジに大学の同級生だったエルスターと会うことになったと話をする。久しぶりに会ったエルスターから、彼の妻の様子が最近おかしく、見張っていてほしいと依頼される。エルスターが言うには、彼女は家を出る時は別人のようになり街を徘徊するのだという。問い詰めて見ても彼女は覚えていないというのだ。アーニーズで食事をするので彼女を見て欲しいと依頼され、出かけることに。そこに夫とともにいた金髪の妻は非常に美しかった。彼女を尾行し始めたスコッティ、妻は花屋でブーケを買いさらに車で移動し、郊外の教会でおり、ある墓の前で立ちどまった。墓の名前を確認すると”カルロッタ・バルデス”1831年生、1857年没と書かれていた。その後美術館に来た妻は、一枚の絵を凝視していた。その絵はカルロッタの肖像だった。美術館を出た彼女はゴフ通りにある古びたホテルに入っていったのを見つけ、後に入っていくが部屋を確認しても彼女の姿はどこにもなかった。その後スコッティはミッチにサンフランシスコの歴史に詳しい人物を教えてくれと頼むと、書店の老人が良いと一緒に出かける。その老人はホテルは昔カルロッタが住んでいた邸宅で、彼女は子供を取られた上に捨てられ発狂して亡くなった女性だと聞かされる。そのことをエルスターに話すと、カルロッタの取り上げられた子供がマデリンの祖母だという。その後もマデリンを尾行するスコッティ。やはり美術館でカルロッタの絵を眺めた後、車でゴールデンゲートブリッジの脇に降り、ブーケの花をサンフランシスコ湾に投げ込むと自ら海に飛び込んでしまう。

どんな映画?

ヒッチ先生監督作品の中でも人気の高いこの映画ですが、ヒッチ先生の思惑とは裏腹に公開当時は大ヒットとはいかずひどく監督を落胆させたそう。
しかしながら現在では、多くの亜流作品を生み出し、ヒッチ先生の名作の一本として多数の有名映画監督からも絶賛されております。

オープニングの目ん玉に渦巻、幾何学模様のタイトルバックはソウル・バスによるもの。映画で初めてコンピューター画像が取り入れられたそうです。

警官のスコッティは犯人追跡中にビルから落ちそうになり、助けに入った同僚が転落死してしまいます。

すっかり高所恐怖症になってしまったスコッティは、自責の念もあり警察を辞めてしまいます。
そんな彼を励ますのはガールフレンドのミッジ。
二人は学生の時一瞬だけ婚約していた模様。

スコッティはずっと音信不通だった
学生時代の友人エルスターから電話があり、会うことに。

突然会おうと言ってくる昔の友人てロクなコトないように思いますが、のこのこ会いに行くスコッティ。
造船業をしているエルスターはかなり裕福そう。

高所恐怖症になり警察も退職したことを話すと、
新聞で読んで知っていたというエルスターは
彼にあることを依頼します。

「妻を尾行してほしい」

浮気?
ちゃうねん!妻は取り憑かれているんだ。死んだ人間に!!!
何やそれ?

とゆーわけで、スコッティはエスターの美人妻を尾行。

グレーのスーツを着た金髪の妻は
花屋に寄り教会で墓参り。
その後美術館で一枚の貴婦人が描かれた絵に見入っています。
そして何故か絵と妻はおんなじ髪型。

謎な妻の行動を探るうちスコッティは次第に妻に惹かれていき…

テレビ番組の「ヒッチコック劇場」で得た収益により好きな映画を作れる恩恵を受けたヒッチ先生
狙っていたのがフランス人作家ピエール・ボワローとトーマス・ナルスジャック原作の「悪魔のような女」でしたが獲得できず、代わりに1955年に映画化したのがフランスを代表するノワール監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾーでした。当然驚くような展開とドッキリシーンは後世に残るサスペンス映画の傑作となりました。それにいたく嫉妬したヒッチが同じ原作者であるの「死者の中から」を映画化。
ですが当時興行的には失敗し撃沈。

鐘楼の階段を登り目がくらむシーンはミニチュアが使われていたり、アニメーションを起用した幻覚シーン、カメラを前後に動かし撮られた「めまいショット」など映画技巧として実験的な映像が多用され、現在の映画作家に多大な影響を与えています。

現代ではまず考えられないトリックですが、美女との出会いにより奔走される男と演じることを強要される女の間で生まれるロマンス、ラストの衝撃は忘れられない名作です。

それにしても検死は大事だよ~

スタッフ・キャスト

監督のアルフレッド・ヒッチコックは1956年に「間違えられた男」で主人公ヘンリー・フォンダの妻役として起用したヴェラ・マイルズをいたく気に入り翌年には彼女と5年間の個人契約を結ぶほど。んでヴェラをグレース・ケリーの後継者としてスターにすべく「めまい」のヒロインに想定していました。「めまい」の重要シーンでヒロインが着ているグレーのスーツを着用してカメラテストを受けるヴェラ・マイルズの映像が残されています。しかし、製作が遅れている間にヴェラが妊娠してしまい降板。代わりに起用されたのが金髪妖艶美人のキム・ノヴァクでした。ヒッチ先生はヴェラ・マイルズの控えめで従順そうな雰囲気が気に入っていたのでしょうが、対照的なのがいかにも挑発的な美貌の持ち主キム・ノヴァク。やはりあまり気に入っていなかったようで撮影中もかなり辛く当たっていたそう。泳げないキムをサンフランシスコ湾に突き落としたり、本人が似合わないと思っているグレーをごり押ししたり、散々だったようです。ですがこうやって撮影された「めまい」はキム・ノヴァクにとって代表作の一本となっております。一方ヒッチ先生はヴェラ・マイルズを1960年の「サイコ」でジャネット・リーの妹役という重要な役を与えています。

高所恐怖症の主人公を演じたジェームズ・スチュワートヒッチ監督作品は1954年の「裏窓」から、1956年の「知りすぎていた男」でも起用されましたが、「めまい」の興行的な失敗がジェームズ・スチュアートが年を取っていたせいだとヒッチ先生に捉えられていた為、「北北西に進路を取れ」(1959)では本人が主演を希望していたにもかかわらず起用しませんでした。実際は主演したケーリー・グラントの方が年上でした。

ヒロイン役のキム・ノヴァク。失敗と言われた「めまい」でしたが、同年にはリチャード・クワイン監督の「媚薬」で再びジェームズ・スチュワートと共演。こちらの映画はラブ・ファンタージーで、キム・ノヴァクの役は魔女という、こちらの映画ではコケティッシュで妖艶な彼女のキャラクターが発揮されていました。んでもって「殺人者はバッヂをつけたいた」(1954年)や「逢う時はいつも他人」(1960年)でも出演したリチャード・クワイン監督と婚約していましたが後に解消しています。

ミッチのガールフレンドを演じたバーバラ・ベル・ゲデスは1949年にマックス・オフュルスのノワール作「魅せられて」に主演。不安定な若妻を好演していました。

ヒッチ先生登場シーン

造船所の前を通りすぎる。

まとめ

高所恐怖症で地獄行き

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