パッと見でこの人とは友達になれそうもないな〜と感じるお顔はあります。
[原題]The Third Man
[製作年]1949[製作国]イギリス
[日本公開]1952
[監督・製作]キャロル・リード
[製作]デヴィッド・O・セルズニック/アレクサンダー・コルダ
[脚本・原作]グレアム・グリーン
[撮影]ロバート・クラスカー
[テーマ曲]ハリー・ライムのテーマ(ツィターによる演奏)
[音楽]アントン・カラス
[上映時間]105
主な登場人物
ホリー・マーチンス(ジョセフ・コットン):
ハリーの友人。売れないアメリカ人作家でハリーに誘われウィーンにやって来た。
アンナ(アリダ・ヴァリ): ヨゼフシュタット劇場の女優。ハリーの恋人。
ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ):
慈善事業家の広報マン。と思っていたが実は…
その他の登場人物
キャロウェイ少佐(トレヴァー・ハワード):ホリーにハリーの正体を告げる。
ペイン軍曹(バナード・リー)
門衛(パウル・ヘルビガー):ハリーの事故の目撃者。
クルツ男爵(エルンスト・ドイッチュ): ハリーの仲間
クラビン(ウィルフリッド・ハイド=ホワイト)
あらすじ
第二次世界大戦直後のウィーン。戦前の優雅さとは打って変わって荒廃と混沌が入り混じり、闇商人が横行していた。アメリカ人の売れない小説家ホリーは、友人ハリーを訪ねてウィーンにやってきた。しかし、すでにハリーは自動車に跳ねられて亡くなったと聞かされる。並木道を通る墓地に行き、ハリーの葬儀に参列したホリーは見知らぬホリーの知人たちに出会う。その中にキャロウェイ少佐がおり、彼からホリーが闇取り引きを行っていた悪人で死んで当然だと言われる。ハリーがそんな人間ではないと信じるホリーは、友情からハリーの事件の解明を試みる。ホリーに突然クルツ男爵という男から連絡が入る。男爵は、事件当時友人と二人で現場におり、一部始終目撃していたので問題はなという。その後駆け付けたヴィンケル医師によると即死状態だったという。ホリーは葬儀に参列していた女性に会うべく、彼女の出演している劇場に足を運んだ。彼女はアンナと言い、ハリーと親しく交際していた女性だった。聞き込みをしていく中事件を目撃していた門番が、当時男が三人いたと証言する。第三の男とは一体誰なのか?ハリーの部屋に戻るとすでに警察が突入しており、物品を押収している最中だった。
どんな映画?
タララ〜ン ララ〜ンララ〜ン
っとオープニングが流れると
ん?エビスビール?と思われるあの音楽。
大変有名なこの楽曲、現在も恵比寿駅で流れています。
第二次世界大戦後すぐのウィーンは混沌としておりました。市内はアメリカ・イギリス・ロシア(ソ連)・フランスで四分割され言葉の違う国際警察が共同パトロールしているという事態。
すっかり荒廃した街では闇商人が横行し、闇市では金さえあれば何でも手に入ります。
そんな都市に友人を頼りにやってきたアメリカ人作家のホリーでしたが
突然、友人のハリーが死んだと聞かされるのです。
自動車にはねられたハリーは即死だったと。
すぐに葬儀に駆けつけたホリー。そこにはハリーの知人であろう数人の男たちと、ひとりの女性が。
その場を立ち去ろうとするホリーに来るまで送ると声をかけてきたのはキャロウェイ少佐でした。
彼はハリーが悪徳商人だから死ぬのも自業自得とうそぶくが、そんな奴じゃないと怒るホリー。
しかし金もなく頼りのハリーもいないウィーンでは成す術なくアメリカに帰るしかない。
ですがそこに都合よく助け舟が。
小説家として講演してくれるならその分の滞在費は払うと言うのです。
そこにクルツ男爵と名乗る男から会いたいと言う電話が!
ハリーの汚名を晴らそうと息巻くホリー。
クルツ男爵はハリーの事故の詳細を話し、事故でハリーの死に問題はないと言う。何だか信用できないあ〜とホリーは葬儀に参列していた女のことを男爵から聞き出し、会いに行くことに。
女はアンナと名乗りハリーと付き合っていたと言いいます。
ホリーはハリーが事故死したのではないのでは思い始め、目撃していた門番に聞き込みをすると、リハーの遺体を運んだのは三人。三人目は誰?そして遺体は本当にハリーだったのか?
暗闇に浮かぶハリーの顔
怖いですよ〜
死んだと思われていたハリーが、プラーター公園の大観覧車を降りた後言い放った
名台詞
「ボルジア家の時代には陰謀やテロが横行したが、多くの芸術が生まれた。
スイスの500年の平和は何をもたらした?鳩時計が精一杯さ」
セリフ一つとっても完璧で映画のお手本といった作品です。
光が差す場所に必ず影があるように 善と悪も表裏一体
ある男にとっては親友でも 本当は悪党かもしれない
人類の敵でも ある女とっては最愛の男かもしれない
そしてラストは
ホリーを一瞥もせず通り過ぎるアンナ
グリーンの原案とは異なるラストは映画史上に残る、
最も印象的なシーンです。
スタッフ・キャスト
この映画は1948年に撮影開始されており、戦後まだ復興もままならないオーストリア、ウィーンの被爆し破壊された街並みが撮影されています。アカデミー賞では撮影賞を受賞しています。
監督はイギリスの巨匠キャロル・リード。あまりイギリス映画と言う感じがしないのは、製作にアメリカの大物プロデューサー、デヴィッド・O・セルズニックのせいでしょうか。セルズニックのお抱え俳優のジョセフ・コットンとアリダ・ヴァリが出演。ジョセフ・コットンと「市民ケーン」コンビのオーソン・ウェルズ。
イタリア人女優のアリダ・ヴァリはアメリカで売り出す為にセルズニックが1947年にアルフレッド・ヒッチコック監督の「パラダイン夫人の恋」で夫人を演じましたが、今一魅力を出し切れていませんでしたが、この映画のアリダ・ヴァリは陰影の強い表情とトーンの低い演技でハマっておりました。
脚本、原案のグレアム・グリーンはイギリス人小説家。この映画は製作のアレクサンダー・コルダから依頼され書き下ろされたもので原作ありきではなかったものの映画は名作として大ヒット。ただしラストはグレアム・グリーンが草稿していたものとは違っており、監督によるもの。ノワール映画の原作を多く手がけております。
オーソン・ウェルズ演じるハリー・ライムは「ヒーローと悪役ベスト100」の悪役部門の中でランクインされています。
淀川長治先生は映画の教科書のような
作品であまりにカメラワークからセリフまで完璧でちょっと憎らしい感じがすると解説でおっしゃっておりましたが、
イギリス映画史に残る貴重な映画遺産です。
まとめ
地下水道で地獄行き
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