恐ろしい子…「悪い種子(たね)」

サスペンス

悪の隔世遺伝。

[原題]The Bad Seed
[製作年]1956[製作国]アメリカ
[日本公開]1957
[監督・製作]マーヴィン・ルロイ
[脚本]ジョン・リー・メイヒン
[音楽]アレックス・ノース
[上映時間]130

主な登場人物

クリスティーン・ペンマーク(ナンシー・ケリー):
ローダの母。良妻賢母。ローダの素行に悩む。

ローダ(パティ・マコーマック):
一見聡明で良くできたお子様。
癇癪持ちで何が何でも自分の我を通そうとする。

その他の登場人物

デイグル夫人(アイリーン・ヘッカート):クロードの母
リロイ(ヘンリー・ジョーンズ):アパートの清掃員
モニカ(イヴリン・ヴァーデン):アパートの大家
ケネス大佐(ウィリアム・ホッパー):ローダの父、軍人

あらすじ


裕福な主婦のクリスティーンは夫のケネス大佐が軍用で家を留守にする日、娘のローダと大家のモニカが訪れ見送った。8歳の娘のローダは金髪のお下げでふりふりスカートの愛らしい少女だったためモニカに非常にかわいがられていた。しかしクリスティーンには娘に対して言いようもない不安があった。
家から出ると掃除夫のリロイがローダの靴に水をかけた。湖のキャンプ地にローダを送り届けたクリスティーンはファーン先生にローダは学校になじんでいるか尋ねたが大丈夫だとあまり取り合ってくれなかった。ラジオから小学校の遠足先で児童が溺死したというニュースがはいる。クリスティーンは心配で慌てるが死んだのはローダーではなくクロードという男の子だった。桟橋から落ち、手には打撲の跡があったという。遠足が中止になり戻ってきたローダにクリスティーンはどうやって説明しようか悩んだが、ローダは彼の死に特にショックを受けているわけもなく平然としていた。数日後先生が家に訪れ、クリスティーンにローダがクロードが「書き方」でとったメダルをほしがりクロードを追いかけまわしていたという話を聞く。ローダが疑われていると感じ学校に行けなくなるというと転校を進められる。クリスティーンが当惑しているとクロードの母と父親が尋ねてくる。

どんな映画?

主婦のクリスティーヌは素敵な夫ケネス大佐に8歳のかわいい娘を持ち、何不自由ない裕福なマダム。おまけに父親は元記者で今は著名な作家になっているという絵に書いたようなお嬢様です。

ところがクリスティーヌにはいいようのない不安が付きまとっていたのです。

それは一人娘のローダでした。

金髪の三つ編みにおリボンぱっつん前髪、フリフリワンピのローダは一見かわいらしく活発な少女。しかし、クリスティーヌにはどこか自分の娘の言うことを100%信用することができませんでした。

ある日夫が4週間家を空けることになりました。
その後すぐに事件が起きます。
学校のキャンプでローダの同級生の少年が溺れて亡くなったのです。

ローダを気遣うクリスティーヌでしたが、ローダは一向に気にせずかえって文句を言うのです。同情心や憐憫の情というものが著しく欠落した子供でした。

そして、自分の欲しい物を手に入れるためには手段を選ばないのです。ローダは亡くなった同級生が書き方コンテストで取ったメダルを執拗に欲しがっていたのです。
知らないと言うローダでしたが、クリスティーヌはローダの部屋でメダルを見つけてしまいます。

問いただしても、のらりくらりとかわすローダ。

そしてまたローダは…
クリスティーヌの出生の秘密が!?

この映画は8歳の少女が平然と殺人を犯すというショッキングな内容にもかかわらず大ヒットしたそうです。子供が殺人を犯すという当時はあり得ないだろうと思われていた題材に真向挑戦したこの作品は、やはりその結末が不道徳と言うことで変更されています。
蛇足のようなラストシーンはその為です。

ですがあくまで残忍な少女ローダが主人公のサイコサスペンスではなく、その娘を生んでしまった母親の苦悩がテーマです。
ナンシー・ケリーはこの映画の演技が高く評価され、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。

サイコパスを生んでしまったのは、自分の血筋のせいではないか?(この遺伝的要素は現在はちょっと問題がありますが)自分なりの決着の仕方は何なのか?そこら辺を考えさせられる映画ではないでしょうか?てゆーかほんとーに怖い話なのです。

女の子の殺人で非常に有名なのが1968年にイギリスで起こったマリー・ベルの事件です。11歳のかわいらしい少女マリー・ベルは友人と一緒に小さな子供を2人殺害したのです。

子供が起こす事件のたびに何故かと考えさせられます。

スタッフ・キャスト

監督のマーヴィン・ルロイは1931年に監督した「犯罪王リコ」がギャング映画の先駆けとして、ウィリアム・A・ウェルマン監督の「民衆の敵」と並びセンセーションを巻き起こしました。その後も1940年「哀愁」や1942年の「心の旅路」は戦争を挟んだメロドラマの傑作を監督、この「悪い種子」でもヒットを飛ばしアカデミー賞にもノミネートされました。後年までも第一線で活躍することができた監督さんです。

母親のクリスティーン役のナンシー・ケリーはキャリアは長く、美人女優として西部劇などに多く出演し、中年期に母親役として1954年の「悪い種子」のブロードウェイ舞台版へ出演し、映画でも同じ配役でヒットしました。私生活で最初の結婚で、俳優のエドモンド・オブライエンと結婚しましたが翌年に離婚してしまいました。

ローダ役のパティ・マコーマックは当時10歳、ブロードウェイの舞台同様の役を映画でも演じており、その演技が高く評価されました。キャリアはすごーく長く映画だけでなく現在もテレビドラマなどで活躍されています。なかでも1975年の「燃える昆虫軍団」ではゴキブリのでかい虫が目に張り付き悶絶しながら死ぬという役を熱演していました。

1985年にテレビムービーの「死の天使レイチェル」としてリメイクされています。

先を見越したかのようなマーヴィン・ルロイ監督のヒット作です。

まとめ

遺伝子の呪いで地獄行き。

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