狙われた未亡人「疑惑の影」

サスペンス

妻に先立たれた夫は早死の傾向で
夫に先立たれた妻は長生きの傾向だそうです。

[原題]Shadow of a Doubt
[製作年]1943[製作国]アメリカ
[日本公開]1946
[監督]アルフレッド・ヒッチコック
[原作]ゴードン・マクドネル
[脚本]ソーントン・ワイルダー/アルマ・レヴィル/サリー・ベンソン
[撮影]ジョセフ・ヴァレンタイン
[音楽]ディミトリ・ティオムキン/チャールズ・プレヴィン
[上映時間]108

主な登場人物

チャーリー・ニュートン(テレサ・ライト):
カルフォルニアの田舎町に住む少女。幸せだが退屈な毎日を送っていた。

チャーリー・オークリー(ジョゼフ・コットン):
チャーリーの同名の叔父。洒脱な雰囲気でチャーリーのお気に入りだったが…

その他の登場人物

ジャック・グラハム(マクドナルド・ケリー): チャーリーに近く若い男、実は刑事
ジョセフ・ニュートン(ヘンリー・トラヴァース):探偵小説好きのチャーリーの父
ハーバート(ヒューム・クローニン): ハーブ、近所の探偵マニア
ロジャー・ニュートン(チャールズ・ベイツ):チャーリーの弟

あらすじ

きっちりした身のこなしのチャーリーは何者かに追われ、カリフォルニア州にある田舎町サンタローザに姉を尋ねてやってくると言う。サンタローザに住むチャーリーと同じ名前を持つ姪のチャーリーは年頃の娘で、田舎での平凡な毎日に「奇跡」が起こるのを待ちわびていた。そしてその救世主が叔父のチャーリーではないかと思っていた。お互いに電報を打ち合い、汽車でチャーリー叔父が到着した時彼は杖をついていた。チャーリーと父、まだ幼い妹のアン、弟のロジャーが出迎えた。チャーリー叔父はみんなにプレゼントを渡したが、チャーリーは何もいらないという。そんなチャーリーに叔父はエメラルドの指輪を渡すがそこには、「B・MからT・Sへ」とよくわからないイニシャルが掘られていた。叔父は宝石商の手違いで返品すると言うがチャーリーは気にしないと喜んで受け取った。食卓に戻り食事を続けていると、チャーリーは時々口ずさむメロディの話を始め、あの曲はなんだったかと話始める。彼女が確か「メリー・ウィドウ」と言おうとすると、叔父がグラスをひっくり返しその話は終わってしまった。家を作ってやると言って新聞を破く叔父、チャーリーが切り取った新聞をとりあげると叔父は慌ててチャーリーの腕を強くつかんだ。翌朝、姉がチャーリー叔父に平均的な家族を取材したいという申し出を受けたと伝えたが、叔父は取材を受けたくないとかたくなに拒否した。母はチャーリーに叔父の子供の頃の写真を見せ、この頃は読書ばかりしている子供だったが、交通事故にあって生死の境をさまよった後別人のようにいたずらっ子になったと語った。

どんな映画?

この映画の元になっているのは
1920年代後半に発生したアメリカ犯罪史上歴史に残る大量連続殺人鬼「ゴリラ・キラー」ことアール・ネルソンの事件です。
ネルソンは主に下宿屋を訪れ、部屋を借りるふりをして大家の女性を殺害。殺害された女性は高齢の女性が多かったことからこの映画の「メリー・ウィドウ(未亡人)殺人事件」の着想を得たそうです。

田舎町で平凡に暮らす少女チャーリーは何となく退屈に日々を送っていました。
刺激がないのです。
そして奇跡が来るのを待っている思春期病。
チャーリーは母親の弟である同名の叔父チャーリーを呼び出そうとしますが、逆にやってくると聞き、奇跡だと胸を躍らせます。

チャーリーは身なりのキッチリしたニューヨーカーで都会的、口がうまく、同名の叔父を特別な存在と感じていました。
チャーリー一家は叔父を大歓迎。

叔父のチャーリーはチャーリーに贈り物をしてエメラルドの指輪を渡します。指輪には何かイニシャルが彫られていました手違いだという叔父にがチャーリーは気にしないとそのまま受け取ります。
そして食事中何故かチャーリーは
あるメロディが頭から離れません。

ハミングして何だったかしらと家族に問いかけるとチャーリーが
「メリー・ウィドウ」(陽気な未亡人)
と言おうとした瞬間叔父チャーリーはグラスを倒します。

何だかミステリアスな雰囲気を
持つ叔父を崇拝するチャーリー。
叔父にはきっと素敵な秘密があるはず!

しかしそれは少女にとっては過酷な現実でした。

チャーリーに襲いかかるのは一体誰なのか?!

アール・ネルソンはアメリカの歴史上最初の連続殺人犯であり、10代の少女から60代の女性と見境なく殺害し20件を超える件数は50年以上破られない記録的な高さでした。この映画の中で犯罪を起こすチャーリーは子供の頃交通事故に遭ってから人が変わったようになったというエピソードが語られますが、ネルソンが子供の頃に電車に跳ねられて頭を強打したことから頭痛に悩まされていたという事実を元にしています。

牧歌的なのんびりした田舎町に突如として現れる殺人鬼。良識的な風貌のジョゼフ・コットンが一変して女性を毒牙にかける殺人鬼に変貌する恐怖感と、演技に定評のあるテレサ・ライトがノーテンキな少女から一転して実の叔父に疑惑を持ち悩みながら人としても成長していく展開はサスペンスの基本的な作品です。

スタッフ・キャスト

セルズニックから度々他の映画会社に貸し出されたヒッチコックのハリウッド作品として転機になった作品。脚本には妻であり最高のパートナーでもあったアルマ・レヴィルと、1940「我等の町」1969「ハロー・ドーリー!」の原作者であり、小説家としても有名なソーントン・ワイルダーが参加しております。ヒッチ先生のお気に入りの作品だそうです。

シリアルキラーのチャーリーを演じるジョゼフ・コットンですが、オーソン・ウェルズ監督作品でデビューした後1940年代は数々の名作に出演。「ガス燈」(1944年)、「ジェニーの肖像」(1948年)、「第三の男」(1949年)など女優の影に隠れる感がありましたが、「ジェニーの肖像」ではヴェネツィア国際映画祭で男優賞を受賞しています。

チャーリーの幼い弟役を演じたチャールズ・ベイツはアメリカの元子役俳優で、1940年代に多くの映画に出演しましたが、1952年の「キリマンジャロの雪」で17歳のグレゴリー・ペックの役を演じたのを最後に俳優を引退しております。

ヒッチ先生登場シーン

サンタローザに向かう列車の中でトランプをしている。

まとめ

未亡人殺しで地獄行き

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