完全犯罪は穴だらけ「ロープ」

サスペンス

ニーチェが好きっていう人に出会うとちょっとひいてしまいます。

[原題]Rope
[製作年]1948[製作国]アメリカ
[日本公開]1962
[監督・製作]アルフレッド・ヒッチコック
[原作]パトリック・ハミルトン「Rope’s end」
[脚本]アーサー・ローレンツ
[潤色]ヒューム・クローニン
[音楽]レオ・F・フォーブステイン
[上映時間]80

主な出演

ブランドン・ショー(ジョン・ドール):左
同級生のデイビッドをフィリップと共にロープで殺害する。
自信家で常に不安定なフィリップを誘導する。

フィリップ・モーガン(ファーリー・グレンジャー):右
ちょっと気弱なフィリップ。デイビッドを殺害したことにより落ち着きがなくなる。

ルパート・カデル教授(ジェームズ・スチュワート):
ブランドン、フィリップ、デイビッド達の中学時代の恩師。ちょっと変わり者だが知的で犯罪学にも精通している。

その他の登場人物

ケントリー氏(サー・セドリック・ハードウィック):デイビットの父親
アニータ・アトウォーター(コンスタンス・コリア―):被害者の伯母

あらすじ

摩天楼を一望できるアパートの一室で、デイビッドはロープで首を絞められ殺された。犯行に及んだのはハーバード大の金持ちの息子で優秀な学生のブランドンとフィリップだった。彼らは自分たちの思い描いた完全犯罪を実行すため、デイビッドの遺体をチェストの中に入れそれをテーブルに見立て料理を運びパーティを行おうとしていた。完ぺきな殺人、殺人のための殺人に酔いしれるブランドン、対象的に怯えるフィリップとシャンパンで祝杯を挙げる。デイビッドの関係者を呼び最後まで殺人がバレなければ自らの優秀さが立証されるのだ。メイドとしてミセス・ウィルソンが来たとき、フィリプはチェストからロープがはみ出しているのをみつける。チェストにクロスを敷き、料理をおく。やがてブランドン、フィリップ、デイビッドと私立中学の時から同級生のケネスが招待を受けてやってきた。ケネスにはフィリップの送別会だと話した。次にケネスの元彼女のジャネットも呼んだが、彼女はあからさまに不快な顔をしブランドンに自分はデイビッドと婚約していると告げた。さらに彼ら四人の中学の恩師、カデル教授を呼んでいると話している時、デイビッドの父親のケントリー氏と母親の代理でミセス・アトウォーター夫人をつれてきた。フィリップは彼らを見てグラスを割り動揺を隠せなかった。恩師のカデル教授も訪れ、しばらく他愛もない談笑が続いたのだが…

どんな映画?

アパートから聞こえる悲鳴。
いきなり同級生デイビッドをロープでくびり殺すブランドンとフィリップ。
なぜならデイビッドは平凡な学生だから!

そんな理由でいちいち殺されたらたまりません。
でも彼らはやりました。自分たちの優位性を証明するために。

優秀な人間はモラルを超越し、善悪の判断は凡人のために存在するのだと。
ブランドンはニーチェの超人思想に深く心酔していたのです。
殺人も芸術なのだと。

そして彼らは完全犯罪を証明するため、遺体をチェストの中に隠し
その上に、燭台や皿、料理を置きパーティーを始める準備をします。

フィリップの送別会という名目で集められた面々は
デイビッドの婚約者のジャネット
デイビッドの親友ケネス(ジャネットに横恋慕)
デイビッドの父ケントリー氏
デイビッドの伯母(母の代理)
メイドのウィルソン夫人

そして本命で彼らの中学時代の恩師カデル教授。

カデル教授もまた殺人は芸術だと言う持論の持ち主でした。
当然まともな人は不快感を示します。
デイビッドのお父さんです。
「誰が犠牲者を決めるのだ」という問いに
ブランドンは自分とか、フィリップとか、カデル教授と述べるのです。

自信満々のブランドンと終始びくびくのフィリップ。
果たして二人の完全犯罪は遂行されるのでしょうか?

スタッフ・キャスト

この映画はヒッチ先生初のカラー作品となっております。全編ワンシーンで撮られており同時系列で物語が進行する舞台劇型が特徴的です。カデル教授役のジェームズ・スチュワートはこの映画が初のヒッチコック作品となっています。なが~く活躍されたアメリカを代表する正統派俳優。
美男子ではないところが愛嬌があり、いい人役が多かったですな〜。1946年のフランク・キャプラ監督のクリスマス定番映画「素晴らしき哉。人生!」は適役でした。ジミーはその後、1954年に「裏窓」、1956年に「知りすぎていた男」、1958年「めまい」で主演と務めております。育ちが良さそうで、誠実そうな風貌からアメリカの良心と言われるほどいい人キャラのジミー・スチュワート、ケーリー・グラントとならんでヒッチ先生お気に入りの俳優の一人です。
ほぼセリフだけで進行するため、見どころはラストに向かう、ブランドン、フィリップ、カデル教授の三人の心理合戦にあります。しかし、セリフばかりなのでややかったるく面白く思わないかも。そーゆー時は始めからブランドンとフィリップはできていると思って見てください。
完全犯罪遊戯もすべて痴話げんかなのです!!
完全犯罪どころか不自然だらけの行動で、まずメイドに怪しまれる始末。


ぐだぐだで穴だらけ。
これがホントにあった事件だからやんなっちゃいます。
1904年アメリカでネイサン・フロイデンソール・レオポルド2世とリチャード・アルバート・ローブの裕福な二人の青年が少年を誘拐し惨殺した事件が起こりました。自分たちの優位性を証明するためだという衝撃的な動機だったため世間を騒然とさせました。
この事件を元にしたパトリック・ハミルトンの戯曲を映画化したのが「ロープ」です。
1956年のマイアー・レヴィンの小説「脅迫/ロープ殺人事件」を映画化したのが、1959年リチャード・フライシャー監督の「脅迫/ロープ殺人事件」です。

フィリップ役のファーリー・グレンジャーは「ロープ」と同年の1948年に、ニコラス・レイの初監督作品「夜の人々」に出演しています。こちらでは犯罪者カップルを演じております。1951年にはヒッチ先生の「見知らぬ乗客」で交換殺人に巻き込まれるテニスプレイヤーを1954年のルキノ・ヴィスコンティ監督の「夏の嵐」では人妻を惑わす青年将校を演じておりました。キャリアの前半は気弱な男前役が多かったように思いますが、後年は1980年代にはスラッシャー映画の「ローズマリー」なども出演されていました。

ブランド役のジョン・ドールはアメリカの俳優。映画では「ロープ」が代表作ですが他にカーク・ダグラス主演の「スパルタカス」などにも出演しています。

天網恢恢疎にして漏らさず です。

ヒッチ先生登場シーン

オープニング直後、アパートの外を新聞持って通り過ぎる。

ブランドンとデイビッドの婚約者ジャネットが話している後ろのビルの赤いネオンに、ヒッチコックのトレードマークが…
こんなのわかる人いたんでしょうか?

まとめ

超人思想で地獄行き。

コメント

タイトルとURLをコピーしました