足潰しの刑「ミザリー」

サスペンス

やっぱりおばさんは世の中で
最強だと思います。

[原題]Misery
[製作年]1990[製作国]アメリカ
[日本公開]1991
[監督]ロヴ・ライナー
[原作]スティーヴン・キング
[脚本・製作]ウィリアム・ゴールドマン
[撮影]バリー・ソネンフェルド
[音楽]マーク・シャイマン
[上映時間]108

主な登場人物

ポール・シェリダン(ジェームズ・カーン):
人気小説家。小説「ミザリー」の著者。

アニー・ウィルクス(キャシー・ベイツ):
山奥に一人で住む中年の女性。元看護師。小説「ミザリー」の大ファンで、ポールの熱狂的なファン。

その他の登場人物

バスター保安官(リチャード・ファーンズワース): シルバー・クリークの保安官
マルシア・シンデル(ローレン・バコール): ポールの担当出版エージェント
ヴァージニア(フランシス・スターンハーゲン): 保安官の妻

あらすじ

「ミザリー」の小説で人気だったポール・シェリダンは、シルバー・クリークのロッジでタイトル未定の小説を完成させた。シャンパンを飲み、マッチをすって一服し古い革鞄に原稿を入れ、雪道に車を走らせた。しかしポールの車はスリップし転落。気づくとアニーという中年女性がポールを甲斐甲斐しく看病し、彼女の家はシルバー・クリークの近くだという。彼女はポールのファンで幸い看護師の資格を持っていた。ポールの怪我は思わしくなく両足が骨折しており動かせない状態だった。一方出版社エージェントのシンデルは行方不明のポールを探すためシルバー・クリークのバスター保安官に捜索要請の電話をかけていた。ポールの大ファンだと言うアニーはカバンに入っている新作に興味を持ち、ポールは命の恩人だと言って読むことを許可した。しかし小説を読み始めたアニーは不満を口にし始め、興奮し声を荒げた。その豹変ぶりにちょっと面食らったポールだったが、アニーは慌ててたまにこうなると話す。バスター保安官は妻兼保安官補助を連れ車で捜索。途中木の枝が折れていることに気づき車を止め、下に降りてみるが雪が深くポールの車をみつけることができなかった。

どんな映画?

「悲惨な」という意味合いを持つミザリーですが、この映画の中のミザリーは「ミザリー・シリーズ」という小説の中の主人公の女性のことです。
小説「ミザリー」はビクトリア朝を舞台にしたロマンス小説らしく、怪奇小説ではありません。

この「ミザリー」シリーズで人気作家のポールは完成した原稿を車に乗せ急いでコロラドの雪道を走らせます。

が、あっさり車はスリップし真っ逆さま。

ポールは「ミザリー」で成功したものの作品自体に納得しておらず「ミザリー」を殺して終わらせ、代表作になるような作品に意欲を燃やしていました。

ポールが目覚めるとそこにいたのは
太ったおばさん❤️
彼女はアニーと名乗り車からポールを救出しベッドまで運んで来たというのです。
かなりの痛手を負ったポール。
足は複雑骨折をしており寝たきり状態。
幸か不幸かアニーは看護師だと言います。

「ミザリー」の1番のファンだと自称するアニー。
甲斐甲斐しくポールの面倒を見ますが次第に様子がおかしくなっていき…

巨大ハンマーを持つアニー。

原作ではポールの足はアニーにによって斧で切断されてしまうのですが、
それはさすがにまずかろーということで映画版では足をハンマーで潰すに留まっていますが十分に恐ろしいです。

アニーの猟奇的な思考は、ポールが見た事件のスクラップブックの中にありました。アニーは代理ミュンヒハウゼン症候群であったように思われます。ミュンヒハウゼン症候群は周囲の関心を自分向けさせるためにわざと怪我や病気を捏造します。これに代理がつくと自分ではなく他者をわざと傷つけそれを甲斐甲斐しく看護することで賞賛を得ようとします。こんなことされてはたまったものではありませんが、医療の世界では国を問わずしばしば見受けられ、おまけに犠牲者が多数になってしまうという恐ろしいものです。
スティーブン・キング自身ははっきりと言及していませんが、しばしば1980年代にアメリカで実在に発生した看護師によって乳児60人余りを殺害したと言われる事件を元にしていると指摘されています。

最悪の出会いで恐怖体験をする「悲惨な」物語ですが、ラストが秀逸なスリラー映画の名作です。

スタッフ・キャスト

監督のロブ・ライナーは今年の6月に98歳でお亡くなりになった俳優で映画監督のカール・ライナーの息子。カール・ライナーと言えば、コメディ映画を得意としコメディアンのスティーヴ・マーティンとのタッグで有名。個人的には劇場未公開ですが「2つの頭脳を持つ男」(1983年)が好きです。息子のロブ・ライナーもマルチで活躍する俳優兼映画監督。1986年にスティーヴン・キング原作の非ホラー映画「スタンド・バイ・ミー」が大ヒット、続いてウィリアム・ゴールドマンの原作・脚本の冒険ファンタジー「プリンセス・ブライド・ストーリー」(1987年)、メグ・ライアンを一躍人気ラブコメ女優に押し上げた大ヒット恋愛映画「恋人たちの予感」(1989年)と80年代にヒット作話題作を連発。2007年にはジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンを主演に「最高の人生の見つけ方」を大ヒットさせています。

脚本は作家で脚本家のヒットメーカー、ウィルアム・ゴールドマン。著作として「マラソン・マン」や「マジック」、「殺しの接吻」などがあり、担当した映画脚本は「動く標的」(1966年)、「明日に向かって撃て!」(1969年)、「ステップフォードの妻たち」(1975年)、「大統領の陰謀」(1976年)、「マラソン・マン」(1976年)、「マジック」(1978年)など有名作品だらけです。

イカれた熱烈ファンの中年女を迫真の演技でアカデミー賞主演女優賞を獲得したキャシー・ベイツ。1971年の映画デビューからあまりパッとした役に恵まれていなかった彼女が、まさに我が意を得たりとばかりに演じたアニー・ウィルクス役はキャシー・ベイツじゃなきゃ映画自体ここまで成功しなかったんじゃないかと思われる程のはまり役でした。「フライド・グリーン・トマト」(1991年) 平凡な主婦を演じ、スティーヴン・キング原作の「黙秘」では殺人容疑の母親役、「タイタニック」(1997年)では不沈のモリー・ブラウンを演じています。テレビドラマの「アメリカン・ホラー・ストーリー」など多くのテレビや映画作品に登場していますが、やっぱり出てくるだけでホラーっぽくなりますね。

監禁される作家を演じたジェームズ・カーン。1964年の「不意打ち」で実質的に映画デビュー。この映画では監禁されていたのはオリヴィア・デ・ハヴィランドでしたが今回の映画で監禁されたのはジェームズ・カーンでしたね~。

出版社のエージェントとしてローレン・バコールが登場。また保安官役のリチャード・ファーンズワースはこの後デヴィッド・リンチ監督のおじいちゃん愛の籠った映画「ストレイト・ストーリー」(1999年)に主演し高い評価を得ましたが、翌年の2000年に病気を苦にして自ら命を絶たれました。

まとめ

足潰しで地獄行き

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