血の洗礼「沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇」

サスペンス

物静かな人ほどキレると怖いです。

[原題]La Ce’re’monie
[製作年]1995[製作国]フランス・ドイツ
[日本公開]1996
[監督・脚本]クロード・シャブロル
[製作]マリン・カルミッツ
[原作]ルース・レンデル(英)
[音楽]マチュー・シャブロル
[上映時間]111

主な登場人物

ソフィー(サンンドリーヌ・ボネール):
無口な若いメイド。メイドとしては優秀だがとある秘密を抱えている。

ジャンヌ(イザベル・ユペール):
郵便局員。ルリエーブル家の主人ジョルジュに目の敵にされている。

その他の登場人物

ジョルジュ・ルリエーブル(ジャン=ピエール・カッセル): ソフィーの雇い主。
カトリーヌ(ジャクリーン・ビセット): ジョルジュの妻。元モデル。
メリンダ(ヴィルジニー・ルドワイヤン): 大学生のジョルジュの娘。
ジル(ヴァランタン・メルレ):カトリーヌの高校生の息子。

あらすじ

新しいメイドを探していたカトリーヌはソフィーという女を面接し、紹介状も問題なくすぐに採用した。列車で到着したソフィーを車で送る際、郵便局員のジャンヌを乗せていく。カトリーヌはそれほどでもなかったが主人のジョルジュはジャンヌを毛嫌いしていた。ソフィーに部屋を案内し、早速務め始めた彼女は無口で料理上手、仕事一切を完ぺきにこなしカトリーヌの満足いくものだった。家族は主人に連れ子の大学生メリンダ、妻は元モデルでその連れ子の高校生男子ジルだった。主人も気に入り街へ行くのに車を使っていいと言うが免許がないという。免許を取らせるという主人に目が悪いというのでメガネをつくる為に眼科へ行かせる。しかし彼女は眼科へ行かず雑貨屋でおもちゃのメガネを買う。ある日テーブルの上に書きおきがあり途方にくれるソフィー、彼女はディスクレシア(難読症)で字が読めなかった。何気なく娘のメリンが手紙を読みことなきを得た。家族の旅行中、絵はがきを届けに来たジャンヌ、友達になろうというジャンヌにソフィーはうなずく。主人は届けられた小包を見て封が開けられていると騒ぎ、絶対にジャンヌにちがいないと言う。子供殺しの容疑で逮捕歴があったジャンヌを快く思っていなかったのだ。

どんな映画?

イギリスの女流ミステリー作家ルース・レンデルの同名小説の映画化ですが、先にアメリカで「ロウフィールド館の惨劇/パラノイド殺人事件」(1986年)で一度映画化されています。

サンドリーヌ・ボネール演じるソフィーは若いメイド。
ちょうど新しいメイドを探していた金持ちの妻カトリーヌは彼女を駅に迎えに行きます。
その時乗せて欲しいと言ってきたのは郵便局で働くジャンヌ。カトリーヌはソフィーと一緒に載せたやります。
顔見知りになったソフィーとジャンヌ。
カトリーヌは夫はジャンヌを嫌っているとソフィーに言います。(でも私は車に乗せてあげるけどネ)

料理も掃除も完璧にこなすソフィーですが何となく陰気な感じ。
免許を取らせてやる(上から)という主人のジョルジュでしたが、目が悪いからと断るソフィー。それでもジョルジュはメガネを作りに眼科行けと連れて行かれます。
しかしソフィーは眼科には入らず眼鏡は作りません。

戻るとソフィーはテーブルの上に置かれたメモに激しく動揺します。
彼女は目が悪いわけではなく文字が読めなかったのです。

一家はバカンスに出かけて、屋敷に残されたソフィー。
スーパーでジャンヌに会い二人は次第に打ち解け、友情を深めるのですが、
ジャンヌにもある過去がありました。

私は人を見下したりしないとか、貧乏人にもちゃんと施しを与えているとかいったブルジュア階級特有の上から目線で、差別しないという差別をしていることに全く気づいていない人たち。
ディスクレシアはIQが低いわけではないのに字が読めないのは勉強不足のような捉え方をする、自分達以外の人間に対する無理解と決めつけがどんなに相手を傷つけるか。

実は豪華キャストで、ぶち殺される主人がジャン=ピエール・カッセル。ヴァンサン・カッセルの父親でフランスを代表する俳優の一人。妻役はジャクリーン・ビセット。若い頃のビセットは本当に美しい〜。この映画では言われなきゃ気づかないような感じに中年化しておりましたが。
娘の女子大生役のヴィルジニー・ルドワイヤンは2002年のフランソワ・オゾン監督の「8人の女たち」に出演し注目されました。

スタッフ・キャスト

監督はフレンチサスペンスの巨匠とゆうか精神的に後味の悪い映画界の巨匠クロード・シャブロル。1958年に「美しきセルジュ」で監督デビュー、1959年に監督、脚本、製作を担当した「いとこ同士」がヒット。その後も「二重の鍵」(1959年)、女鹿(1968年)、不貞の女(1968年)、劇中テレビで観ていた「血の婚礼」(1973年)、イザベル・ユペールを主演にした「主婦マリーがしたこと」(1988年)、「最後の賭け」(1998年)、
「甘い罠」(2000年)、同じくルース・レンデルの原作を映画化した「石の微笑」(2004年)、実在の事件を元にした「引き裂かれた女」(2007年)、遺作となったジェラール・ドパルデュー主演の「刑事ベラミー」(2009年)とすべて後味は抜群に悪い素晴らしい作品です。長いキャリアと晩年まで精力的に作品を発表し、多作な監督さんでした。

製作者のマリン・カルミッツは映画監督・映画プロデューサー、インディペンデント映画に特化した映画会社MK2の創業者です。

主演の一人、怪しい郵便局員を演じたイザベル・ユペールは今やフランスを代表する女優の一人なんじゃないでしょうか?ほぼ同年代のイザベル・アジャーニのような美人てわけじゃないですが、何とも言えないアンニュイな眼差しとコンセルヴァトワール出身の確かな演技力、ちょっと嫌厭しそうな役でも果敢に挑む女優魂。世界三代映画祭で全て賞を受けている実力は、Wikipediaにはイザベル・ユペールの受賞とノミネートの一覧ができてるほどです。イザベル・アジャーニとは1979年の「ブロンテ姉妹」で妹役で共演していました。
この映画でヴェネツィア国際映画祭で女優賞受賞し、フランスの映画賞セザール賞で主演女優賞受賞しています。故・ジョセフ・ロージー監督作や故・クロード・シャブロル監督の常連でした。2016年にはポール・バーホーベン監督の「エルELLE」に出演アカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。

パッツン前髪に硬い表情で一見何を考えているかわからないようなサンドリーヌ・ボネール。14歳でモーリス・ピアラ監督の「愛の記念に」で映画デビュー。公開当時フランスで新星現ると非常に評判でした。ヌードも厭わない文字通り体当たりの演技を披露。1987年の同じくモーリス・ピアラ監督の「悪魔の陽の下に」では年上の恋人を殺害し自殺する16歳の少女を演じ衝撃的でした。また、1989年にはパトリス・ルコント監督が、1946年の映画「パニック」をリメイクした「仕立て屋の恋」でやっぱりちょっと何考えているかわからない女性を演じております。サンドリーヌ・ボネールもこの映画でベネチア国際映画祭女優賞を受賞しています。

まとめ

偽善者は地獄に堕ちろで地獄行き

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