人間は心理的に美人と美人でない人が同じことを言っていても、美人の言うことの方を信用してしまう傾向にあるそうです。
[原題]Stage Fright
[製作年]1950[製作国]アメリカ・イギリス
[日本公開]劇場未公開
[監督・製作]アルフレッド・ヒッチコック
[脚本]アルマ・レヴィル/ウィットフィールド・クック
[原作]セルウィン・ジェプソン
[マレーネ・ディートリッヒの衣装]クリスチャン・ディオール
[音楽]レイトン・ルーカス
[上映時間]110
主な登場人物
イヴ(ジェーン・ワイマン):
女優の卵。ジョニーに好意を寄せ、彼のピンチを助けることに。
シャーロット・インウッド(マレーネ・ディートリッヒ):
舞台女優で歌手。夫殺しの疑いがある。
ジョナサン(ジョニー)・クーパー(リチャード・トッド):
俳優でシャーロットの愛人。
その他の登場人物
ウィルフレッド・スミス(マイケル・ワイルディング): 刑事
イヴの父(アラステア・シム): 母とは別居中
イヴの友人(パトリシア・ヒッチコック)
あらすじ
ジョニーを車に乗せたイヴは彼にわけを聞く。ジョニーは女優シャーロットの愛人だった。その日扉をあけるとドレスに血をつけたシャーロットがジョニーとの仲を疑った夫を殺したと言ってきた。ジョニーはためらいながらも着替えのドレスを持っていくためシャーロットの家に入った。部屋には男がクローゼットの前に横たわり彼を押しのけ青いドレスを取り強盗を装って部屋を荒らしているとメイドが入ってきてしまい逃げていくところを見られる。シャーロットが出ていった後ドレスを処分すると彼女にいったがためらいイヴに電話をかける。しかし彼女は王立演劇学校にリハーサルに出かけたと言われ、電話を切った後ドレスを腹にしまいこみ警察に応対するが逃げだす。車に乗り込みエンジンをかけようとするがガラスをたたかれひびが入る。そのまま車を走らせ王立演劇学校につくが警察もすぐに追いかけてくる。ジョニーは舞台のイヴにいきなり抱きつき警察に追われていると二人でイヴの車で逃げる。シャーロットとの愛人関係を聞いたがイヴは彼を愛していた。海辺の父親の家を尋ね眠りこけたジョニーをよそに、父親はシャーロットのドレスをみて血はわざとつけられたものと告げる。イヴはジョニーを起こしあなたはシャーロットに利用されていると告げるが逆上したジョニーはドレスを燃やしてしまう。二階でジョニーを寝かせた後、二人で外に出て話す。イヴはシャーロットに会って話をつけると言うが父は彼女は危険な女だと反対し、このままいけば共犯で裁判にかけられ二年は刑務所だとそんなにあの男が大事かと問いかける。
どんな映画?
こちらの映画はオスカー女優のジェーン・ワイマンやマレーネ・ディートリッヒなどの大スターが出演しているにもかかわらず、ヒッチ先生には珍しく日本では劇場未公開作となっています。
女優の卵イヴはイケメンジョニーを
車に乗せ警察から彼を逃す最中でした車中で彼が語ったのは…
大女優のシャーロットがドレスのスカートにべっとり血をつけたままジョニーの部屋を訪れたと言います。
ジョニーはシャーロットの愛人で関係を疑った夫をシャーロットが
殺害してしまったと言うのです。
ジョニーはシャーロットの着替えを家まで取りに行って欲しいと言う要望に応え、彼女の屋敷に行きます。
そこには火かき棒と倒れた夫の姿が。
着替えのドレスを手に取った後ジョニーはメイドに目撃されてしまったと言います。シャーロットはジョニーに身を隠してと言い劇場に向かいますが、ジョニーは血のついたドレスを懐に隠し警察を巻いて逃走。
友人のイヴを頼ったのでした。
ジョニーを愛していたイヴはジョニーを父親の家に匿います。
父親は血の着いたドレスを見て
これは故意につかられたもので
ジョニーが陥れられたのかもと
ジョニーはそんなはずないと
ドレスを暖炉に投げ捨て燃やしてしまいます。
シャーロットにたぶらかされてるー!!
と思っているイヴ。
こーなったらシャーロットと対決じゃーと父に告げるのですが…
イヴの父はボーイスカウトの少年に血のついた人形を渡し、シャーロットの目の前まで運ばせます。
「ラ・ヴィアン・ローズ」を歌っていたシャーロットでしたがその人形を見て思わず歌が止まってしまいます。
この映画は1922年にイギリスで発生したイーディス・トンプソンとフレデリック・バイウォーターズの事件に類似性があるとされています。
この事件はトンプソン夫人の夫を愛人である青年フレデリックが夫人の目の前で殺害すると言う殺人事件でしたが、裁判においてトンプソン夫人が若いフレデリックを唆した共犯として二人とも死刑になると言う当時からもイギリスでは大変有名な裁判でした。
不倫の上の殺人、そして実行犯のフレデリックはかなりのイケメン。
格差婚で飽き飽きしていた夫を若いイケメンの愛人を使って殺害させるという事件は大衆の興味を惹きました。
このカップルは蝋人形館「マダム・タッソー館」の恐怖の部屋に飾られていたそう。
公開当時わかりにくいという評価が下り、ヒッチ監督自身も失敗だったと後のインタビューで語っていますが、現在では信頼できない語り手による叙述トリック物の一本として再評価されて良い作品だと思われます。
スタッフ・キャスト
1939年以来初のイギリス映画となったこちらの映画。ヒッチ先生はイーディス・トンプソンとフレデリック・バイウォーターズの事件に非常に興味を持ちドキュメンタリー映画を撮りたいと考えていたようですが、遺族への配慮により断念したようです。ですが、プロットをこの「舞台恐怖症」に投影していると言われています。
ヒッチコックとアルマ・レヴィルとの娘パトリシア・ヒッチコックがこの映画でデビューしております。
かわいいのか?とやや微妙なラインのヒロイン、ジェーン・ワイマンはレイ・ミランドがアル中を演じアカデミー主演男優賞を獲得した「失われた週末」(1945年)で、彼に献身的に付き添う恋人役を演じ注目され、1948年に主演した「ジョニー・ベリンダ」で聾唖のレイプ被害者を演じてアカデミー賞主演女優賞を受賞しています。またダグラス・サーク監督、ロック・ハドソン共演で「心のともしび」(1954年)や「天はすべてを許し給う」(1955年)などのメロドラマで揺れる主婦を演じ高評価を得て、非常にアメリカで人気のある女優さんでした。ほんでもってジェーン・ワイマンがある意味有名だったのが、第40代アメリカ合衆国大統領ロナルド・レーガンと結婚していたこと。ロナルド・レーガンは当時俳優でしたが主役級ではなくジェーン・ワイマンが確実にキャリアを重ねる中次第に映画出演がなくなっていきます。1985年のロバート・ゼメキス監督の超人気作「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で1955年にタイムスリップしたマーティーがドクに大統領はロナルド・レーガンと話すとドクがバカにしたように「じゃあファースト・レディーはジェーン・ワイマンか?」という有名な台詞があります。1955年にはすでに二人は離婚していたんですけどネ。
一方刑事役を演じたマイケル・ワイルディングはイギリスの人気俳優。こちらは8回結婚したエリザベス・テイラーの2番目の夫としても有名です。ヒッチ監督作品では「山羊座のもとに」(1949年)に出演しています。
ディートリッヒの愛人を演じたリチャード・トッドはイギリスの俳優。ディズニー映画である「ロビン・フッド」(1952年)にロビン・フッドを演じ人気を得ました。またマイケル・アンダーソン監督のカルト・スリラー映画「生きていた男」に主演、1960年にはジョン・ギラーミン監督のフィルム・ノワール「喰いついたら放すな」に出演しています。
ヒッチ先生登場シーン
39分ごろメイドに扮したジェーン・ワイマンとすれ違って振り向く。
まとめ
イケメン信じて地獄行き
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