天才と犯罪者は紙一重
[原題]F for Fake
[製作年]1975[製作国]イラン・フランス・西ドイツ
[日本公開]1978
[監督・脚本]オーソン・ウェルズ
[監督(ノンクジレット)]フランソワ・ラインヘンバッハ/ゲイリー・グレイバー/オヤ・コダール(兼脚本)
[音楽]ミシェル・ルグラン
[上映時間]89
主な登場人物
本人(オーソン・ウェルズ):
大柄のひげオヤジ。マジックを披露する。
謎の美女(オヤ・コダール):
街を歩けば人目を惹く美女。彼女は金持ちだと言うが真偽のほどは?
その他の登場人物
本人(エルミア・デ・ホーリー): 贋作作家
本人(ジョゼフ・コットン):インタビューに答える
本人(ポール・スチュワート):ご自身
本人(ローレンス・ハーヴェイ): 空港で出くわす。
本人(ピーター・ボグダノビッチ):声の特別出演
本人(ジャン=ピエール・オーモン):ご自身
あらすじ
ひげを生やし巨体の怪しい老人オーソン・ウェルズ。駅のホームで子供の持っていた鍵を手の中に包みコインに変えてしまう。コインを消したかと思うと、鍵は少年ポケットの中、それを列車の中からみていた謎の美女はウェルズにいつもの手ねと声をかける。ウェルズはロベール・ウーダンの話をし、彼いはく「マジシャンとは魔法使いを演じる役者である」とコインをうさぎに変えたあと、ウェルズは自分をペテン師だといいながらある人物の話は本当だと告げる。彼はエルミア、本名はエルミア・ホフマン、60の名を持つ贋作専門の画家で、世界第二のペテン師だという。彼の自伝を書くというアーヴィングという男が現れた。(円盤がビームを発射する映像。フィルム)オヤ・ゴダールのタイトル。(手書き)美脚が映り、道を歩くたびに通行人の男たちの視線を浴びる。これはやらせというウェルズ。男たちは知らない間に撮影されているという。空港でオヤは俳優のローレンス・ハーヴェイに会う。航空券は一枚しかない。そこでウェルズはオヤを縮めて手荷物として持ち込むことに。箱に入ったオヤは縮められスーツケースの中に入った。彼女は悪名高いペテン師だが、次の一時間は真実だと。ウェルズと画商のフランソワはイビサ島(地中海の島。スペイン領、リゾート地で知られる。)でペテンの歴史上最大のスキャンダルに迫った。イビサ島は太陽の島と呼ばれ、ライフ誌によると「不安な魂が出会う島」だという。不安な魂というのはアーヴィングとエルミアだという。1970年代に、アーヴィングはハワード・ヒューズの自伝を捏造し金をだまし取ったという、妻のエディスとで詐欺事件を起こした。1959年エルミアはイビサ島に来て、気にいったエルミアは定住する。エルミアはマティスやドンゲンなどの作家の贋作を次々手掛け美術館に売りつけ、彼が読む新聞には美術界に泥を塗ったと評された。彼は一時間でモディリアーニを書き上げた。専門家や評論家を欺くことは快感にちかく、美術館にある後期印象派の作品はほぼエルミアのものだし、カタログにのっているモディリアーニすら彼の描いたものだ。
どんな映画?
長らくオーソン・ウェルズの最後の監督作品とされていた「オーソン・ウェルズのフェイク」でしたが、ウェルズが亡くなってから30年以上経った2018年にこの映画に登場するオヤ・コダールの許可を経て、ピーター・ボグダノビッチが監督によってオーソン・ウェルズ幻の作品「風の向こうへ」が完成しました。この映画を所有権を持っていたのがオヤ・コダールという女性でした。
ってオヤ・コダールって誰やねん?
駅のホームで髭にマントの怪しい巨体の男
その名はオーソン・ウェルズ
少年から鍵を借りそれを消したかと思うと次にコインを手に取り鍵に変える奇術を披露します。
そこに登場した高級そうな毛皮を身に纏い颯爽と歩く美女。
彼女がオヤ・コダール。
この映画のキーパーソンです。
オヤを街中で歩かせ男達を隠し撮り。
チラ見からまじまじと彼女を見る男達。
今度はエミリア・ホフマンという贋作作家のインタビューに。
イビサ島での生活の様子を撮っていくのですが…
少年の前でコインのマジックを披露するオーソン・ウェルズ。
オーソン・ウェルズ自身マジックが趣味で、腕前は相当だったそう。
ドキュメンタリー形式でありながらタイトル通り「フェイク」です。
ですが真実もあります。
出てくる人物自体は実在の人物だと言うこと。
この映画の中でウェルズは自身の過去の話をし、放浪をやめ16歳で役者を始め、ニューヨークではスターだと偽ったとのこと。最大のペテンは火星人と円盤が襲来したとラジオ放送し、全米をパニックに陥れました。その後映画界に入ったウェルズは初の企画で、ジョゼフ・コットンを主演とし、ヒューズをモデルに映画を考えたが、自分が主役の映画に変更されたとコットン自身が語っています。その映画がアメリカ映画史に残る名作「市民ケーン」(1941年)でした。
嘘の中に真実があり、真実の中に嘘がある。
何が真実なのか全てをケムに巻くオーソン・ウェルズ。天才かペテン師か?、個人的にはペテン師で天才なんじゃないかと思います♪
スタッフ・キャスト
監督のオーソン・ウェルズは生涯で3回結婚していると言われています。2番めの妻は1943年に結婚したリタ・ヘイワース。1947年に自身の監督・主演の「上海から来た女」で共演しましたがこの頃すでに疎遠となり、間もなく離婚。その後1955年の自身の映画「アーカディン 秘められた過去」に出演したイタリアの貴族で女優でもあったパオラ・モリと結婚。3番目の妻となります。彼女はこの映画でオーソン・ウェルズと親娘役でした。パオラ・モリとも娘がおり、オーソン・ウェルズが死亡するまで離婚することなくはなく最後の妻だとされています。
ですがここで登場するのがオヤ・コダールと言う女性。クロアチア出身の女優であったオヤ・コダールは1960年代からオーソン・ウェルズと公私共にパートナー関係にあった模様。長年妻と彼女のを行き来していたそうです。オヤ・コダールの映画のキャリアはほぼオーソン・ウェルズとのプロジェクトに限られていましたがその企画の多くが完成までに至らず、彼女が出演している「風の向こうへ」もその一つでした。彼女の協力なしには完成しなかったのでした。
この映画で天才贋作家として登場するのがエルミア・デ・ホーリーです。いくつもの偽名を使いルノワールやモディリアーニ、マティスなどの有名作品の贋作を数多く描き、贋作を本人の新作として多くの美術館に売り捌いたのでした。もちろんレッキとした犯罪です。ですがアメリカの作家クリフォード・アーヴィングが1969年にデ・ホーリーの伝記「贋作」を発表し、この映画の取材でさらに有名になりました。クリフォード・アーヴィングは「贋作」の他にハワード・ヒューズの自伝を捏造し詐欺で逮捕されます。この詐欺事件は「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」(2006年)として映画化されています。アーヴィングを演じたのはリチャード・ギアでした。
ちらっと出てくるローレンス・ハーヴェイはイギリスで活躍した人気俳優。1958年に「年上の女」に出演、ジョン・フランケンハイマー監督の「影なき狙撃者」で印象的な役を演じています。1973年の暮れに胃癌で死去しているためこの映画が最後の出演作となってしまいました。
まとめ
狐につままれて地獄行き
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