鏡の中の自分「プラーグの大学生」

怪奇

三人目に会ったらやばいらしいです。

[原題]The Student of Prague
Der Student von Prag
[製作年]1913[製作国]ドイツ
[日本公開]1914
[監督]シュテラン・ライ
[製作]パウル・ヴェルゲナー
[原作・脚本]ハンス・ハインツ・エーヴェルス
[上映時間]58

主な登場人物

パルドウィン(パウル・ヴェゲナー):
プラーグの大学生、最強の学生剣士。金がなく困っている。

その他の登場人物

マルギット(グレーテ・ベルガー):パルドウィンが助けた女伯爵
リドゥーシュカ(リディア・サルモノワ): パルドウィンを愛するロマの娘
スカピネリ(ヨハン・ゴトウト): 怪しい金貸し

あらすじ

1820年、大学生パルドウィンはカフェでジプシー娘と戯れ青春を謳歌している友人たちを尻目に悩んでいた。そこに馬車から嫌われ者のスカピネリ(シルクハットにメガネの老人)が降りてきてパルドウィンの隣に座り声をかける。悩みを聞くと彼は破産して八方塞がりだと言う。スカピネリは彼にささやきかけ二人でその場を後にする。それを後ろからじっくり見ていたジプシー娘のリドゥーシュカは、スカピネリに怪しい力があると知っておりボールドウィンを心配した。一方伯爵家が沢山の猟犬を従えて狩りに出かけていた。馬に乗った女伯爵マルギットは馬が暴走し止まらない。そこに通りかかったパルドウィンとスカピネリを馬は勢いよく通り過ぎ、川に突っ込んだ。ボールドウィンはすかさず駆け寄り川の中から彼女を救い出した。後日伯爵家を訪れ彼女に会いに行ったパルドウィンだったがその身分の違いに落胆し汚い下宿でうなだれていた。そこにヌッとスカピネリが現れ、テーブルの上に沢山の金貨をばら撒きパルドウィンに囁きかける。「君は最強の学生剣士だけでなく大金持ちになれる」と、パルドウィンが条件を尋ねると彼は紙を取り出した。そこには「金貨10万枚受領の代償として、この部屋の中の物をすべて引き渡すことに同意する」と書かれてあった。そんなことかとパルドウィンは簡単にサインをする。するとスカピネリはパルドウィンを鏡の前に立たせ「君の片割れをもらって行くよ」と言って、鏡の中から抜き出てきたパルドウィンを連れて行ってしまった。当初は困惑したパルドウィンだったが大金が入り名士からの招待を受けるようになる。

どんな映画?

タイトルの「プラーグ」はチェコの首都プラハのこと。プラハの学生というタイトルですが、ドイツのサイレント映画で「カリガリ博士」(1920年)に先駆けてホラー映画の元祖とも言え、それまで低俗とされていた映画を芸術作品に押し上げたとされる重要な作品です。

怪奇作家のハンス・ハインツ・エーヴェルスによって、エドガー・アラン・ポーの短編小説「ウィリアム・ウィルソン」と
「神でも悪魔でもないが悪魔からお前と同じ名を付けられたお前の行く所には最後までついて行くお前の墓に座るまで 」
というアルフレッド・ド・ミュッセの詩「十二月の夜」をベースに作られた所謂ドッペルゲンガーものです。

プラハの大学生パルドウィンは学生最強の剣士として名を馳せていましたが、いかんせん金がない。

そんなパルドウィンに近づいてくるのは嫌われ者の金貸しスカピネリ。
後ろではパルドウィンを愛するロマの娘リドゥーシュカ。

このロマの娘がすごい!
愛するパルドウィンのために高いバルコニーまでよじ登るという行動力です。

そんな彼女を尻目にパルドウィンは
スカピネリと行ってしまいます。
森の中を二人で歩いていると狩に来ていた女伯爵マルギットの馬が暴走し、すかさずそれを助けたパルドウィンは女伯爵に一目惚れ❤️

しかし身分の差に悩むパルドウィン。
そんな彼の下宿に現れたスカピネリは金貨を払う代わりにこの部屋にある全てをよこせと言ってきます。

大したものはないと契約するパルドウィンでしたが、スカピネリが持って行ったのは鏡に映ったもう一人のパルドウィンなのでした。

影のようにつきまとうもう1人の自分に憔悴していくパルドウィン。

ラストの不気味さが秀逸な映画です。

1926年に同じくドイツでヘンリック・ガレーン監督によりコンラート・ファイト主演で再映画化。
また、1935年にも映画化されていますがこちらは評価が低かったようです。

スタッフ・キャスト

原作者のハンス・ハインツ・エーヴェルスは絞首刑になった男と娼婦との人工授精で生を受けた美少女アルラウネが、周囲を破滅させてゆくというゴシックホラー小説「アルラウネ」(1913年)を書いています。この「アルラウネ」はヘンリック・ガレーン監督ポール・ヴェゲナー主演で1928年に映画化されています。

原案・脚本のハンス・ハインツ・エーヴェルスと製作・主演のパウル・ヴェゲナーと共にこの映画をシュテラン・ライが監督。デンマーク出身で20世紀の早い時期に活躍しましたが第一次世界大戦で亡くなられたようです。

主演のパウル・ヴェゲナーはこの時すでに39歳の太鼓腹。この映画で高い評価を得た後1915年にヘンリック・ガレーンと共にユダヤ教に伝わるゴーレム伝説から着想を得て脚本、監督を担当した「ゴーレム」を製作。この映画は3部作となり続いて「ゴーレムと踊り子」(1917年)、最も有名な「巨人ゴーレム」(1920年)があります。いずれもゴーレムをパウル・ヴェゲナーが演じています。また、私生活ではロマの女を演じたリディア・サルモノワを結婚と離婚を繰り返し、F・W・ムルナウ監督の「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922年)でヒロインを演じたグレタ・シュレーダーは彼の4番目の妻になりました。ドイツ表現主義映画における先駆者的な存在です。

パルドウィンを慕うロマの女性を演じたリディア・サルモノワは夫となるパウル・ヴェゲナーの映画に多数出演。ヴェルゲナーとの間には後に物理学者になるペーター・ヴェルゲナーがいます。

スカピネリを演じたヨハン・ゴトウトは「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922年)で原作のヴァン・ヘルシング教授にあたるブルワー教授を演じています。

まとめ

魂の取引で地獄行き

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