子供は怖いよ「回転」

怪奇

子守唄は実は怖いものが多かったりします。

[原題]The Innocents
[製作年]1961 [製作国]イギリス
[日本公開]テレビ放映有り
[監督・製作]ジャック・クレイトン
[脚本]ウィリアム・アーチボルド/トルーマン・カポーティ
[原作]ヘンリー・ジェームズ
       「ねじの回転」
[音楽]ジョルジュ・オーリック
[上映時間]100

主な登場人物

ミス・ギデンス(デボラ・カー):
ブライ卿からマイルス、フローラ兄妹の家庭教師として彼らの養育を任される。妙齢の独身女性。

マイルス(マーティン・スティーヴンス):
兄10歳。学校を退学になり屋敷に戻ってくる。

フローラ(パメラ・フランクリン):
妹8歳。かわいらしい少女だが何かありそう。

その他の登場人物

ブライ卿(マイケル・レッドグレイヴ):子供たちの叔父。遺児となった兄妹の養育を人任せにしている。
グロース夫人(メグス・ジェンキンズ):屋敷のメイド。兄妹の世話をしている。
ピーター・クイント(ピーター・ウィンガード):屋敷の下男。すでに死んでる。

あらすじ

ミス・ギデンスは、二人兄妹の遺児を引き取っているブライ卿から家庭教師(ガヴァネス)になって欲しいと依頼を受ける。兄妹の叔父であるブライ卿はロンドンにおり、二人を教育し信頼関係を築いて欲しいとギデンスに念を押すが、家庭教師の経験がない彼女は不安を隠せなかった。また以前に家庭教師をしていた若いミス・ジェスルが亡くなっていることは妹のフローラには伏せておくようにと伝えられる。彼女の死後、兄のマイルスを寄宿学校に入れ、妹のフローラはメイドのグロース夫人に任せていると言う。ミス・ギデンスはブライ卿に子どもたちを必ず幸せにすると誓い屋敷に向かった。風光明媚な田舎町にある広大な屋敷が見えてくると、ミス・ギデンスは馬車を降りて屋敷まで歩いて向かった。湖の辺りを通るとフローラと声が聞こえ、そこに少女が立っていた。フローラは新しい家庭教師を心待ちにしていたとミス・ギデンスを歓迎する。二人で屋敷に向かい、メイドのグロース夫人に挨拶を交わす。屋敷の中に入ると想像以上に広大で荘厳な雰囲気に圧倒される。その夜フローラに寝室に案内されたミス・ギデンスはフローラを寝かしつけた後、同じ部屋で眠りにつく。深夜起き出したフローラは眠っているミス・ギデンスを見つめ、今度は開いてる窓から庭を眺めていた。ミス・ギデンスはうまくやっていけるかもと感じる中、ロンドンからの手紙で兄のマイルスが寄宿学校を退学となり屋敷に戻ってくると知らされる。教師の手紙によるとマイルスは不道徳で他の生徒に悪影響を与えると言うのだ。フローラとともに駅でマイルスを迎えるミス・ギデンス。かわいらしく利発そうなマイルスはミス・ギデンスに花を渡し二人はすぐに打ち解ける。その夜ベッドにいるマイルスに学校を退学になりなにか悩みが無いかと尋ねるが、マイルスは何も答えず涙を流す。ミス・ギデンスが力になるとマイルスの涙を手で拭った瞬間、窓が音を立てて開きロウソクの炎がかき消された。

どんな映画?

この映画は、アメリカ出身イギリスで活躍した小説家ヘンリー・ジェームズによって1898年に発表された「ねじの回転」をイギリスの映画監督ジャック・クレイトンが映画化した作品となります。

二人の遺児を引き取っているブライ卿から
彼らの教育係として依頼されたミス・ギデンス。
ブライ卿はダンディな感じで独身女性の
ミス・ギデンスはちょっと気になる模様

ブライ卿の期待に答えるべく田舎の
屋敷に向かったミス・ギデンス
途中の湖でふと
「フローラ」
と声が聞こえたような気が…

そこにいたのは可愛らしい少女
この子がフローラかぁ
ですが そこには少女だけで
誰もいないようです。

そのままフローラと一緒に屋敷に入ったミス・ギデンス
ゴシック調の屋敷は素晴らしい!

フローラやメイドのグロース夫人とも
うまくやっていけそう
。そんな時フローラの兄マイルスが学校を
退学となり屋敷に戻ってくることに。

マイルスは利発そうな少年で一見
問題はなさそうですがどこか不道徳な匂いが…
そんな中屋敷では幾度となく人影を
目撃するミス・ギデンス

あれはきっと亡くなった前の家庭教師
ミス・ジェスルと下男のクイントの
幽霊
に違いないと考えます。

子どもたちを悪霊から救わなければ!!!

とミス・ギデンスの格闘が始まるのですが…

オープニングの物悲しい歌はイギリス民謡「O Willow Waly」。この歌が不気味で素晴らしく効果的です。

この映画の主人公ミス・ギデンスが勤めるのがガヴァネスというもの。19世紀中頃のイギリスで成人男性の晩婚化などで、大量に発生した独身女性が自活の方法として、中流家庭以上の女性が就業したのがこの職業だったそう。
主に上流階級の子女の教育に携わりましたが、しばしば可愛そうな存在として扱われていたようです。
この映画のガヴァネスであるミス・ギデンスも牧師の娘で美しいですがとっくに婚期を逃しているし、前任であったミス・ジェスルは、下男に籠絡されています。
美人なのに結婚できない、ちゃんとした男と付き合えない!何だか現代にも通じますね。

さて、そんなギデンスさんが担当したのが美しい兄妹たち。愛情を持って接しようと努力しようとする中、屋敷の中で目撃するようになる男女。彼らは死んだミス・ジェスルと下男の幽霊に違いないと確信するギデンス女史。子どもたちも見えているはず!だと。しかしグロース夫人も子どもたちも決して認めません。
きっと子どもたちは幽霊に魅せられてるに違いない!救えるのは私だけ!と半ばヒステリックに暴走し始めるギデンス。

果たして幽霊は彼女の妄想なのか?

妄想だとしたら、ただの頭おかしいおばさんになってしまうので、やっぱり悲壮感がただよう恐怖映画になっております。

ゴシック・ホラーの様相を呈しながら、1963年のロバート・ワイズ監督の「たたり」に通じる心理ホラーの傑作です。

この映画の前日譚であるミス・ジェスルと下男クイントの変態的関係と子どもたちの罪を描いたのが「妖精たちの森」(1971年)です。

スタッフ・キャスト

監督はイングランド出身のジャック・クレイトン。1952年にジョン・ヒューストン監督による画家ロートレックの伝記映画「赤い風車」で監督補佐を勤めた後、1959年に長編映画を初めて「年上の女」を監督。この映画は、当時イギリスで人気があった若手俳優ローレンス・ハーヴェイとこの頃ちょっと薹が立ったフランスの実力派女優シモーヌ・シニョレを主演にした年の差恋愛の悲劇モノで、作品は高く評価され、シモーヌ・シニョレはアカデミー賞主演女優賞を獲得しております。1974年にはアメリカでフィッツジェラルドの小説を映画化した「華麗なるギャツビー」を監督し、主演のロバート・レッドフォードのギャツビー役がハマり興行的に成功を収めています。また、1983年にレイ・ブラッドベリの小説を映画化したホラー「何かが道をやってくる」を監督されています。

主演のミス・ギデンスを演じたのは当時アラフォーのデボラ・カー。イギリス出身でその美貌から元祖イングリッシュ・ローズと讃えられた女優さんで、1947年に出演したマイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー監督の「黒水仙」でその美貌を世界中にに知らしめました。その後もバート・ランカスターとの浜辺のキスで有名な「地上より永遠に」(1953年)やユル・ブリンナーと共演した「王様と私」(1956年)などの代表作がありますが、その後は何故かオールドミスの役がハマっています。1958年に出演したオットー・プレミンジャー監督の「悲しみよこんにちは」ては、主人公の父親と交際するバツイチ女性やデルバート・マン監督の群衆劇「旅路」では威圧的な母親の為に婚期を逃してしまった独身女性を演じています。この「回転」でも婚期を逃した女性を演じていますが、美人なのに結婚していないと普通の女性よりさらに悲壮感がますという効果があるのかもしれません。

子役の少女を演じたのが神奈川生まれのイギリス人女優パメラ・フランクリン。こちらの「回転」が当時11歳のパメラ・フランクリンの映画デビュー作となります。その後も演技力と美少女っぷりで子役として活躍。1965年にベティ・デイヴィスが妖怪ではなくナニーを演じた「妖婆の家」に出演。1968年に出演したロナルド・ニーム監督、イギリスのベテラン大女優マギー・スミスと共演した「ミス・ブロディの青春」ではヌードを披露しています。また、ホラー映画の出演も多く「女子大生・恐怖のサイクリングバカンス」(1970年)や「ウイッチング」(1972年)、「女子大生悪魔の体験入学」(1973年)などB級感半端ないけど面白そうでしょ?な作品に出演。中でも1973年に出演したジョン・ハフ監督の「ヘルハウス」はご自身の代表作となっています。

兄のマイルスを演じたマーティン・スティーヴンスはこの映画の前年に出演したSFホラー映画「未知空間の恐怖/光る眼」(1960年)で、ジョージ・サンダースの息子役としても知られています。
また、友情出演的にイギリスを代表する俳優の一人マイケル・レッドグレイヴが出演されています。

まとめ

男女の幽霊で地獄行き

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