自分が正常かどうか
心配になる時があります。
[原題]Bedlam
Chamber of horrors
[製作年]1946[製作国]アメリカ
[日本公開]劇場未公開・ビデオ発売
[監督・脚本]マーク・ロブソン
[製作・脚本]ヴァル・リュートン
[製作総指揮]ジャック・J・グロス
[撮影]ニコラス・ムスラカ
[音楽監督]C・バカライニコフ
[音楽]ロイ・ウェッブ
[上映時間]80
主な登場人物
ジョージ・シムズ(ボリス・カーロフ):
詩人兼精神病院院長。強欲で金に汚く、精神病患者を人間とも思っていない。
ネル・ボーデン(アンナ・リー):
両親を亡くし身寄りの無い23歳の女性。モーティマー卿の話し相手として卿の庇護を受けていた。勝ち気な美人。
その他の登場人物
ロード・モーティマー卿(ビリー・ハウス):腹黒政治家
ウィリアム・ハニー(リチャード・フレイザー):石工、クエーカー教フレンド会の信者。良心的。
金箔の少年(グレン・ヴァーノン):精神病患者
シドニー・ラング(イアン・ウルフ):患者、元弁護士
オリバー・トッド(ジェイソン・ロバーズ・Jr):患者の一人
あらすじ
1761年のロンドン。18世紀のこの時代を「理性の時代」と呼んだ。腐れ貴族モーティマー卿とネルが馬車に乗っていると、ベスレム・セント・メリー精神病院で患者が脱走し落下したと騒ぎになっていた。モーティマーは病院長であるシムズに2ペンス払うと見せてくるぞと彼女に話すが、ネルはとんでもないと拒否する。脱走した男の遺体を見てモーティマー卿は、翌日シムズを屋敷に呼び出した。早朝ベッドの中でシムズに面会したモーティマー卿は、シムズにわざと男を死に追いやったのだろうと責め、そこにいたネルも事故に見せかけて殺したのだろうと言うと、シムズはあくまでも事故だと主張する。卿は亡くなった詩人の男に、パーティーの仮面劇の台本を依頼し前払いをしていたと聞き、シムズは代わりに自分が書きますと答えた。ネルは気味悪く、強欲なシムズに嫌悪感を抱いていた。さらにシムズは精神病患者を出演させようと提案し、卿はライバルのウイルクスを見返せると喜んだ。悪趣味な提案にネルはさらに不快感を露わにし、自分を卿の愛人みたいに扱いに虫唾が走った。病院に戻ったシムズは、仕事を求めてきた石工を無視して待たせていたが安く仕事をすると聞いて会うことにする。シムズは石工に当然のようにリベートを求めるが実直な石工は聞き入れなかった。そこにネルが病院の見学に訪れた。ネルはシムズに2ペンスを支払い病院の中に入るとその劣悪な環境に驚いた。シムズは楽しげに院内を紹介し、患者を動物に例え動物園のように檻に閉じ込めたりしていた。出て行くネルにもっと面白いものがあると言うシムズに、何が面白いのだとシムズの顔に鞭打った。馬に乗ろうとするとさっきの石工がネルに声をかけてきた。石工はクエーカー教フレンド会のウィリアム・ハニーだった。彼はネルに、あんな劣悪な環境の患者を可哀想だとは思わないかと問いかけた。
どんな映画?
アメリカ合衆国の映画プロデューサー、ヴァル・リュートンが、RKOで製作した怪奇映画の一本。「キャット・ピープル」(1942年)で編集を担当したマーク・ロブソンを監督に起用し、「フランケンシュタイン」(1931年)の怪物役で知られるボリス・カーロフが主演し、イギリス出身のアンナ・リーがヒロイン役で出演しております。
1761年のロンドン
モーティマー卿と同行している
若い女性ネルは馬車の外が
騒がしい事に気づきます。
どうやら近くの精神病院から
患者が脱走に失敗し落下。
その患者の遺体をモーティマー卿が
確認すると卿は激怒
院長のシムズを屋敷に呼びつけます。
モーティマー卿は
亡くなった患者の詩人に
先払いでパーティーの劇の脚本を
依頼していたのです。
シムズは代わりに自分がその脚本を
担当し患者を見世物として連れてきます
と言います。
悪趣味な提案にシムズを
嫌悪するネル
ネルは、シムズにお金を払って病院の
見学をします。
そこは病院と言うよりも刑務所
不衛生で劣悪な環境。
危険な患者は鎖に繋がれたり
檻に入れられたりと
さながら動物園のよう。
やっぱこいつキモい!
とますますシムズを嫌うネル。
そこに石工でクウェーカー教徒の男性
ハニーにあなたはあの患者を
助けるべきだと訴えかけられます。
初めは馬鹿らしいと取り合わなかった
ネルでしたが…
病院を見学するネル 入り口にはシムズが鳩娘と呼ぶ話さず立ったままの女性が。
この映画の舞台ベスレム聖メリー病院は、ロンドンにある王立病院で、世界で最も古い精神病院の一つとされています。「ベドラム」とも呼ばれ、原題はそのまま「ベドラム」となっております。
原作としては、ロンドン出身で18世紀に活躍した画家ウィリアム・ホガースが描いた「放蕩者一代記」に登場するペドラムの描写から着想を得ています。 当時のベドラムはこの映画にもあるように、精神病患者の扱いが人間としてみなされず非人道的な扱いを受け、さながら動物園のように有料で見物客を取っていたほど。
冒頭のナレーション登場する「The age of reason」は、理性の時代1650年から1800年までのヨーロッパ活動、伝統と確立した主義に代わり理論と個人主義の奨励、啓蒙思想のことを指します。 物語に登場するジョン・ウィルクスは実在の人物で1770年代にロンドン市長を務めた急進主義のジャーナリスト、政治家です。
「キャット・ピープル」(1942年)、「私はゾンビと歩いた!」(1943年)、「レオパルドマン 豹男」(1943年)、「キャット・ピープルの呪い」(1944年)、「死体を売る男」(1945年)、「吸血鬼ボボラカ」(1945年)などのヴァル・リュートンが手がけた一連のRKO怪奇映画の中の一つですが、怪物は登場せず正常な人間が精神病院に入れられ恐怖を描き、本当の怪物は人間と感じる異色作となっております。
スタッフ・キャスト
監督はカナダ、モントリオール出身でハリウッドで活躍した映画監督マーク・ロブソン。フランス人女優シモーヌ・シモンを一躍有名にしたカルト的怪奇映画「キャット・ピープル」(1942年)の編集に携わり、ボリス・カーロフ主演の怪奇映画「吸血鬼ボボラカ」(1945年)を監督、続いてカーク・ダグラス主演のダークボクシング映画「チャンピオン」(1949年)、スーザン・ヘイワードの代表作となったメロドラマ「愚かなり我が心」(1949年)、ダナ・アンドリュースが貧民窟の神父を演じたサスペンス映画「恐怖の一夜」(1950年)、とんでも日本の風習とグレース・ケリーが出演した朝鮮戦争映画「トコリの橋」(1954年)、エヴァ・ガードナーとスチュワート・グレンジャーが主演した「潮風のいたづら」(1957年)、ラナ・ターナーが主演した青春映画そのまんま「青春物語」(1957年)、アラン・ドロンとアンソニー・クインが主演した戦争映画「名誉と栄光のためでなく」(1966年)、シャロン・テートが出演していた事で現在はカルト映画化している「哀愁の花びら」(1967年)、1970年代にはパニック映画を代表する作品の一つでオールキャストの「大地震」(1974年)、監督の遺作となったリー・マーヴィンが主演のスパイ映画「アバランチエクスプレス」(1979年)など、怪奇映画から戦争映画、アクション映画、メロドラマなど作品は多岐に渡ります。
勝気なヒロイン、ネルを演じたのはイギリス出身、アメリカで活躍した女優アンナ・リー。イギリスで映画デビューし、1937年に当時夫であり、後に「メリー ポピンズ」(1964年)で知られるようになる映画監督のロバート・スティーヴンソンの映画「キング・ソロモン」に出演。1940年代にハリウッドに夫婦で移住し、スタジオから「イギリスのポムシェル(The British Bombshell )」と呼ばれ、セックスシンボル女優として売り出しました。その後はジョン・フォード監督の「わが谷は緑なりき」(1941年)、デヴィッド・ミラー監督の「フライング・タイガー」(1942年)などに出演。1943年にはフリッツ・ラング監督のサスペンス映画「死刑執行人もまた死す」に出演し、大学教授ノヴォトニーの娘マーシャを演じています。徐々に脇役が多くなり、ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ監督の「幽霊と未亡人」(1947年)、ジョン・フォード監督の西部劇「アパッチ砦」(1948年)、刑事物の「ギデオン」(1958年)などに出演。1962年には、ロバート・アルドリッチ監督の「何がジェーンに起こったか?」では、ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードが醜悪姉妹を演じた家のお隣の奥さんとして出演されています。映画以外では、米ABCで1963年から放送されているご長寿昼ドラ「ジェネラル・ホスピタル」で、1978年から2004年までライラ・クウォーターメインを演じた事で有名です。
まとめ
本当の患者は?で地獄行き
コメント