ジャンキードラマー「黄金の腕」

フィルムノワール

仮病はすぐにばれるタイプです。

[原題]The Man with the Golden Arm
[製作年]1955[製作国]アメリカ
[日本公開]1956
[監督・製作]オットー・プレミンジャー
[原作]ネルソン・オルグレン
[脚本]ウォルター・ニューマン/ルイス・メルツァー
[音楽]エルマー・バーンスタイン
[タイトルデザイン]ソウル・バス
[上映時間]119

主な登場人物

フランキー・マシーン(フランク・シナトラ):
ム所あがりの元ディーラー。麻薬中毒な上に、足の不自由な妻ザシュがいる。心機一転ドラマーを目指すが…

ザシュ(エリノア・パーカー):
足の不自由なフランキーの妻。実は…

モリー(キム・ノヴァク):
キャバレーの切符切り。フランキーを気にかけて力になりたいと思っている。

その他の登場人物

ルイ(ダーレン・マクギャヴィン):薬の売人
シュワイフカ(ロバート・ストラウス):胴元

あらすじ

刑務所を出所したばかりのフランキーには希望があった。今度こそ賭場のディーラーを辞め薬もやめて、バンドのドラマーとしてまっとうな生活を送ろうと心に誓う。早速、収容所の医師から紹介されたマネージャーに電話をかけようとするが、久しぶりにあった妻のザシュはいい顔をしない。踊り子だったザシュはかつてフランキーの起こした自動車事故により車いすの生活を送っていた。執拗にフランキーを縛りつけようとするザシュにフランキーは手を持て余していた。同じアパートの階下にはキャバレーの切符切りをしている美しい女モリーがおり、何かとフランキーを気遣った。フランキーはバンドに電話をし、オーディションを受けられるよう頼む。しかし、薬を打ちたいという衝動にかられ、薬の売人レイから薬を買い、注射で接種した。もうこれきりだとうそぶくフランキーだったが、自宅ではザシュがうるさくドラムの練習ができない。そのためモリーに頼み、モリーの部屋にドラムを置かせてもらい練習することにする。どうしても薬をやめられないフランキーは、レイに詰め寄るが賭場に出るなら薬をやると言うレイに、ふたたび賭場に出ることになる。すでに禁断症状が出ているレイ。札を配るのもやっとで、イカサマをしろという指示でも相手にばれるミスを犯してしまう。フランキーはレイの部屋で暴れるが、結局金がないため、薬を手に入れられず飛び出す。

どんな映画?

この映画は、薬物中毒の恐ろしさを初めて描いた映画とされています。
主人公のフランク・シナトラが演じるのは麻薬患者が、壮絶な禁断症状に苦悩する姿が描かれています。

半年ぶりに刑務所から出所した
フランキーは今度こそ更生し麻薬から
縁を切ろうと心に決めていました。

ドラムの師匠に黄金の腕を持つと言われたことからパクられた原因になったディーラーを辞めてドラマーとして身を立てようとします。
家には車椅子の妻ザシュがおり、
その話にあまりいい顔をしません。

同じアパートに住むモリーは
なにかとフランキーを気にかけます。

しかし、もがけばもがくほど
うまくいかない苛立ちから薬物の誘惑を断ち切ることはできなかったのです。

薬物を抜くために自己隔離をしますが
耐えがたい禁断症状の為、暴れまくる
フランキー。

アルコール依存症の恐ろしさを初めて真正面で描いた映画がビリー・ワイルダー監督の「失われた週末」(1945年)とされていますが、こちらの映画も薬物依存の恐ろしさを初めて描いたとされています。

吸引式ではないく注射器による静脈注射なのでより恐ろしいですね〜
ヘロイン注射を繰り返して腕を切断する最強鬱映画「レクイエム・フォー・ドリーム」(2000年)を彷彿とさせます。
ヒッピー文化によるLSDが乱用される以前のアメリカでは、薬物は一部の移民や、芸能人が使用するものと或る意味市民生活から遠く、軽蔑される存在だったようですが、今や当たり前のように一般社会に入り込んでいます。

わたくしが初めてこの映画を観たのは
カバヤ食品から出されていたガムのおまけ「水野晴郎シネマ館」です。
子供向けか?
と思われるセレクトで「古城の亡霊」もこのシリーズで観ました!

衝撃的な展開とアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたフランク・シナトラの熱演は必見です。

スタッフ・キャスト

オットー・プレミンジャー監督の1955年の作品。1962年に映画化された「荒野を歩け」の原作者でもあり1950年にアメリカの権威ある全米図書賞の第一回受賞作品ネルソン・オルグレンの原作を映画化。監督デビュー作はフィルムノワール の代名詞「ローラ殺人事件」(1944年)、1953年には独特の強面風貌からビリー・ワイルダー監督の「第十七捕虜収容所」にドイツ軍の捕虜収容所長を演じインパクト抜群でした。実験的な題材が多く、「月蒼くして」(1953年)の性的発言や、「或る殺人」(1959年)の法廷でのパンティ連呼、「野望の系列」(1962年)では政治家の同性愛など当時タブーとされていた事柄に挑戦していました。

ノンクレジットですが脚本でベン・ヘクトが参加しております。

20世期アメリカを代表するシンガーの一人として君臨するフランク・シナトラ。歌手としてアイドル的人気を博していたシナトラは40年代には俳優として映画界にも進出。一時人気は低迷していましたが1953年に出演した「地上より永遠に」でアカデミー賞助演男優賞を受賞しました。この前にエヴァ・ガードナーと再婚しています。シナトラと言えは、日本では「マイ・ウェイ」のヒットで知られていますが、イタリア系アメリカ人とし「ゴッドファーザー」の元ネタになるほど裏社会との繋がりがあったとされています。1954年の「三人の狙撃者」や1962年のジョン・フランケンハイマー監督の「影なき狙撃者」など政治的事件に関わるような映画に出演しております。また晩年まで影響力の大きさと、ビッグスターであり続けた稀有な存在です。

主人公を支える魅力的な女性モリーを演じたキム・ノヴァクは、挑発的な美人ですね〜。肉感的で力強い瞳、短い髪がよく似合います。この映画に出演後1958年にヒッチコック監督、ジェームズ・スチュアート主演の「めまい」のヒロインを演じています。またその同年にはジェームズ・スチュアートとロマンティック・コメディの「媚薬」にも出演。1950年代には多くの映画に出演していましたが、現在は残念ながら映画出演はありません。

フランキーの妻を演じたのは美人女優のエリノア・パーカー。美しいだけでなく演技力にも定評があり、1950年に主演したフィルムノワール 作品の「女囚の掟」では純朴な主婦が獄中生活によって次第に擦れていく様を熱演しました。その後カーク・ダグラス主演の「探偵物語」(1951年)でもアカデミー賞主演女優賞にノミネートされましたが受賞には至りませんでした。1954年には「黒い絨毯」に出演し、チャールトン・ヘストンと共演しています。また、ロバート・ワイズ監督の名作「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年)ではトラップ大佐の婚約者を演じていました。その後も晩年まで多くの作品に出演されています。

まとめ

ヤク中で地獄行き

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