怒っているのに目は笑っているという
特殊な顔をしています。
[原題]The Big Sleep
[製作年]1978 [製作国]イギリス
[日本公開]劇場未公開
[監督・製作・脚本]マイケル・ウィナー
[製作]エリオット・カストナー他
[原作]レイモンド・チャンドラー
[音楽]ジェリー・フィールディング
[上映時間]100
主な登場人物
フィリップ・マーロウ(ロバート・ミッチャム):
私立探偵。スターンウッド将軍の依頼を受ける。
シャーロット・スターンウッド・リーガン(サラ・マイルズ):
スターンウッド将軍の長女、失踪したリーガンの夫人。
その他の登場人物
カーソン警視(ジョン・ミルズ):将軍にマーロウを紹介
スターンウッド将軍(ジェームズ・ステュアート):姉妹の父親、依頼主
マース(オリヴァー・リード):カジノ経営者
カミラ・スターンウッド(キャンディ・クラーク):スターンウッド将軍の次女
ジョー・ブロディ(エドワード・フォックス):ガイガー殺し
アグネス(ジョーン・コリンズ):本屋の女
執事(ハリー・アンドリュース)
あらすじ
私立探偵のフィリップ・マーロウは身なりをきっちり整えて富豪であるスターンウッド将軍の邸宅に向かった。執事に案内されて一人、将軍を待つ間に若い女が入ってくる。マーロウに「背が高くてハンサムね」と言って近づいてくるが、フラフラし酔っ払っているようだった。執事が現れるとすぐに出て行ったが、マーロウは離れの温室に案内された。そこで椅子に座ったままの将軍が出迎た。将軍はすっかり衰え下半身は麻痺し、カーソン警視からマーロウを紹介されたという。妻を亡くしている将軍には2人の娘がいた。長女のシャーロットはリーガンと結婚しており将軍もお気に入りだったが蒸発しているという。一方妹のカミラの件で脅迫状が届いたという。ブロディという男にゆすられていた。ガイガーという本屋に博打の貸しで1000ポンド払うというカミラの署名入の念書があった。このことでマーロウはガイガーに直接会ってこれ以上の脅迫を辞めさせるため自分が脅しをかけると将軍に約束する。料金は経費込みで一日50ポンド。温室をでると執事が姉のリーガン夫人がマーロウに会いたがっていると言う。リーガン夫人のシャーロットは足を出したワンピースを着て人妻という感じではなかった。彼女はマーロウに行方不明になっている夫のリーガンを探す依頼はなかったかと尋ねる。帰ろうとするマーロウにシャーロットはもし将軍がリーガンを探せと依頼したら引き受けるかと聞くと、マーロウはいつから行方不明にと聞き返す。一月前に車だけホテルで発見されたという。そのことは依頼されていないと話、マーロウはガイガー書店に出向いた。
どんな映画?
この映画の原作は、1939年にハードボイルド作家の巨匠レイモンド・チャンドラーが発表した私立探偵フィリップ・マーロウシリーズ第一弾「大いなる眠り」です。1946年に巨匠ハワード・ホークス監督によって映画化され、フィリップ・マーロウをハンフリー・ボガートが演じ姉の役をローレン・バコールが演じた「三つ数えろ」が非常に有名です。
依頼を受けてスターンウッド将軍の大豪邸に向かった
フィリップ・マーロウ。
豪邸の中に入ると突然現れたのは
酔っ払ったようなフラフラの若い娘さん。
マーロウの周りをクルクルまわり
背が高いのね~ 好きよ~
とか言ってくる。
半ば呆れていると執事が登場し
将軍のいる温室へ案内されます。
車椅子のスターンウッド将軍は先程の若い娘は
将軍の次女カミラで彼女はブロディという男に
ゆすられていると言います。
将軍はマーロウにガイガーという男と話を
つけるよう依頼します。
依頼を受け屋敷を出ようとすると執事に呼ばれ
今度は将軍の長女シャーロットの部屋に
連れて行かれます。
シャーロットは人妻らしからぬミニスカワンピで
足をさらけだしています。
シャーロットは将軍から失踪した夫リーガンの
ことは依頼を受けなかったかと確認してきます。
その後ガイガーの営む書店に出向きガイガーを
尾行するマーロウ。
とある家に入ったガイガーを見張ります。
するとその夜その家から銃声が!!
窓ガラスを割って家に突入するとそこにいたのは
すっぽんぽんで椅子に座るカミラと
床に横たわる男の死体???!!!
車椅子のスターンウッド将軍の依頼を受けるフィリップ・マーロウ
舞台を70年代当時のイギリスに移し豪華出演陣で挑んだ本作でしたが、興行的には大失敗。日本でも劇場公開されませんでした。
ロバート・ミッチャムは1917年生まれなので当時60歳超えていましたが、1975年にディック・リチャーズ監督の「さらば愛しき女よ」に続きマーロウを演じています。
残念ながらヒットしなかった本作ですが、この年代で映画化されたことに意味があると思われます。それが何かってゆーと、1946年に公開された「三つ数えろ」ではできなかったヌード撮影会がそのまんま映像化できたこと!脅迫ネタが将軍の次女のヌード写真で、明らかに彼女が薬物中毒だと言うことが「三つ数えろ」でわかりにくくストーリーを複雑化させていた原因の一つだと思われます。はっきり映像で見せた本作ですが、長女のミステリアスな魅力やロマンス性に欠けていたのが残念な要素です。
ただ、脇で登場するアメリカの良心的大物俳優ジェームズ・ステュアートがスターンウッド将軍を演じ、イギリスの大物俳優ジョン・ミルズや、1973年に出演した「ジャッカルの日」で冷徹殺し屋を演じて有名なエドワード・フォックスや、セクシー女優で有名なジョーン・コリンズなどもったいないくらいの豪華出演陣は見どころの一つです。
スタッフ・キャスト
イギリス出身のマイケル・ウィナーは「メカニック」(1972年)、「狼よさらば」(1974年)、「スーパー・マグナム」(1985年)などチャールズ・ブロンソンの映画を多く監督。1971年にはヘンリー・ジェームズの怪奇小説「ねじの回転」の前日譚を描いた「妖精たちの森」で、マーロン・ブランドが変態使用人を演じていました。「大いなる眠り」の前年には豪華主演陣のカルトホラー「センチネル」(1977年)を監督。また1988年にはアガサ・クリスティ原作、名探偵ポワロシリーズの「死との約束」を映画化した「死海殺人事件」を監督。こちらの映画ではポワロをピーター・ユスティノフが演じていました。
製作のエリオット・カストナーはアメリカ人プロデューサー。フィリップ・マーロウシリーズでは1973年のエリオット・グールドが主演した「ロング・グッド・バイ」、1975年には「さらば愛しき女よ」の製作を担当しています。また、マイケル・ウィナー監督作では「妖精たちの森」でも製作をしています。
かつてローレン・バコールが演じたスターンウッド将軍の長女役を演じたのがイギリス人女優サラ・マイルズ。クールな感じのバコールとは打って変わって大きな瞳、大きな口のファニーフェイスのサラ・マイルズは、数々の有名監督作品に登場。1970年にはイギリス映画界の巨匠デヴィッド・リーン監督の「ライアンの娘」に出演。若い不倫妻を体当たりで演じアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。この映画でロバート・ミッチャムとも共演、またジョン・ミルズがアカデミー賞助演男優賞を獲得しています。1976年に三島由紀夫原作小説を映画化した「午後の曳航」で美熟女ヌードを披露されています。
カジノの経営者マースを演じたのが巨匠キャロル・リードの甥オリヴァー・リード。ゴツい男らしい風貌と豪快なイメージで多くのホラー映画やアクション映画に出演。1968年に主演したマイケル・ウィナー監督の「脱走山脈」がヒットし、主演俳優として地名度を上げました。イギリスのカルト監督ケン・ラッセルの「肉体の悪魔」(1971年)では修道女を惑わす司祭を演じ、ロック・ミュージカル「トミー」(1975年)ではアクの強い継父を演じています。
全裸出演したキャンディ・クラークはアメリカ人女優さん。1973年にジョージ・ルーカス監督の青春コメディドラマ「アメリカン・グラフィティ」にナンパされる女子として出演。この映画でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされています。現在でも映画、ドラマに脇を固める女優さんとして活躍されています。
まとめ
奔放姉妹で地獄行き
コメント