リングに賭けろ「ボディ・アンド・ソウル」

フィルムノワール

こう見えて(?)
ボクシング好きです。

[原題]Body and soul
An affair of the heart
[製作年]1947[製作国]アメリカ合衆国
[日本公開]劇場未公開・ビデオ発売
[監督]ロバート・ロッセン
[製作]ボブ・ロバーツ
[脚本]エイブラハム・ポランスキー
[撮影]ジェームズ・ウォン・ハウ
[編集]フランシス・D・ライオン/ロバート・パリッシュ
[音楽]ヒューゴ・フリードホーファー
[上映時間]104

主な登場人物

チャーリー・デイヴィス(ジョン・ガーフィールド):
ボクサー。ユダヤ系の家庭で育ち、父親の死後プロボクシングの道へ進むが、八百長に手を染め始める。

ペグ・ボーン(リリー・パルマー):
チャーリーの婚約者。美術学校に通いグリニッジヴィレッジで友人と暮らしていた。

その他の登場人物

アリス(ヘイゼル・ブルックス):ナイトクラブの歌手
アンナ・デイヴィス(アン・リヴィア):チャーリーの母
クイン(ウィリアム・コンラッド):仲介者、チャーリーのセコンド
ロバーツ(ロイド・ガフ):プロモーター、元締め
ベン・チャップリン(カナダ・リー):黒人ボクサー
アーノルド(ジェームズ・バーク):ベンのセコンド
イルマ(ヴァージニア・グレッグ):ペグの友人、彫刻家
ショーティ・ポランスキー(ジョセフ・ぺヴニー):チャーリーの仲間

あらすじ

ボクシングの世界王者チャーリー・デイヴィスはマーロウとの世界王座戦を翌日に控えていた。しかし黒人ボクサーのベンが死んだことで眠ることができず、夜の街を彷徨っていた。実家を訪れ久しぶりに母親に会うが、出て行くように言われてしまう。実家には婚約者のベグが来ており、帰ってきたベグにも拒絶されてしまう。午前3時頃にナイトクラブを訪れた。クラブで歌っている歌手アリスは、クインがカンカンになって探しているとチャーリーに伝えた。早朝に計量があり、35歳のチャーリーはギリギリで通った。若手の対戦相手マーロウは挑発的な態度だったため、チャーリは彼を殴り報道陣にもみくちゃとなった。控え室のチャーリーにプロモーターのロバーツが、今日の試合は15ラウンドまで引き伸ばした後判定負けになると指示する。あんなの2ラウンドでKOできると嘯くチャーリーだがそれでは大金が入らないぞというロバーツに、わかっていると頷いた。一人になったチャーリーは、自分の人生の全てが水の泡になったと過去を振り返った。「イロコイ民主クラブ」のパーティ。地元の英雄としてアマチュア王座戦を制したチャーリーは、クラブのミスコン女王ペグと踊った。すっかりペグを気に入ったチャーリーは、彼女に迫りペグの部屋まで強引に押しかける。部屋に入るとベグの友人イルマがおり、チャーリーにモデルになってくれないかと言う。ペグは自分は今美術学校に通っていると話し、ペグの部屋は絵や石膏で一杯だった。イルマが出ていくと、ペグはサラッとチャーリーの絵を描いてその日はキスをして帰した。チャーリーが戻ると友人たちが騒いでいた。そこにボクシング興行の元締めクインが通りかかり、チャーリーの友人ショーティーが紹介するとチャーリーを連れて行った。稼げると言うショーティーに駄菓子店を営んでいる母親は大反対だが父親が理解を示すのだが…

どんな映画?

「オール・ザ・キングスメン」(1949年)や「ハスラー」(1961年)の監督で知られるアメリカ合衆国の映画監督兼脚本家のロバート・ロッセンが、ボクシングを題材にしたフィルムノワール ・スポコン映画です。脚本に「悪の力」(1948年)の監督でもあるエイブラハム・ポランスキー、主演には若くしてこの世を去ったジョン・ガーフィールドを配しています。

ボクシングの世界チャンピオンの
タイトルを持つ チャーリー・デイヴィスは
翌日にタイトル防衛戦を控えているにも関わらず
かつての対戦相手で現在はトレーナーを
してもらっていた黒人ボクサー
ベンの死に眠れぬ夜を
過ごしていました。

いたたまれず部屋を飛び出すチャーリー
向かうのはママンのいる実家
しかし母親のアンナは
快くチャーリーを迎えることが
できません。
そこにかつての婚約者ペグが
帰ってきます。
自分を責める二人に
気まずいチャーリーはまた
家を飛び出し街に出ます。

ナイトクラブに着いた
チャーリーはクラブの歌手アリスからも
冷たくされてしまいます。
結局計量をギリギリでパスした
チャーリー
対戦相手は若手で
チャーリーを挑発し乱闘騒ぎ。
そんなチャーリーに
プロモーターのロバーツが
近づいてきます。

この試合お前の負けな!

ぶっ殺してやる!

実は最高のボクシング映画と名高いこちらの作品。骨太の映画監督ロバート・ロッセンが、1939年のボクシング映画「ゴールデン・ボーイ」を基にしたエイブラハム・ポロンスキーの脚本を映画化。 日本での別題は「背信の王座」で、プロボクシング界にある八百長行為に、選手として許されないこととわかっていながらも金に目が眩んで手を染め苦悩する主人公を、ジョン・ガーフィールドが熱演しております。
特にラストの試合シーンは圧巻で、撮影のジェームズ・ウォン・ハウによるカメラワークはその後のスポーツ映画に影響を与えています。最後にチャーリーに駆け寄るペグの姿は「ロッキー」(1976年)を思わせます。
ジョン・ガーフィールドはこの演技でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。 1973年の伝説のホラー映画「エクソシスト」で、カラス神父がキンガーマン刑事に「ボディ・アンド・ソウル」のジョン・ガーフィールドに似ていると言うセリフがあります。

この映画は、1981年に「復活のテン・カウント」、2000年に「ボディ&ソウル/栄光のリング」としてリメイクされています。

スタッフ・キャスト

主人公のチャーリー・デイヴィスを演じたのは、ユダヤ系アメリカ人の俳優ジョン・ガーフィールド。1938年にマイケル・カーティス監督の「四人の姉妹」で、悲劇的な若い作曲家を演じアカデミー賞助演男優賞にノミネートされます。翌年バスビー・バークレー監督の犯罪ボクシング映画「ゼイ・メイド・ミー・ア・クリミナル」に主演。第二次世界大戦中は戦意向上の為の戦争映画に多く出演し、高い評価を得ます。戦後に出演したのがテイ・ガーネット監督、ジェームズ・M・ケイン原作の犯罪ドラマ「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(1946年)に主演。また、同年にジーン・ネグレスコ監督のメロドラマ「ユーモレスク」で、ジェーン・クロフォードの年下の相手役で出演しています。「ボディ・アンド・ソウル」に主演した同年に、エリア・カザン監督のユダヤ差別を問題視した社会派映画「紳士協定」(1947年)では、主演のグレゴリー・ペックのユダヤ人の友人役を熱演しています。その後エイブラハム・ポロンスキー監督のフィルムノワール 「悪の力」(1948年)、1944年の「脱出」のリメイク「破局」(1950年)、シェリー・ウィンタースと共演したサスペンス映画「その男を逃すな」(1951年)などに主演しますが、39歳の若さでお亡くなりになられています。

チャーリーの母親を演じたのはアメリカ合衆国出身の女優アン・リヴィア。1940年代以降に母親女優として多くの映画に出演。1944年に「緑園の天使」でエリザベス・テイラーの母親役を演じアカデミー賞助演女優賞を獲得しています。また、1947年のエリア・カザン監督の「紳士協定」では、グレゴリー・ペックの母親役を演じアカデミー賞助演女優賞にノミネートされています。フリッツ・ラング監督の「扉の陰の秘密」(1946年)ではマイケル・レッドグレイヴの姉、オットー・プレミンジャー監督の「堕ちた天使」(1945年)の姉役などを演じていますが、1951年にジョージ・スティーヴンス監督の「陽のあたる場所」で、モンゴメリー・クリフトの母親役で出演してから「赤狩り」の影響により20年間映画に出演することはありませんでした。

チャーリーの友人ショーティーを演じたジョセフ・ぺヴニーはその後監督に転身。ボリス・カーロフ、チャールズ・ロートンが出演するホラー映画「奇妙な扉」(1951年)や、ジェームズ・キャグニー主演で、ロン・チャーニーの人生を描いた伝記映画「千の顔を持つ男」(1957年)などを監督。また、「ボナンザ」や「スタートレック」などのテレビシリーズなどの監督も手掛けていました。

まとめ

ガチ試合で地獄行き

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