美しすぎる姉「熊座の淡き星影」

ドラマ

マザコンも厄介ですが
シスコンははもっとヤバイ気がします。

[原題]Vaghe stelle dell’Orsa(熊座の漠然とした星)
[製作年]1965 [製作国]イタリア
[日本公開]1982
[監督・脚本]ルキノ・ヴィスコンティ
[脚本]スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エンリコ・メディオーリ
[音楽]セザール・フランク
[上映時間]100

主な登場人物

サンドラ・ドーソン(クラウディア・カルディナーレ):
ジャンニの美しい姉。アメリカ人アンドリューと結婚している。

ジャンニ・ワルト=ルッツァッティ(ジャン・ソレル):
サンドラの弟。小説を書いているがサンドラと過去に何か合った様子。

その他の登場人物

アンドリュー・ドーソン(マイケル・クレイグ):サンドラの夫
コリンナ・ジラルディーニ(マリー・ベル):姉弟の母
アントニオ・ジラルディーニ(レンツォ・リッチ):母親の再婚相手

あらすじ

美しいイタリア人女性サンドラはアメリカ人の夫アンドリューとともに、彼女の実家があるイタリアの古都ボルテッラに向かう。古い大邸宅をメイドのフォスカが管理していた。元ピアニストの母親は再婚し精神を患い入院していたが、今は退院して別荘に暮らしているという。夜中に庭の布で覆われたオブジェにすがるサンドラ。横には碑があり「ナチに踏みにじられた偉大な才能と命を惜しんで」と刻まれていた。そこに弟のジャンニが現れ、サンドラはジャンニを抱きしめる。サンドラが実家に来たのは父親の銅像の除幕式に参加するためだった。しかしジャンニは実家の庭を市民に解放するだけでなく、金のために屋敷も売るという。ある夜アンドリューは外でジャンニと話しこむ。アンドリューはサンドラの過去を知りたいという。この町でどんな生活を送っていたかを。その後酒場に行き、ジャンニから管理人の息子で今は医師になったピエトロを紹介される。帰ってきたことに気づいたサンドラだったが寝室に鍵をかけた。サンドラはピエトロを呼び出し母に会いに行った。母はピアノを引き続け、錯乱状態だった。サンドラは母に父の碑文を立てることを告げると母はユダヤ人の科学者として収容所で非業の死を遂げた父親をののしり、ユダヤの血が流れている姉弟をののしった。母はジラルディーニという男と再婚し、弟をフィレンツェの寄宿学校にいれサンドラを別の学校に入り姉弟を引き離した。そしてジャンニは狂言自殺を図り元の学校に戻ったが、ジラルディーニはそれをなじり続けた。姉弟はそれ以来義父とは話さない、それが二人のゲームだとアンドリューに語った。

どんな映画?

この映画はギリシャ悲劇「エレクトラ」を下敷きに映画化されたものです。
「エレクトラ」は父王が母親とその愛人に殺害された為、弟とともに復讐を果たすというもの。「エレクトラ」を語源にした「エレクトラ・コンプレックス」は父親に対する愛着のあまり母親を嫌悪する感情を現していると言われています。
姉弟の姉を当時イタリアの人気女優クラウディア・カルディナーレが演じ、弟をフランスのイケメン俳優ジャン・ソレルが演じています。

イタリア人のサンドラはアメリカ人の夫アンドリューを
伴って自分の故郷に帰ってきました。
亡き父が英雄として銅像になりその除幕式に
出席するためでした。
しかしそこで迎えるのは昔からいるメイドだけ。
薄暗く古い豪邸。
電気を付けて涙するサンドラでした。

サンドラには弟のジャンニがいましたが
病気を理由に結婚式にも出席していませんでした。
そのジャンニが突然戻ってくるとの電報が
電報を読み複雑な表情を浮かべるサンドラ。

姉弟の母親は精神を患い入院中。
サンドラが会いに言っても狂ったようにピアノを
弾き暴れサンドラを罵り
また、彼女の愛する父親までも
卑怯なユダヤの血だと罵るのでした。
苦悩するサンドラにでしたが…

夫アンドリューに自分たちの事を告白する
サンドラ

この映画は第26回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しています。
タイトルはジャコモ・レオパルディの詩の引用から取られたもので、非常に文芸チックな作品です。

実際にヴォルテッラの町でロケが行われました。イタリアのトスカーナ地方にある小都市ヴォルテッラは中世の都市を思わせる美しい石造りの町だとのこと。作中では度重なる災害と風にさらされ病に侵され死にゆく町だと言っていましたが、現在でも美しさを讃えています。
今でこそ観光地として風光明媚さが強調されていますが、映画の中ではは古都のイメージの暗さとモノクロの薄気味悪さが、姉と弟の近親相姦を匂わせた危うさを、際立たせています。
終始眉間にシワを寄せてるクラウディア・カルディナーレの美しい姿が印象的な映画です。

スタッフ・キャスト

監督はお耽美派の巨匠、ルキノ・ヴィスコンティ。貴族階級出身の監督は、斜陽であった特権階級の人々の悲哀を描くことに長けておられました。滅びゆく人種だと自覚しつつも尚古思想が滲み出ている役をバート・ランカスターが「山猫」(1963年)で演じていました。この映画以前にヴィスコンティはクラウディア・カルディナーレを2本の映画に出演させています。1本目はアラン・ドロンが主演した「若者のすべて」(1960年)で長男の婚約者として出演させ、続いて再びアラン・ドロンと共演した「山猫」(1963年)ではアラン・ドロン扮する貴族が恋をする美貌の娘に配役していました。

主演のサンドラを演じたクラウディア・カルディナーレ。CCという愛称があり当時のイタリアを代表する美人女優。チュニジア出身で美少女コンテストで優勝し、イタリアで映画デビュー。ピエトロ・ジェルミ監督主演の「刑事」(1959年)は主題曲の印象も強く、日本でも有名になりました。この映画で恋人を庇う若い女性を熱演。翌年にはルキノ・ヴィスコンティ監督の「若者のすべて」に出演。その翌年に出演した「鞄を持った女」(1961年)では、年下の男に恋心を抱かれる役でした。その後1963年にフェデリコ・フェリーニ監督の「81/2」や、ヴィスコンティ監督の「山猫」、ブレイク・エドワーズ監督のピンクパンサー初登場の伝説的映画「ピンクの豹」、ルイジ・コメンチーニ監督の社会はドラマ「ブーベの恋人」など名作、話題作、傑作に出演し人気実力ともに決定的なものになりました。猫のような勝ち気な瞳が本当に美しく、くっきりはっきりしたメリハリボディのゴージャスさ。2010年にニコール・ガルシア監督、「OSS 117」シリーズで有名なジャン・デュジャルダン主演でフランスのサスペンス映画「海の上のバルコニー」にデュジャルダンの母親役で登場し、そのお姿にかなり驚愕しましたが、今でも大女優さんです。

弟のジャンニを演じたのはフランス人俳優のジャン・ソレル。1960年にアルベルト・ラットゥアーダ監督のイタリア・フランス合作映画「十七歳よさようなら」でカトリーヌ・スパークと共演。上流階級出身のスマートな物腰と優男ぶりで人気を博しました。ルイス・ブニュエル監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の変態映画「昼顔」(1967年)ではとことん優しい夫を演じ、翌年にはアメリカのセクシー女優キャロル・ベイカー主演のイタリア・フランス合作映画「デボラの甘い肉体」で新婚の夫を演じていました。その後はB級映画やサスペンス映画への出演が多かったです。

姉弟の母親を演じたマリー・ベルはフランス出身の女優。多くの舞台や映画で活躍されました。中でもジュリアン・デュヴィヴィエ監督の名作映画「舞踏会の手帖」(1937年)でヒロインを演じていました。

まとめ

シスコンで地獄行き

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