元彼に会いたいですか?
わたくしはあんまり会いたくないですね〜
[原題]Un carnet de bal
[製作年]1937 [製作国]フランス
[日本公開]1938
[監督・脚本]ジュリアン・デュヴィヴィエ
[脚本]アンリ・ジャンソン他
[音楽]モーリス・ジョベール
[上映時間]130
主な登場人物
クリスティーヌ(マリー・ベル):
36歳の未亡人。一人になってしまい気晴らしに舞踏会の手帖に書かれていた男たちを20年振りに訪ね歩く旅行に出かけることにする。
その他の登場人物
ジョルジュの母(フランソワーズ・ロゼー):息子の死を受け入れられずおかしくなっていた。
ピエール・ヴェルディエ(ルイ・ジューヴェ):ナイトクラブの経営者
エリック・イルヴァン(ピエール・リシャール=ウィルム):山岳ガイド
ファビアン・クティソル(フェルナンデル):美容師
アラン・レグノー(アリ・ボール):神父になってた
ティエリー・レナル(ピエール・ブランシャール):堕胎を行う闇医者
ギャビー(シルヴィー)
あらすじ
36歳の若さで未亡人になってしまったクリスティーヌ。子供はおらず丘の上の広い城の中で、一人とり残されてしまった。夫の物を処分していると小さな手帖が出てきた。まだ若いし気晴らしに旅行でもどうかと夫の秘書に勧められるが、自分には愛する人も待っている人もいないと孤独感をにじませる。そこにあった手帖の中を見ると、たくさんの男たちの名前が書かれたクリスティーヌの舞踏会の手帖だった。クリスティーヌは16歳で初めて社交界デビューした舞踏会に思いを馳せた。大きなシャンデリアにオーケストラ。素敵なドレスを身に纏ったクリスティーヌに男たちがこぞってダンスを申し出る。そんな中「あたなを一生愛します」と言ってくれた男性がいた。ジェラール。彼は今どうしているだろうか。クリスティーヌは過去の亡霊を追って手帖の中に書かれていた男たちを訪ねて歩く旅に出ることにした。一人目のジョルジュの家を訪ねたクリスティーヌ。年老いがメイドが扉を開け、ジョルジュは亡くなったときかされる。そこに後ろから母親が現ればあやは少しおかしいのと言ってクリスティーヌを部屋に通した。息子はすぐに帰ってくると言う母親だったが、クリスティーヌを彼女の母親だと思っている様子で、クリスティーヌが婚約したと手紙をよこし24歳の息子はひどく落ち込んでいると捲し立てた。ジョルジュの部屋は20年前で時が止まっており、母親はすっかりおかしくなっていた。ジョルジュはクリスティーヌの婚約を聞き20年前にピストル自殺をしていたのだ。
どんな映画?
この作品は、フランスの古典映画界の巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエ監督による感傷的なドラマ映画です。映画は好評を博し、1937年のヴェネツィア国際映画祭で外国映画大賞を受賞しています。
城の主と結婚したクリスティーヌは
36歳にして未亡人になってしまいます。
子供もいないクリスティーヌは
虚しく孤独を感じていました。
夫の遺品を整理していると出てきたのが
自分が社交界デビューした時の
舞踏会の手帖
そこに書かれていたのは
かつてクリスティーヌに
愛をささやいてくれた男たちの名前
なにか目的見つかるかもと
今の彼らに会いに行く
センチメンタル・ジャーニーに挑む
アラフォーのクリスティーヌ。
最初に訪ねたのはジョルジュの家で
出迎えたのは彼の母親
快く出迎えてくれるものの
でも何かちょっとヘン
ジョルジュは20年前にクリスティーヌが
婚約したと知って自殺していたのです。
母親はそのショックでおかしくなり
20年前で時間を止めてしまっていたのでした。
初っ端からクリスティーヌの旅は
地獄行脚の様相を呈するのですが…
舞踏会の手帖を眺めながら思い出すのは
大本命のジェラール!
クリスティーヌが初めて参加する舞踏会は特権階級の子女が大人になったことを、お披露目するいわゆる「デビュタント」と言われるものです。この中で社交界デビューした彼女たちに男性がダンスを申し込むのですが、モテモテの女性ほど男も順番待ちです。その順番を記入したものが「舞踏会の手帖」と言われるものです。現在でも一部のセレブの間で行われているデビュタント、1949年の映画「女相続人」の中でも舞踏会の手帖が登場しています。
自分が幸せな時にはこれっぽちも思い出さないのに
行き詰まったり不幸な状況になると無性に会いたくなる
それが元彼!(ん?わたくしだけですか?)
別れるには別れるなりの理由が合ったはずなのにそんなことは忘れて
楽しかった都合のいいことだけを覚えている。
それが元彼。
結局 美しい思い出は過去の亡霊でしかないのだということ。
今から80年以上も前の映画にもかかわらず、現代でも共感できる部分が多い、女ゴコロの普遍性を感じる一本です。
スタッフ・キャスト
監督は古典フランス映画の巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエ。当時の日本でも非常に人気のある監督で、作風もの日本人の心情にマッチしていたのかもしれません。ジョルジュ・シムノンの小説メグレ警部シリーズの映画化「モンパルナスの夜」(1933年)や、ジャン・ギャバンが主演した「地の果てを行く」(1935年)などを監督。1936年に「我等の仲間」を発表、その翌年に制作されたのが「舞踏会の手帖」、そしてまたこの映画の同年に製作されたのが、ぺぺ・ル・モコのタイトルでも知られている「望郷」(1937年)でした。この映画は世界中でヒットし、ジャン・ギャバンを一躍国際的スターに押し上げました。「舞踏会の手帖」のオマージュ版「リディアと四人の恋人」(1941年)、「パニック」(1946年)、ヴィヴィアン・リーが不倫妻を演じるトルストイ原作の「アンナ・カレニナ」(1948年)、ダークファンタジーの「わが青春のマリアンヌ」(1955年)、再びジャン・ギャバンが主演した「殺意の瞬間」(1956年)など、多くの名作を遺していますがアラン・ドロン主演の「悪魔のようなあなた」(1967年)の完成直後に自動車事故を起こし亡くなられています。
主演の若い未亡人クリスティーヌを演じたのはフランスの舞台や映画で活躍した大女優。日本では1934年に古典フランス映画監督のビック5の一人ジャック・フェデー監督の「外人部隊」に出演。また、後年に出演した「熊座の淡き星影」(1965年)ではクラウディア・カルディナーレ母親役を演じ、だいぶふっくらされて狂ったようにピアノを弾いておられました。
また、最初に訪ねた彼の母親役を演じていたフランソワーズ・ロゼーはジャック・フェディーの妻としても知られています。
元彼たちを演じたのは当時のフランスでも有名な俳優ばかり。
ナイトクラブの経営者になっていたピエールを演じたルイ・ジューヴェはフランスの俳優、演出家として知られていて、多くの作品に登場していいます。ジャック・フェデー監督の「女だけの都」(1935年)や、デュヴィヴィエ監督の「旅路の果て」(1939年)、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の「犯罪河岸」(1947年)などに出演しています。
神父になっていたアランを演じたアリ・ボールは第二次世界大戦前にフランスで活躍した俳優。1934年のレイモン・ベルナール監督による「レ・ミゼラブル」でジャン・バルジャンを演じています。また、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督作品には「にんじん」(1932年)、「巨人ゴーレム」(1936年)などに出演しています。
闇医者に堕ちてしまったティエリーを演じたピエール・ブランシャールは戦前から多くのフランス映画に登場しています。1946年のジャン・ドラノワ監督、ミシェル・モルガン主演の悲劇「田園交響楽」で主人公に執着する牧師を演じていました。
美容師になっていたファビアンを演じていたのがフランスで有名なコメディアン、フェルナンデル。個性的な顔立ちが特徴的です。中でも「ドン・カミロ」シリーズが当たり役でした。
まとめ
元彼に会ってもロクなことないで地獄行き
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