熱いヴェネチア「夏の嵐」

ドラマ

最近、若い男がかわいいなと思うようになったのはわたくしがおばはんになった証拠ですね♪

[原題]Senso(官能)
   Livia(米)
[製作年]1954[製作国]イタリア
[日本公開]1955
[監督・脚本]ルキノ・ヴィスコンティ
[原作]カミロ・ボイト
[脚本]スーゾ・チェッキ・ダミーコ他
[撮影]G・R・アルド/ロバート・クラスカー
[上映時間]119

主な登場人物

リヴィア・セルピエーリ伯爵夫人(アリダ・ヴァリ):
ロベルトの従姉妹。伯爵夫人。ロベルトと決闘をするというマーラー中尉との仲裁に入ろうとするが。

フランツ・マーラー中尉(ファーリー・グレンジャー):
オーストリア将校。仲裁に入ったリヴィアを逆に口説く。

その他の登場人物

ロベルト・ウッソーニ侯爵(マッシモ・ジロッティ): 地下活動家
ボヘミアの士官(クリスチャン・マルカン)
ラウラ(リナ・モレリ): リヴィアのメイド

あらすじ

1833年の春、ヴェネツィア。オーストリア占領の最後の数ヶ月イタリア政府はプロシャと同盟を結び、解放への戦いが切迫していた。オペラ会場ではオーストリア将校たちとイタリア人観客の間で、外国人は出て行けとビラがまかれていた。それをあざ笑っていたように見えたオーストリア将校のフランツ・マーラー中尉にリヴィアの従兄弟であるロベルト・ウッソーニ公爵は侮辱だとして決闘を申し込んだ。それを桟敷席で見ていた伯爵夫人リヴィアは黙っておれなかった。その日は5月27日、ロベルトはイタリア独立運動の地下活動の中心人物の1人だった。リヴィアは相手のマーラー中尉は女たらしで有名だったが、決闘を止めるため直接会いたいと申し出た。オペラを観ながらリヴィアは中尉に、明日の朝の行われる決闘をどうするのかと尋ねるが、あまりまともな話にならずそのまま帰宅することに。帰宅するとすぐにロベルトが逮捕されたことを聞かされる。逮捕は決闘を避けようとした中尉の訴えによるものとわかっていたリヴィアは夫の伯爵に釈放を頼む。しかし夫はロベルトは捕まって当然、関わりたくないの一点張りだった。結局、ロベルトは1年の流刑になり見送りに行ったリヴィア。ロベルトからカヴァレットがいるアルデノの行くよう支持され義勇軍との連絡をとりガリバルディも出動したという。そこでリヴィアはマーラー中尉と再会してしまう。

どんな映画?

こちらの映画はイタリアのお耽美派の巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督初のテクニカラー作品であり、日本で初めて公開されたヴィスコンティ映画でもあります。

オーストリア占領下のヴェネチア
オペラ会場では白い軍服を着た
オーストリア将校たちに向かって
「外国人は出て行け!」と
花を投げつけビラを巻くイタリア活動家の人々。
会場が混乱する中、桟敷席で夫と共に観劇していた伯爵夫人リヴィア。

リヴィアのいとこであるロベルト・ウッソーニ侯爵はイタリア解放運動の地下活動家でした。
会場でロベルトはオーストリア人将校であるフランツ・マーラー中尉の無礼な態度に決闘を申し込みます。
それを止めようとしたリヴィアは
フランツに近づきます。

しかしロベルトは流罪になってしまいす。
リヴィアは夫である伯爵に彼を助けるよう懇願しますが、親オーストリア派の伯爵は取り合ってくれません。
落胆したリヴィアに近づくフランツ。

夜のヴェネチアを夜通し歩く二人。

いつの間にかリヴィアは軍人らしからぬフランツに惹かれてしまいます。

そして自らフランツのいる寄宿舎に向かうのでした。

甘く官能的な扉を開けた伯爵夫人。
しかしそこは地獄の1丁目…

この映画はイタリア統一運動(リソルジメント)伊奥戦争を題材にしております。劇中のセリフで登場するジョゼッペ・ガリバルディは千人隊(赤シャツ隊)を率いイタリア王国成立に貢献した英雄です。
歴史の渦の中で愛に向かって突っ走る伯爵夫人。彼女の愛するオーストリア将校はかなり軽薄な人物に見えますが、そんなのカンケーねーとばかりに、自ら祖国を裏切り、夫を裏切り、すべてを裏切る。伯爵夫人の行き先に待っていたものとは?
いったい愛ってなんなのさ?    

当時30代前半のアリダ・ヴァリですがかなり老けて見えます。
ですので愛人であるファーリー・グレンジャー演じる将校とだいぶ年の差があるように感じられますが実際には4歳くらいの年の差です。

冒頭で上演されているオペラはジョゼッペ・ヴェルディの「イル・トロヴァトーレ」。
撮影監督のG・R・アルドが事故死したためロバート・クラスカーが引き継ぎました。

この映画の同じ原作で、「カリギュラ」など壮大なポルノ映画で有名な監督ティント・ブラスが2002年にリメイクしておりますが邦題が「ティント・ブラス 秘蜜」とこれまたポルノっぽいタイトルが付けられています。舞台設定も第二次世界大戦に置き換えられています。

スタッフ・キャスト

監督のルキノ・ヴィスコンティはイタリア貴族階級出身。1942年にジェームズ・M・ケインの犯罪小説「郵便配達は二度ベルを鳴らす」で監督デビュー。マッシモ・ジロッティとクララ・カラマイを主演に映画化しましたが、原作者から許可をもらっていない非公式だったため本国イタリアで公開禁止となってしまいました。アンナ・マニャーニがステージママを演じる「ベリッシマ」(1951年)、アラン・ドロンが主演した「若者のすべて」(1960年)、老朽の貴族をバート・ランカスターが演じ、アイパッチのアラン・ドロンが出演し、貴族社会の落日を描いた「山猫」(1963年)、「山猫」にも出演したクラウディア・カルディナーレ主演の「熊座の淡き星影」(1965年)、カミュの有名小説をイタリアの大スターマルチェロ・マストロヤンニで映画化した「異邦人」(1967年)、衝撃の問題作「地獄に墜ちた勇者ども」(1969年)、ダーク・ボガードが少年に想いを寄せる中年音楽家を演じたお耽美映画の集大成「ベニスに死す」(1971年)、ヴィスコンティの寵児ヘルムート・バーガーがを主演に超大作「ルートヴィッヒ」(1972年)、遺作となった「イノセント」(1976年)などの作品を世に排出。30年ほどのキャリアの中で美男美女の起用、絵画のような美しい映像と音楽、活動後期のこだわり抜いたセットと衣装はため息モノです。

イタリアの大女優アリダ・ヴァリはハリウッドでヒッチコック監督の「パラダイン夫人の恋」(1947年)に主演。その後デヴィッド・リーン監督の名画「第三の男」で名声を得ますが、言葉の壁と契約に悩まされ1950年代初頭にイタリアに戻ってしまいます。ですがアリダ・ヴァリはこの映画に出演後スキャンダルに巻き込まれ2年ほど映画界から遠ざかるを得なくなってしまいました。1953年の4月にウィルマ・モンテシという若い女性の遺体が発見されます。彼女はモデルで、当時のシェルバ政権で外相を務めていたピッチオーニの息子である作曲家のピエロ・ピッチオーニの乱行パーティーに参加していたと報道されます。モンテシ事件と呼ばれたこのスキャンダルは首相の辞任にまで追い込まれます。んでこのピエロ・ピッチオーニと当時交際していたのがアリダ・ヴァリでした。ちなみにピエロ・ピッチオーニはその後、フランチェスコ・ロージ監督の「シシリーの黒い霧」(1961年)、ベルナルド・ベルトルッチ監督の「ベルトルッチの殺し」(1962年)、ジャン=リュック・ゴダール監督の「軽蔑」(1963年)、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「異邦人」(1968年)など多くの有名監督に楽曲を提供しております。

フランツ・マーラー中尉役のファーリー・グレンジャーは、20代前半でヒッチコック監督の「ロープ」(1948年)で気の弱い殺人者を、同年にニコラス・レイ監督の「夜の人々」で無軌道に犯罪を犯す若者を熱演。加えて「見知らぬ乗客」(1951年)には好感殺人に巻き込まれるテニスプレイヤーを演じ、ご本人の代表作となっております。濃い顔立ちで美形なのになんとなく軽佻浮薄に見えてしまうところがこういった役にあっているんでしょうね。

フランツの同僚将校役のクリスチャン・マヌカンはナディーヌ・トランティニアンの兄。ナディーヌとジャン=ルイ・トランティニアンの間の子供がマリー・トランティニアンです。

英語版の台詞協力者の中にテネシー・ウィリアムズが名を連ねております。

まとめ

若い男に狂ってとことん地獄行き

コメント

タイトルとURLをコピーしました