侵入者の眼「禁じられた情事の森」

ドラマ

一度寝たら起きない人って
本当にいるらしいです。

[原題]Reflections in a Golden Eye
[製作年]1967[製作国]アメリカ
[日本公開]1967
[監督・脚本・製作]ジョン・ヒューストン
[脚本]チャップマン・モーティマー/グラディス・ヒル
[原作]カーソン・マッカラーズ
「黄金の眼に映るもの」
[製作]レイ・スターク
[撮影]アルド・トンティ
[編集]ラッセル・ロイド
[音楽]黛敏郎
[上映時間]108

主な登場人物

ウェルドン・ペンダーソン(マーロン・ブランド):
少佐。妻レオノラとの関係は冷え切っており、モリスとの不倫も黙認している。乗馬が下手。

レオノラ・ペンダーソン(エリザベス・テイラー):
ペンダーソンの妻。美しく魅力的な女性だが、ちょっとたりなく言動が子供っぽい。モリスと不倫関係だが悪びれた様子もない。

その他の登場人物

モリス・ラングドン(ブライアン・キース):中尉、レオノラと不倫関係。
アリソン・ラングドン(ジュリー・ハリス):モリスの妻。子供を亡くしてから精神的に不安定な状態。
ウィリアムズ(ロバート・フォスター):一等兵、裸で馬に乗る。
軍人(ハーヴェイ・カイテル)
アナクレート(ゾロ・デヴィッド):アリソンのフィリピン人使用人。

あらすじ

南部に陸軍の拠点があった。数年前にそこで殺人事件が起こった。自らの肉体を鍛え上げるペンダーソン少佐は、官舎にウィリアムズ一等兵を呼びつけ庭の清掃を命じる。一方厩舎に来ていたペンダーソンの夫人レオノラは白い愛馬ファイヤーバードに乗り、モリスと二人で遠乗りに行ってしまう。二人の不倫関係は兵士たちの間や、ペンダーソン少佐本人にも勘づかれていた。レオノラは非常に美しい女性だったが、軽度の知的障害があり振る舞いが幼く深く物事を考えることが苦手だった。レオノラが台所でメイドと馬鹿話で盛り上がっていると、苛立ったペンダーソンがレオノラを注意する。嫌な女だとレオノラを軽蔑したような態度を取るペンダーソンの前で、服を脱ぎ全裸になるレオノラ。ペンダーソンの目の前を裸で通り過ぎ彼の神経を逆撫でさせた。それを外から目撃したウィリアムズ。彼女の裸体が目に焼き付いた。パーティーの夜、レオノラはモリスとカード、モリスの妻アリソンは編み物をしていた。アリソンは大尉の家から銀のスプーンが盗まれた話をするが、アリソンは私じゃないと言ってカードを続けた。テーブルの下でアリソンの足がモリスの足を弄っていた。アリソンは一人で帰ると言って、ペンダーソンが送っていった。アリソンは3年前に赤ん坊を亡くしてから精神的に不安定になっていた。戻ったペンダーソンは自分の部屋のデスクから箱を取り出し、彫刻の写真を繁々眺めた後、箱から銀のスプーンを取り出し磨いた。それを窓からも目撃するウィリアムズ。また、モリスが帰った後に2階に上がって行くレオノラの寝室の場所を確認する。ウィリアムズが1階に目をやるとペンダーソンが鏡の前で何やら話かけ笑いかけた後2階に上がり、レオノラとは別の寝室に入ったのを見る。モリスはアリソンの寝室で彼女の面倒を見ているフィリピン人の使用人アナクレートを疎ましく思っていた。レオノラとモリス、ペンダーソンが乗馬を楽しんでいると、ペンダーソンが障害を超えられず転倒してしまう。立ち止まった三人はウィリアムズが裸で馬に乗っているのを目撃する。

どんな映画?

カーソン・マッカラーズの小説「黄金の眼に映るもの」を原作に、ジョン・ヒューストンが監督し、マーロン・ブランドエリザベス・テイラーが主演しております。夫婦間にある欺瞞やセクシャリティの問題を扱い、異質な映画作品となっております。

アメリカ南部の軍事拠点
ペンダーソン少佐は
日々肉体を鍛える筋肉バカっぽい人
そんな夫を尻目に
妻のレオノラは自分の白い愛馬で
愛人のモリスと遠乗り

モリスには赤ちゃんを生まれて
すぐに亡くした為
ずっと精神不安定に陥っている妻
アリソンがいましたが
彼女から目を逸らすように
公然とレオノラと関係を
持っています。

一方のレオノラは
セクシー美人ですが
少し知能に問題があるようで
良く言えば天真爛漫
悪く言えば配慮の足りないお方
ペンダーソン夫妻の
夫婦仲は最悪で寝室も別々

ある時ペンダーソンは
若い兵士ウィリアムズに
自宅の庭の掃除をするように
命じます。
無口なウィリアムズは黙々と
落ち葉を集めながら
じっと帰宅したレオノラの姿を
見ています。

モリスの妻アリソンは
夫とレオノラの関係に心を
痛めながらもレオノラの
悪びれず声をかけてくる
態度に苦笑状態
フィリピン人ハウスボーイの
アナクレートの存在に
慰められています。

その夜
運動靴を履いてアンダーソン邸を
覗くウィリアムズの姿が…

エレノアの寝室で寝ているエレノアを見つめ、下着をクンクンするウィリアムズ

原作者のカーソン・マッカラーズはアメリカの女流作家。南部ゴシックの傑作とされる「心は孤独な狩人」の原作者として知られています。「心は孤独な狩人」は、1968年に「愛すれど心さびしく」のタイトルで映画化されています。この映画は「心は孤独な狩人」の翌年に発表された「黄金の眼に映るもの」を原作として名匠ジョン・ヒューストン監督が映画化しました。

この映画何がすごいかって、 珍しいくらいまともな人が出て来ない! ことですかネ。

マーロン・ブランド演じるペンダーソン少佐は、妻のレオノラを憎んですらいるのに、自分のセクシャルな問題を隠そうとしている。当初ペンダーソン役は、エリザベス・テイラーと仲の良かったモンゴメリー・クリフトが決定されていたそうですが、残念ながらモンゴメリー・クリフトが1966年に急死された為、このキャスティングは実現されませんでした。代役だったマーロン・ブランドですが、この役は男性っぽい男性が演じる方がより信憑性が出る印象です。
ペンダーソン少佐の妻レオノラを演じたのは、美女なのに夫に肉体的に満たされない女性を演じたら、ヴィヴィアン・リーを上回る(?)であろう大女優エリザベス・テイラー。この映画の前年に出演した「バージニア・ウルフなんかこわくない」(1966年)で、老け役がなりおばさん炸裂でアカデミー賞主演女優賞を獲得。この映画で演じたレオノラは、まだまだ美貌とセクシーな肉体を持ちながらも夫からは顧みられず、堂々と不倫に走るやや知性に劣る女性です。
「エデンの東」(1955年)や「たたり」(1963年)の出演で知られるジュリー・ハリスが演じるアリソンは、レオノラと浮気しているモリスの妻で、子供を亡くしおかしくなった上に現実逃避する夫に浮気され、さらに精神不安定に陥っており、ダンスや芸術を愛する中世的なフィリピン人ハウスボーイのアナクレートに慰められています。
一番理解できないのが、ロバート・フォスター演じるウィリアムズで、自分の心情を発言するセリフがない為、何を考えているかわかりません。裸で馬に乗ったり、レオノラの寝室に侵入しても寝姿を見ているだけで何もせず、香水やレオノラの肌着をクンクン。
すごい映画です。

この映画は、クローゼット(性的指向)ものの映画として知られ、賛否両論ありますが、夫婦間にある欺瞞や男らしさって何なのか、まだまだはっきりと描けない時代の中で異質で、ちょっと考えさせられる映画でした。1968年のジョン・フリン監督、ロッド・スタイガー主演の「軍曹」も同様ですが、軍隊の中にある上官男性によるセクハラ、ストーカー行為が描かれています。 タイトルにある「黄金の眼」は、アナクレートの描いた孔雀の羽の眼を指し、当初この映画は全面ゴールド・フィルターで着色されていましたが、不評により1週間でテクニカル・カラーに切り替えられたそうです。

ラストの頭を抱えるマーロン・ブランドと、ただただ絶叫するエリザベス・テイラーには思わず笑ってしまいますが。

ちなみにこの映画のマーロン・ブランドの軍人衣装姿は、1979年の「地獄の黙示録」でカーツ大佐の昔の姿として流用されています。

スタッフ・キャスト

レオノラの不倫相手モリスを演じたのは、アメリカ合衆国出身の俳優ブライアン・キース。ドン・シーゲル監督の「殺人捜査線」(1958年)での出演で知られるロバート・キースの息子で、子役で活動後1947年にエリア・カザン監督の「影なき殺人」や、1948年のウィリアム・ディターレ監督の「ジェニーの肖像」、1951年のヘンリー・ハサウェイ監督のフィルムノワール 「14時間の恐怖」などにエキストラ出演。1955年のフィル・カールソン監督、ジンジャー・ロジャース主演のフィルム・ノワール「消された証人」では、若い刑事役で登場しています。その後もサム・ペキンパー監督の「荒野のガンマン」(1961年)、ノーマン・トーカー監督のディズニー映画「雲の中の虎」(1964年)、ラモント・ジョンソン監督の「マッケンジー脱出作戦」(1970年)、アンドリュー・V・マクラグレン監督の「テキサス大強盗団」(1971年)、シドニー・ポラック監督のとんでもヤクザ映画「ザ・ヤクザ」(1974年)など多くの戦争映画、西部劇などに出演されました。またテレビ出演も多く1983年から1986年に放映されたアクションドラマ「探偵ハード&マック」のハードキャッスル役で出演されています。

変態露出狂の若者ウィリアムズを演じたのはアメリカ合衆国の俳優ロバート・フォスター。「禁じられた情事の森」で衝撃的な役どころで映画本格デビュー。翌年グレゴリー・ペック主演の異色西部劇「レッド・ムーン」に出演。その後は、マーク・L・レスター監督の「スタントマン殺人事件」(1978年)、SF映画「ブラックホール」(1979年)、ルイス・ティーグ監督のパニック・ホラー映画「アリゲーター」(1980年)、「殺人ホスピタル」(1988年)、「エイリアン・コップ」(1990年)など多くのテレビ映画、B級ホラー作品に出演し、お茶の間でも非常に知られる存在に。そんなロバート・フォスターを見て育ったクエンティン・タランティーノ監督に「ジャッキー・ブラウン」(1997年)で、ヒロインの相棒役にキャスティングされ、この演技でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、再ブレイクを果たしますが、2019年に78歳でお亡くなりになっています。

まとめ

男らしさってなんなん?で地獄行き

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