地獄のテレビ業界「ネットワーク」

ドラマ

最近めっきり「しばらくお待ちください」の
カラーバー画面見かけないですネ

[原題]Network
[製作年]1976[製作国]アメリカ
[日本公開]1977
[監督]シドニー・ルメット
[脚本]パディ・チャイエフスキー
[製作]ハワード・ゴットフリード
[撮影]オーウェン・ロイズマン
[編集]アラン・ハイム
[音楽]エリオット・オーレンス
[上映時間]121

主な登場人物

ダイアナ・クリステンセン(フェイ・ダナウェイ):
野心的なエンタメ番組女性プロデュサー。美人で優秀だが、仕事のことしか考えておらず人間性に欠ける人物。

マックス・シューマッカー(ウィリアム・ホールデン):
報道部門番組責任者。結婚25年の妻と二人の娘がいる。元大学教授。ハワードとは親友。若くて美しい年の離れたダイアナに惹かれる。

ハワード・ビール(ピーター・フィンチ):
元人気ニュースキャスター。2週間後に番組降板を聞かされ、その日のニュースで自分は番組中に自殺すると発言し、物議を醸す。次第に精神不安定に陥る。

その他の登場人物

フランク・ハケット(ロバート・ドュヴァル):CCA幹部、実質CCAを牛耳っている
アーサー・ジェンセン(ネッド・ビーティ):CCAの会長
バーバラ・シュレシンジャー(コンチャータ・フェレル) ロバート・マクダナウ(レイン・スミス):シューマッカーの後任に指名される
ルイーズ・シューマッカー(ベアトリス・ストレイト):マックスの妻
エドワード・ジョージ・ラディ(ウィリアム・プリンス):UBS元会長
アーメッド・カーン(アーサー・バーグハルト):テロリストのリーダー

あらすじ

UBSテレビの元人気キャスターのハワード・ビールだったが、1969年頃から人気が落ち翌年には妻を亡くしさらに視聴率がガタ落ちしてしまう。ハワードはそれをきっかけに酒浸りとなり、ついに1975年の9月22日に2週間後に解雇されることとなってしまう。ハワードに解雇を伝えたのは旧友のマックス・シューマッカーだった。その夜2人で飲み明かしたが、ハワードはマックスにテレビ放映中に頭をぶち抜いて自殺すると言うと、酔っ払っていたマックスは止めるどころかきっと視聴率が高騰するぞと冗談を言った。その日、USBイブニング・ニュースの番組に出演したハワードは、突然自分はこの番組を後2週間で降板する。この番組は自分の全てだった。そして自分は1週間後に番組内で頭を撃ち抜いて自殺すると告げる。スタッフは衝撃の発言に聞いていない者もいたが、番組中にハワードを取り押さえ、テレビの画面には「しばらくお待ち下さい」の画面に切り替わった。テレビ局には苦情の電話が殺到し、番組責任者のハケットもハワードにすぐに番組を降板しろと怒りをあらわにした。他のテレビ局でも大々的に報道されてしまい、局にも報道陣が殺到していた。その日はハワードをマックスの家に泊まらせることにした。翌日、マックスは新たなキャスターを決め、ハワードを番組から降ろすことにした。マックスは試写室に呼ばれ、エンターテーメント部門のプロデューサーのダイアナと一緒に持ち込まれた革命軍グループの特別番組のフィルムを鑑賞した。その映像はアリゾナの銀行がテロ・グループに襲われ、誘拐された少女メアリー・アンとグループのリーダーのアーメッド・カーンが写されていた。そこにハワードからマックス宛に電話があり、最後の挨拶をさせて欲しいと懇願された。一方試写の後、銀行強盗の部分を気に入ったダイアナは、テロリストたちのスペシャル番組に大いに乗り気になった。さらにシリーズ化もしようと言い出す。一方株主総会に出席したマックスは、報道部門が縮小されることを聞き、初耳だと憤慨する。ハワードの最後の出演番組が始まり、自分の信念や結婚生活などの破綻を勝手に話し始め会長を激怒させた。

どんな映画?

テレビ業界の裏幕を描いたパディ・チャイコフスキーの脚本をシドニー・ルメット監督が映画化。ベテラン大物俳優ウィリアム・ホールデンが主演した他、ヒロイン役のフェイ・ダナウェイがアカデミー賞主演女優賞を獲得し、ピーター・フィンチが主演男優賞、ベアトリス・ストレイトが助演女優賞を、脚本のパディ・チャイコスフキーが脚本賞を獲得しています。

USBテレビで長年キャスター
としてニュース番組に
出演していたハワードは
最近の視聴率低迷の為
降板を言い渡されます。
引導を渡したのは
ハワードの友人でもある
責任者である
シュマッカーでした。

あと2週間で降板ー
番組出演したハワードは
生放送中に突然の
自殺予告!
番組内で頭撃ち抜いて
死にまーす

ピー(しばらくお待ち下さい)

局内は騒然とし
UBSを傘下に入れている
巨大ネットワークCCAの役員の
ハケットはカンカン
シューマッカーは一旦
ハワードを自宅に引き取ります。

しかし何だかスピリチュアルに
目覚めてしまったハワード
パジャマのままテレビ局に
現れたハワードは最後に
出演させて欲しいと頼みます。
了承したシュマッカーでしたが
意味不明なことを発言
これに目をつけたのが
エンタメ部門の気鋭美人
プロデューサーのダイアナ

ハワードを預言者とした番組を
制作し、視聴率は瞬く間に
爆上がりするのですが…

番組でリアクション大で発言し最後に失神するハワード

この映画は、アメリカの巨大ネットワークグループに吸収されたテレビ局を舞台に、視聴率至上主義を思いっきり皮肉っており、実際にテレビ局勤務の経験があったパディ・チャイエフスキーの脚本を元に映画化されています。脚本家、小説家のパディ・チャイエフスキーは、1955年の「マーティ」の原作・脚本や、1971年の総合病院を舞台に専門分化された診療を皮肉った「ホスピタル」の脚本を担当しいずれもアカデミー賞脚本賞を受賞し、「ネットワーク」を含め3度の脚本賞を獲得しています。

1941年のフランク・キャプラ監督の「群衆」でも、新聞で自殺すると宣言すると、大反響を巻き起こし新聞が売れるという皮肉に 1974年にアメリカでニュースキャスターだった女性が、生放送中に拳銃自殺するという衝撃的な事件が起き、こちらも映画の元ネタになっていたのではないかとされています。

ビリー・ワイルダー監督の「サンセット大通り」(1951年)で、映画界の裏幕ものに出演したウィリアム・ホールデンが、今度はテレビ局の裏幕ものに元大学教授の中年テレビ局管理職役を演じています。
ホールデンが演じたシューマッカーは、視聴率レースでイカれた業界人しか出てこない中で唯一まとも(?)な人物として描かれています。友人と仕事の間で板挟みになり失職する中年男性が、一回り以上年下で美人でアグレッシブなダイアナに惹かれ、破綻が目に見えているのに25年連れ添った糟糠の妻を捨てて出ていく様はある意味フツー。一方フェイ・ダナウェイ演じるダイアナは、美人だけど仕事以外は全部ポンコツな女性。デート中もずーっと仕事の話ばかりで、自分の番組の視聴率を上げることしか考えておらず、シューマッカーが自分のことを恋人として考えて欲しいという訴えに、ポカーンとしながら
「で どうすればいいの?」
と言っちゃう人間性のなさ。でもこーゆー人いるなーと思わせる演技力でアカデミー賞主演女優賞を獲得しています。
ほとんど出演がないシューマッカーの25年連れ添った妻を演じた、ベアトリス・ストレイトが助演女優賞を受賞し、この5分40秒の短い出演時間で、アカデミー賞史上最も短い出演時間で演技賞を獲得した女優さんとなりました。

ピーター・フィンチは、クビを言い渡され狂気に走っていくニュースキャスターを演じアカデミー主演男優賞にノミネートされますが、その直後に急性心不全で急逝され、アカデミー史上初の死後受賞となりとなりました。死後受賞は、2009年にヒース・レジャーが「ダークナイト」(2008年)で助演男優賞を受賞するまで32年の間ただ一人の存在でした。
ピーター・フィンチが演じたハワードが、番組中にカメラに向かって発した
「私は怒っている もう耐えられない!」 (I’m as mad as hell, and I’m not going to take this anymore!)
のセリフは2005年のCBSテレビで発表された「アメリカ映画の名セルフベスト100」で19位にランキングされています。

視聴率史上主義がとことんまで突き抜けていく狂態は、現在ここまでテレビが廃れている現実を見ると虚しさを感じます。
視聴率が悪くて殺されるなんて…

スタッフ・キャスト

元人気ニュースキャスターを演じたのはイギリス出身の俳優ピーター・フィンチ。登山家兼科学者であるジョージ・イングル・フィンチの息子さんで、1930年代後半からイギリスで映画に出演。1954年にウィリアム・ディターレ監督のアメリカ映画「巨象の道」に出演。この映画は当初ヒロインをエリザベス・テイラーを予定していましたが、妊娠したためヴィヴィアン・リーに変更。ですが、ヴィヴィアン・リーが途中降板、再び出産を終えたエリザベス・テイラーが出演するというカオスな映画になってしまいました。一方でローレンス・オリヴィエの妻であったヴィヴィアン・リーと不倫関係にあったらしく、駆け落ちしようとした時の出来事が「予期せぬ出来事」(1963年)の元ネタにされたと言われています。1956年にマイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー監督のイギリス戦争映画「戦艦シュペー号の最後」で、ドイツシュペー号の艦長ハンス・ランドルフを演じています。また、フレッド・ジンネマン監督、オードリー・ヘプバーン主演のドラマ映画「尼僧物語」(1959年)ではフォチュナティ博士を演じています。ロバート・アルドリッチ関東の「飛べ!フェニックス」(1965年)ではハリス大尉を、ジョン・シュレシンジャー監督のイギリス・アメリカ合作の映画「遙か群衆を離れて」(1967年)ではテレンス・ヤングに殺される金持ちを、再びロバート・アルドリッチ監督のアメリカ映画「女の香り」(1968年)では、女優に執着する映画監督を、翌年にはミハイル・カラトーゾフ監督のソ連・イタリア合作映画で実話を元にした「SOS北極…赤いテント」(1969年)ではノビレ将軍を演じています。やはり、ピーター・フィンチ主演でかなり印象的なのは1971年に出演したジョン・シュレシンジャー監督のイギリス・アメリカ合作の「日曜日は別れの時」で演じた、ユダヤ人医師役ですネ。この映画では、恋人の若い芸術家(男)との関係に翻弄される、知的で小綺麗(?)な中年紳士という難しい役どころを見事に演じていました。1973年に出演したチャールズ・ジャロット監督のミュージカル映画「失われた地平線」に主演しますが、大作だったにも関わらず大爆死しました。「ネットワーク」(1976年)に出演しアカデミー賞主演男優賞にノミネートされますが、残念ながら急逝され、アカデミー賞史上初の死後受賞となってしまいました。

CCAの会長アーサー・ジェンセンを演じたのはアメリカ合衆国の俳優ネッド・ビーティ。1972年のジョン・ブアマン監督の南部ゴシックのカルト作「脱出」で映画デビュー。アウトドアに行って大変な目に遭う4人組の一人を演じています。その後もジョン・ヒューストン監督の西部劇「ロイ・ビーン」(1972年)、ジェフ・ブリッジス主演のスポーツ映画「ラスト・アメリカン・ヒーロー」(1973年)、バート・レイノルズ主演のアクション映画「白熱」(1973年)では保安官役を、ロバート・アルトマン監督の「ナッシュビル」(1975年)、アラン・J・パクラ監督の犯罪ドラマ「大統領の陰謀」(1976年)、リチャード・ドナー版「スーパーマン」(1978年)では、ジーン・ハックマン演じるルーサーの子分役、スティーブン・スピルバーグ監督の戦争コメディ「1941年」(1979年)、ジョエル・シューマーカー監督の「縮みゆく女」(1981年)、ジョン・マッケンジー監督のイギリス映画「第四の核」(1986年)、ショーン・コネリー主演のサスペンス映画「理由」(1995年)、マイク・ニコルズ監督の「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(2007年)など多くの映画、テレビ映画などに出演されていらっしゃいました。

まとめ

テレビはオワコンで地獄行き

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