裸足の女神「モロッコ」

ドラマ

砂漠を見ると何となく
怖くなるのはわたくしだけでしょうか?

[原題]Morocco
[製作年]1930[製作国]アメリカ
[日本公開]1931
[監督]ジョセフ・フォン・スタンバーグ
[脚本]ジュールス・ファースマン
[原作]ベノ・ヴィグニー  
   「エーミー・ジョリイ」
[美術]ハンス・ドライヤー
[撮影]リー・ガームス
[音楽]カール・ハヨス
[上映時間]92

主な登場人物

アミー・ジョリー(マレーネ・ディートリッヒ):
モロッコまで流れ着いた男装の麗人歌手。

トム・ブラウン(ゲーリー・クーパー):
外人部隊の兵士。女好きだがアミーに惹かれる。

その他の登場人物

ラ・ベジエール(アドルフ・マンジュー):画家。アミーに好意を持つ。
セザール副官(ウルリヒ・ハウプト):トムの上官
セザール夫人(イヴ・サザーン):副官の妻。トムとできていた。
軍曹(フランシス・マクドナルド)
マネージャー(ポール・ボルカシ)

あらすじ

外国人部隊の兵士であるトムは、モロッコに駐在するが戦争よりも女に目がなく、よくもてる男だった。一方、モロッコに到着する船の中で、裕福な画家のベジエールは美しい女アミーに目を留める。彼女がぶちまけたトランクの中身を拾ってやり、名刺を渡して力になると言う。しかし彼女はもらった名刺を破り手のひらに乗せ、風に吹かせた。モロッコの大きなナイトクラブ。ベジエールは高級客として友人である副官のセザールと夫人に会う。そして安い末席にトムが座り、セザール夫人にめくばせをする。舞台に登場したのはタキシードにシルクハットを身につけた男装の麗人アミーだった。怪しくたばこをくゆらせ、歌うアミーをトムは一目見て気に入ってしまった。次に登場したアミーはモロに足を出し、リンゴ売りに扮して客席を回った。トムの前の前にくるとリンゴを買うと金を借りて払った彼に、お釣りだと言って手に握らせたのは彼女の部屋の鍵だった。その後、アミーの部屋を訪れるトム。キスを迫るが、「出て言って」と彼女は言うが、トムは「十年前に会いたかった」と言い、二本指で合図して出て行く。すると外では、以前から不倫関係にあったセザール夫人が待ち伏せしており、トムに関係を迫ってきた。しかしトムは彼の後を追ってきたアミーとともに部屋に戻った。激高した夫人は男たちを雇いトムを殺そうとしたが逆に返りうちにしてしまう。一部始終を目撃していたセザールは彼を軍隊で尋問したが襲われた理由を語らなかった。証人としてベジエールとアミーが呼ばれ、結局口を割らなかったため軍法会議にはかけられなかったが、サハラの前線に送られることになってしまった。

どんな映画?

この映画は、ドイツで撮った「嘆きの天使」(1930年)で知られるジョセフ・フォン・スタンバーグ監督がドイツ出身の女優マレーネ・ディートリッヒを同年再び起用し、彼女のハリウッド第一作目となりました。
また、この映画は日本で初めて日本語字幕が付けられた海外映画として知られています。

アフリカ大陸の北西端に位置するモロッコ。
エキゾチックな雰囲気と地中海に面した
熱気あふれるこの地にやってきたアミー。

現地のナイトクラブの舞台で
彼女はシルクハットにタキシードを身にまとった姿で登場し、
まさに男装の麗人。

女好きのトムも見入ってしまい、早速口説きに行きます。
アミーは、あしらいながらトムに 「女をなめてる」
トムは誰にも本気にならない男でした。
そしてアミーもまた同じ人種。

しかし、トムを追い出しておきながら夜の街を走ってトムを追いかけるアミー。
トムはアミーを送って行きます。
そこにトムの浮気相手セザール夫人から依頼された防寒がトムに襲い掛かります。
返り討ちしたトムをセザールが見つめていたのです。

副官のセザールはトムを前線に送り込むと言います。

もう一人アミーを渡航中の船の中から想う人物がいました。
アドルフ・マンジュー演じる裕福な画家のベジエールでした。
彼はアミーに結婚を迫るのですが…

トムを見送るアミー
このジェスチャー 昔の少女漫画でよく見かけたなー

1930年にドイツで公開された「嘆きの天使」で悪女を演じ世界的に知られることになった女優マレーネ・ディートリッヒが男装し、ハスキーボイスで歌う場面は、大変有名です。その退廃的で個性的な美貌は現在でも伝説的な存在です。男装と思っていると、次に大胆に脚を出して登場。さすがに「100万ドルの脚線美」と呼ばれたおみ足、この映画でもちゃんと披露しております。まだ若いマレーネ様、ちょっと太い気がしますがさすがの風格です。
1957年に出演したビリー・ワイルダー監督の「情婦」でも、50代半ばのマレーネ様が堂々と脚を披露しておりました。
この映画でマレーネ・ディートリッヒはアカデミー賞主演女優賞にノミネートされています。

日本ではその昔サイレント映画を上映する際に、活弁士と呼ばれスクリーンの脇に立ち講談調に解説する職業がありました。音声が出るトーキー映画であるこの映画が、初めて日本語字幕を焼き付け上映されました。今では字幕付きが当たり前となっており、活動弁士という職業も忘れられた職業となってしまいました。

話自体は他愛もないメロドラマなのですが、異国情緒溢れる世界観と男装の麗人マレーネのカッコよさ、クーパーの美青年ぶり、鏡に口紅で書いたメッセージ、二本指をこめかみに当ててグッド・ラックなど元ネタ満載の面白さは必見です。

ラストのシーンはマレーネのカッコよさが最大限に表現されているのですが、この後大丈夫かな? と思わずにはいられません!

スタッフ・キャスト

監督のジョセフ・フォン・スタンバーグはウィーン出身のハリウッドで活躍した映画監督です。1927年の「暗黒街」は史上初のギャング映画とされています。そして1930年にドイツに招かれマレーネ・ディートリッヒ主演で「嘆きの天使」を監督。この映画からマレーネ・ディートリッヒを立て続けに起用し「モロッコ」、1931年「間諜X」、1932年「上海特急」、1932年「ブロンド・ヴィナス」、1934年「西班牙狂想曲」、1934年「恋のページェント」の作品を残しました。公私ともにパートナーだったディートリッヒと離れてからは、精彩さを欠いてしまいヒット作を生み出すことはできませんでした。

脚本のジュールズ・フォースマンはアメリカ出身の脚本家。サイレント時代から活躍し、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の「上海特急」(1932年)などの脚本を担当。クラーク・ゲーブルが主演した「チャイナ・シー」(1935年)、「上海ジェスチャー」(1941年)、ハワード・ホークス監督の「脱出」(1944年)や1946年の「三つ数えろ」ではウィリアム・フォークナーと共に脚本に名を連ねています。また「悪魔の往く町」(1947年)などフィルムノワールを多く脚本されています。

女ったらしのトムを演じたゲーリー・クーパーはこの映画で一躍スターの仲間入りを果たしました。まだ若くてイケメンのクーパーを観ることだできる映画です。

ラ・ベジエールを演じたのはアメリカ人俳優アドルフ・マンジュー。サイレント映画時代から活躍し、1923年にチャールズ・チャップリン監督の「巴里の女性」、「犯罪都市」(1931年)、ゲーリー・クーパーとも共演した「戦場よさらば」(1932年)、「オーケストラの少女」(1937年)などほとんど脇役として多くの作品に出演し、主に裕福なおじさん役でした。

まとめ

裸足で砂漠は地獄行き

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