本当の敵「ミシシッピー・バーニング」

ドラマ

初めて入ったお店で
入った瞬間一斉に見られたら
失敗したな~って思っちゃいます。

[原題]Mississippi Burning
[製作年]1988[製作国]アメリカ
[日本公開]1989
[監督]アラン・パーカー
[脚本]クリス・ジェロルモ
[製作]フレデリック・ゾロ/ロバート・F・コールズベリー
[撮影]ピーター・ビジウ
[編集]ジェリー・ハンブリング
[音楽]トレヴァー・ジョーンズ
[上映時間]128

主な登場人物

ルパート・アンダーソン(ジーン・ハックマン):
ミシシッピー、テネシーの隣町出身。田舎の保安官からFBI捜査官に。口より先に手が出るタイプ。

アラン・ウォード(ウィレム・デフォー):
司法省からFBI捜査官になって3年目の若手エリート。インテリ系で冷静に物事を判断しようとするタイプ。基本的に暴力反対。

その他の登場人物

クリントン・ペル(ブラッド・ドゥーリフ):現地保安官補。KKK団の一員。
ペルの妻(フランシス・マクドーマンド):美容師。
ティルマン(リー・アーメイ):町長
レイ・スタッキー(ゲイラード・サーティン):保安官
クレイトン・タウンリー(スティーヴン・トボロウスキー):表向きは実業家。KKK団の幹部
フランク・ベイリー(マイケル・ルーカー):KKK団の一員
レスター・コーワンズ(プルイット・テイラー・ヴィンス):KKK団の一員
バード(ケヴィン・ダン):FBI捜査官

あらすじ

1964年ミシシッピー州フィラデルフィア、公民権運動が活発化する中、黒人男性一人とを二人のユダヤ人白人男性、三人の運動家が行方不明になった。ベテランのアンダーソンと若手エリートのウォードの二人のFBI捜査官が捜査にやってきた。地元警察署に到着したが、保安官補のペルは二人に対して態度が悪かった。保安官のスタッキーは感じ良く出迎えたが、明らかに人種差別主義者だった。調査によると、当日は三人をスピード違反で逮捕。夜10時までに拘留し、釈放。ペルの証言では、その後郡境まで見送って以来行方不明だと言う。これについてウォードは、解放された後三人は何故誰にも電話連絡をしなかったのかと疑問をもち、保安官たちが偽証しているのではないかとアンダーソンに話すが、自分の経験上こんなド田舎では保安官がそう言ったらそうなると言う。二人が昼食を取るためレストランに入ると、食事をしていた人々が一斉に彼らを見た。満席だと言われるが、黒人男性の隣が空いているのを見つけたウォードは、躊躇なく隣に座り彼に話を聞きたいと話しかけるが、知らないと言って席を離れられてしまう。三人の公民権運動家たちは、この町に有権者登録所を作ろうとして、集会所がKKK団に焼き討ちにあっていた。二人はその時集会所にいた黒人の老夫妻の家を訪ね、妻から焼けた集会所から逃げる際四人の白人と出会し、夫が襲われたと言う。相手に心当たりはあるかと尋ねると、妻は首を振り警察にも届けなかったと言う。しかしこのことを行方不明の三人に報告し、その後の行き先はわからないと言う。その夜レストランで話しかけられた男性が白人たちに襲われ、FBIの連中に何も言うなと釘を刺した。モーテルで行方不明の三人の写真や調書を見ながら、ウォードは何故ここまでの憎しみが?と呟くと、アンダーソンは自分の話を始めた。自分が子供の頃近所に住む黒人がラバを買い、畑を耕していたと言う。彼の畑はどんどん大きくなっていったが、アンダーソンの父親は嫌っていた。ある日そのラバが死に、誰かに毒を盛られたようだった。アンダーソンは父親がやったのだとわかり、父親を見ると黒人に負けたら終わりと言い訳めいたことを言った。結局、黒人を憎んでいた父親の本当の敵は貧乏だったのだと。そう言った瞬間、部屋に銃弾が撃ち込まれ襲撃された。窓から外を見ると、十字架が燃やされKKK団の仕業だと悟った。

どんな映画?

1964年にアメリカ合衆国のミシシッピー州で起こった実在の事件を元に、アラン・パーカー監督が映画化。F BI捜査官をジーン・ハックマンとウィレム・デフォーが演じ、後にオスカー女優となるフランシス・マクドーマンドが出演しております。

1964年にミシシッピー州
フィラデルフィアで
黒人青年を含む三人の
公民権運動家が行方不明となります。
彼らの捜索の為に
アンダーソンとウォードの
2人のFBI捜査官が派遣されます。

ベテランのアンダーソンは
時には暴力も辞さない
南部出身の保安官経験者で
この土地の特性を熟知しています。
一方のウォードは若手の
インテリメガネ

対照的な二人が乗り込んだのは
黒人差別が公然と行われている土地
余所者に対して非常に冷ややか
当日の夜、三人をスピード違反として
拘留し釈放したという
保安官補のペルの供述はおかしい
と感じます。

焼き討ちされた集会所の跡地に
出向いたアンダーソンとウォード
三人は一体どこに?

燃やされた十字架はKKK団からの警告

1988年に公開されたこの映画は、アカデミー賞撮影賞を獲得しますが、公開当初から史実と異なるとして賛否両論がありました。 1964年の6月にフリーダム・サマーと呼ばれる公民権運動の啓蒙の為、ミシシッピ州フィラデルフィアに派遣された1人の黒人青年と2人のユダヤ系白人の若者が行方不明となり、その後川から3人の遺体が発見される事件が起こります。この事件は「フリーダム・サマー殺人事件」、「ミシシッピ公民権運動家殺人事件」「ミシシッピ・バーニング殺人事件」として呼ばれ、当時のアメリカを震撼させました。
実際、この事件当初FBIの捜査は積極的ではなく、この映画にあるように熱血FBI捜査官が事件を解決していくというような、かっこいいものではなかったようです。映画自体はヒットするのですが、当時でも既に事件から四半世紀程経過していましたが、事件当時のことをよく知る方々も多く、FBI礼賛のような物語に批判の声がありました。ただ、この事件が取り上げられることによって、世界的にもこの事件が知られ、再考させるきっかけに貢献していたのではないかと思われます。

北部出身のウォードは、憎悪まで感じさせる黒人差別が理解できません。ミシシッピー出身のアンダーソンは、南部の状況をよくわかっていました。南北戦争以降疲弊していった南部は、多くのプアホワイト(ホワイト・トラッシュ)を生み出していたにもかかわらず、その現実を激しい差別で紛らわしているだけ、本当の憎しみは貧困なのだと。
今年は、事件から60年となりますが現在でも続く社会問題として忘れてはいけない事件です。

スタッフ・キャスト

もう1人の主人公、若手FBI捜査官のウォードを演じたのはアメリカ合衆国出身の俳優ウィレム・デフォー。1980年にマイケル・チミノ監督の「天国の門」でスクリーンデビューしますがノンクレジット。1983年にトニー・スコット監督、カトリーヌ・ドヌーヴ、デヴィッド・ボウイが主演したヴァンパイア映画「ハンガー」にもちょこっと出演。1984年に出演したウォルター・ヒル監督の「ストリート・オブ・ファイヤー」で、悪役のリーダーを演じ映画自体は微妙だったものの、ご本人は注目株となり、翌年ウィルアム・フリードキン監督のサスペンス映画「L.A.大捜査線/狼たちの街」(1985年)に出演し、主要な悪役を演じています。そんでもって、ウィレム・デフォーの初期の大出世作が1986年に出演したオリバー・ストーン監督のベトナム戦争映画「プラトーン」になります。この映画では主演のチャーリー・シーンが霞むほどのインパクトで、全てを持ってかれるラストシーンは非常に有名です。ここから、マーティン・スコセッシ監督の色々物議を醸した映画「最後の誘惑」(1988年)で主演のイエス・キリストを演じた他、実在のユダヤ系ボクサーを描いた「生きるために」(1989年)でも主演。デヴィッド・リンチ監督の「ワイルド・アット・ハート」(1990年)、アンソニー・ミンゲラ監督の「イングリッシュ・ペイシェント」(1996年)、メアリー・ハロン監督の「アメリカン・サイコ」(2000年)、同年には実在の俳優マックス・シュレックを演じた「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」(2000年)など悪役から、際物まで演じこなす実力派。そしていよいよライフワーク(?)となるサム・ライミ版「スパイダーマン」(2002年)でキャラクター、緑のやつグリーン・ゴブリンを演じ、2021年のジョン・ワッツ監督版「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」で再びグリーン・ゴブリンを演じています。

保安官補のペルを演じたのはアメリカ合衆国の俳優のブラッド・ドゥーリフ。1975年にミロス・フォアマン監督の「カッコーの巣の上で」で、若いマザコン患者ビリーを演じアカデミー賞助演男優賞にノミネートされます。アーヴィン・カーシュナー監督、フェイ・ダナウェイ主演のサスペンス映画「アイズ」(1978年)では、容疑者の男を演じています。主に脇を固める性格派俳優ではありますが、1988年に主演(?)した人気ホラー映画「チャイルド・プレイ」では、凶悪犯を演じています。その後も同シリーズに登場されますが、物語の最初に死亡するのでチャッキーの声のみのご出演となります。この頃からホラー映画やB級映画へのご出演が多いのですが、ピーター・ジャクソン監督の大作「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」(2002年)、「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」(2003年)でグリマを演じています。

まとめ

差別と貧困は隣り合わせで地獄行き

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