フェイクニュースに踊らされないよう
気をつけようと思う今日この頃
[原題]Fury
[製作年]1936[製作国]アメリカ
[日本公開]1937
[監督・脚本]フリッツ・ラング
[脚本]バートレット・コーマック
[原案]ノーマン・クラスナー
[製作]ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
[音楽]フランツ・ワックスマン
[上映時間]90
主な登場人物
ジョセフ・ウィルソン(スペンサー・トレイシー):
ジョー。シカゴ在住でプロポーズしたキャサリンとの結婚の為、金を貯め彼女を迎えに行く途中、誘拐強盗犯に間違われて投獄されてしまう。
キャサリン・グラント(シルヴィア・シドニー):
ジョーの婚約者。教師をしているため1年ほどジョーと別れて彼が迎えに来るのを待っていた。
その他の登場人物
アダムス地方検事(ウォルター・エイブル):リンチ事件を担当
カービー・ドーソン(ブルース・キャボット):街のゴロつき。前科がある。
ハンメル保安官(エドワード・エリス):暴徒を鎮静しようとするが逆に襲われる。しかし裁判では口を噤む。
バックス=メイヤース(ウォルター・ブレナン):保安官助手。ジョーを連行する。
あらすじ
恋人同士のジョーとキャサリン。シカゴに住むジョーは教師のキャサリンにプロポーズし、キャサリンは快諾する。ジョーは結婚資金を貯めるためにシカゴに残り、教師のキャサリンはゲイルズバーグに戻ることに。シカゴの駅で二人は別れ難く、ジョーはキャサリンに香水を買ってやり、キャサリンは親の形見の結婚指輪をジョーに渡した。ジョーはその指輪を小指にはめて、すぐに金が用意できたら迎えに行くと約束して列車に乗るキャサリンを見送った。雨の中一人家路についたジョーは途中小さな犬を拾い家に連れて帰る。家に着くと弟のチャーリーとトムが二人で飲んだくれて帰ってき来た。呆れたジョーはチャーリーに両親が生きていたら嘆くと苦言を呈すが、チャーリーは取り合わない。拾った犬はレインボーと名付け、ジョーは結婚のため必死で働くうち季節が変わり、レインボーも子犬を産んでいた。手紙だけのやり取りが続く中、キャサリンの元に電報が届いた。とうとうジョーは結婚許可証と車を準備しキャサリンを迎えに来るという知らせだった。別れてから一年以上が経っていた。ジョーは好物のピーナッツをポケットに入れ車でキャサリンの元に向かった。しかし、スピード違反で保安官補のメイヤーズに捕まってしまい、群留置所に連行され取り調べを受けることになる。そこで昨夜はどこにいたのかと聞かれ、近道をしようとして道に迷い、その前の晩は野宿していたと答えた。警察署長はすぐにジョーを帰そうとするが、ちょうど部外秘の電報を見て、ビーボディ事件でランソンの封筒を調べた結果、塩味のピーナッツの破片が発見されたとあった。署長がピーナッツのことを尋ねると、ジョーは好物でいつもポケットに入れていると答えた。するとさらに疑われ、ジョーは何の容疑がかけられているのか尋ねると、強盗誘拐犯の容疑であることを知らされる。ピーナッツ好きというだけでと疑われるなんてと憤慨し、何でも調べろとポケットの中にある財布やマッチ、ピーナッツなど全て出した。するとその中の5ドル紙幣が強盗されたものと一致したという。そんなはずはないと言うジョーの訴えも聞き入れられず、キャサリンや弟たちにも電話できないまま捕まってしまう。思わぬ大物を捕まえたと得意になったメイヤーズは、ちょっと立ち寄った床屋の主人に誘拐犯の一味の一人を捕まえたことを仄めかしてしまう。すると瞬く間に町中に犯人が捕まったと噂が広まった。酒場でたむろう街の素行の良くない男ドーソンたちは捕まった男を誘拐犯だと確信し、保安官に処分について知る権利があると詰め寄る。本当の犯人かどうかはまだ判断できないと言う保安官だったが、少女が誘拐されたという凶悪事件に市民感情が高まっていた。そのうち煽る者も出て来てみんなで保安官の元に行こうと暴徒化した群衆が警察署に押し寄せてきた。
どんな映画?
ドイツから渡米したフリッツ・ラング監督のハリウッド映画第1作目。脚本家・劇作家のノーマン・クラスナーの原案を元に、シルヴィア・シドニー、スペンサー・トレイシーが主演しております。
愛し合うジョーとキャサリン
結婚の約束を交わしますが
なんせ先立つ物がありません。
シカゴに住むジョーはキャサリンに
結婚資金が貯まったら
迎えに行くと約束して別れます。
シカゴのジョーと
教師のキャサリンはお互い
一生懸命働き文通
1年経ちとうとうジョーは
車を買ってキャサリンを迎えに
行くことに。
ジョーの弟たちも喜んで
ジョーを見送ります。
意気揚々と向かったジョー
ポケットには好物の
ピーナッツが!
キャサリンの家を目指すジョー
でしたが、スピード違反で
保安官補のメイヤースに
逮捕されてしまいます。
保安官も一応はジョーを
取り調べしますが
ちょうど逃走中の
強盗誘拐犯の特徴が
ジョーと似ていたらしく拘束
されてしまいます。
たかが現場にピーナツが
あっただけで?
不運にもジョーが持っていた
紙幣が強盗された物でした。
ですが、勾留されたものの
犯人と確定されてわけ
ではありません。
ですが
誘拐犯を捕まえたと
得意になったメイヤースは
床屋でそれとなく話してしまいます。
瞬く間に町中に広まり
いたいけな少女の誘拐に
怒り狂った群集が警察署に
殺到します。
ジョーを血祭りに上げるために!!
命からがら逃げてきたジョー。復讐鬼と化すのですが…
この映画は、1933年にアメリカ合衆国カルフォルニア、サンノゼで実際に起きた、ブルック・ハート誘拐殺人事件とそれに関連して起こったリンチ殺人事件を元に製作されています。ブルック・ハートはデパートを経営する一家の御曹司で22歳の青年でしたが誘拐され、身代金が要求されるのですが、結局青年は犯人に殺害されており、後に逮捕された2人の男が暴徒化した群衆に刑務所から引き摺り出され、凄惨なリンチの末殺害され遺体が吊るされるという事件が起こります。この当時カルフォルニア州知事であったジェームズ・ロルフは、リンチを容認したとして批判されました。恐らくは実際に犯人であったろう2人でしたが、まだ裁判もかけられておらず刑も確定していない人物が、メディアによって過剰に扇動された一般市民に殺害されとうい事件は、社会に衝撃を与えました。
この映画では実際に事件に何の関わりもない男が、群衆によって焼き討ちされるという衝撃的な事件を扱い、さらに生き延びた主人公が人が変わったように復讐を誓う様は、圧巻です。ただラストはハリウッド的ハッピーエンドになってしまっていますが、それでもとってつけたように現れるシルヴィア・シドニーに心を打たれます。
一般市民が暴徒化し、老若男女の区別なく暴力を振るい翌日には何食わぬ顔で日常生活に戻る。そのリンチ画像がばっちり撮影されているのは、現代に通じる恐ろしさがあります。
同じ事件を元にしたのが1951年のサイ・エンドフィールド監督のフィルムノワール映画「群狼の街」になります。
スタッフ・キャスト
原案として名を連ねているのは、アメリカの脚本家、劇作家、プロデューサー、映画監督であるノーマン・クラスナー。1941年にアルフレッド・ヒッチコック監督の数少ないコメディ映画「スミス夫妻」、同年ルネ・クレール監督、マレーネ・ディートリヒ主演のロマンティック・コメディ映画「焔の女」の脚本を担当しています。1943年のオリヴィア・デ・ハヴィランド主演のロマンティック・コメディ映画「カナリヤ姫」では、監督・脚本を担当し、アカデミー賞脚本賞を獲得しています。1944年にブロードウェイで大ヒットを記録した「恋文騒動」の原作劇作家として参加し、この演劇は1949年に映画化されています。1951年のジェーン・ワイマン主演の「青いベール」では、孤児の育成に生涯を費やす女性を描いた映画の製作を担当。また、フリッツ・ラング監督、バーバラ・スタンウィック主演、マリリン・モンロー出演のノワール調映画「熱き夜の疼き(クラッシュ・バイ・ナイト)」(1952年)や、ニコラス・レイ監督、ロバート・ミッチャム、スーザン・ヘイワード主演の異色西部劇「ラスティ・メン/死のロデオ」(1952年)などの製作を担当されています。1954年のマイケル・カーティス監督、ビング・クロスビー、ダニー・ケイ主演の大ヒットミュージカル映画「ホワイト・クリスマス」の脚本を担当したのち、1960年にジョージ・キューカー監督、マリリン・モンロー、イヴ・モンタン主演のミュージカル・ロマンティック・コメディ映画「恋をしましょう」でも脚本を担当されています。スクリューボール・コメディを中心としたストーリーを得意とした脚本家で、映画監督作品は3本でした。
ジョーのリンチに加担したドーソンを演じたのは、アメリカ合衆国の俳優ブルース・キャボット。1932年の「山荘の殺人」(1932年)に出演。翌年の「キング・コング」(1933年)で、船員の若者ジャック・ドリスコルを演じ、フェイ・レイと共演し広く知られるようになります。1941年にルネ・クレール監督の「焔の女」に出演。1945年のオットー・プレミンジャー監督の「堕ちた天使」や、ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ監督の「静かなアメリカ人」(1958年)などに出演。1947年のジョン・ウェイン主演の西部劇「拳銃無宿」に出演し、それ以降、「コマンチェロ」(1961年)、「ハタリ!」(1962年)、「マックリントック」(1963年)などのジョン・ウェイン主演作品の常連となりました。
まとめ
群集心理の果てに地獄行き
コメント