いつの時代も女は
肩書きに弱いモンです。
[原題]Foolish Wives
[製作年]1921[製作国]アメリカ
[日本公開]1923
[監督・原作・脚本・衣装・主演]エリッヒ・フォン・シュトロハイム
[製作]カール・レムリエリッヒ
[音楽]シグマンド・ロンバーグ
[上映時間]108
主な登場人物
ウラジスラフ・セルギウス・カラムジン大尉(エリッヒ・フォン・シュトロハイム):
ロシア帝国竜騎兵大尉伯爵と名乗るインチキ詐欺師。米国大使夫人のヘレンに目をつけ金をせしめようと目論む。
ヘレン・ヒューズ(ミス・デュポン):
21歳の米国公使夫人。
その他の登場人物
オルガ・ペチュニコフ公爵夫人(モード・ジョーンズ ):カラムジン大尉の従姉妹を語る女
ベラ・ペチュニコフ公爵令嬢(メエ・ブッシュ):オルガの娘と語る女
マルシュカ(デイル・フラー): メイド
あらすじ
伯爵といっているウラジスラフ・セルギウス・カラムジン大尉は、モンテカルロのアモロサ荘の屋敷で従妹と言っているオルガ・ペチュニコフ公爵夫人、ベラ・ペチュニコフ公爵令嬢と3人で贅沢の限りを尽くしていた。朝食は朝酒かわりに牛の生き血、主食はキャビアにゆで卵。彼らの元に偽札作りのベントウィッチが娘を連れて偽札を持ってやってきた。彼らは困窮していた。その頃モンテカルロに米国公使夫妻が訪れていると新聞で知り、公爵夫人は、彼らに取り入って逃げるまでの資金稼ぎと疑われないようにとカラムジンに提案する。白い軍服姿のカラムジンは大使がモナコ宮殿で公主に謁見をしている間にホテルにいる妻を待ち受け、ホテルのテラスでくつろいでいる夫人の前に座りわざと夫人に聞こえるようにドアマンの少年にロシア帝国竜騎兵大尉伯爵と呼ばせた。紹介を受けたカラムジンと夫人二人で話を始める。その際夫人は読んでいた本を落としたのだが目の前の軍人は拾ってくれなかった。しかしカラムジンはわざわざ立ち上がって拾いページをめくってみる。その本は愚かなる妻とタイトルされアメリカ人はヨーロッパ人より名誉を重んじないとかかれていた。射撃場や舟遊びの社交場に顔を出すカラムジンと従妹たち。次第に夫人は伯爵のとりこになっていく。忙しい夫をしり目に暇で愚かな妻たち。とうとうカラムジンは夫人を二人きりで連れでした。急に天候があれ、わざと道に迷ったカラムジンは失神した夫人をボートで運び汚い小屋に連れ込んだ。そこには足の悪い奇妙な老婆がおりいやいやながら夫人は濡れた服を着替えることに。それを後ろ向きで座りながら鏡を取り出して覗くいやらしいカラムジン。
どんな映画?
色んな意味で伝説の映画監督と知られるエリッヒ・フォン・シュトロハイムが自ら監督・原作・脚本・衣装・主演を担当した長編映画になります。
完成当初は6時間から8時間の大長編映画になっていたと言われ、公開までに3時間30分に編集されましたが、現在DVD等で視聴できる映画は108分版となります。
ウラジスラフ・セルギウス・カラムジン大尉と名乗り
ロシア帝国竜騎兵大尉伯爵という設定。
従姉妹だというオルガ・ペチュニコフ公爵夫人と
その娘だと言うベラと3人モンテカルロの
海沿いの別荘で贅沢三昧。
偽札作りのベントウィッチが人形を抱き抱えて
大人なのに人形を持つ知的に障害をお持ちの娘を
連れて偽札を持ってやってきます。
やらしいカラムジンはそんな痛いけな娘にも色目を使います。
カラムジンとオルガ、ベラは新聞で
アメリカ大使が夫人同伴でモンテカルロに
到着したと知り
カラムジンの次のターゲットはこの若い大使夫人と
決めます!
ホテルで手持ち無沙汰にしている大使夫人に
わざとロシア貴族で軍の高官だと見せつけて
彼女に近づくカラムジン。
21歳と歳若い夫人は彼の優しさにまんざらでも
ない様子で…
ここら辺は詐欺師が多いので私があなたをお守りしますと
夫人に近づくカラムジン
詐欺師ってあんたのことやないかい!!!
この映画は公開当初、当時製作された映画の中で最も製作費が高く「最初の100万ドル映画」とユニバーサル・スタジオから宣伝されていたそうです。何でそんなに製作費が嵩んだのかと言いますと、監督自身の完璧主義とこだわりにより、モンテカルロのカジノをハリウッドで豪華に再現させたり、衣装にこだわったりと湯水のように製作費を注ぎ込み、これによってユニバーサル・スタジオが傾きかけたと言われています。
ロマンス詐欺は最近の日本でも話題になっていますが、日本で有名なのが映画化もされたクヒオ大佐ではないでしょうか?1970年代から1990年代にかけて、英国貴族でパイロットを語り複数の女性に詐欺を働いたまるっきりの日本人男性が起こした事件ですが、荒唐無稽な話を堂々とする肝の座り方、中々魅力的な人物ではあったようです。
このエリッヒ・フォン・シュトロハイム監督自身も実生活でも胡散臭い人物だったようで、詐欺師の気持ちは詐欺師にしかわからんとばかりにインチキ貴族カラムジンを熱演されています。わざとらしく思える態度で女性の心の隙間に自然に入っていく様は、軽快さも感じられるほどです。いつの時代でも女は肩書きと優しい男には弱いもの。こだわり抜いたセット美術、衣装も素晴らしく、サイレント映画を敬遠されている方にこそぜひ観ていただきたい映像遺産です。カラムジンの衝撃の最期も見どころの一つです。
スタッフ・キャスト
監督のエリッヒ・フォン・シュトロハイムはオーストリアのウィーン出身ですが、黎明期のハリウッドで鬼才監督兼俳優として知られ、サイレント映画界の重要人物であります。名前に貴族の称号であるフォンがついていますが、あくまで自称。この映画のカラムジン大尉のようにインチキと言われています。ユニヴァーサルで1919年に監督・脚本・原案・主演をこなした「アルプス颪」が高く評価され、続いて発表した「悪魔の合鍵」(1920年)でも脚本・原案・衣装・主演をされています。1921年に発表した「愚かなる妻」によって映画を芸術作品にまで押し上げまし。その後メトロ・ゴールドウィン・メイヤーにフランク・ノリスの長編小説「死の谷」の舞台を現代に置き換えて映画化した「グリード」(1923年)を監督。この映画では出演せず脚本と美術も担当し、この映画も莫大な製作費、フィルム量と撮影時間を費やしオリジナル版は8時間前後に及ぶ大作でしたが、公開版はバンバン削除され2時間ほどに編集されてしまいましたが、人間の強欲さを描いた傑作となりました。が、興行的に大失敗しました♪その後数本を監督していますが、莫大な製作費と美術的こだわりにより実質監督業は断念せざるを得なくなってしまいました。映画監督とは違った意味で評価されたのが、1937年にフランスの巨匠ジャン・ルノワール監督、ジャン・ギャバン主演の名作「大いなる幻影」においてクセの強いドイツ軍人ラウフェンシュタイン大尉を演じ強烈な印象を残しております。また1943年にビリー・ワイルダー監督の戦争サスペンス映画「熱砂の秘密」において実在の人物ロンメル将軍を演じています。そして何と言っても、1950年に再びビリー・ワイルダー監督の傑作裏幕映画「サンセット大通り」での執事マックス役です。自らグロリア・スワンソン主演で撮影していたのですがお蔵入りとなった幻の映画「クイーン・ケリー」を上映するシーンがあります。この怪演によりアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。
愚かな(?)妻ヘレンを演じたのが、その名もミス・デュポン。アメリカの女優兼ファッションデザイナーで数本のサイレント映画に出演し、1930年代以降は映画の出演がありませんでした。
インチキ公爵夫人を演じたモード・ジョーンズもやはりサイレント映画時代の女優。1910年代から20年代にかけて50本以上の映画に出演、中でもエリッヒ・フォン・シュトロハイム監督作品には「悪魔の合鍵」(1920年)、「愚かなる妻」(1922年)、「メリー・ゴー・ラウンド」(1923年)、「結婚行進曲」(1928年)に出演しています。
インチキ公爵令嬢を演じたメイ・ブッシュはハリウッド初期のサイレント映画時代から1950年代のトーキー時代まで長く活躍。キャリアの後半ではアメリカの伝説的コメディアンコンビ、ローレル&ハーディのシリーズ映画で頻繁にハーディの妻を演じていました。
まとめ
マンホールに落とされて地獄行き
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