昼の奥様「昼顔」

ドラマ

二重生活はタフじゃないとできない
ですねぇ♪

[原題]Belle de jour「日中の美女」
[製作年]1967[製作国]フランス・イタリア
[日本公開]1967
[監督・脚本]ルイス・ブニュエル
[脚本]ジャン=クロード・カリエール
[原作]ジョゼフ・ケッセル
[上映時間]100

主な登場人物

セヴリーヌ・セリジー(カトリーヌ・ドヌーヴ):
23歳の美人若妻。イケメン医師のピエールと結婚しているが夫婦生活がうまくいっていない。

ピエール・セリジー(ジャン・ソレル):
セヴリーヌの夫、医師。

その他の登場人物

アンリ・ユッソン(ミシェル・ピコリ): ピエールの友人
アナイス(ジュヌヴィエーヴ・パージュ):娼館の女将
シャルロット(フランソワーズ・ファビアン):娼館の女
ルネ(マーシャ・メリル):ユッソンの彼女
マルセル(ピエール・クレマンティ): 客、強盗

あらすじ

馬車に乗り森の中を闊歩する若く美しい妻セヴリーヌとハンサムで優しい夫のピエール。しかしピエールは「君は完璧だ。不感症なこと以外は」と言うと豹変し、従者2人にセヴリーヌを馬車から無理やり引きずり下ろし木の下にロープで吊るされる。セヴリーヌは服を引き裂かれ背中を露わにされ従者にムチで打たれた。白く美しい肌に傷がつき、ピエールは従者に向かって「好きにしろ」と言い放つ。それまで激しく抵抗し叫んでいたセヴリーヌだったが…という夢を見ていた。現実のピエールは優しいままだがベッドは別々で、セヴリーヌは夫を拒んでいた。ピエールは結婚記念日の為に秘密の旅行をプレゼントしてくれるが行った先にはセヴリーヌの苦手なユッソンがいた。ある日セヴリーヌはタクシーの中でユッソンの彼女から共通の知り合いの女性アンリエットが昼間売春をしていると言う話を聞く。知らない男に体を売るなんて信じられと同意を求める彼女に、セヴリーヌは今だにそんな場所があるの?と聞くと、すかさずタクシーの運転手がモチロンだと教えてくれる。モヤモヤしながら家に戻るとユッソンからバラの花が届けられ、メイドが飾っていたのをよしてと別の場所に運ぼうとするが花瓶ごと落としてしまう。自分でも何だか変だと思うセヴリーヌの脳裏に子供の頃の嫌な記憶が蘇る。セヴリーヌはピエールに自分と出会う前に売春宿に行ったことがあるか聞いてみる。するとピエールは自分はあまり行ったことがないと答えた。どんな仕組みなのか尋ねるとピエールは呆れたように中に入って女を選び30分とその露骨さに怒るセヴリーヌ。テニスに出かけたセヴリーヌはそこでアンリエットに会って挨拶を交わす。すかさずユッソンが後ろからあんな顔して二重生活を送っていると囁く。そして彼女が働いているのはジャン・ド・ソミュル街のアナイスに館だとセヴリーヌに伝える。ビクビクしながらジャン・ド・ソミュル街に出向くセヴリーヌ。ためらいながらもサングラスをかけてアナイスの館を訪ねた。女主人のアナイスに、ここで働きたいというセヴリーヌだがやはりためらい、その場を後にする。その足で夫の勤める病院に行きピエールに会うが、結局アナイスの館に戻ってしまう。アナイスはセヴリーヌに「昼顔」と言う源氏名をつける。

どんな映画?

奇才ルイス・ブニュエル監督が1967年に発表した「昼顔」は、若きカトリーヌ・ドヌーヴの美しさも相まってブニュエル監督作品の中でも最も成功した映画の一つ。ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞しています。

若く美しい人妻セヴリーヌ。
夫はイケメンで優しくオマケにエリート医師というパーフェクトっぷり。

しかし彼女は肉体的に夫を受け入れることができません。

それどころか夫のピエールから暴力的に扱われ、目の前で他の男に辱められるという妄想に苛まれています❤️

夫のピエールを心から愛しているはずなのに何故??

セヴリーヌの子供時代のトラウマに関係があるようですが、
性に対する嫌悪感と同時に大人の女性が持つ欲求がごっちゃに
なっているよう。
自分でもよくわからない感情をもて余す彼女は、小耳に挟んだ高級売春宿で
源氏名「昼顔」として働くことになります。

初めは躊躇していたセヴリーヌでしたがメキメキ頭角?を現し
そこで様々な客を相手にしていくのですが…

背中を露わにされ、鞭打たれるセヴリーヌ
夢ですけど…

ブニュエル作品らしく???が多いこの映画。不可解なラストと言い、これを観た女性がどれくらい主人公のセヴリーヌの行動に共感を持てるかわかりませんが、同じくカトリーヌ・ドヌーヴが主演したロマン・ポランスキー監督の映画「反撥」(1965年)においても、抑圧された性衝動に苦悩する若い娘を演じています。
極端に抑圧された性欲が爆発するあまり、返って正反対の行動をとってしまうことって実際にはあるのかもしれません。

カトリーヌ・ドヌーヴと言えばその衣装はイブ・サンローランですが、この映画で初めて衣装として着用したそうです。売春仲間の女性たちに仕切りにベージュのワンピースを仕立てがいいと褒められるシーンがあります。

2002年の「8人の女たち」から35年前のカトリーヌ・ドヌーヴの美しさと足の美しさは必見です❤️

スタッフ・キャスト

原作のジョゼフ・ケッセルはフランスの小説家。1931年にハンフリー・ボガートが主演した映画「モロッコ慕情」(1951年)の原作を発表。その後ロミー・シュナイダーの遺作となった「サン・スーシの女」(1982年)の原作を1936年に発表しています。
また映画の脚色もこなしており、
1936年のダニエル・ダリュー主演の実話ベースのロイヤルメロドラマ「うたかたの恋」、フランソワーズ・アルヌール主演の犯罪メロドラマ「過去を持つ愛情」(1955年)、ピーター・オトゥール主演の異色戦争映画「将軍たちの夜」(1966年)を担当されていました。

監督は元祖変態映画の巨匠ルイス・ブニュエル。スペイン、メキシコで活躍した奇才ブニュエル監督は、1929年に親交の深かったやはりスペインが産んだ奇才サルバドール・ダリと共同監督した「アンダルシアの犬」を発表。女性の目を剃刀カットの衝撃シーンは賛否を呼び、続いて足指ペロペロで退廃的な内容でテロを受け、50年間公開禁止になった「黄金時代」(1930年)などの初期のシュールな作品から、「忘れられた人々」(1950年)、「愛なき女」(1952年)などのリアリティのある作品、「皆殺しの天使」(1962年)、「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」(1972年)、「自由の幻想」(1974年)、「欲望のあいまいな対象」(1977年)などの不条理映画、「ビリディアナ」(1961年)、ジャンヌ・モローが主演した「小間使いの日記」(1964年)、同じくカトリーヌ・ドヌーヴが主演した「哀しみのトリスターナ」(1970年)など美しいだけで罪悪なのかと思われる映画などの多岐にわたる作品は、個人的にはどれも芸術遺産級の価値があると思っております。

優しくハンサムでおまけに医者の完璧な夫ピエールを演じるジャン・ソレル。1965年にルキノ・ヴィスコンティ監督の「熊座の淡き星影」で姉役のクラウディア・カルディナーレへの愛に苦悩する青年を演じていました。

セヴリーヌにやらしく近づく中年を演じていたフランス出身の俳優ミシェル・ピコリ。今年の5月に94歳でお亡くなりになりましたが、非常に多くのヨーロッパ映画に出演されています。

ピエールに襲いかかるマルセル役のピエール・クレマンティは「昼顔」の出演で注目され、ベルナルド・ベルトルッチ監督のイタリア映画「ベルトルッチの分身」で主演しています。長身でいいのか悪いのかわからない容貌は印象的で同じくベルトルッチ監督の「暗殺の森」(1970年)では主人公にトラウマを与える運転手役で出演しています。またロリコン映画「小さな唇」(1974年)では少女に夢中になる作家を演じていました。

約40年後に作られた続編はマノエル・ド・オリヴェイラ監督の「夜顔」(2006年)です。

まとめ

抑圧された性衝動で地獄行き

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