11対1の男「十二人の怒れる男」

ドラマ

自分は多数決に流されるタイプですねぇ

[原題]12 Angry Men
[製作年]1957[製作国]アメリカ
[日本公開]1959
[監督]シドニー・ルメット
[製作]ヘンリー・フォンダ
[脚本・製作]レジナルド・ローズ
[撮影]ポリス・カウフマン
[編集]カール・ラーナー
[音楽]ケニヨン・ホプキンス
[上映時間]96

主な登場人物

陪審員8(ヘンリー・フォンダ):
建築家。一人だけ最初から少年の無罪を主張。証人たちの証言に確信が持てない。

陪審員3(リー・J・コップ):
会社経営者。少年の有罪を強く主張。自分の息子とは不仲になり2年会っていないという。

その他の登場人物

陪審員1(マーティン・バルサム):陪審員長、進行役。ハイスクールのフットボールコーチ。
陪審員2(ジョン・フィードラー):銀行員。気弱。
陪審員4(E・G・マーシャル):株式仲介人。冷静に分析して証言者の女性の目撃証言を指示して有罪を主張。メガネをかけている。
陪審員5(ジャック・クラグマン):スラム出身の工場労働者。ナイフの使い方に詳しい。
陪審員6(エド・ビンズ):塗装工。人情に厚い。
陪審員7(ジャック・ウォーデン):食品会社のセールスマン。このあとヤンキースの試合があるので早く終わらせたいと思っている。
陪審員9(ジョセフ・スィーニー):老人。8の意見に同意して最初に無罪に翻る。
陪審員10(エド・べグリー):自動車修理工場経営者。貧困層への差別意識があり有罪を主張。
陪審員11(ジョージ・ヴォスコヴェック):ユダヤ移民の時計職人。責任感が強い。
陪審員12(ロバート・ウェッバー):広告代理店の宣伝マン。軽薄で他の陪審員の意見に流されやすい。

あらすじ

18歳の少年がナイフで父親を殺害、少年は第一級殺人罪で起訴されていた。この裁判で陪審員に選ばれた12人の男たちによって有罪か無罪かを話し合うことになった。それぞれ名前も職業も知らない人々が集まり全員の意見が一致し、有罪なら少年は死刑になってしまう。少年はただじっと陪審員たちを見つめた。12人は汗ばむ気候の中、エアコンのない部屋に集められ審議することになっていた。陪審員8は静かに窓の外を眺め、窓からは超高層ビルのウールワース・ビルが見えていた。陪審員7はこのあと野球観戦があると早く審議を終わらせたい様子、陪審員10は少年をはじめから犯人扱いし、ああ言った人間はうそをつくと決め込んでいた。全員が席に着き陪審員1の陪審員長が仕切り始め。委員長は、これは第1級殺人事件で有罪になれば被告人は電気椅子に送られるという重い審議だったが、当初の陪審員たちの意識は軽いもんだった。12対0になって全員の意見が一致したところで審議は終わるが、取り敢えず有罪か無罪かを手上げをすることにした。その結果有罪が11人で無罪が1人だった。ただ一人無罪を主張したのが、陪審員8で、呆れる他の陪審員が何故無罪だと思うのか尋ねると8は、わからないと答えた。ただ人の生死がかかっていることを5分で終わらせてしまうのは、納得がいかないと訴えるが、野球観戦に行きたい7は、何時間話しても無駄だと主張する。話し合いはすべきだということになり、まず一人ずつ順番に自分の考えを発言することにした。

どんな映画?

アメリカの脚本家レジナルド・ローズのシナリオをシドニー・ルメット監督が映画化。テレビドラマをいたく気に入ったヘンリー・フォンダが製作と主演を担当。リー・J・コップや、マーティン・バルサム、ジャック・ウォーデンなど個性派俳優が出演し、現在では法廷ものの代表的映画とされています。

スラム街で18歳の少年が
ナイフで父親を殺害した
容疑で逮捕されます。
少年を有罪か無罪かを審議する為
12人男たちが陪審員として集まります。
向かいの女性の目撃証言と
下の階の老人が深夜に親子が
言い争う声が聞こえたと
少年に不利な証言しかありません。

さらに少年は犯行時間には
映画を観ていたと主張しますが
その映画のタイトルも覚えて
おらず、目撃者もいません。
1部屋に集められた陪審員たちは
ほぼ有罪で決まりの裁判だと
みんな余裕の表情。

何度か陪審員の経験がある
陪審員1が員長になり
とりあえず有罪か無罪か
挙手することに。
満場一致で有罪に手が
上がると思いきや
ただ1人陪審員8だけが
無罪に手を挙げるのですが…

1人だけ無罪に手を挙げる陪審員8

この映画は、シドニー・ルメット監督の映画デビュー作となっております。アカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚色賞の3部門でノミネートされ、「戦場にかける橋」(1957年)に敗れたものの超低予算、ワンシュチエーション劇で非常にコスパのいい作品となりました。
原作者のレジナルド・ローズが、自身の陪審員体験から発表した作品で、映画より先んじて1954年にテレビドラマが放映されています。このドラマでは、陪審員8をロバート・カミングスが演じ、陪審員3を「野望の系列」(1962年)で大統領を演じたフランチョット・トーンが演じています。レジナルド・ローズがドラマに引き続き脚本を担当されております。また、ジョセフ・スィーニーとジョージ・ヴォスコヴェックはテレビドラマ版に引き続き同じ役を演じています。

陪審員8が窓から眺めているウールワース・ビルはニューヨーク、マンハッタンに建つ超高層ビル。完成は1913年になります。

「十二人の怒れる男」は、アメリカ合衆国の陪審員制度の問題点を提起した作品として、非常に知られており、日本で裁判員制度の開始が取り沙汰された2000年頃にも、この映画と、この映画をオマージュにした三谷幸喜原作、中原俊監督の「12人の優しい日本人」(1991年)がよく教材として使用されていました。

無作為に選ばれる裁判員で、この映画では女性が1人もいないのが気になりますが、基本的にどこにでもいる全員普通の人たちで、表向きは善良な市民のはず。ですが映画の中で、有罪か無罪を審議する場合、自分たちの生活環境から来る偏見や思い込みから簡単に流されていく様を描いています。
被告になった少年が、有罪になれ電気椅子に送られという非常に重い選択を迫られているのにも関わらず、根拠もなくいい加減に有罪だと主張する陪審員たち。この映画のキモは、主役の陪審員8よりも、陪審員3だと思われます。自分と息子との関係性から来る、あくまでも息子を悪く思いたい個人的な感情から動かされるリー・J・コップの熱演は、ラストまで圧巻です。
誰もが有罪を確信する中で、少しでも疑問がある場合、意義を唱える勇気が必要だなと実感する映画です。

スタッフ・キャスト

陪審員1を演じたのはアメリカ合衆国出身の名脇役マーティン・バルサム。1954年にエリア・カザン監督の「波止場」でスクリーンデビュー。「十二人の怒れる男」(1957年)に出演後、1960年に出演したアルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」では、階段から突き落とされる探偵役でご出演。翌年、1961年にブレイク・エドワーズ監督、オードリー・ヘプバーン主演の有名ラブコメ「ティファニーで朝食を」に出演された後、リー・J・トンプソン監督の「恐怖の岬」(1962年)では、主演の弁護士を演じたグレゴリー・ペックの友人で警察署長を、この映画のリメイク版でマーティン・スコセッシ監督の「ケープ・フィアー」(1991年)では、裁判長役で特別出演されていました。その後も、マイク・ニコルズ監督の戦争映画「キャッチ22」(1970年)、真珠湾攻撃を題材にした「トラ・トラ・トラ!」(1970年)、アーサー・ペン監督、ダスティン・ホフマン主演の「小さな巨人」(1970年)、シドニー・ルメット監督の「ショーン・コネリー/盗聴作戦」(1971年)、ジョセフ・サージェント監督の「サヴウェイ・パニック」(1975年)では、犯行グループのグリーンを演じています。また、同年再びシドニー・ルメット監督版「オリエント急行殺人事件」(1974年)では、国際寝台車会社の重役でポワロの知り合いという役でご出演されています。1976年にはアラン・J・パクラ監督の「大統領の陰謀」、チャールトン・ヘストン主演のパニック映画「パニック・イン・スタジアム」に出演。イタリアなどのホラーやマカロニ映画などにも進出され、1977年にはマイケル・ウィナー監督のカルトオカルト映画「センチネル」にも出演されています。幅広く活躍され晩年まで映画出演されていました。

ヤンキースの試合に行きたくてしょうがない陪審員7を演じたのは、ジャック・ウォーデン。1940年代後半からテレビ出演を始め、1953年にジェームズ・ジョーンズ監督の「地上より永遠に」に出演。1957年に出演した「十二人の怒れる男」で注目され、ロバート・ワイズ監督の戦争映画「深く静かに潜航せよ」(1958年)、シドニー・ルメット監督の「私はそんな女」(1959年)、アラン・J・パクラ監督の「大統領の陰謀」(1976年)、ウォーレン・ベイティの監督作「天国から来たチャンピオン」(1978年)などに出演し、ジョン・ギラーミン監督の「ナイル殺人事件」(1978年)では、ドイツ人医師役を演じています。1982年のシドニー・ルメット監督の「評決」では、主演のポール・ニューマンを案じる先輩弁護士役で登場されています。また、テレビドラマ「トワイライト・ゾーン(日本ではミステリー・ゾーン)」の第1シリーズ第7話「星に流された男」では、地球から離れ生活する内にロボットの女性を本気で愛してしまう男を演じています。このお方も晩年まで名脇役として活躍されました。

まとめ

偏見と思い込みで獄行き

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