恐怖の焼き鳥「何がジェーンに起こったか?」

サスペンス

女兄弟がいないのでよくわかりませんが、姉妹のドロドロは想像を絶するものがあります。

[原題]What Ever Happened to Baby Jane?
[製作年]1962[製作国]アメリカ
[日本公開]1963
[監督・製作]ロバート・アルドリッチ
[原作・脚本]ヘンリー・ファレル
[脚本]ルーカス・へラー
[音楽]フランク・デ・ヴォール
[上映時間]134

主な登場人物

ジェーン・ハドソン(べティ・デイヴィス):
元子役スター。ブランチの妹。車イス生活の姉の面倒を渋々見ている。

ブランチ・ハドソン(ジョーン・クロフォード):
元映画スター。車椅子生活を余儀なくされている。ジェーンの姉。ジェーンから虐待を受けている。

その他の登場人物

エドウィン・フラッグ(ヴィクター・ブオノ):売れないピアニスト
ベイツ夫人(アンナ・リー):隣の奥さん
エルヴァイラ・スティット(メイディ・ノーマン):姉妹の家政婦
デリラ・フラッグ(マージョリー・ベネット):エドウィンの母親

あらすじ

1917年、ベイビー・ジェーン・ハドソンの舞台は大盛況、歌って踊れるジェーンは人気子役だった。中でも持ち歌の「パパに手紙を」は彼女の十八番だった。姉のブランチはそれをステージの裾から見ているだけだった。ベイビー・ジェーン人形は飛ぶように売れていた。しかしすっかりわがままになってしまったジェーン。一方落ち込むブランチに母親はお前もいつか日の目を見る時が必ず来ると、その時はパパとジェーンに優しくすることを忘れないでねと約束させた。1935年時代はすっかり映画になりジェーンも映画女優としてカメラテストを受けていたが、飲酒ばかりで問題を起こす大根女優というレッテルを貼られてしまっていた。ところが姉のブランチが映画で頭角を現し大スターとして会社の稼ぎ頭になっていた。会社側はジェーンと契約を切りたいと思っていたがブランチが許さなかった。ブランチの屋敷でパーティーが行われた日、悲劇的な事故が起こってしまった。時が流れブランチのお隣さんベイツ夫人の家ではテレビでブランチの昔の映画が放映されていた。夫人の娘は隣にいてもブランチの姿を一度も見たこと無いし、頭のおかしい妹が故意に姉を車で轢いて車いすにしたという噂があると話す。そして同じ番組を懐かしそうに見ている車いすのブランチ。厚い化粧にピラピラの服すっかり老け込んだジェーンは、姉の面倒を見るもほとんど虐待状態だった。ブランチにブザーで呼び出され食事を運ぶジェーン。掃除すると言ってブランチがかわいがっている鳥籠を持っていた。メイドのエルバイラはブランチに同情的だった。ブランチは6週間後にはこの家を売る予定にしていたがそれをジェーンに言えずにいた。そこにジェーンが現れ、鳥が逃げ出したというのだが。

どんな映画?

1960年にヒッチコック監督が「サイコ」を発表してから、多くのサイコパス映画が作られてきました。こちらは一見普通に見える人間が実は異常だったというものですが、そんな中、精神的におかしくなった老女が主人公の「何がジェーンに起こったか?」はこのジャンルの元祖となり、観た人に強烈なインパクトとトラウマを残します。
2代大女優の共演ということでも話題になりました。

かつて舞台の上で歌って踊れる子役スターとして大人気だったジェーン。
それを舞台のソデで恨めしそうにジッと見つめる姉ブランチ。
一方で人気を傘にわがまま放題のジェーン。
母はブランチにいつかブランチも脚光を浴びる時がくる
その時はジェーンにもパパにも優しくしてねと語りかけます。

予言は的中し美しく成長したブランチは映画スターに
しかしジェーンは演技が酷評された上に酒浸りで問題ばかり起こしていました。

母の約束通りジェーンを庇う優しいブランチ。

しかし事件が起こります。

ジェーンが自動車でブランチを轢き殺そうとして失敗し
ブランチは半身不随になってしまったというのです。

月日は流れ
美しかったジェーンはその面影は全くなくなり、白塗りの顔、フリフリ服、クルクル巻き髪、頭におリボンという世にも恐ろしい風貌に。
傲慢でおかしな言動も多くブランチに対してもストレスを募らせていたのですが…

浜辺でジェーンに告白するブランチ。
ブランチの口から衝撃の真実が告げられます。

実生活でも犬猿の仲だった言われる大女優2人。年齢も近く(クロフォードは歳を誤魔化していたようなので彼女が言う生まれた歳はデイヴィスと同じ年齢ですが、実際には4歳くらい年上だったようです)、同じ頃にハリウッドで女優デビューし、同じくサマセット・モーム原作の悪女役で(クロフォードは「雨」(1932年)、デイヴィスは「痴人の愛」(1934年))脚光を浴び大スターに。2人ともアカデミー賞主演女優賞を獲得しているオスカー女優。
そんな2人が演じたのが醜く年老いたかつてのスター。
まるでビリー・ワイルダー監督の「サンセット大通り」(1950年)を彷彿させ、ラストは悪い夢を見ているよう。
ベティ・デイヴィスの醜態を全面に出した完全に振り切った演技は、高く評価されました。
一方で、老け役で復活を図ったクロフォードの思惑が外れ、結果的にアカデミー賞にノミネートされたのはベティ・デイヴィスだけでした。
やはり明暗を分けてしまったのは、いつまでも美ババアの位置で居続けようとしたクロフォードの執着だったように思われます。

ここら辺のネタが2017年に「フュード/確執 ベティvsジョーン」でテレビドラマ化されています。この映画を先に見ていると結構面白くドラマも見られますヨ。

スタッフ・キャスト

監督のロバート・アルドリッチは、1956年にジョーン・クロフォード主演で「枯葉」を監督しています。この映画は高評価を受け当時低迷していた大女優クロフォードの復活に貢献しました。すぐに次回作も検討されていいましたが実現したのが6年後の「何がジェーンに起こったか?」でした。クロフォードが1946年に演じた「ユーモレスク」では中年女性と若い男の年の差カップルは悲劇的に終わりましたが、「枯葉」で希望を残したラストは女性客に受け、アルドリッチ監督作品の中でも現在では秀作とされています。再びクロフォードとデイヴィスのキャスティングで「ふるえて眠れ」(1964年)の製作が始まりましたが、デイヴィスの妨害があり結局クロフォードが途中降板、デイヴィスの親友であるオリヴィア・デ・ハヴィランドにチェンジされたそうです。

原作・脚本を担当したヘンリー・ファレルはアメリカのゴシックホラー作家としてよく知られており、ロバート・アルドリッチ監督の次作「ふるえて眠れ」(1964年)でも原作・脚本を担当しております。また、アンソニー・パーキンスのテレビ映画「サイコXX」(1970年)、デビー・レイノルズ主演の「ヘレンに何が起こったか?」(1971年)、フランソワ・トリュフォー監督によって映画監督された「私のように美しい娘」などの原作者としても知られています。

姉ブランチを演じたのがサイレント時代から活躍する大スター・ジョーン・クロフォード。自己主張の強い瞳と弓形のくっきり眉毛が特徴的で、その風貌の通り自己PRに長け幾度となく人気凋落の危機を乗り越えてきた大女優。1945年にジェームズ・M・ケイン原作をノワール調にアレンジした「ミルドレッド・ピアース」で念願のアカデミー賞主演女優賞を受賞。人気実力ともに復活を果たしますが1950年代に突入すると再び人気が下降気味に。そんな中1952年に「突然の恐怖」は若い男と結婚したオールドミスが命を狙われるというフィルム・ノワールに出演。この映画で最後のアカデミー賞にノミネートされます。そして1956年にアルドリッチ監督の「枯葉」に主演。ですが演技が高く評価される一方で人気や名声は落ちていくばかり、いつまでも美ババアにこだわっていてはいかんのです。そんでもって、満を辞して出演したのがこの「何がジェーンに起こったか?」でした。この映画の出演はジョーン・クロフォードにとってもベティ・デイヴィスにとってもその後のキャリアのターイングポイントとなる重要なものでした。

妹ジェーンを演じたのはでっかい瞳で個性的な顔立ち、押しも押されもせぬアメリカを代表する大女優ベティ・デイヴィス。1960年代に突入したデイヴィスは、1961年にフランク・キャプラ監督のセルフリメイク「ポケット一杯の幸福」で、貧しいリンゴ売りの婆さんを美ババアに生まれ変わらせる映画に出演。当時50代でしたが初老の役を演じることで新境地を開拓。そして翌年に「何がジェーンに起こったか?」の怪演のおかげで最強妖怪女優にまで上り詰めます。その後は怒涛の怪演ラッシュで、ダミアーノ・ダミアーニ監督の「禁じられた抱擁」(1963年)におかしい母親役、1964年の「誰が私を殺したか?」、同じくアルドリッチ監督の「ふるえて眠れ」、1965年の「妖婆の家」、1968年の「残酷な記念日」など偏執的な恐ろしいババアを好演しました。この映画では、隣の娘役でベティ・デイヴィスの実の娘バーバラが出演しています。

まとめ

身内は一番の敵で地獄行き

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