地獄の三角関係「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(1946年)

サスペンス

恋愛目的で働いたっていいじゃないか!
でもロクなことにならないなー。

[原題]The Postman Always Rings Twice
[製作年]1946[製作国]アメリカ
[日本公開]未公開
[監督・製作]テイ・ガーネット
[脚本]ハリー・ラスキン/ニーブン・ブッシュ
[原作]ジェームズ・M・ケイン
[製作]ケーリー・ウィルソン
[美術]セドリック・ギボンズ/ランドール・デュエル
[衣装監修]アイリーン
[音楽]ジョージ・バスマン/エーリッヒ・ツァイスル
[上映時間]113

主な登場人物

コーラ・スミス(ラナ・ターナー):
ニックの年の離れた若妻。田舎には不釣り合いなセクシー美人。夫のニックとは金のために結婚したと言う。

フランク・チェンバーズ(ジョン・ガーフィールド):
放浪癖のある流れ者。ニックのダイナーで働くことにするが、ニックの若い妻に一目惚れしてしまう。

その他の登場人物

ニック・スミス(セシル・ケラウェイ):コーラの夫、ダイナーの経営者
アーサー・キーツ(ヒューム・クローニン):コーラの弁護人
カイル・サケット(レオン・エイムズ):地方検事
マッジ・ゴーランド(オードリー・トッター):フランクがナンパした女性

あらすじ

ヒッチハイクでシスコからサンディエゴに向かっていた流れ者のフランクは、地方検事に乗せてもらいとあるダイナーに着いた。求人をしていたダイナー「ツイン・オークス」の主人ニックは、快くフランクを迎え入れた。カウンターに座っていると奥から一人の女性が入ってきた。田舎に不釣り合いな若い美人だった。フランクは一目で心を奪われ、ここで働くことに決めた直後、彼女がニックの年の離れた妻だと知った。妻のコーラは夫にフランクを辞めさせるように言うが、ニックは安く雇えると取り合わなかった。フランクに椅子の塗装を命じるコーラだったが、フランクはまともに相手をしないどころか、彼女にキスをする。コーラは顔色を変えずその場を立ち去ったが、やはり気分を損ねたのか2週間程フランクを無視した。そんな時ダイナーの看板が風で飛ばされ地面に落ちていた。フランクはニックに木の看板ではなくネオンにすべきと提案するが、はじめのうちは金がかかると拒否していたが結局看板をネオンに変えた。フランクはニックの手柄だと褒め、上機嫌になったニックはギターを弾きフランクとコーラを踊らせた。コーラはすぐに暑いからとフランクから離れるが、その夜二人で海に泳ぎに行きコーラはフランクを受け入れてしまう。コーラはニックを愛していないし金のために結婚したと言う。フランクとコーラは、ニックが外出している間に駆け落ちを決め、コーラはダイナーのレジの中にフランクと出て行くとメモを残し二人でダイナーを出た。二人で歩きながらヒッチハイクを試みるが中々車が止まってくれず、コーラは疲労を隠せなくなった。とうとうコーラは先の見えない駆け落ちに嫌気がさし、二人でまたダイナーに戻ることにする。コーラはニックにメモを見られていては不倫がバレると慌ててダイナーに入る。レジの中のメモはそのままで、フランクがそのメモを確認しニックはまだ戻って来ていなかった。二人で窓に目をやると、帰ってくるニックの車が飲酒運転でトラックと衝突しそうになっているのを見る。フランクはあのまま崖にでも転落しないかとつぶやいた。

どんな映画?

ジェームズ・M・ケイン原作のベストセラー犯罪小説「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(1934年)の三度目の映画化で本家アメリカ合衆国で初の映画化。アメリカ出身のテイ・ガーネットが監督し、元祖スキャンダル女優のラナ・ターナーがファム・ファタールを演じています。

ヒッチハイクでカルフォルニアの
とあるダイナーに到着したフランク
乗せてくれたのは地方検事らしい
ちょうど ド田舎のダイナー兼
ガソリンスタンドで従業員を募集しており
ダイナーの初老の主人ニックは
フランクを歓迎してくれます。

どうせすぐいなくなるしー
と流れ者のフランク
ダイナーの中で座っていると
店に入ってきた若い女。

美人!
足出しとる!!

この店いいかもと
しばらく働くことにしますが
すぐに彼女がニックの若い
妻コーラだと知ったフランク。
特に気にせずグイグイと迫ります。

最初のうちは邪険にしていた
コーラでしたが
元々この結婚もダイナー欲しさのもので
ニックを愛しているわけではありません。
二人はニックが出かけている間に
駆け落ちすることに!

ですが 無計画に家を飛び出した二人に
行く当てなどなく
すぐにコーラは戻ると言います。
ニックが戻る前に慌てて
帰るコーラとフランク。

フランクが一言
「自動車事故で死んでくんないかなー」
その言葉にコーラは
「それ本気?」

こんなん出て来たら惚れてまうやろ!

1934年にジェームス・M・ケインが発表した犯罪小説はベストセラーとなり、何度も映画化、舞台化、テレビドラマ化されています。この小説は、1927年のアメリカで実際に起こった有名な保険金殺人事件、ルース・スナイダーとジャド・グレイの事件を元にしていますが、さらにこちらの事件を本格的に元にしたのが、同じくケイン原作の小説「倍額保険」です。こちらは1944年にバーバラ・スタンウィック主演で「深夜の告白」として映画化されています。

原作ではギリシア人のパパダキスがダイナーの主人でしたがこちらでは、カナダのおっさんニックとなっております。ニックの浮気性の若妻コーラを演じたのはセクシー女優のラナ・ターナー。実際に殺人事件が起きるなどスキャンダルが知られている女優さんで、フィルム・ノワールのファム・ファタールにふさわしいです。 なんせ40年代の映画なので原作や、1981年の映画化にあるようなエロ描写はないのですが、その分展開が早くかなり詰まったフィルム・ノワールとなっております。 それにしても、旦那のニックが殺されるしかないだろーと言うシチュエーションにも関わらず、まざまざと殺される間抜けっぷりに拍子抜けしてしまいます。

原作小説は4度映画化されており、最初は1939年のフランスを舞台に「LE DERNIER TOURNANT」のタイトルで映画化。二度目は巨匠ルキノ・ヴィスコンティがイタリアで同タイトルで映画化。四度目はジャック・ニコルソンとジェシカ・ラングで1981年に映画化され、こちらは当時大胆な性描写で話題になりました。

スタッフ・キャスト

監督はアメリカ合衆国の映画監督兼脚本家のテイ・ガーネット。1928年にサイレント・コメディ映画「セレブリティ」で映画長編デビューし、1935年にクラーク・ゲーブルとジーン・ハーロウ主演の「チャイナ・シー(支那海)」が大ヒット。この映画は、昭和10年当時の日本でも大ヒットし映画館の前に長蛇の列ができたそうです。続いてワーナー・バクスターとウォレス・ピアリー主演の「奴隷船」(1937年)、マレーネ・ディートリヒとジョン・ウェインが主演した「妖花」(1940年)、グリア・ガースンとウォルター・ピジョンが主演したドラマ映画「パーキントン夫人」(1944年)、小説「決断の谷」の映画化でグリア・ガースンとグレゴリー・ペックが主演した「愛の決断」(1945年)などを監督されています。1950年代以後はテレビ映画の監督と知られ、「ララミー牧場」や「アンタッチャブル」、「ローハイド」、「ボナンザ」などのテレビシリーズを手掛けています。

何度も狙われる夫ニックを演じたのは南アフリカ共和国のケープタウン出身で、アメリカ合衆国やオーストラリアで活躍した俳優セシル・ケラウェイ。従兄弟は「三十四丁目の奇跡」(1947年)に出演したことで知られるエドマンド・グウェン。1939年にウィリアム・ワイラー監督の「嵐が丘」で、キャシーの父親を演じています。その後もハリウッドで活躍し、イングリッド・バーグマン主演の「別離」(1939年)、ウィリアム・ワイラー監督ベティ・デイヴィス主演の「月光の女」(1940年)、ルネ・クレール監督の「奥様は魔女」(1942年)、テイ・ガーネット監督の「パーキントン夫人」(1944年)に出演した後、同監督の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(1946年)で殺されそうになっているのに気づかない夫を好演。その後もウィリアム・ディターレ監督のファンタジー「ジェニーの肖像」(1948年)、ヘンリー・コスター監督のうさぎ(?)ファンタジー「ハーヴェイ」、特撮怪獣映画「原子怪獣現る」(1953年)、ロバート・アルドリッチ監督のサスペンス「ふるえて眠れ」(1964年)、スタンリー・クレイマー監督の人種映画「招かれざる客」(1967年)など名作、迷作、珍作に主に神父役やドクター役、教授役などで出演されていました。

フランクが駅の駐車場でナンパする女性役に知る人ぞ知るフィルム・ノワールのファムファタール女優オードリー・トッター。1947年にロバート・モンゴメリー監督・主演の私立探偵フィリップ・マーロウシリーズ「湖中の女」で謎の美人秘書役を演じ、続いてカーティス・バーンハート監督、ロバート・テイラー共演のノワール「高い壁」(1947年)に出演。ジョン・V・ファロー監督、トーマス・ミッチェル、レイ・ミランド共演の「夜霧の誘惑」(1948年)や、ジョン・ペリー監督のフィルム・ノワール「テンション」(1949年)、ロバート・ワイズ監督のボクシング・ノワール「罠」(1949年)、ルー・ランダース監督のサスペンス映画「恐怖の街」(1952年)、アラン・ドワン監督の西部劇「私刑(リンチ)される女」(1953年)、ルイス・アレン監督のフィルムノワール 「暗黒の叫び」(1955年)などに出演。それ以後はテレビで活躍されました。

まとめ

美人妻に一目惚れで地獄行き

コメント

タイトルとURLをコピーしました