亡霊の館「サンセット大通り」

サスペンス

アンチエイジングが気になるお年頃ですが、めんどくさいが先立ってしまいます。
美魔女ってある意味執念だと思う今日この頃です。

[原題]Sunset Boulevard
[製作年]1950[製作国]アメリカ
[日本公開]1951
[監督・脚本]ビリー・ワイルダー
[製作・脚本]チャールズ・ブラケット
[音楽]フランツ・ワックスマン
[上映時間]110

主な登場人物

ノーマ・デズモンド(グロリア・スワンソン):
かつてサイレント映画で活躍した大女優。現在はすっかり忘れ去られ、執事と朽ち果てた豪邸に暮らす。

ジョー・ギリス(ウィリアム・ホールデン):
売れない脚本家。借金取りに追われ車を取られないように、サンセット大通りにあった豪邸に車を隠すため入り込んでしまう。

マックス(エリッヒ・フォン・シュトロハイム):
ノーマの運転手兼執事。実は…

その他の登場人物

べティ(ナンシー・オルソン):ジョーの脚本をコキ下ろしたが、その後ジョーと親しくなる。
本人(セシル・B・デミル):サイレント時代から続く映画界の巨匠

あらすじ

その日、売れないB級映画の脚本家のジョー・ギリスはハリウッドの古びた豪邸のプールに遺体となって浮かんでいた。物語はその半年前、ジョーは脚本の仕事もなく非常に困窮していた。三カ月の支払い滞納の為、愛車を引き取ると取り立て屋がくる始末。パラマウントに訪れて敏腕プロドューサーに仕事を都合してもらうよう頼んだが断られ、そこに現れたべティという女性にまで脚本をだめだしされてしまう。誰に頼んでも借金を断られ、途方にくれたまま車を運転していると、取り立て屋に出くわしてしまう。彼らをまくため古びた屋敷に入り込み、荒れたガレージに車を隠してしばらくアパートに戻るのもやめようと屋敷を見回す。「大いなる遺産」の老婆が住んでいそうだと思っていると、中から女の呼び掛ける声が聞こえる。玄関に向かうと、気難しそうな執事が出迎えわけもわからずジョーが部屋に入ると、家の中でサングラスをかけヒョウがらのストールを頭にまいた中年女が出迎えた。部屋の中に入ると死んだチンパンジーが横たわり、その葬儀人と間違えられたとわかり説明すると、ジョーは彼女がかつての銀幕スターノーマ・デズモンドだと気がついた。怒る彼女に大スターだったノーマ・デズモンドではと尋ねると、私は今も大物よ映画が小さくなったのよと告げる。出ていけと言ったノーマだったがジョーが作家だと聞き、自分の書いた作品を手直して欲しいと依頼する。

どんな映画?

映画界の裏幕を描いた映画の作品の中で、まず1番に名前が出る映画ではないでしょうか。
映画の都と呼ばれるようになったハリウッドが誕生してから40年ほど経った頃の1950年アメリカ。
サンセット通りはロサンゼルスのウエストハリウッドを東西に走る大通りで、映画関係者が多く移り住みスターになった俳優たちの豪邸や商業施設が立ち並び大きく発展していきました。

そんなサンセット大通りをけたたましい音を鳴らしながらパトカーが何台も通り過ぎ、その行き着く先はハリウッドにある古びた豪邸でした。

そこにはプールに浮かぶ若い男の遺体が!

遺体の男の名前はジョー。
何でこーなってしまったかと言うと発端は彼の持っていた車でした。
売れない脚本家のジョーには当然金がない、金がないのに車は持っている。そんな時ジョーのアパートにやって来たのは借金取りでした。
借金が返せないなら車を持っていくと言うのです。
車が取られちゃ困るっつーことで奔走しますが、あてもなく
サンセット大通りに入ると借金取りに見つかってしまいます。
猛スピードで逃げながらある廃墟のような豪邸に迷い込みます。

どうせ空き家だろうとその豪邸に車を隠すことにします。
館を眺めながら「大いなる遺産」に出てくる老婦人の邸宅の様だと揶揄するジョー。
この「大いなる遺産」に出てきそうと称されたノーマ邸は孫が誘拐された事件で知られる石油王J・ポール・ゲティの前妻が所有していたそうです。

そこに屋敷からジョーを手招きする男が!?
人が住んでのか?
と招かれるまま屋敷に入っていくと
中年の派手なおばさんが死んだペットのチンパンジーの葬儀の件を話し始めます。彼女はジョーを葬儀屋と勘違いしたのです。

ジョーは人違いだと立ち去ろうとしますが、ハタと気づきます。

ド派手なオバハンはかつての大スター ノーマ・デズモンドでした。

そのままで終われば冒頭の悲劇は起こりませんでしたが、
ジョーを脚本家だと聞きカムバックを果たしたいノーマと、
借金でアパートに戻れないジョーとの思惑と欲望が交差し悲劇へと突き進むのですが…

ラストのグロリア・スワンソンの鬼気迫る演技に圧倒されます。

映画の黎明期はサイレント映画と呼ばれる無声映画が主流でした。俳優や女優は口パクと身振り手振り、目力で大袈裟な演技をし人気を博していました。ところが1930年代頃から音が出るトーキー映画が主流となり、それまで声を出すことなかったスター達が訛りが酷かったり、顔と声がイメージと違うと言う理由で人気が落ち、廃業を余儀なくされてしまいました。
サイレント映画の大スター、ノーマ・デズモンドを演じたグロリア・スワンソンもその中の一人でした。
作中でノーマが若かりし頃に自分が出演していたという映画を観るシーンがあるのですが、この映画は実際にグロリア・スワンソンが主演し、エリッヒ・フォン・シュトロハイムが監督しお蔵入りになった「クィーン・ケリー」です。
また作中で、ノーマがトランプをする3人の中にサイレント期の3大喜劇王の一人バスター・キートンが登場しております。バスター・キートンもサイレント映画の凋落とともに消えてしまった大スターの一人でした。

皮肉満載の裏幕映画であって、さらに現実に沿った裏幕の裏幕という二重構造。
脚本の素晴らしさに唸ります。
同年に「イヴの総て」という怪物映画があった為、アカデミー賞では3部門受賞に留まってしまいましたが、映画界の裏幕ものの傑作中の傑作です。

ビリー・ワイルダーは1978年にこの「サンセット大通り」に自らオマージュを捧げた、「悲愁」と言う作品を遺しています。すっかりおっさんになったウィリアム・ホールデンが主演です。

スタッフ・キャスト

オーストリア=ハンガリー帝国出身でハリウッドで活躍したビリー・ワイルダー監督、1943年の「熱砂の秘密」、1944年のフィルムノワール 「深夜の告白」の成功を皮切りに、「失われた週末」(1945年)、当時まだ連合軍の占領下だったベルリンが登場する「異国の出来事」(1948年)など脚本はチャールズ・ブランケットと組んでいましたが、この映画を最後にコンビ解消しています。その後も数々の名作を発表していますが、やはりこの「サンセット大通り」は傑作です。

往年のサイレントスターのノーマ・デズモンドを演じたグロリア・スワンソンはモノホンのサイレント映画時代に活躍した大女優。現在では彼女のサイレント時代の作品はほとんど見られないのですが、1928年に主演、製作を担当したラオール・ウォルシュ監督の「港の女」は、サマセット・モームの「雨」の初映画化作品です。この映画でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。しかし1930年代に入りトーキーが主流になる中登場する機会もなくなってきました。この映画に出演し、再びアカデミー賞主演女優賞の候補に、残念ながら受賞には至りませんでしたが復活することができました。1974年に航空パニック映画「エアポート‘75」で本人役で出演されていました。

当時まだそれほど知られていなかったウィリアム・ホールデンはこの映画により名声を獲得。1953年には同じくビリー・ワイルダー監督の「第十七捕虜収容所」に主演、同じ年にこの映画でも共演していたオットー・プレミンジャー監督の問題作ロマンティック・コメディ「月蒼くして」に出演。翌年にはオードリー・ヘプバーン、ハンフリー・ボガートと共演した「麗しのサブリナ」、グレイス・
ケリーと共演した「喝采」と名作に立て続けに出演。一時低迷していた時期もありましたが、1969年のサム・ペキンパー監督の西部劇「ワイルド・バンチ」や1976年のシドニー・ルメット監督のテレビ業界の裏側を描いた問題作「ネットワーク」などで渋い演技を披露していました。

ノーマの使用人として尽くすマックスを演じていたのは本物の映画監督エリッヒ・フォン・シュトロハイム。
自らも監督・主演した「愚かなる妻」(1921年)で高い評価を受け、1924年の「グリード」は全編ロケーションを敢行し85時間のフィルム(誰が観るんじゃ)を編集したのが8時間近くある超大作を監督。現在では再評価され映画史上に残る傑作とされていますが、当時の評価も興行も散々。天才的映画センスを持ちながら、芸術性に対するこだわりの強さや、長時間の撮影、かさむ費用と次第に監督として倦厭されていきます。ですがその尊大に見える風貌は、俳優としても活躍。同じくビリー・ワイルダー監督の「熱砂の秘密」でもロンメル将軍として登場しております。忘れ去られた映画監督として出演する懐の深さはさすが巨匠です。

まとめ

忘れ去られた大女優に出会って地獄行き

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