人の皮を被った獣「仕組まれた罠」

サスペンス

若い頃かなり年上の男と年の差婚した女性が今度はかなり年下と再婚するのは何故でしょう。

[原題]Human Desire
[製作年]1954[製作国]アメリカ
[日本公開]劇場未公開
[監督]フリッツ・ラング
[原作]エミール・ゾラ
[脚本]アルフレッド・ヘイズ
[音楽]ダニエル・アンフィシアトロフ
[上映時間]91

主な登場人物

ジェフ・オーウェン(グレン・フォード):
復員後元の鉄道員に戻る。

ビッキー・バックリー(グロリア・グレアム):
カールの若い妻。

カール・バックリー(ブロデリック・クロフォード):
操車場長助手。嫉妬深い。

その他の登場人物

ジェフの同僚(エドガー・ブキャナン):友人

あらすじ

朝鮮戦争から帰還したジェフは三年ぶりに昔の同僚に歓迎され鉄道員に復職する。ジェフはカールと再会し彼が結婚し操車場長助手に昇進したと聞かされる。同僚の家に下宿するジェフ、そこにいた娘はすっかり大人になっていた。彼女に東京の土産を渡す。(着物の襟には何故か「梅牡丹」)家に戻ったカールは年の離れた妻のビッキーに鉄道会社をクビになったことを告げる。カールはビッキーの母が昔有力者であるオーエンズの家政婦をしていたことからビッキーに口を聞いてもらうよう頼む。長距離電車に乗りオーエンズに会いに行ったカールとビッキー、ビッキーはオーエンズの会社に行きオーエンズは彼女を快く迎える。帰りが遅いと気を揉むカールは戻ったビッキーを三時間何をしていたと攻める。元からオーエンズと関係があったと疑ったカールはビッキーを殴り、オーエンズに手紙を書かせる。シカゴ行きに夜行列車に乗り込んだオーエンズを追いかけたカールとビッキー、ちょうど旅行にきていたジェフも同じ列車に乗りあわせた。カールとビッキーはオーエンズの個室に押し入りカールはオーエンズを刺し殺す。茫然と見つめるビッキーにカールは物とりの犯行と見せかけるため財布とビッキーが書いた手紙をとるのだが、部屋から出ようとしたところデッキにジェフがおり、ビッキーはジェフを誘いこむ。

どんな映画?

原題は「人間の欲望」。エミール・ゾラの原作をノワール調にアレンジした映画です。
1938年のジャン・ルノワール監督の「獣人」のリメイクに当たりますが、主人公の特色やラストも変えられています。ジャン・ギャバンが演じた主人公をグレン・フォード、「キャット・ピープル」に主演したシモーヌ・シモンの役をグロリア・グレアムが演じております。

現在でも休戦中の朝鮮戦争に出兵したジェフは3年ぶりに元の鉄道員に復帰しました。

元同僚のカールに再会すると彼は助役に昇進した上結婚もしています。
その後友人家族の部屋に下宿先に戻ったジェフは、娘に渡すのが東京土産。
朝鮮戦争時アメリカ軍は日本各地の駐屯地におりました。

一方カールは家に戻ると、そこにいるのはひっくり返ってお菓子を口に放り込む
年若い妻のビッキー。
彼女は買ったばっかりのストッキングを見せつけるためスカートを巻く仕上げ
足をカールの膝の上に乗せます。
一目であんまり上品な女性じゃないとわかります。

カールはクビになったとビッキーに告げると彼女に大株主であるオーエンズにクビを取り消してほしいと頼むのです。

それが事件の始まりでした。

ジェフに殴られた跡を見せてカールから暴力を受けていると訴えるビッキー。

グレン・フォードグロリア・グレアムはこの映画の前年1953年に同じくフリッツ・ラング監督の「復讐は俺に任せろ」で共演しております。

サイコパスな設定の「獣人」より面白味は欠けますがブロデリック・クロフォードの傍若無人ぶりと、グロリア・グレアムのシオらしい中にある悪女ぶり、グレン・フォードのなんとも言えない困った顔がマッチしている映画です。

スタッフ・キャスト

主人公のジェフを演じたグレン・フォードは、フィルムノワール 界の重要人物。と言うのも1946年のフィルムノワール の代表的作品「ギルダ」に主演。この映画でギルダを演じたリタ・ヘイワースと共に一躍有名になりました。その後も同じくリタ・ヘイワースと共演した「カルメン」や、フリッツ・ラング監督の「復讐は俺に任せろ」(1953年)、主題歌が有名になり社会問題にもなった「暴力教室」(1955年)など長く活躍されました。50代以上の方には「スーパーマン」(1978年)のクラーク・ケントの地球での育ての親ジョナサン・ケント役で知られているんじゃないでしょうか。

この映画のファムファタール、ビッキーを演じたのがグロリア・グレアム
アンニュイな瞳と官能的な魅力を放つ女優さんで、50年代のフィルムノワール作品で主役でなくても悪女役が印象的でした。4度の結婚歴があり2番目の夫は映画監督のニコラス・レイ。1950年にはニコラス・レイ監督、ハンフリー・ボガート主演の映画「孤独な場所で」にヒロイン役で出演しましたが、この頃すでに夫婦仲は険悪で公開後に離婚しています。離婚と同じ頃にヴィンセント・ミネリ監督のハリウッド裏幕もので有名な「悪人と美女」でアカデミー賞助演女優賞を受賞しました。女優としてのキャリアより驚くことに4番目に結婚した男性が元夫のニコラス・レイの息子アンソニー・レイと結婚したこと!結婚当時は義理の息子な訳だから、どんな感じで見ていたんでしょうかね〜ニコラス・レイ自身も4度結婚してますしね。結局4番目の夫とも別れたグレアムでしたが57歳で亡くなるまでの晩年に、自分の若い頃の女優としてのキャリアをまったく知らなかったイギリス人青年と恋愛関係にあったとのこと。年の差何と29歳!!この時の事をその頃の青年で売れない俳優だったピーター・ターナーが1987に「Film Stars Don’t Die in Liverpool」として発表。2017年に「リヴァプール、最後の恋」として映画化されています。この映画でグロリア・グレアムを演じたのは1999年の「アメリカン・ビューティー」で強烈な印象を残したアネット・ベニングが演じております。

ブロデリック・クロフォードは1949年のロバート・ロッセン監督作品「オール・ザ・キングスメン」で野心で身を滅ぼす政治家を演じアカデミー賞主演男優賞を受賞しています。この映画の翌年1955年にはイタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の「崖」に主演し、やっぱり自滅していくおっさん主人公を演じておりました。キャリアは長くフィルムノワール や西部劇などでは脇を固め、1977年には森村誠一のベストセラーを映画化した「人間の証明」ではニューヨークの警察署長役で登場しております。

まとめ

年の差婚で地獄行き

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