暗殺者は誰だ!「死刑執行人もまた死す」

サスペンス

何事も 失なってから
大事なことに 気づくもんです

[原題]Hangmen also die
[製作年]1943[製作国]アメリカ
[日本公開]1987
[監督・原案・脚本]フリッツ・ラング
[原案]ベルトルト・ブレヒト
[脚本]ジョン・ウェクスリー
[撮影]ジェームズ・ウォン・ハウ
[音楽]ハンス・アイスラー
[上映時間]120

主な登場人物

フランツ・スヴォバダ(ブライアン・ドンレヴィ):
医師。レジスタンス組織の一員で、ラインハルト・ハイドリヒ副総督を暗殺。偶然知ったマーシャに助けを求め、マーシャの父親ノヴォトニー教授に、カレル・ヴァニヤックと名乗り、建築家だと自己紹介する。

マーシャ・ノヴォトニー(アンナ・リー):
ノヴォトニー教授の娘。たまたま街で出会ったスヴォボダ医師に匿ってもらうように頼まれ、暗殺事件に巻き込まれることに。

その他の登場人物

ステファン・ノヴォトニー教授(ウォルター・ブレナン):マーシャの父親
エミール・チャカ(ジーン・ロックハート):ビール屋、レジスタンスの組織に参加しているが、実はゲシュタボのスパイ。
ヤン・ホラク(デニス・オキーフ):マーシャの婚約者、科学者
アロイス・グリューバ―(アレクサンダー・グラナック):ゲシュタボの警部
リュドミラ・ノヴォトニー(マーガレット・ワイチャーリイ):マーシャの叔母
クルト・ハース(トニオ・セルヴァルト):プラハ・ゲシュタポの署長
ラインハルト・ハイドリヒ(ハンス・ハインリッヒ・フォン・トワルドフスキー):ナチスの副総督
ヘレン・ノヴォトニー(ナナ・ブライアント):マーシャの母
リッター(ラインホルト・シュンツェル):ゲシュタポの副署長
ドヴォラック夫人(サラ・パデン):青果店の女将
バルトーシュ(バイロン・フォルガー):レジスタンスの副リーダー
デディッチ(ジョナサン・ヘイル):レジスタンスのリーダー

あらすじ

ヒトラーの虐殺に屈することなくチェコスロバキア人たちの自由への熱い想いが生んだ反ナチの地下組織は祖国奪還を誓う。時の総督ラインハルト・ハイドリヒは、ヒトラーの名のもとに非道な支配を行い「死刑執行人」として人々から恐れられていた。軍需工場のスコダの報告を受けたハイドリヒは、統括をゲシュタポに任せハイドリヒ自ら支持をするという。ノヴォトニー教授の娘マーシャは青果店でおかみさんのドヴォラック夫人と話しながら買い物をしていると、タクシー運転手のヴァニアがゲシュタポに捕まっていた。そこにスヴォボダがマーシャにタクシーはどこに?と尋ねると、ゲシュタポに連れて行かれたとスヴォボダに話した。スヴォボダは小走りに立ち去った。今度はその男を追いかけていたゲシュタポに、マーシャに逃げた男はどこに行ったのかと尋ねるとマーシャは反対方向を教えた。それを見ていたスヴォボダは、マーシャが自宅に戻るのを見た後映画館に入った。映画館では、ハイドリヒ総督が撃たれ暗殺されたとと知らせが入りすぐに上映が禁止されゲシュタポが取り締まりが始まった。スヴォボダは宿屋で部屋を頼むが、女将さんに断られてしまう。一方、婚約者ヤンとの結婚を控えていたマーシャは、ドレスの準備を嬉しそうにしていた。帰宅したマーシャの父ノヴォトニー教授は、開口一番総督が暗殺されたと話す。マーシャは教授に犯人らしき男を街で見たと話す。教授はマーシャに父も母も婚約者のヤンも誰も信じるなと諭す。外出禁止令が出され行き場がなくなったスヴォボダは、街で声をかけたマーシャの家を訪ねて来る。暗殺者だと悟ったマーシャはひどく困惑するが、スヴォボダは他に行く所がないと彼女に花を差し出す。そこに母親が現れ、成り行きでスヴォボダを父親にも紹介する。スヴォボダは、自分をヴァニヤックと名乗りマーシャとは演奏会で知り合い、職業は建築家だと述べた。教授はすでに外出禁止令が出ている時間なので、このまま帰すわけにいかないと、食事に誘われる。家族との食事中、マーシャのまだ11歳の弟ベーダがパン切りナイフで指を切ってしまう。スヴォボダは手早くベーダの傷に処置を施し、教授はそれを見逃さなかった。同時にラジオから、暗殺者を匿ったり逃亡に協力した者は本人及び親族全員を死刑にすると流れた。

どんな映画?

この映画はオーストリア出身ドイツで活躍した名匠フリッツ・ラング監督が、1942年に実際に起こったラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件「エンスラポイド作戦」を元に映画化しています。1946年のヴェネツィア国際映画祭で特別賞を受賞しています。

ナチスドイツ軍の統治下にあったチェコ
青果店で買い物をしていた
若い女性マーシャは
ある男に声をかけられます。
どうやらゲシュタポ(ナチス・ドイツ軍の国家警察)に
追われているようでした。

家に戻ったマーシャは
婚約者ヤンとの結婚準備で大忙し
父親のノヴォトニー教授が
「死刑執行人」と言われ
恐れられていたハイドリヒ副総督が
暗殺されたと伝えてきた。

あの男 暗殺者かも!?

そこにピンポーンとやって来たのは
その男!!? 何で??
と困惑するマーシャに
男は外出禁止令が出て
行くところがない匿ってくれと
懇願されます。

男は明らかに偽名を使い
マーシャとは友人だと言います。
教授は男に一緒に食事するように
言います。
食事中、マーシャの幼い弟が
パン切りナイフで怪我を
してしまいます。
男は手慣れた様子で処置をします。

ラジオから
暗殺者を匿う者は全て処刑!
と流れてくるのでした。

マーシャに弟への言葉を託す父親のノヴォトニー教授

エンスラポイド作戦は、第二次世界大戦中にベーメン・メーレン保護領(チェコ)を統治していたナチス・ドイツ軍の副総統ラインハルト・ハイドリヒの、大英帝国政府とチェコスロバキア駐英亡命政府により計画された暗殺作戦のコードネームで、日本語では「類人猿作戦」などとも訳されるとのこと。この歴史的事件を題材にナチス・ドイツ軍とチェコの人々の自由への戦いを描いています。

この映画がすごいなーと思うのは、フリッツ・ラング監督の前作「マンハント」(1941年)でも言えることなのですが、製作された年が終戦前だということ。ナチス・ドイツ軍の非道は世界中に知れ渡っていたとはいえ、まだ結論が出ていない時代だったこと。それを公然と批判する映画が作れたことですネ。 特に素晴らしいのはノヴォトニー教授を演じるウォルター・ブレナン。割とコミカルな役柄が多い印象でしたが、この映画のシリアスな演技は感動的でした。

「自由は闘って勝ち取るものだ」

個人生活と否応なく戦争に巻き込まれる家族を描いており、ヒロインのマーシャが自ら戦って行く様子は、深刻になり過ぎずコミカルな要素も盛り込まれ、戦争映画ながらエンターテイメント性も兼ねた反ナチス映画の傑作です。

スタッフ・キャスト

主演のスヴォボダを演じたのは北アイルランド出身、アメリカのハリウッドで活躍した俳優ブライアン・ドンレヴィ。脇役での出演も多い俳優さんですが、フィルム・ノワールの主演として1940年代には欠かせない人物でした。1935年にハワード・ホークス監督の「バーバリー・コースト」に主要人物の一人として出演。その後もヘンリー・キング監督の「シカゴ」(1937年)、セシル・B・デミル監督の「大平原」(1939年)、ウィリアム・A・ウェルマン監督の戦争映画「ボー・ジェスト」(1939年)に出演し、この映画でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされます。また、ジョージ・マーシャル監督の「砂塵」(1939年)などに脇役で出演。1942年にアラン・ラッドとヴェロニカ・レイクのコンビが出演したダシール・ハメット原作のミステリー「ガラスの鍵」に出演。翌年にこの「死刑執行人もまた死す」で主演しています。1947年にリチャード・ウィドマークのデビュー作で、ヘンリー・ハサウェイ監督のフィルム・ノワール「死の接吻」では検事補を演じています。1949年にアーサー・ルービン監督のフィルム・ノワール映画「インパクト(狂った殺人計画)」に主演。また、フィルム・ノワールの「暴力帝国」(1952年)、「ビッグ・コンボ」(1955年)などに出演。1955年にはハマー・フィルムのSFホラー「原子人間」に主演しています。映画だけでなく「ローハイド」や「弁護士ペリーメイスン」などのテレビドラマにもゲスト出演しています。

ノヴォトニー教授を演じたのは名バイプレーヤーで知られるアメリカ合衆国の俳優ウォルター・ブレナン。活動初期はチョイ役が多く、「フランケンシュタインの花嫁」(1935年)、「この三人」(1936年)、「激怒」(1936年)などにちょこっと出演。1936年に出演した「大自然の凱歌」でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。落馬事故による容貌変化で老け役を得意とするようになり、1941年に出演したフランク・キャプラ監督の「群集」では、主演のゲーリー・クーパーのとぼけた友人を演じています。ハワード・ホークス監督の「ヨーク軍曹」(1941年)、「脱出」(1944年)、「赤い河」(1948年)、「リオ・ブラボー」(1959年)などに出演されています。また、テレビシリーズ「マッコイじいさん」で主演のマッコイを演じています。

まとめ

目には目をで地獄行き

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