自称スパイ「五本の指」

サスペンス

スパイは自分のことスパイですって
言わないような…

[原題] 5 Fingers
[製作年]1952[製作国]アメリカ
[日本公開]1952
[監督・脚本]ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
[製作]オットー・ラング
[脚本]マイケル・ウィルソン
[原作]ルートヴィッヒ・カール・モイツィシュ
   「キケロ作戦」
[撮影]ノーバート・ブロダイン
[音楽]バーナード・ハーマン
[上映時間]108

主な登場人物

ディエロ・ユリシーズ(ジェームズ・メイソン):
イギリス大使館執事。ドイツ側のスパイとしてモイツィシュに情報を提供する。コードネームは「キケロ」

マリア・スタヴィスカ(ダニエル・ダリュー):
ポーランドの伯爵夫人。美しく社交的で社交界の華だったが、夫の死後ナチスに財産を没収され、困窮していた。

その他の登場人物

コリン・トラヴァース(マイケル・レニー):イギリス軍から派遣された諜報員
ルードヴィッヒ・カール・モイツィシュ(オスカー・カールウェイズ):ドイツ大使館付きの武官
フレデリック・テイラー卿(ウォルター・ハムデン):イギリス大使
フォン・リヒター大佐(ハーバート・バーゴフ):ベルリンにいるナチス幹部
フランツ・フォン・バーベン伯爵(ジョン・ウェングラフ):ドイツ大使

あらすじ

1950年のイギリス国会にて議員がとあるスパイの実録本を持って質問した。その本は、L・C・モイツィシュ著による、元ドイツ大使館付き武官による驚くべき実体験の記録とされた「五本の指」という手記だった。この本によると、1944年のトルコ大使館で、ノルマンディー上陸作戦を含む重要機密がドイツに漏れていたというのだ。国会は、この本に書かれた内容は事実であると認めた。
1944年の頃、第二次世界大戦の真っ只中にありながら、中立国のトルコは比較的穏やかだった。3月4日の夜、トルコの首相が首都であるアンカラで、外交官を招きパーティーを開催した。そこにはモリモリ食べる美しいマリア・スタヴィスカ伯爵夫人の姿があった。彼女は、バーベン伯爵にポーランドにある財産を没収され、生活費のためドイツのスパイになると宣言するが軽くあしらわれてしまう。ドイツ大使館付きの武官モイツィシュが、彼女は顔が広く社交界に精通しているので何かと役に立つのではとバーベンに提案するが、取り合ってもらえなかた。モイツィシュが部屋に入ろうとすると男が近寄り中に入れろと言ってくる。怪しく思ったが、男はモイツィシュに、ドイツ政府に有益なイギリスの最高機密文書を手に入れた言う。それを2万ポンドで売りたいのだと。モイツィシュが何者かと問うと、男は当然スパイだとはっきり述べた。ますます男を怪しく思ったモイツィシュだったが、男はルーベンに報告しベルリンの指示を仰ぎ、返答がイエスならその日の夜10時に再びここに来て、書類を写したフィルムを2本渡し代わりに現金で2万ポンド支払えと言ってくる。モイツィシュが訝しがる中、男は詳細を語らず出ていった。男が戻った先はイギリス大使館。男はディエロ・ユリシーズと言うイギリス大使付きの執事だった。

どんな映画?

「三人の妻への手紙」(1949年)や「イヴの総て」(1950年)などの監督で知られるジョーゼフ・L・マンキーウィッツ監督が、ルートヴィッヒ・カール・モイツィシュ原作の「キケロ作戦」をジェームズ・メイソン、ダニエル・ダリュー主演で映画化。娯楽色の強いスパイ映画となっております。

1944年のトルコの首都アンカラ
第二次世界大戦の最中ですが
中立国のトルコは比較的平穏で
ヨーロッパから亡命してきた
アンナ・スタヴィスカ伯爵夫人は
財産を没取され生きる術を探していました。

私 スパイやるわ!

トルコ首相のパーティーで
夫人は生活の為ドイツのスパイになると
バーベン伯爵に依頼します。
しかしバーベン伯爵は取り合いません。
武官のモイツィシュは顔の広い夫人をスパイにすれば
何かと役に立つのでは?
と提案しますが伯爵は聞き入れません。

その夜モイツィシュが部屋に戻ろうとすると
後ろから男が現れ部屋に入れろと
言ってきます。
ディエロと言う男は

自分はスパイだ!
イギリスの機密情報を持っている!

と述べ、この情報を2万ポンドで
買えと言うのです。
自称スパイの男で
何かやたら態度でかい
怪しむモイツィシュにディエロは
また 来ると言って出ていってしまいます。

その後 ディエロはイギリス大使館に戻っていきます。
彼は大使ではなく 大使館付の執事で
大使から情報を
盗んでいたのです。
ディエロは機密情報を流すことで
ドイツからまんまと大金を手に入れるのですが…

元雇い主である伯爵の夫人アンナに一緒にリオデジャネイロに逃げようと話すディエロ

この映画は、ドイツの元トルコ駐在大使館員L・C・モイズイッシュによる実話「キケロ作戦」の映画化となります。映画のモデルは、アルバニア生まれのエリエサ・バズナという実在のスパイで、ドイツ側に付けられたコードネームは「キケロ」でした。バズナはイギリスのノルマンディー上陸作戦の機密情報などをドイツ側に流すと言うスパイ活動を行い高額な報酬を得ていましたが、実際はイギリス側にスパイ行為はダダ漏れ、イギリスの欺瞞作戦に利用されていたと言います。おまけにドイツ側から受けていた報酬は偽札だったと言うおまけ付き。
伯爵夫人とのロマンスを加え、騙し騙される関係性は最後まで楽しめる映画です。
公開当時評価は高く、ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ監督はアカデミー賞の監督賞、マイケル・ウィルソンは脚色賞にノミネートされました。 また、アメリカでは1959年にドラマ化されました。

スタッフ・キャスト

脚本のマイケル・ウィルソンはアメリカ合衆国出身の脚本家。戦後の1945年にノンクレジットでしたが、フランク・キャプラ監督の「素晴らしき哉、人生!」の脚本に参加。1951年に公開されたジョージ・スティーヴンス監督、モンゴメリー・クリフト、エリザベス・テイラー主演の「陽のあたる場所」でハリー・ブラウンと共に脚本を担当。この映画でアカデミー賞脚色賞を受賞しています。さらにこの「五本の指」(1952年)でも、アカデミー賞にノミネートされます。しかしその後ブラックリスト入りしてしまい思うように脚本を発表できず、偽名で提供。1957年にデヴィッド・リーン監督の「戦場にかける橋」で、カール・フォアマンと共に脚本に参加、また、1962年の「アラビアのロレンス」でも名前を連ねています。ハリウッド復活後は、エリザベス・テイラー主演のメロドラマ「いそしぎ」(1965年)や、フランクリン・J・シャフナー監督のSF映画の金字塔「猿の惑星」(1968年)にも脚本を担当されています。

マリア・スタヴィスカ伯爵夫人を演じたのはフランス人女優ダニエル・ダリュー。古典的正統派美人女優として長らくフランス映画界に君臨。世界的にも活躍し、2017年に100歳でお亡くなりになられるまで多くの映画に出演されていました。1936年にシャルル・ボワイエ共演で実際の事件を映画化したロイヤルメロドラマ「うたかたの戀」で主演。一躍国際的に知られる存在になりました。戦後はマックス・オフュルス監督の「輪舞」(1950年)で、人妻エマを演じています。また1953年に再び同監督でシャルル・ボワイエと再共演した「たそがれの女心」に出演。また、1955年に出演した「チャタレイ夫人の恋人」は、スキャンダラスな内容の為アメリカでは放映禁止となりました。翌年の1956年には岸恵子の元夫で知られるフランスの映画監督イヴ・シャンピの「忘れえぬ慕情」に出演。その後はジュリアン・デュヴィヴィエ監督の映画「自殺への契約書」(1959年)では主演を、ジャック・ドゥミ監督のミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」(1967年)ではカトリーヌ・ドヌーヴとフランソワーズ・ドレアック演じる美人双子の母親役を演じ、2002年のフランソワ・オゾン監督の「8人の女たち」では再びカトリーヌ・ドヌーヴの母親役を演じています。2007年が最後の映画出演となり、パスカル・トマ監督のアガサ・クリスティー原作映画「ゼロ時間の謎」や、アニメ映画「ペルセポリス」に声の出演をしております。

イギリスのスパイを演じたのは、イギリス人俳優のマイケル・レニー。1936年のアルフレッド・ヒッチコック監督のイギリス時代の映画「関東最後の日」にエキストラで出演。その後もイギリス映画で活躍しますが、1951年に出演したハリウッドのSF映画「地球の静止する日」で演じた宇宙人クラトゥ役で知られる存在となりました。

まとめ

騙し騙され大笑いで地獄行き

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