カメラが映すもの「欲望」

ミステリー

変なものが映ると困るので
写真は気をつけて撮るようにしています。

[原題]Blow-up
[製作年]1966[製作国]イギリス・イタリア・アメリカ
[日本公開]1967
[監督・脚本]ミケランジェロ・アントニオーニ
[脚本]トニーノ・グエッラ他
[製作]カルロ・ポンティ
[原作]フリオ・コルタサス「悪魔の涎」
[撮影]カルロ・ディ・パルマ
[音楽]ハービー・ハンコック
[上映時間]111

主な登場人物

トーマス(デヴィッド・ヘミングス):
若手ファッションカメラマン。モデル相手の仕事に飽き飽きしており風景や人々の写真に興味を示していた。

ジェーン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ):
公園の女。トーマスに写真を撮られ必死にフィルムを取り返そうとする。

その他の登場人物

ザ・ブロンド(ジェーン・バーキン):モデル志望の若い娘
パトリシア(サラ・マイルズ):トーマスの別居中の妻
バンド(ヤードバーズ):ゲスト出演

あらすじ

享楽的な若者で浮かれる60年代のロンドン。若く人気のあるファッションカメラマンのトーマスは美しいモデル相手に仕事をしていた。才能がある人物らしく尊大で自信家だったが妻との関係はうまくいっていなかった。トーマスが事務所に戻ると2人の若い女がおり、呼ばれて来たというのだがトーマスは知らないと答える。自分たちをモデルに使って欲しいと食い下がるが無視してスタジオに向かう。公園に立ち寄り何気なく写真を撮っていると、中年男性と若い女性のカップルを見つける。跡をつけてやや隠れながら二人の写真を撮るトーマス。カップルの女性が写真を撮られていることに気づき、何やら慌てて追いかけて来て、フィルムを返せと言ってくる。自分は写真家なので何を撮っても自由だと言うトーマスに彼女はフィルムを買い取るとまで言う。とうとう女はトーマスの手からカメラを奪い取ろうとするがトーマスに拒否され、このことは忘れてくれと頼んで立ち去っていく。トーマスは女性モデルばかり撮っていることに飽き、作家性のある作品を提供していた。事務所に戻ったトーマスを女が探し宛て写真を返せと言ってくる。スタジオに通したトーマスは彼女にモデルをやらないかと言ってくる。写真が世の中に出ると困ると言う女をはぐらかし、カメラを持ち去ろうとする彼女に先回りして取り返す。豪を煮やした彼女は上半身裸になりトーマスと取引する。トーマスはネガを差し替え女の連絡先を聞きその日は別れる。すぐさまトーマスはネガを現象し写真を確認する。一連の写真を引き伸ばし貼り付けて虫眼鏡で眺めるトーマスは、男から視線を逸らす女、草陰から向けられる銃口を見て不自然さを感じ電話を掛けるが女の私た連絡先は嘘の番号だった。不安に慄く女の顔、追いかけて来る姿、殺人計画だと直感したトーマスだったが…

どんな映画?

アルゼンチン作家のフリオ・コルタサル原作の小説「悪魔の涎(よだれ)」をイタリア人監督のミケランジェロ・アントニオーニが映画化。イギリスロンドンを舞台にした英語映画になっております。

人気カメラマンのトーマスは美しいモデル相手に忙しい日々を
送っており女には不自由していない様子。
トーマスに写真を撮って欲しいと言うモデル志望の女の子が
寄ってくる毎日でしたがそんな生活にも
飽き飽きしており労働者に紛れて彼らの生の
写真を撮っていました。

そんな中公園の何気ない風景を撮るトーマスに
慌てて近づいてくる女がいます。

そのフィルムを返して!

自分は景色を撮ってただけと取り合わないトーマス。
女は無理矢理にもカメラを奪おうとしますが 拒否るトーマス。
諦めたのかこのことは忘れてと言って立ち去ります。

しかし女は諦めておらず
トーマスのスタジオを探し宛て突入。

この写真には何か映っている!
と確信したトーマスは写真を現像し並べてみる。
中年男性と先程の若い女
写真を拡大
おや?何か茂みにいるけど?!

何も無い芝生の中、トーマスの存在自体も消えゆくようで…

タイトルの「Blow-up」は写真の引き伸ばしの意味です。主人公のトーマスが偶然立ち寄った公園で写真を撮っているとこれまた偶々若い女と中年男性のカップルが。何となく彼らの写真を撮っていると、女が気付き必死でその写真を寄越せと言ってきます。 そこに一体何が映っていたのか? トーマスはフィルムを現像し、さらに写真を引き伸ばし写っているものを確認します。するとある事実が見え隠れするのですが…

1960年代スウィンギング・ロンドンと呼ばれ若者文化が開花し、ポップカルチャーが大いに発展したイギリスの黄金時代。ビートルズに代表されるロックやミニスカファッションなどが台頭したのもこの時代。そんな若者文化を享受しながらも、一連のどんちゃん騒ぎが終わった後の虚無感が半端ないあの感じ。それはまるでお祭り騒ぎの中で内包していた社会的問題、英国病と言われた経済的な不振や失業者の多さに見てぬふりをしながら生活していた若者たちのようです。

ミケランジェロ・アントニオーニ監督作品の特徴としてある「腑に落ちないラスト」がこの映画でも見られるのですが、あったかもしれない殺人事件を追求しようと躍起になる中、主人公自身の存在の不確かさが浮き彫りになっていきます。

この映画の評価は高く、ダリオ・アルジェント監督の「歓びの毒牙」(1970年)、フランシス・フォード・コッポラ監督の「カンバセーション 盗聴」(1974年)、ブライアン・デ・パルマ監督の「ミッドナイト・クロス」(1974年)などの映画に踏襲されていると言われています。 また、エリック・クラプトンやジェフ・ベック、ジミー・ペイジなどの有名ギタリストを輩出した伝説のバンド、ヤードバーズが出演していることでも知られ、ジェフ・ベックがギターを壊すパフォーマンスシーンは貴重な映像作品として有名です。

スタッフ・キャスト

監督はイタリアのミケランジェロ・アントニオーニ。1957年にアリダ・ヴァリを主演に発表した「さすらい」で愛情の不確かさ不条理感を描き、1960年の「情事」では公私共に長年のパートナーであるモニカ・ヴィッティを主演にミステリアスな展開ながら男女の心理的葛藤を描き、何も解決しないラストに観る人々に消化不良を起こすという内容が非常に話題になりました。この映画はのちに、マルチェロ・マストロヤンニとジャンヌ・モローを主演にした「夜」(1960年)とアラン・ドロンを主演にした「太陽はひとりぼっち」と並び「愛の不毛三部作」と呼ばれています。1964年には再びモニカ・ヴィッティを主演に初のカラー作である「赤い砂漠」を発表、この映画はヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しています。また、1975年に製作された「さすらいの二人」では、アメリカ人俳優のジャック・ニコルソンを起用し、ベルナルド・ベルトルッチ監督が発表したエロ文芸作「ラスト・タンゴ・イン・パリ」(1972年)に出演したマリア・シュナイダーを起用し、7分の長回しで有名な作品です。男女の不条理や不安や孤独を描き、突き放したような結末が多く考えさせられる余韻を残す作品が多い、イタリア映画を代表する監督さんの一人です。

主演はイングランド出身の俳優デヴィッド・ヘミングス。デビューは早く10代の頃から映画に出演していましたが、ブレイクしたのはこのミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」(1966年)になってから。翌年にはアーサー王伝説を映画化した「キャメロット」でモルドレッド役で出演。ロジェ・ヴァディム監督の珍作「バーバレラ」(1968年)やイギリスでリチャード・レスター監督の「ジャガーノート」(1974年)、イタリアでダリオ・アルジェント監督のミステリー映画「サスペリアPART2」に出演するなどB級映画から大作まで様々な国の映画に出演されていました。

実は豪華な女優陣では、公園にいた謎の女にヴァネッサ・レッドグレイヴ。 モデル志望のブロンドの若い娘役にイングランド出身の女優兼歌手のジェーン・バーキン。エルメスの「バーキン」は彼女のために作られたことでも有名ですが、この映画ではヌードを披露しており、お色気要員として配置されています。 主人公のトーマスがつまんない女と評していたパトリシアにイギリス人女優のサラ・マイルズなどがサラっと出演しております。

まとめ

虚しさで地獄行き

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