うちのだんなは絶対浮気しないと言っている奥さんほど
浮気されているという現実。
[原題]Agatha
[製作年]1979 [製作国]アメリカ・イギリス
[日本公開]1979
[監督]マイケル・アプテッド
[脚本・原案]キャサリン・タイナン
[脚本]アーサー・ホプクラフト
[製作]ジャーヴィス・アステア/ガブリック・ロージー
[撮影]ヴィットリオ・ストラーロ
[編集]ジム・クラーク
[音楽]ジョニー・マンデル
[上映時間]98
主な登場人物
アガサ・クリスティ(ヴァネッサ・レッドグレイヴ):
イギリスの有名女流ミステリー作家。夫アーチーに離婚を切り出されている。
ウォーリー・スタントン(ダスティン・ホフマン):
アメリカ人コラムニスト。アガサ・クリスティを取材するうちに彼女自身に惹かれていく。
その他の登場人物
アーチボルト・クリスティ大佐(ティモシー・ダルトン):アーチー、アガサの夫。
イヴリン・クローリー(ヘレン・モース):療養所のホテルでアガサが親しくなった夫人
ナンシー・ニール(セリア・グレゴリー):アーチの秘書兼愛人
ジョン・フォスター(ポール・ブルック):新聞記者
シャーロット・フィッシャー(キャロリン・ピックルズ):アガサの秘書
ケンワード刑事(ティモシー・ウェスト):失踪事件の捜査にあたる
あらすじ
1926年、著名な推理作家アガサ・クリスティが失踪した。その真相は永遠に謎のままだが、ある一人のコラムニストがその鍵を握っている。「アーチーに愛を込めて アガサ」と刻印した盾を夫アーチーに渡すアガサ。しかしアーチーはつれない表情だった。その後夫妻はアガサの発表した小説「アクロイド殺し」のレセプションに出向いた。その後ろから会場に入っていったのがアメリカ人のコラムニストのスタントンだったが、アガサ・クリスティの姿を初めて見たスタントンは控えめな美人で驚いた。アガサは屋敷に戻ったが、アーチーは翌朝まで戻らなかった。翌朝アーチーはアガサに離婚したいと告げる。秘書のミス・ニールを愛していると言うのだ。まだ愛していると納得しないアガサに非情にも別居だと席を立とうとするアーチーの足に飛びついてすがりつくアガサ。ますますアーチーを怒らせ彼は出ていってしまう。ちょうどアガサに取材に来たスタントンに出くわしたアーチーは妻は記者には会わないと追い払おうとする。スタントンはアガサの夫アーチボルト・クリスティ大佐に会えて良かったと彼に告げた。その夜、ミス・ニールが痩せる鉱泉療養の為ハロゲートのヴァレンシア・ホテルに2週間滞在すると聞かされる。アガサは2通の手紙を残し一人旅行に出ると自動車で出ていった。翌朝森の中で毛皮のコートなどの遺留品を残したまま乗り捨てられた自動車が発見される。ケンワード刑事はアガサ・クリスティの名前を見て事件に巻き込まれたのかと考える。スタントンは記者のフォスターからアガサが失踪したことを知らされすぐさま現場に向かった。現地では騒動となっており、捜索隊が組まれ池をさらっていた。アーチーが到着しケンワード警部がアガサに普段と変わったことがなかったかと尋ねるが、大佐は特に何もなかったと答える。一方その頃アガサは失意を胸に列車に乗りハロゲートに到着した。
どんな映画?
この映画は女流推理作家として著名なアガサ・クリスティが1926年に11日間失踪した事件を元に、キャサリン・タイナンが空想と創作を交えて書いた小説を映画化したものです。
アガサ・クリスティを長身のヴァネッサ・レッドグレイヴが演じ、失踪事件の真実を知る唯一の人物をあまり背が高くないことでも知られているダスティン・ホフマンが演じています。この2人のダンスシーンは身長差もあって当時話題になりました。
名探偵ポワロシリーズの新作
「アクロイド殺し」を発表したアガサ・クリスティ女史
女流ミステリー作家として確固たる名声を得つつ
あった彼女には悩みがありました。
最愛の夫アーチーから
他に愛する女性ができたので離婚して欲しいと
言われていたのです。
立ち去ろうとするアーチーに
スライディングタックル!
恥も外聞もなく捨てないでとすがるアガサ
一方アメリカから来たコラムニストの
スタントンは思いの外美人のアガサに
興味を持ちます。
一人自動車に乗り家を出たアガサ
しかし彼女の車は高価な荷物を残したまま
乗り捨てられていました。
有名人の失踪に事件性を感じるケンワード刑事
アーチーも事情を聞かれ大騒動になります。
スタントンもすぐさま駆けつけます。
そんな中アガサは汽車に乗り
保養所ハロゲートに向かっていました。
アーチーの愛を取り戻すため!
でも どうやって?
2人の身長差も映画のラストでは気にならなくなるから不思議です。
アガサ・クリスティが1944年にメアリ・ウェストマコット名義で発表した「春にして君を離れ」と言う小説があります。この小説は探偵小説ではなく誰も死にません!にもかかわらずホントの意味で恐ろしい小説だとわたくしは思います。
良妻賢母で夫からも子供からも愛されていると固く信じ独善的に家族を支配する女性が主人公ですが、その実夫は他の女性を愛し、娘たちからは軽蔑されていると言う現実。主人公が哀れんでいるかつての友人に、「何も知らなくて可哀想」と思われている。自分の幸せが全部妄想だったというオチにこんなに恐ろしいことはないなーと感じるのです。
とっくに愛を失っているのに知らないまま過ごすことが本当に幸せなのか?
1926年に当時36歳のアガサ・クリスティ女史は謎の家出。知られている事実としては自宅を出たまま行方不明となり大騒ぎ。11日後に温泉保養所でアーチーの愛人名を名乗って宿泊していたのが見つかりました。ご本人自身もこの事については語っていないため、真相は藪の中ですがアーチーとはこの事件の2年後に離婚となりました。
真相はこんなんでは?と作られた映画ですが、ミステリー要素もありわたくしも好きな作品の中の一本です。ヴァネッサ・レッドグレイヴよりも小さいダスティン・ホフマンが大きくイケメンに見えるのも好印象です。
失われた愛にすがりつくのが幸せなのか、新しい愛に目を向けていくのが幸せなのか、じんわりくる大人の映画です。
スタッフ・キャスト
監督はイギリス人のマイケル・アプテッド。ミステリーやコメディ、ヒューマンドラマなどを手掛け、ドキュメンタリー作家としても著名な監督さんです。「アガサ 愛の失踪事件」(1979年)を監督した翌年にハリウッドに招かれ「キャリー」(1976年)の主演で有名なシシー・スペイセク主演のヒューマン映画「歌え!ロレッタ愛のために」(1980年)を監督。この映画でカントリー歌手ロレッタ・リンの半生を演じたシシー・スペイセクにアカデミー賞主演女優賞をもたらしました。何となくチンプな邦題をつけられてしまったこの映画ですが、シシー・スペイセクの夫役にブラピを3発ぐらい殴ったような若かりし頃のトミー・リー・ジョーンズが出演しており、なかなか感動的な作品に仕上げっております。1988年にはシガニー・ウィーバー主演でマウンテンゴリラの生態調査を行った動物学者の生涯を描いた「愛は霧のかたなに」や、ジーン・ハックマン主演で弁護士の実体験を描いた「訴訟」(1991年)監督しています。1999年には007の第19作品でジェームズ・ボンド役をピアース・ブロスナンが演じた「ワールド・イズ・ノット・イナフ」を監督されています。
また、マイケル・アプテッド監督がライフワークとして製作に携わっていたのが、ドキュメンタリー作品である「UPシリーズ」です。こちらはイギリスのテレビ局が制作したテレビ番組で、1964年当時住む場所、環境の異なるイギリスの7歳の子供をインタビューし、7年ごとに彼らがどうなるのかインタビューしていくというものでした。現在「63UP」まで制作され当時の7歳の子供が63歳になっています。この試みは日本でも1990年代から実施され選ばれた子供たちが7年ごとにインタビューを受けています。わたくしもNHKで放送されたダイジェスト版を観ましたが、その後に東大を出た女の子などなかなか印象的な番組でした。マイケル・アップテッド監督は残念ながら今年の1月に79歳でお亡くなりになられました。
アガサ・クリスティを演じたのはイギリスの女優ヴァネッサ・レッドグレイヴ。父親は名優マイケル・レッドグレイヴ、母親は女優のレイチェル・ケンプソンという女優のサラブレッド。長身に整った顔立ちでダイナミックな演技が印象的な女優さんです。1958年にブライアン・デズモンド・ハースト監督の「Behind the Mask」で映画デビュー。その後1966年に主演した「モーガン」でその名が知られるようになり、同年には不レッド・ジンネマン監督の「わが生命つきるとも」でアン・ブーリンを演じ、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」では殺人現場を写真に撮られる謎の女性を演じてます。数多くの巨匠作品に出演し、カレル・ライス監督の「裸足のイサドラ」(1968年)では伝説のダンサー、イサドラ・ダンカンの半生を情熱的に演じ高い評価を得ました。1971年に出演したケン・ラッセル監督の問題作「肉体の悪魔」では背中にコブがある修道院長役で、○○○ーシーンを演じ世間に衝撃を与えました。1977年にはフレッド・ジンネマン監督の「ジュリア」でアカデミー賞助演女優賞を獲得しています。私生活では元夫で「長距離ランナーの孤独」(1962年)や「トム・ジョーンズの華麗な冒険」(1963年)の監督で著名な監督トニー・リチャードソンとの間にナターシャ・リチャードソン、ジョエリー・リチャードソンと2人の美しい娘がおり、2人とも女優になっています。また離婚後も数々の俳優と交際していたと言われ、「アガサ 愛の失踪事件」で共演しているティモシー・ダルトンは当時の彼氏だったと言われています。現在は長年のパートナーであった俳優フランコ・ネロとご結婚されています。
アガサの夫アーチーを演じたのはジェームズ・ボンド俳優でも知られているティモシー・ダルトン。1968年にアンソニー・ハーヴェイ監督の時代映画「冬のライオン」で映画デビュー。コスチュームブレーものも得意な他、長身と身のこなしを活かし1987年からは第4代ジェームズ・ボンド役に抜擢され「007 リビング・デイライツ」(1987年)、「007 消されたライセンス」(1989年)に出演しています。
まとめ
真実は永遠に藪の中で地獄行き
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